要請を受諾した年月日 | 平成24年9月4日 |
検査の対象 | 内閣官房、総務省、防衛省、独立行政法人情報通信研究機構、独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
検査の内容 | 三菱電機株式会社等による過大請求事案についての検査要請事項 |
報告を行った年月日 | 平成24年10月25日 |
会計検査院は、平成24年9月3日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月4日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項 | |||||
(一) | 検査の対象 | ||||
内閣官房、総務省、防衛省、独立行政法人情報通信研究機構、独立行政法人宇宙航空研究開発機構 | |||||
(二) | 検査の内容 | ||||
三菱電機株式会社等による過大請求事案に関する次の各事項 | |||||
〔1〕 | 過大請求の経緯、方法、内容等の状況 | ||||
〔2〕 | 防衛省等における監査等の実施状況 | ||||
〔3〕 | 損害賠償の請求、再発防止策の策定等の状況 |
ア 防衛装備品等の調達に関する契約の概要
防衛省(19年1月8日以前は内閣府(防衛庁))は、防衛省設置法(昭和29年法律第164号)等に基づき、防衛装備品及び防衛装備品の修理等の役務(以下「防衛装備品等」という。)の調達等を民間企業等と請負契約等を締結することにより実施している。防衛装備品等の調達は、その用途が特殊であり市販性が少なく、契約相手方が限定されることが少なくないことなどから、随意契約の割合が高くなっている。
防衛装備品等の調達契約に係る予定価格の算定方式については、防衛装備品は市場価格が形成されていない場合が多いため、このような場合には、直接材料費、加工費(直接労務費に間接労務費、間接材料費及び間接経費である製造間接費を加えたもの)、直接経費、総利益等の計算項目の合計額により予定価格の決定の基準とされる計算価格を算定する原価計算方式を採用することとされている。このうち加工費は、工数(製造等に直接従事した作業時間)に加工費率(期間加工費を期間工数で除して算定した1作業時間当たりの加工費であり、入札等に参加しようとする者等の財務会計資料等に基づいて装備施設本部等が設定している。)を乗ずることなどにより計算することとなっている。このため、加工費は、外部証ひょう類によって確認が可能な直接材料費等とは異なり、契約相手方の管理会計上の関係書類による確認にとどまるため、改ざん等のリスクは一般に高くなる。
また、防衛装備品等の調達に係る契約方法については、契約締結時に適切な計算価格を算定することができない場合には、準確定契約、超過利益返納条項付契約又は概算契約(以下、これらを合わせて「準確定契約等」という。)が採用されている。準確定契約等においては、防衛省は、原価監査官等を契約相手方に赴かせるなどして、契約相手方が契約履行のために支出又は負担をした費用が原価として妥当であるか否かを審査するための原価の監査又は調査を実施することとしている。
さらに、原価計算方式で予定価格を算定して契約を締結している契約相手方について、その契約相手方が採用している原価計算システムの適正性を確認するための制度調査を実施することとしている。
イ 人工衛星等の研究、開発等に関する契約の概要
(ア) 独立行政法人宇宙航空研究開発機構における契約の概要
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(以下「宇宙機構」という。)は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構法(平成14年法律第161号)等に基づき、人工衛星等の開発等を民間企業等と請負契約等を締結することにより実施している。
人工衛星等の開発等の請負契約等に係る予定価格の算定方式については、市場価格が形成されていない場合が多いため、このような場合には、原価計算方式を採用することとされている。
また、人工衛星等の開発に係る契約方法については、確定契約のほか、契約締結時の契約金額を上限金額とし、実際に要した額を基に契約金額を確定する上限付概算契約(以下、準確定契約、超過利益返納条項付契約、概算契約及び上限付概算契約を「概算契約等」と総称する。)がある。このうち、上限付概算契約においては、原価監査を実施することとなっており、また、原価計算方式で予定価格を算定する契約においては、制度調査を実施することとなっている。
また、宇宙機構は、内閣官房内閣情報調査室内閣衛星情報センター(以下「衛星センター」という。)から委託を受けて情報収集衛星の開発を実施している。
(イ) 衛星センターにおける契約の概要
衛星センターは、情報収集衛星の研究、開発、運用等を宇宙機構、独立行政法人情報通信研究機構(以下「通信機構」という。)、民間企業等との委託契約等を締結することにより実施している。
情報収集衛星の研究、開発、運用等の委託契約等に係る予定価格の算定方式については、原価計算方式を採用しており、契約を締結する者から見積書の提出を受け、その見積書の見積額を査定することなどにより行っている。
また、情報収集衛星の研究、開発、運用等の契約方法については、確定契約が原則であるが、契約締結時に契約金額の確定が困難な場合には、概算契約が採用されている。このうち概算契約においては、契約金額を確定させるための調査を実施することとなっている。
(ウ) 通信機構における契約の概要
通信機構は、独立行政法人情報通信研究機構法(平成11年法律第162号)等に基づき、情報収集衛星の開発その他の研究、開発等を民間企業等と請負契約等を締結することにより実施している。
このうち情報収集衛星の開発については随意契約により、情報収集衛星の開発以外の研究、開発等については原則として公募による随意契約によりそれぞれ実施している。
請負契約等に係る予定価格の算定方式については、情報収集衛星の開発では原価計算方式を採用しており、宇宙機構の契約相手方と契約を締結する場合は、宇宙機構と同じ加工費率等を使用することになっている。また、情報収集衛星の開発以外の研究、開発等では、採択した民間企業等から見積書を提出させ、その見積書に記載された見積額を査定することにより行っている。
また、契約方法については、情報収集衛星の開発では上限付概算契約を採用しており、情報収集衛星の開発以外の研究、開発等では概算契約を採用している。そして、情報収集衛星の開発に係る上限付概算契約においては、原価監査を実施することとなっており、情報収集衛星の開発以外の研究、開発等に係る概算契約においては、額の確定のための検査(以下、原価の監査又は調査、原価監査、契約金額の額を確定させるための調査又は検査を「原価監査等」と総称する。)を実施することとなっている。さらに、情報収集衛星の開発に係る契約については、制度調査を実施することとなっている。
(エ) 総務省における契約の概要
総務省は、総務省設置法(平成11年法律第91号)、電波法(昭和25年法律第131号)等に基づき、電波資源拡大のための研究開発等を民間企業等と委託契約等を締結することにより実施している。
電波資源拡大のための研究開発の委託契約に係る予定価格の算定方式については、原則として、入札に参加しようとする者等から見積書を提出させ、その見積書に記載された見積額を査定することにより行っている。
また、電波資源拡大のための研究開発の契約方法については、概算契約を採用しており、額の確定のための検査を実施することとなっている。
ア 検査の観点及び着眼点
本院は、平成11年度決算検査報告に特定検査対象に関する検査状況として「装備品等の調達に係る過払事案の処理等について」
を掲記しており、本院の所見として、制度調査等のより一層の充実を図り、過払事案の発生原因、背景等を究明し、これに対する有効な対策を講ずるとともに、契約相手方である会社の保有する防衛装備品等に関する情報のより一層の収集、蓄積に努める要があり、もって、これらの施策を通じ防衛装備品等の調達価格の適正化に努め国民の信頼を得るようにすることが肝要であるとしているところである。
しかし、三菱電機株式会社(以下「三菱電機」という。)は、24年1月27日に、防衛省、宇宙機構及び衛星センターと締結した契約に係る工数等を過大に申告して過大請求を行っていたことなどを認めた。その後、三菱電機の子会社である三菱スペース・ソフトウエア株式会社(以下「MSS」という。)、三菱プレシジョン株式会社(以下「プレシジョン」という。)、三菱電機特機システム株式会社(以下「三電特機」という。)及び関連会社である太洋無線株式会社(以下「太洋無線株式会社」を「太洋無線」といい、これら4社を「関係4社」という。)並びに住友重機械工業株式会社(以下「住友重機械」という。)及びその子会社である住重特機サービス株式会社(以下「住重特機サービス株式会社」を「住重特機」といい、両社を合わせて「住友重機械等」という。)による過大請求事案が、次々と明らかになった。これら7社による過大請求事案(以下「三菱電機株式会社等による過大請求事案」という。)については、マスコミにおいて大きく報道されており、国民の関心が極めて高く、国会においても質疑が行われている。
また、防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省は、三菱電機、関係4社又は住友重機械等に対して指名停止等の措置を講じているが、その後も、防衛省、宇宙機構、通信機構及び総務省は、指名停止中であっても真にやむを得ない場合に該当するとして、これらの会社と契約を締結している(以下、このような場合に締結した契約を「指名停止中の契約」という。)。このことなどから、早急に原因を究明して、再発防止策を策定することなどが重要な課題となっている。
本院は、三菱電機株式会社等による過大請求事案の発覚以降、検査を実施してきたが、今回の検査の要請を踏まえ、これまで明らかになった検査結果を速やかに国会に報告し、事態の概要の把握や原因究明等に資することとするとともに、詳細な検証等を終えるに至っていない部分を中心に今後引き続き検査を実施して、最終的な検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。
本院は、本件の検査の要請の趣旨を踏まえ更なる検査の徹底を図るなどのため、三菱電機株式会社等による過大請求事案について、合規性、経済性等の観点から、次の着眼点により検査を実施した。
〔1〕 過大請求の経緯について、過大請求はどのような経緯で行われていたのか、特にこれまで明らかになった過大請求事案に対する再発防止策等はどのようなものであったのか、また、防衛装備品等の調達及び人工衛星等の研究、開発等に関する契約における過大請求の背景、事情等となるような課題等はないか。
〔2〕 過大請求の方法、内容等の状況について、過大請求はどのように行われていたのか、特に工数の付替え等の方法はどのようなものか、また、過大請求の目的、動機及び背景はどのようなものか。
〔3〕 防衛省等における監査等の実施状況について、制度調査、原価監査等は適切に実施されていたのか、また、三菱電機、関係4社及び住友重機械等における内部統制、各種の法令遵守等に係る施策等は有効に機能していたのか。
イ 検査の対象及び方法
本院は、防衛省内部部局、同省装備施設本部等において、防衛省が19年度から23年度までの間に三菱電機、関係4社及び住友重機械等と締結した防衛装備品等の調達に係る請負契約等を対象として、また、宇宙機構東京事務所、衛星センター、通信機構本部、総務本省等において、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省が三菱電機又は関係4社と締結した情報収集衛星の研究、開発等に係る委託契約等のうち、19年度から23年度までの間に履行の全部又は一部を完了した契約を対象として、調書を徴したり、実際原価計算書等の関係書類を確認したりするなどの方法により会計実地検査を行った。さらに、三菱電機鎌倉製作所及び通信機製作所(以下、三菱電機鎌倉製作所を「鎌倉製作所」、同社通信機製作所を「通信機製作所」という。)、関係4社並びに住友重機械等の各製造拠点に赴いて、精算関係資料や社内の調査資料を確認したり、関係者に説明を求めたり、製造現場を確認したりなどする方法により会計実地検査を行った。
ア 過大請求の経緯
(ア) これまで明らかになった過大請求事案
a 過去の過大請求事案の件数、返還額等
防衛省が締結した防衛装備品等の調達契約においては、工数を過大に申告するなどした過大請求事案が19件、また、宇宙機構が締結した人工衛星等の研究、開発等に関する請負契約等においても、過大請求事案(宇宙機構の前身の宇宙開発事業団又は文部科学省宇宙科学研究所が締結した契約に係るもの)が4件明らかになっている。
b 過去の過大請求事案に対する再発防止策等
(a) 防衛省の再発防止策
防衛省は、これまでに明らかになった過大請求事案について、次のような再発防止策を講じてきたとしている。
11年6月に関係機関に対して通達を発して、制度調査の受入義務、虚偽の資料の提示・提出の禁止及び原価計算方式で予定価格を算定している契約について、帳票類の保存義務(1年)、虚偽資料を提示・提出した場合の違約金の賦課(過払額と同額。20年4月1日以降は2倍の額)等を定めた特約条項を付すことを記載するとともに、その周知を図ることとした。
また、15年5月に発覚した日本飛行機株式会社による過大請求事案においては、同社が、防衛装備品等以外の工数を防衛装備品等の工数として付け替え、付替え後の状況を反映した原価元帳等の帳票類を作成して、他に真の値を記載した正規の帳票類が存在しなかった(一重帳簿)。このことなどから、防衛庁(当時)は、その後の制度調査においては、帳票類を審査するだけではなく、生産管理情報等との比較検証や内部統制システムの調査を加えたり、公認会計士の助言を求めたりなどして、契約相手方の原価計算システムの適正性の確保に努めることとした。
(b) 宇宙機構の再発防止策
宇宙機構は、防衛省と同様の再発防止策を講じてきたとしている。
(c) 衛星センター、通信機構及び総務省の不正防止対策
衛星センター、通信機構及び総務省は、自ら締結した委託契約等において過大請求事案が明らかになったことがない。このことなどから、衛星センターは、特に関係資料の保存義務や虚偽資料に係る違約金の賦課といった不正防止対策を講じていない。また、通信機構は関係資料の保存義務を定めておらず、総務省は、違約金の賦課について定めていない。なお、衛星センター及び通信機構は、本件過大請求事案発覚後、三菱電機との契約等について防衛省と同様の措置を講じている。
(イ) 防衛装備品等の調達及び人工衛星等の研究、開発等に関する契約に内在する課題等
a 競争性、透明性等の確保
防衛装備品等の調達及び人工衛星等の研究、開発等に関する契約は、随意契約の割合が高く、競争が働きにくい面がある。また、原価計算方式により予定価格を算定する場合が多いことなどから、予定価格の算定根拠等の透明性の確保が重要となる。
b コスト削減へのインセンティブ
現行の概算契約等においては、契約相手方のコスト削減努力により工数等が低減した場合についても、契約代金等を減額することとなり、コスト削減の便益を全て発注者が享受することとなっていることなどから、契約相手方において、コスト削減へのインセンティブが働きにくい面がある。
c 指名停止中の契約締結
防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省は三菱電機等に対して指名停止等の措置を講じているが、その後も、防衛省、宇宙機構、通信機構及び総務省は指名停止中の契約をこれらの会社と締結しており、その件数及び金額は、後記の表1
及び表2−1
から表2−3
までのとおり、計238件、1166億3013万余円に上っている。このように、多額の指名停止中の契約を締結することは、結果的に、指名停止等の措置が契約相手方にとってペナルティとして十分に機能していないと思料される。
上記a、b及びcのとおり、防衛装備品等の調達及び人工衛星等の研究、開発等に関する契約については、様々な課題等が内在しており、これらの課題等が過大請求の発生リスクに影響を与えていると思料される。
(ウ) 三菱電機株式会社等による過大請求事案の発生
a 三菱電機及び関係4社による過大請求事案の発生
防衛省、宇宙機構及び衛星センターは、三菱電機が防衛省及び宇宙機構と締結した契約において工数等を付け替えるなど過大請求等を行っているとの情報を受けたことなどから、24年1月17日に調査等を開始した。そして、防衛省等は、同月27日に、三菱電機が過大請求を行っていたことなどを認めて報告したことから、同社に対し指名停止等の措置を執るとともに、三菱電機の過大請求額(過払額)の算定を行うための特別調査等を開始した。また、通信機構及び総務省は、それぞれ2月3日及び3月2日に、同様に過大請求を行っていたとの報告を三菱電機から受けたことから、同社に対し指名停止の措置を執るとともに特別調査等を開始した。
また、防衛省は、2月24日に、関係4社から同様に過大請求を行っていたとの報告を受けたことから、関係4社に対し指名停止の措置を執るとともに特別調査を開始した。さらに、上記のとおり関係4社が防衛省と締結した契約において過大請求を行っていたことが判明したことから、宇宙機構は、4月3日に関係4社に対し同種事態がないか事実確認の調査依頼を文書により行った。
b 住友重機械等による過大請求事案の発生
防衛省は、住友重機械が防衛省と締結した契約において工数を水増しして過大請求を行っているとの情報を受けたことから、24年5月8日に調査等を開始した。そして、防衛省は、同月25日に、住友重機械及び子会社の住重特機が過大請求を行っていたことを認めて報告したことから、住友重機械等に対し指名停止の措置を執るとともに特別調査を開始した。
イ 過大請求の方法、内容等の状況
(ア) 三菱電機及び関係4社による過大請求事案
a 三菱電機による過大請求事案
(a) 契約実績等
三菱電機と、防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省との間の契約について、その主な契約内容、主な製造拠点、19年度から23年度までの間の契約実績及び指名停止中の契約の実績は、表1 のとおりである。
表1 防衛省等と三菱電機との契約の概要
(単位:件(上段)、千円(下段))
調達機関 | 防衛省 | 宇宙機構 | 衛星センター | 通信機構 | 総務省 | |
主な契約内容 | 03式中距離地対空誘導弾等の製造等 | 人工衛星(情報収集衛星含む)の開発等 | 情報収集衛星の研究、開発等 | 情報収集衛星の開発、通信技術の研究、開発等 | 衛星通信技術の開発、通信技術の研究開発等 | |
主な製造拠点 | 鎌倉製作所 通信機製作所 |
鎌倉製作所 通信機製作所 |
鎌倉製作所 | 鎌倉製作所 通信機製作所 情報技術総合研究所 |
鎌倉製作所 通信機製作所 情報技術総合研究所 |
|
契約実績 | 平成
19年度 |
696 119,067,716 |
157 37,038,987 |
3 272,647 |
19 5,759,351 |
24 2,737,283 |
20年度 | 716 174,344,021 |
132 42,015,776 |
1 9,765 |
19 7,107,642 |
24 2,386,062 |
|
21年度 | 705 200,552,341 |
130 39,851,550 |
1 303,870 |
21 8,041,486 |
30 3,020,656 |
|
22年度 | 628 119,229,946 |
106 38,723,087 |
2 154,350 |
16 14,698,351 |
28 1,604,122 |
|
23年度 | 379 20,913,582 |
88 8,165,384 |
1 144,060 |
15 3,304,541 |
14 1,740,227 |
|
計 | 3,124 634,107,609 |
613 165,794,786 |
8 884,692 |
90 38,911,372 |
120 11,488,351 |
|
指名停止等年月日 | 24年1月27日 | 24年1月27日 | 24年1月27日 | 24年2月3日 | 24年3月2日 | |
指名停止中の契約の実績 | 152 111,843,866 |
24 1,315,784 |
なし | 3 131,980 |
5 313,738 |
(b) 工数付替え等の状況
〔1〕 防衛装備品等の調達に関する契約
i 鎌倉製作所における工数付替え等の状況
鎌倉製作所の防衛部門は、防衛省と締結した大半の契約において、その契約金額に基づき損益管理等を行うための指標として目標工数を設定していた。そして、同防衛部門は、準確定契約等において、契約代金の確定時に契約代金の減額や返納を避けるなどの目的で、実績工数が目標工数を下回った場合には、その下回った分に、実績工数が目標工数を上回った民需を含む他の契約から実績工数の一部を付け替えて、付け替えた工数を加算した後の工数を当該契約の実績工数として防衛省に申告するなどしていた。また、同部門は、確定契約においても、契約に際して提出する見積書に記載する工数は過去の製造実績に基づいて計上することが基本となっていることなどから、その契約の実績工数が次回以降の契約に際して提出する見積書に記載する工数に影響を与えることなどを回避するために、実績工数が目標工数を下回った場合には、準確定契約等と同様に、実績工数の一部を付け替えるなどしていた。
なお、付替え前の工数データについては、22年8月以前のデータが廃棄されており、それ以降の工数データも最初から目標工数が工数管理システムに直接入力されるなどしていたとしている。
ii 通信機製作所における工数付替え等の状況
通信機製作所の防衛部門は、鎌倉製作所と同様に、目標工数を設定して工数の付替えを行うなどしていた。 なお、実際の作業時間が記録された工数データについては、一部しか保管されていないなどとしている。
iii 過大請求額の算定との関係
防衛省は、現在、過払額の算定を行うための特別調査を実施しているが、前記のとおり、鎌倉製作所及び通信機製作所は、実際の作業時間が記録された工数データを一部しか保管していないことなどから、従来の過大請求事案のように、個々の契約の支払済額から、原価元帳その他の帳簿類から確認した真の工数等に基づいて算定した契約金額を差し引いて過払額を算定するという作業ができない状況となっている。このため、防衛省は、現在、保管されていたデータの信頼性を検証するなどした上で、当該データ等から過払額を算定するための「適正な工数」の推定 方法等を検討している。
〔2〕 人工衛星等の研究、開発等に関する契約
i 鎌倉製作所における工数付替え等の状況
鎌倉製作所の宇宙部門は、防衛部門が防衛省との契約で行っていたのと同様に、宇宙機構、衛星センター及び通信機構と締結した大半の契約において、 工数の付替えを行うなどしていた。なお、実際の作業時間が記録された工数データについては、一部しか保管されていないなどとしている。
三菱電機が総務省との間で19、20両年度に締結した概算契約2件においては、実際に作業を実施した鎌倉製作所の相模工場は、工数管理担当者が、実績工数の集計の際に、課員が入力した実績工数を目標工数に達するよう水増しするなどしていたが、実際の作業時間が記録された 工数データが保管されていたとしている。
ii 通信機製作所における工数付替え等の状況
通信機製作所の宇宙部門等は、鎌倉製作所の宇宙部門と同様に、宇宙機構、通信機構及び総務省と締結した大半の契約において、目標工数を設定して工数の付替えを行うなどしていた。なお、実際の作業時間が記録された工数データについては、一部しか保管されていないなどとしている。
iii 過大請求額の算定との関係
(i) 概算契約等について
宇宙機構、衛星センター及び通信機構は、防衛省と同様に、現在、過払額を算定するための「適正な工数」の推定方法等を検討するなどしている。
また、三菱電機は、前記のとおり、相模工場が担当した2件の契約の実際の作業時間が記録された工数データを保管していたとしていることから、24年5月に総務省へこれらの工数データを基礎として実績報告書を再提出した。総務省は、同年6月にこれにより額の再確定を行い、三菱電機から同年7月に過払額1796万余円、延滞金809万余円、計2605万余円の返還を受けた。
(ii) 確定契約について
三菱電機は、人工衛星等の研究、開発等に関する確定契約において、見積書の工数の算出に当たって、過去の工数を参考とせずに、その都度、必要と見込まれる工数を積み上げて算出していることなどから、工数の付替えを行っていても過大請求には当たらないとしている。しかし、確定契約の中には、同一仕様ではないとしても同種の作業を含む契約が次年度以降に締結されていることもあることから、工数の付替えを行った契約の工数を翌年度以降の契約に反映させたこととなっていないか、引き続き検査する必要がある。
(c) 工数付替え等の目的、背景、動機等
工数の付替え等の目的は、前記のとおり、概算契約等における契約代金等の確定時に契約代金等の減額や返納を避けることなどであるが、さらに、各部、各課の人員確保のためや、利益の確保のためといった背景、動機等があったなどとしている。
b 関係4社による過大請求事案
(a) 契約実績等
関係4社と、防衛省、宇宙機構、通信機構又は総務省との間の契約について、その主な契約内容、主な製造拠点、19年度から23年度までの間の契約実績及び指名停止中の契約の実績は、表2−1 から表2−4 までのとおりである。
表2−1 防衛省等とMSSとの契約の概要
(単位:件(上段)、千円(下段))
調達機関 | 防衛省 | 宇宙機構 | 衛星センター | 通信機構 | 総務省 | |
主な契約内容 | ペトリオットミサイルの品質確認試験(解析)等 | 宇宙・航空システムの開発等 | / | サーバー運用支援作業等 | システム用機器の賃貸借等 | |
主な製造拠点 | 鎌倉事業部 | 鎌倉事業部 | つくば事業部 | つくば事業部 | ||
契約実績 | 平成19年度
|
23 1,123,355 |
43 469,478 |
1 3,780 |
12 361,286 |
|
20年度 | 27 1,349,943 |
33 508,076 |
3 13,891 |
6 241,836 |
||
21年度 | 27 954,060 |
38 450,833 |
0 3,780 |
4 165,633 |
||
22年度 | 21 1,140,103 |
41 719,289 |
0 3,780 |
2 153,724 |
||
23年度 | 14 346,350 |
25 558,668 |
1 3,937 |
4 148,271 |
||
計 | 112 4,913,813 |
180 2,706,344 |
5 29,169 |
28 1,070,752 |
||
指名停止等年月日 | 24年2月24日 | 指名停止等なし | 指名停止等なし | 指名停止等なし | ||
指名停止中の契約の実績 | 1 1,060 |
− | − | − |
表2−2 防衛省等とプレシジョンとの契約の概要
(単位:件(上段)、千円(下段))
調達機関 | 防衛省 | 宇宙機構 | 衛星センター | 通信機構 | 総務省 | |
主な契約内容 | F−15用フライトシミュレータプログラム維持等 | 航空・宇宙・慣性・電波各機器の開発等 | / | 手術手技教育訓練システムの開発 | / | |
主な製造拠点 | 鎌倉事業所 | 鎌倉事業所 | 鎌倉事業所 | |||
契約実績 | 平成
19年度 |
157 5,732,787 |
17 582,567 |
1 43,982 |
||
20年度 | 134 4,009,529 |
13 516,773 |
1 43,998 |
|||
21年度 | 139 3,786,692 |
10 577,984 |
− | |||
22年度 | 131 3,594,068 |
10 644,509 |
− | |||
23年度 | 129 6,393,105 |
12 348,135 |
− | |||
計 | 690 23,516,183 |
62 2,669,970 |
2 87,980 |
|||
指名停止等年月日 | 24年2月24日 | 指名停止等なし | 指名停止等なし | |||
指名停止中の契約の実績 | 30 2,623,691 |
− | − |
表2−3 防衛省等と三電特機との契約の概要
(単位:件(上段)、千円(下段))
調達機関 | 防衛省 | 宇宙機構 | 衛星センター | 通信機構 | 総務省 | |
主な契約内容 | レーダーセットAN/AGP−63構成品修理等 | 衛星搭載機器の開発等 | / | 多周波電磁環境統計測定装置等 | / | |
主な製造拠点 | 東部事業部 西部事業部 |
東部事業部 | 東部事業部 | |||
契約実績 | 平成
19年度 |
270 10,493,452 |
2 18,778 |
8 155,591 |
||
20年度 | 258 11,048,932 |
4 46,196 |
2 22,260 |
|||
21年度 | 265 11,696,469 |
2 121,492 |
3 27,363 |
|||
22年度 | 236 12,565,327 |
3 17,430 |
− | |||
23年度 | 258 10,351,577 |
2 72,440 |
− | |||
計 | 1,287 56,155,759 |
13 276,338 |
13 205,214 |
|||
指名停止等年月日 | 24年2月24日 | 指名停止等なし | 指名停止等なし | |||
指名停止中の契約の実績 | 23 400,014 |
− | − |
表2−4 防衛省等と太洋無線との契約の概要
(単位:件(上段)、千円(下段))
調達機関 | 防衛省 | 宇宙機構 | 衛星センター | 通信機構 | 総務省 | |
主な契約内容 | 航空機搭載用救難無線機等 | 電波監視用器材等 | / | / | 携帯型方向探知機等 | |
主な製造拠点 | 本社工場 | 本社工場 | 本社工場 | |||
契約実績 | 平成
19年度 |
41 488,869 |
− | 3 41,580 |
||
20年度 | 36 416,389 |
1 5,040 |
4 80,797 |
|||
21年度 | 44 446,131 |
− | 4 48,751 |
|||
22年度 | 41 258,206 |
− | 4 67,951 |
|||
23年度 | 40 354,196 |
− | 2 43,470 |
|||
計 | 202 1,963,794 |
1 5,040 |
17 282,550 |
|||
指名停止等年月日 | 24年2月24日 | 指名停止等なし | 指名停止等なし | |||
指名停止中の契約の実績 | なし | − | − |
(b) 工数付替え等の状況
〔1〕 防衛装備品等の調達に関する契約
i 工数付替えの状況
関係4社の防衛部門は、三菱電機と同様に、防衛省と締結した大半の契約について目標工数を設定して工数の付替えを行うなどしていた。なお、実際の作業時間が記録された工数データについては、一部しか保管されていないなどとしている。
ii 過大請求額の算定との関係
防衛省は、三菱電機と同様に、過払額を算定するための「適正な工数」の推定方法等を検討している。
〔2〕 人工衛星等の研究、開発等に関する契約
i 工数付替えの状況
概算契約等は、プレシジョンが通信機構と締結した2件のみで、プレシジョンは工数の付替えを行っていなかったとしている。
確定契約については、MSS、プレシジョン及び三電特機が宇宙機構と締結した契約、三電特機が通信機構と締結した契約並びに太洋無線が総務省と締結した契約において、工数の付替えが行われるなどしていた。なお、実際の作業時間が記録された工数データについては、防衛部門と同様に、一部しか保管されていないなどとしている。
ii 過大請求額の算定との関係
関係4社は、確定契約において、三菱電機が宇宙機構等と締結した確定契約と同様に、工数の付替えを行っていたとしても過大請求には当たらないとしている。 しかし、三菱電機の宇宙部門等の確定契約と同様に、引き続き検査する必要がある。
(c) 工数付替え等の目的、背景、動機等
工数の付替えの目的は、三菱電機と同様に、概算契約等における契約代金等の確定時に契約代金等の減額や返納を避けることなどであるが、さらに、三菱電機と同様に社内の各部、各課の人員確保や利益確保のため、また、工数の付替えが引継事項として当たり前のように行われてきたことから、契約上の違反行為としての認識が薄くなっていたこと、三菱電機から移管された事業については、工数を変えることが三菱電機に迷惑をかけることになるとの配慮があったことといった背景、動機等があったなどとしている。
(イ) 住友重機械等による過大請求事案
a 契約実績等
住友重機械等と防衛省との間の契約について、その主な契約内容、主な製造拠点、19年度から23年度までの間の契約実績及び指名停止中の契約の実績は、 表3 のとおりである。
表3 防衛省と住友重機械等との契約の概要
(単位:件(上段)、千円(下段))
調達機関 | 防衛省 | ||
会社 | 住友重機械 | 住重特機 | |
主な契約内容 | 高性能20mm機関砲用弾薬給弾装置等 | 20mm対空機関砲定期修理等 | |
主な製造拠点 | 田無製造所 | 田無製造所(本社) | |
契約実績 | 平成
19年度 |
132 5,381,906 |
58 1,353,107 |
20年度 | 124 3,470,759 |
50 1,171,564 |
|
21年度 | 121 3,488,953 |
60 1,376,780 |
|
22年度 | 101 3,117,749 |
43 1,147,615 |
|
23年度 | 130 3,845,562 |
61 1,403,120 |
|
計 | 608 19,304,932 |
272 6,452,189 |
|
指名停止等年月日 | 24年5月25日 | 24年5月25日 | |
指名停止中の契約の実績 | なし | なし |
b 工数水増し等の状況
(a) 住友重機械における工数水増し等の状況
住友重機械は、防衛省と締結した大半の契約において、契約に際して防衛省に提出した見積書の工数又はこれに近似した工数(以下、これらの工数を「見積工数」という。)を目標工数として設定していた。そして、確定契約においては、見積工数は過去の製造実績に基づいて計上することが基本となっていることなどから、その契約の実績工数が次回以降の契約に際して提出する見積書に記載する工数に影響を与えることなどを回避するために、実績工数が目標工数を下回った場合には、その下回った分について、防衛装備品の製造等に直接従事した時間ではない各製品共通の作業等に従事した時間(間接作業時間)を当該防衛装備品等の工数に振り替えることなどにより実績工数を目標工数まで水増しするなどしていた。また、準確定契約等においても、確定契約と同様に工数の水増しを行うなどしていた。なお、実際の作業時間が記録された工数データについては、一部しか保管されていないなどとしている。
(b) 住重特機における工数水増し等の状況
住重特機は、防衛省と締結した大半の概算契約において、住友重機械と同様に、間接作業時間を当該防衛装備品等の工数に振り替えたり、関係会社から人材の応援があったと偽装して、応援されたとする人の架空工数を計上したりなどして工数の水増しを行うなどしていた。なお、実際の作業時間が記録された工数データについては、一部しか保管されていないなどとしている。
(c) 過大請求額の算定との関係
防衛省は、現在、過払額の算定を行うための特別調査を実施している。
c 工数水増し等の目的、背景、動機等
工数の水増し等の目的は、前記のとおり、確定契約においては、次回以降の契約に際して提出する見積書に記載する工数に影響を与えることなどを回避することなどであるが、さらに、住友重機械は、防衛装備品の収益で民生品の損失を補填するという面もあったこと、住重特機においては、住友重機械から移管された事業であるため、工数を変えることが住友重機械に迷惑をかけることになるとの配慮があったことといった背景、動機等があったなどとしている。
防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省による三菱電機、関係4社又は住友重機械等に対する制度調査、原価監査等の実施状況について検査したところ、次のような状況となっていた。
ア 防衛省等による制度調査の実施状況
表4−1 のとおり防衛省及び宇宙機構は制度調査を実施していたものの、衛星センター、通信機構及び総務省はいずれも制度調査を実施していなかった。 このうち、総務省は、原価計算方式で予定価格を算定していないことから、制度調査については実施する必要がないとしている。
防衛省 | 宇宙機構 | 衛星センター | 通信機構 | 総務省 |
通達や実施要領等に基づき実施している。 | 要領や契約条項に基づき実施している。 | 内部規程や契約条項に制度調査の規定がないため実施していない。 | 契約条項で規定しているが、宇宙機構の加工費率等を採用しており宇宙機構が制度調査を実施しているとして実施していない。 | 原価計算方式で予定価格を算定していないことから実施していない。 |
防衛省及び宇宙機構は、制度調査を実施するに当たり、あらかじめ調査の日程、対象とする契約等の調査内容等について契約相手方と調整を行い、 調査実施日の数箇月前に契約相手方に通知していた。
この通知を受けた会社側の対応、防衛省及び宇宙機構の実施方法等は表4−2
のとおりとなっていた。 また、防衛省及び宇宙機構は、事前通告なしの抜き打ち調査を実施していない。
実 施 年 度 |
会社 | 防衛省 | 宇宙機構 | |
三菱電機 | 平成 | 22年度 | 21年度 | |
MSS | 22年度 | 21年度 | ||
プレシジョン | 22年度 | 19年度 | ||
三電特機 | 22年度 | − | ||
太洋無線 | 23年度 | − | ||
住友重機械 | 20年度 | − | ||
住重特機 | 20年度 | − | ||
会社側の対応 | 〔1〕 工数管理システム等の調査の際に、工数修正専用端末や工数修正プログラムの存在を開示しなかった。
〔2〕 フロアチェック(注)
の際に、実際の作業とは異なる工数計上が発覚する懸念があったため、調査実施日の数箇月前に調査内容や調査対象契約が通知されることから次のような対応を執っていた。
・調査の際にはあらかじめ決めておいた作業内容を実演してその作業時間をそのまま計上した。
・入力した実績工数が自動的に目標工数に修正されないように、工数修正プログラムの使用を停止していた。
・工数の入力を行う端末の画面に実績工数が表示されないようにしていた。
・作業員が少なくて済む自動工作機械に多くの作業員を張り付けていた。
・作業員等への直接の質問や不用意な回答を防ぐために対応者を管理職等に限定するなどしていた。
〔3〕 帳簿類の調査の際には、事前の打合せのときに対象契約数や帳票類の種類を極力限定するようにしていた。
〔4〕 予定外の調査や行動が行われないよう日程調整を行っていた。
|
|||
実施方法 | 事前に調整した調査内容等に従って、原則として会社が設定した事項に限定した調査を実施するなどしていた。 | |||
抜き打ち調査 | 実施していない。 |
このように、制度調査は、衛星センター及び通信機構においては実施されておらず、防衛省及び宇宙機構においても、会社と事前に調整した範囲内に限定して実施されているなど有効に機能するものとはなっていなかった。また、事前通告なしの抜き打ち調査は実施されておらず、抜き打ち調査が効果的に実施できるような体制の整備も検討されていないなどのため、帳簿類の調査のみでは発見が困難な一重帳簿による工数の付替え等には対応できない状況となっていた。
イ 防衛省等による原価監査等の実施状況
防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省は、三菱電機、関係4社又は住友重機械等と締結した概算契約等について、いずれも原価監査等を実施していた。
しかし、防衛省等は原価監査等の際は、防衛省等が監査すべき事項を指定すべきであるのに、表5
のとおり、三菱電機等の各会社があらかじめ事前に準備した事項についての確認を中心に監査するなどしていた。また、防衛省等は、事前通告なしの抜き打ち監査を実施していない。
実 施 年 度 |
会社 | 防衛省 | 宇宙機構 | 衛星センター | 通信機構 | 総務省 |
三菱電機 | 250件 | 4件 | 1件 | 2件 | 1件 | |
MSS | 2件 | / | / | / | / | |
プレシジョン | 100件 | |||||
三電特機 | 194件 | |||||
太洋無線 | 20件 | |||||
住友重機械 | 14件 | |||||
住重特機 | 45件 | |||||
会社側の対応 | 予定外の監査等が行われないよう事前に日程及び調査項目の打合せを行うなどしていた。 | |||||
実施方法 | 〔1〕個別に管理職等に説明を求めていたものの、会社が事前に準備した事項についての確認が中心となっているなどしていた。
〔2〕実際に工数計上を行った担当者への聴取が十分でなかった。
〔3〕一部の調達機関は、各会社に赴いて行う実地監査を実施せず、各調達機関に送付させた帳票類を含む関係資料を突合するなどの形式的な確認のみ行っていた。
|
|||||
抜き打ち監査 | 実施していない。 |
そして、原価監査に関する要領等についてみると、陸上自衛隊の一部の部隊、航空自衛隊、衛星センター、通信機構及び総務省において、要領等が定められていなかったり、定められていても十分なものとはなっていなかったりしていた。
このように、原価監査等は、防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省のいずれにおいても実施されていたが、その実施状況をみると、制度調査と同様に、有効に機能するものとはなっておらず、一重帳簿による工数の付替え等には対応できない状況となっていた。
ウ 三菱電機等による内部統制、各種の法令遵守等に係る施策等の実施状況
(ア) 三菱電機による施策等の実施状況
三菱電機は、5年以降に多数発覚した他社の過大請求事案を受けても、防衛省等が求める再発防止策等の周知を十分行っていなかったり、これらに対応した内部統制が十分機能するようにしていなかったり、法令遵守等に係る施策等を講じていなかったりしていた。また、本社監査部、法務部等の内部統制、コンプライアンス部門によれば、両製作所の関係者が、内部監査において、工数の付替えの事実を告げなかったこと、内部通報制度においても工数の付替えの通報がなかったことなどから、今回の両製作所における過大請求の実態に気付くことができなかったなどとしている。
(イ) 関係4社による施策等の実施状況
関係4社においては、三菱電機と同様に、不祥事事案の再発防止に重点を置いたものにとどまっていたなどのため、今回の過大請求の実態に気付くことができなかったなどとしている。
(ウ) 住友重機械等による施策等の実施状況
住友重機械等においては、三菱電機と同様に、本社の内部統制、コンプライアンス等の担当部門が過大請求の実態に気付くことができなかったなどとしている。
なお、上記アからウまでの各事態で取り上げた防衛省等における監査等の実施状況のうち、早急に改善策を講ずる必要があるものなどについては、予算の執行のより一層の適正化を図るよう、24年10月25日に、内閣総理大臣、総務大臣、防衛大臣、独立行政法人情報通信研究機構理事長及び独立行政法人宇宙航空研究開発機構理事長に対して、それぞれ会計検査院法第36条の規定により意見を表示した(前掲意見を表示し又は処置を要求した事項 5か所参照1 2 3 4 5 )。
防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省は、今回の過大請求事案に対する特別調査等を引き続き実施して、事態の全容の解明、過大請求額の算定、返還の請求等を行うとともに、防衛装備品等の調達及び人工衛星等の研究、開発等に関する予算の執行のより一層の適正化を図るよう、次の点に留意する必要がある。
ア 資料の信頼性確保に関する措置について
防衛省及び宇宙機構においては、前記のとおり、資料の信頼性確保に関する措置として関係資料の保存義務、虚偽資料に係る違約金の賦課等について契約相手方への周知は行われていたものの、現に本件過大請求事案が発生したことなどを踏まえ、信頼性確保の措置のより一層の実効性の向上に努めること。また、衛星センター、通信機構及び総務省においては、関係資料の保存義務、虚偽資料に係る違約金の賦課等の資料の信頼性確保に関する措置について、より一層の体制の整備を図ること
イ 防衛装備品等の調達及び人工衛星等の研究、開発等に関する契約に内在する課題等について
防衛装備品等の調達及び人工衛星等の研究、開発等に関する契約に内在する競争性、透明性等の確保やコスト削減へのインセンティブ、ペナルティの実効性等の課題等は、過大請求の発生リスクに影響を与えているとの認識に立って、関係機関等が連携して、引き続き調達制度等の在り方等について更なる検討を行うこと
ウ 制度調査について
(ア) 制度調査を実施する担当官が自ら調査項目等を選定して、直ちに作業員等への聴取を実施したり、適宜調査項目を変更したりするなどして、形式的な調査にならないよう留意し、契約相手方に対する牽(けん)制効果が十分に働くようにすること
(イ) 作業現場に赴いて作業実態、工数計上の手続等を実地に確認するフロアチェックを行う場合には、管理職等のみに想定される範囲内の質問をするのではなく、実際の作業員等に想定外の質問も含む質問を行うようにするなど、フロアチェックの充実・強化を図ること
(ウ) 衛星センター及び通信機構においては、制度調査を実施できるよう早急に体制の整備を図るとともに、その実施に当たっては、他の調達機関と連携を図るなどして、制度調査の充実・強化を図ること
(エ) 一重帳簿による過大請求を発見したり抑止したりするため、必要に応じて事前通告なしの抜き打ち調査等を実施するとともに、その調査手法の開発や実施体制の整備を図ること
エ 原価監査等について
(ア) 契約相手方が示す事項に対する事実確認等にとどまることなく、様々な観点からの監査及び確認を行うなどして、形式的な監査にならないよう留意し、契約相手方に対する牽制効果が十分に働くようにすること
(イ) 関係書類の照合等にとどまることなく、作業実態に関する質問を行うなどして事実の把握及び確認に努めること
(ウ) 防衛省においては、地方調達に係る原価監査等の基準を統一的に整備したり、衛星センター、通信機構及び総務省においては、原価監査等の具体的方法、内容等を定めた要領等を整備したりするなど、体制の整備を図ること
(エ) 一重帳簿による過大請求を発見したり抑止したりするため、制度調査と同様に、必要に応じて事前通告なしの抜き打ち監査等を実施するとともに、その監査手法の開発や実施体制の整備を図ること
オ 内部統制、各種の法令遵守等に係る施策等について
契約相手方に対して制度調査、原価監査等を実施するなどの際は、防衛省、宇宙機構、衛星センター、通信機構及び総務省が講じた再発防止策等についての契約相手方に対する浸透度合を確認し、また、内部統制、各種の法令遵守等に係る施策等の状況について聴取等を行うなどして、契約相手方の原価計算システムの適正性、過大請求の発生リスク等について的確に判断するとともに、必要に応じて適切な指導を行うなどして過大請求の発生リスクの低減に努めること
本院としては、内閣官房、総務省、防衛省、通信機構及び宇宙機構が今後行うこととしている損害賠償の請求、再発防止策の策定等の状況について検証等を終えるに至っていない部分があることなどから、これらを中心に引き続き検査して、検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。