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各府省等における職員の研修の実施状況等について


3 検査の状況

(1) 各府省等における研修計画の策定状況等

ア 研修計画の策定状況

一般職の国家公務員に対する研修については、国家公務員法によれば、研修は、職員に現在就いている官職又は将来就くことが見込まれる官職の職務の遂行に必要な知識及び技能を習得させ、並びに職員の能力及び資質を向上させることを目的とするものでなければならないとされており、人事院、内閣総理大臣及び関係庁の長は、職員の研修について計画を樹立し、その実施に努めなければならないとされている。そして、その研修計画は、研修の目的を達成するために必要かつ適切な職員の研修の機会が確保されるものでなければならないとされている。

一方で、研修計画の内容については、国家公務員法等に統一的な定めや運用上のルールは規定されていない。このため、各府省等における個々の研修計画をみると、研修を実施する前に策定される研修要綱等や研修を委託する際に作成される仕様書も研修計画と位置付けている場合がある。

また、特別職の国家公務員に対する研修に係る研修計画についても、関係法令等において統一的な定めや運用上のルールは規定されていない。

27年度における各府省等の研修計画の策定状況をみると、図表1-1のとおり、一般職の国家公務員を対象としたものとして473研修計画、特別職の国家公務員を対象としたものとして146研修計画、計619研修計画が策定されていた(府省等別の研修計画の策定状況(平成27年度)については、別表1参照)。

図表1-1 研修計画の策定状況(平成27年度)

(単位:研修計画)
区分 研修計画(A)  
計画等(B) 研修要綱等(C) 仕様書(D)
(B/A) (D/A)
一般職   473 271 199 3
(構成比) (100%) (57.2%) (42.0%) (0.6%)
特別職   146 119 22 5
(構成比) (100%) (81.5%) (15.0%) (3.4%)
619 390 221 8
  (構成比) (100%) (63.0%) (35.7%) (1.2%)

イ 研修計画の記載項目

研修計画の記載項目の状況をみると、図表1-2のとおり、「研修時期」については、一般職の国家公務員に対する473研修計画のうち448研修計画(473研修計画の94.7%)、特別職の国家公務員に対する146研修計画のうち145研修計画(146研修計画の99.3%)で記載されていた。また、「対象者」については、一般職の国家公務員に対する473研修計画のうち435研修計画(473研修計画の91.9%)、特別職の国家公務員に対する146研修計画のうち135研修計画(146研修計画の92.4%)で記載されていた。

図表1-2 研修計画に記載されている項目の状況(平成27年度)

(単位:研修計画)
区分 研修計画数(A) 記載項目
研修時期
(B)
対象者
(C)
研修の時間又は日数(D) 研修の目的(E) 研修実施方法・実施場所
(F)
研修実施機関(G) 研修内容、科目
(H)
対象人数
(I)
教官・講師等(J)
(B/A) (C/A) (D/A) (E/A) (F/A) (G/A) (H/A) (I/A) (J/A)
一般職   473 448 435 417 400 383 347 372 296 249
(構成比) (100%) (94.7%) (91.9%) (88.1%) (84.5%) (80.9%) (73.3%) (78.6%) (62.5%) (52.6%)
特別職   146 145 135 133 114 87 110 79 83 46
(構成比) (100%) (99.3%) (92.4%) (91.0%) (78.0%) (59.5%) (75.3%) (54.1%) (56.8%) (31.5%)
619 593 570 550 514 470 457 451 379 295
  (構成比) (100%) (95.7%) (92.0%) (88.8%) (83.0%) (75.9%) (73.8%) (72.8%) (61.2%) (47.6%)

しかし、研修計画の記載項目の内容をみると、「研修時期」については、研修実施予定月、研修実施予定日等を明示しているものが多数を占めていたものの、一般職の国家公務員に対する65研修計画(377研修)、特別職の国家公務員に対する29研修計画(86研修)では、「27年度中」、「未定」、「検討中」、空欄等、具体的な時期が明示されていないものが見受けられた。

また、「対象者」についても、「全職員(必修)」、「採用後5年以内の職員」等と対象者を具体的に明示しているものが多数を占めていたものの、一般職の国家公務員に対する62研修計画(368研修)、特別職の国家公務員に対する23研修計画(55研修)では、「未定」、空欄等、具体的な対象者が明示されていないものが見受けられた。

上記のうち、「対象者」の範囲が明確になっていないため、必修の研修とされているにもかかわらず、監督者等が受講の要否を適切に判断することが難しく、対象となるべき職員の研修の機会の確保に支障を及ぼすおそれがあるものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 研修計画等で対象者の範囲が明確になっていないもの

農林水産省は、「農林水産省職員研修要領」(平成17年16秘第602号大臣官房秘書課長通知)において省全体の研修の体系や大まかな実施方法等について規定していて、これに基づき、毎年度、研修計画を作成している。また、同要領によると、必修研修については、監督者は、対象者である職員を必ず参加させることとしている。

農村振興局の実践技術研修(地方農政局管内の国等の農業農村整備関係の業務に従事している職員を対象に、事業計画から設計・施工管理までの基礎的かつ実務的な現場業務等に関係する技術を習得させることを目的として実施する研修)については、平成27年度の研修計画で、研修の実施者とされている農村振興局長が、主に地方農政局の職員等を対象に実施することとされている。そして、農村振興局長は、各地方農政局長に対して、各地方農政局において実践技術研修を実施するよう指示していて、各地方農政局長は、各地方農政局の実情に応じて研修実施要領を作成し、当該実施要領に基づき研修を実施している。

検査したところ、中国四国、九州両農政局は、業務上必要性が高い又は重要分野であることを理由に実践技術研修の一部を必修研修として実施しているが、研修実施要領において、受講対象者を、単に「農業土木技術者」等としていて、職員がいつまでに受講すべきかの目安となる経験年数、入省年次等の具体的な範囲を記載していなかった。このため、両局において、28年3月末現在、研修内容に関連した業務に従事していて受講が必要とされているのに未受講のままとなっている職員が延べ165人(受講対象者延べ367人の44.9%)見受けられる状況となっていた。

なお、他の地方農政局における実践技術研修の研修実施要領においては、受講対象者の範囲を入省から5年目までに必ず受講することとするなどと明確に記載していた。

研修計画の記載項目のうち「研修時期」及び「対象者」については、必要かつ適切な職員の研修の機会の確保の面から可能な限り明示することが望ましい。

(2) 各府省等における研修の実施に要した経費、研修の実施状況等

ア 研修の実施に要した経費

前記のとおり、各府省等における研修の実施に要した経費は公表されていない。また、26年度までは、研修実施状況調査において内閣人事局及び人事院は関係各庁に対して研修の実施に要した経費の報告を求めていたが、関係各庁が内閣人事局及び人事院に対して報告した調査票の記載内容を確認したところ、経費を予算額や概算額で報告したとしている府省等があったため、府省等全体における研修の実施に要した経費を正確に把握できるものとはなっていなかった。

そこで、会計検査院が、研修講師や受講者の旅費、教材費・印刷製本費、研修会場の借料、留学費用、研修講師への謝金、研修施設の維持管理費等に要した経費について調書を基に集計し整理したところ、図表2-1のとおり、各府省等の27年度の研修施設の維持管理費は119億9247万余円、それ以外の経費は87億5044万余円、計207億4291万余円となっており、各府省等が保有する研修施設の維持管理費が最も多く、次いで、旅費43億9772万余円、庁費33億2820万余円等となっていた(府省等別の研修の実施に要した経費(平成27年度)については、別表2参照)。

図表2-1 研修の実施に要した経費(平成27年度)

(単位:千円)
区分 研修施設の維持管理費を除く(A)   研修施設の維持管理費(F) 計(G=A+F)
旅費(B) 庁費(C) 諸謝金(D) その他(E)
(A/G) (B/G) (C/G) (D/G) (E/G) (F/G)
一般職   7,608,448 3,825,708 2,968,563 670,960 143,215 5,983,273 13,591,722
(構成比) (55.9%) (28.1%) (21.8%) (4.9%) (1.0%) (44.0%) (100%)
特別職   1,141,996 572,015 359,645 210,335 - 6,009,201 7,151,197
(構成比) (15.9%) (7.9%) (5.0%) (2.9%) (-) (84.0%) (100%)
8,750,445 4,397,724 3,328,209 881,296 143,215 11,992,474 20,742,919
  (構成比) (42.1%) (21.2%) (16.0%) (4.2%) (0.6%) (57.8%) (100%)
注(1)
旅費には、職員旅費のほか、留学旅費及び講師旅費が含まれている。
注(2)
庁費は、備品費、消耗品費、印刷製本費、会場借料、雑役務費等のうち、研修に要した経費を集計したものである。なお、後述する委託研修に要した経費は、主に庁費に含まれている。
注(3)
その他は、旅費、庁費及び諸謝金以外の経費を集計したものである。
注(4)
研修とそれ以外の業務における経費を合理的な方法により案分できないものも含まれている。

また、研修業務に従事する職員に係る人件費相当額については、研修業務に従事している職員に併任や兼務の職員がいて、全て把握することが困難なため、27年度末の研修施設において研修業務に専ら従事している職員の数(1,197人)に、人事院の「平成27年国家公務員給与等実態調査報告書」(以下「調査報告書」という。)に記載されている一般職の国家公務員の全俸給表の平均給与月額(平均年齢43.3歳)を基に会計検査院が算出した年間給与額(注9)(6,704,925円)を乗じて機械的に試算すると、その額は約80億円となる。

(注9)
会計検査院が算出した年間給与額  次の算式を用いて算出している。なお、16.1月は、月例給支給月数12月と期末勤勉手当支給月数4.1月を合計したものである。
年間給与額(円)=平均給与月額(416,455円)×月数(16.1月)

さらに、Off-JTは、受講者が執務から離れて研修を受講するものであることから、Off-JTの受講者に係る人件費相当額について、仮に27年度の20時間以上の研修を受けた受講者数80,682人の受講時間13,538,881時間に、調査報告書の全俸給表の平均給与月額を基に会計検査院が算出した時間単価(注10)(2,273円)を乗じて機械的に試算すると、その額は約307億円となる。

(注10)
会計検査院が算出した時間単価  次の算式を用いて算出している。このうち、俸給は、調査報告書記載の平均給与月額のうちの俸給(民間の基本給に相当)の月額を用いており、俸給の調整額等を含む。また、地域手当等は、平均給与月額のうちの地域手当等の月額を用いている。なお、地域手当は、民間の賃金水準が高い地域に在勤する職員に支給される手当である。

数式 画像

このように、研修の実施には、研修施設の維持管理費や旅費等の経費を要しており、また、機械的な試算ではあるが、研修業務に従事する職員に係る人件費相当額や受講者の研修時間に係る機会費用が生じていることも踏まえると、各府省等は、研修に対するコスト意識を高めつつ、職員の能力や資質を向上するために効果的な研修の実施に努めることにより、予算の効率的執行につなげることが必要である。

イ OJTの実施状況等

前記のとおり、基本方針によれば、OJTは、職場の監督者等によって日常的に行われるものであり、組織の一員として必要な知識・技能・心構え等を習得させる中核的な研修とされている。また、人材育成を効果的に行うためには、職務付与(官職への任用、具体的な仕事の割振り等)、OJT、Off-JTを相互に効果的に組み合わせることが重要であり、研修の企画・運営においても、このことが意識される必要があるとされている。そして、OJTをより効率的かつ効果的に実施していくため、関係各庁は、職員の監督者に対して、職員に対するOJTを適時にかつ効果的に行う必要があることを日常的に意識させ、実行させるなどの措置を講ずることとされている。

そして、一般職及び特別職の国家公務員について、OJTを府省等全体で計画的に実施する体制となっているかについてみると、公正取引委員会、国税庁及び特許庁(以下、これらを「3庁等」という。)は、それぞれの人材育成制度に基づき、委員会や庁全体としてOJTを計画的に取り組むこととしていた。

その内容をみると、3庁等においては、いずれも新規採用者を育成対象者として、採用後に配属された部署等の監督者が指定する育成指導者によって、育成の目標を設定した上で、採用から一定期間を通じて継続的に指導を実施し、所属組織の職員に求められる職務遂行能力を育成していくこととしている。そして、3庁等においては、OJTのためのマニュアル等を育成指導者に配布したり、育成指導者等に対するOJTのための研修を実施したりするとともに、会議等により育成指導者間で育成に関する情報交換を行わせたり、育成指導者に育成対象者と面談等を行わせ、育成対象者の目標の達成状況や自己評価を考慮して今後の指導内容及び指導方針を決定させたり、OJTによる部下職員の指導・育成を育成指導者の業績目標に設定させ育成指導者の上司に指導状況を評価させたりするなど、新規採用者に対するOJTを組織的・計画的に実施する体制が整備されていた。

一方、3庁等以外の府省等においては、OJTを府省等全体で計画的に実施する取組は行われていなかった。

府省等全体で計画的にOJTを実施しているものについて、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例1> 府省等全体で計画的にOJTを実施しているもの

国税庁では、若手職員を円滑かつ効果的に育成するために、組織全体として人材育成に取り組むことが重要であるとして、若手職員の指導育成に当たっての基本方針を策定している。指導育成の対象となる若手職員については、調査・徴収の事務経験が3年に達するまでの職員を基本としている。

そして、各国税局等においては、同方針に基づき、若手職員の計画的かつ継続的な指導育成に取り組めるよう、OJTの実施要領等を定めた指導育成プログラムを策定し、同プログラムに沿って、指導者は、若手職員が従事する調査・徴収事務等の職務に応じたOJTを実施している。

具体的には、各国税局等において従事事務区分別の習得項目や時期を示したスキルアップモデル等を作成し、指導者は、スキルアップモデル等の項目が記載されたチェックシートを若手職員に定期的に作成させ、習得度の判定をするとともに、若手職員が指導を希望する項目を聴取し、今後の指導内容、指導方針等について、チェックシートへの記載等により決定していくこととし、若手職員の育成段階に応じたOJTを実施している。

ウ Off-JTの実施状況等

(ア) Off-JTの実施状況

一般職の国家公務員に対する研修については、前記のとおり、基本方針によれば、内閣人事局及び関係各庁は、OJTを補完する観点からOff-JTを充実させていく必要があるとされていて、Off-JTは、集中的、体系的な知識・技能の習得、深い思考や気付き、職場外の者から受ける刺激など、OJTでは得られにくい能力・資質の向上を図るものとされている。また、規則10-14によれば、人事院は、国民全体の奉仕者としての使命と職責に関する職員の自覚が高められるよう留意してOff-JTを実施することとされている。

一方、特別職の国家公務員に対する研修については、Off-JTの実施に関して、統一的な留意点を定めたものはない。

25年度から27年度までの間におけるOff-JTの研修数及び受講者数をみると、図表2-2のとおりとなっていて、27年度については、一般職の国家公務員に対する研修は18,435研修、受講者数は761,892人、特別職の国家公務員に対する研修は817研修、受講者数は17,526人となっていた(府省等別の研修実施体制等については、別表3参照)。

図表2-2 Off-JTの研修数及び受講者数(平成25年度~27年度)

(単位:研修、人)
区分 平成25年度 26年度 27年度
研修数 受講者数 研修数 受講者数 研修数 受講者数
一般職 14,798 541,662 18,950 688,555 18,435 761,892
特別職 811 15,030 876 15,008 817 17,526
15,609 556,692 19,826 703,563 19,252 779,418

25年度から27年度までの間に実施されたOff-JTの実施状況について、20時間以上の研修と20時間未満の研修に区分すると、図表2-3のとおり、一般職の国家公務員に対する20時間未満の研修の受講者数は、26年度において622,560人となっていて、25年度の479,618人に比べて増加していた。これは、厚生労働省が職員監理・職務規律等の倫理研修を地方支分部局を含めて同省全体で多数実施したため受講者が増加したことが主な要因となっている。

また、特別職の国家公務員に対する20時間未満の研修の研修数は27年度において430研修となっていて26年度の460研修に比べて減少しているが、受講者数は26年度の5,582人と比べて27年度は7,595人に増加していた。これは、27年度に発足した防衛装備庁が全職員向けにコンプライアンス研修を実施したことが主な要因となっている。

図表2-3 20時間以上の研修と20時間未満の研修の研修数及び受講者数の推移(平成25年度~27年度)

(単位:研修、人)
区分 平成25年度 26年度 27年度
研修数 受講者数 研修数 受講者数 研修数 受講者数 研修数 受講者数
一般職 20時間以上の研修 2,680 62,044 2,702 65,995 2,694 70,751 8,076 198,790
20時間未満の研修 12,118 479,618 16,248 622,560 15,741 691,141 44,107 1,793,319
特別職 20時間以上の研修 406 9,723 416 9,426 387 9,931 1,209 29,080
20時間未満の研修 405 5,307 460 5,582 430 7,595 1,295 18,484
20時間以上の研修 3,086 71,767 3,118 75,421 3,081 80,682 9,285 227,870
20時間未満の研修 12,523 484,925 16,708 628,142 16,171 698,736 45,402 1,811,803

そして、25年度から27年度までの間に実施された20時間以上の研修計9,285研修について、各年度における各研修の受講者数の分布状況をみると、図表2-4のとおり、各年度とも10人未満の研修が全体の40%以上を占めていた。また、各年度とも50人以上の研修が全体の10%前後となっていた。

図表2-4 各研修の受講者数の分布状況(平成25年度~27年度、20時間以上の研修)

図表2-4 各研修の受講者数の分布状況(平成25年度~27年度、20時間以上の研修) 画像

また、各年度における各研修の受講時間の分布状況をみると、図表2-5のとおり、各年度とも1週間未満の研修が全体の50%前後を占めていた。

図表2-5 各研修の受講時間の分布状況(平成25年度~27年度、20時間以上の研修)

図表2-5 各研修の受講時間の分布状況(平成25年度~27年度、20時間以上の研修) 画像

(イ) 全府省研修及び自府省研修の実施状況

Off-JTを受講対象者の範囲別に分類すると、図表2-6のとおり、政策立案・実施や政策評価、組織の内部管理等のような政府全体に共通する事務処理の向上等を図るために全府省等の職員を対象として実施する研修(以下「全府省研修」という。)と各府省等が所属職員の育成のためにその所属職員を対象として実施する研修(以下「自府省研修」という。)がある。

図表2-6 Off-JTの受講対象者の範囲別の分類

図表2-6 Off-JTの受講対象者の範囲別の分類 画像

26年5月の国家公務員法の改正により、一般職の国家公務員に対する研修について、関係各庁は、所属職員に対する研修だけではなく、他の行政機関の職員を対象とする知識及び技能の付与の観点からも研修の実施に努めることが法律上明記された。また、基本方針においても、内閣人事局及び関係各庁は、所属職員に対する研修だけではなく、他府省等の職員も対象とする研修について、相互に連携・協力することにより、政府全体を通じて体系的で効果的な研修が実施されるよう努めることとされている。

一方、特別職の国家公務員に対する研修については、所属職員に対する研修だけではなく、他府省等の職員も対象とする研修について、相互に連携・協力することを定めたものはない。

25年度から27年度までの間に実施された一般職及び特別職の国家公務員に対する全府省研修の研修数及び受講者数をみると、図表2-7のとおり、研修数は、25年度270研修、26年度283研修、27年度279研修となっていた。そして、受講者数は、25年度22,660人、26年度45,235人、27年度81,694人となっていて、内閣人事局が人事評価の公正な実施を確保するために実施している評価者講座(eラーニング)の受講者数が増えたことなどから、26年度から27年度にかけて大幅に増加していた。

図表2-7 全府省研修の研修数及び受講者数の推移(平成25年度~27年度)

(単位:研修、人)
区分 平成25年度 26年度 27年度
研修数 受講者数 研修数 受講者数 研修数 受講者数
一般職 255 22,253 267 44,877 266 81,333
特別職 15 407 16 358 13 361
270 22,660 283 45,235 279 81,694

また、25年度から27年度までの間に実施された府省等別の全府省研修の実施状況をみると、図表2-8のとおり、12府省等が全府省研修を実施していた。

このうち、国家公務員法に基づいて全府省研修を実施することとされている内閣人事局及び人事院の研修の実施状況をみると、国家公務員合同初任研修を共催しているほか、内閣人事局は、26年度以降、それまで総務省人事・恩給局で実施していた官民合同セミナー、新任管理者セミナー等、計15研修を引き継いで実施していたり、管理職員に求められる政策の企画立案及び業務の管理に係る能力の育成を図るための幹部候補育成課程中央研修等を新たに実施したりしていて、26、27両年度とも23研修実施していた。また、人事院は、行政研修や各府省の地方機関の実情を踏まえつつ、役職段階別に求められる資質・能力を向上させるとともに、国民全体の奉仕者としての意識の徹底を図ることを目的とする地方機関職員研修等を実施していて、25年度から27年度までの間において各年度140研修程度実施していた。

図表2-8 府省等別の全府省研修の研修数の推移(平成25年度~27年度)

(単位:研修)
府省等名 平成25年度 26年度 27年度
内閣官房 1 24 24
うち内閣人事局
- 23 23
人事院 136 145 142
内閣官房及び人事院(注) 1 1 1
138 170 167
国立国会図書館 13 14 11
内閣府 9 10 10
総務省 63 39 43
法務省 2 2 2
外務省 4 4 4
財務省 4 7 7
文部科学省 2 2 2
国土交通省 1 1 1
環境省 31 31 29
防衛省 2 2 2
会計検査院 1 1 1
132 113 112
合計 270 283 279
(注)
内閣人事局及び人事院(平成26年度以前は人事院及び総務省)の共催により毎年度実施している国家公務員合同初任研修である。

また、25年度から27年度までの間に実施された全府省研修の中には、自府省研修から全府省研修に変更していたものが1研修見受けられた。

この研修について、事例として示すと次のとおりである。

<参考事例2> 自府省研修から全府省研修に変更して、他府省等の職員も幅広く受講させて実施しているもの

内閣府は、平成24年度以降、毎年度、広報実施業務の一環として、広報担当職員等の広報マインドを醸成したり、広報に関する知識を深めたりすることなどを目的とした「広報スキルアップ研修」を実施している。

内閣府は、同研修の実施初年度である24年度は同府の職員のみを対象として研修を実施していたが、広報マインドを醸成したり、広報に関する知識を深めたりすることは他省等においても重要であるとして、25年度以降は全府省等の職員を対象として研修を実施していて、27年度は他省等から271人が同研修に参加していた。

そして、全府省研修の実施時期や研修内容等については、研修を実施する府省等から、参加実績のある府省等に対して受講者の推薦を依頼したり、関係各庁の研修担当官が出席する研修連絡会議で情報提供したりすることにより、参加者を募っている。また、各府省研修概況等には、関係各庁へ情報提供の一環として、全府省研修一覧(20時間以上)が記載されている。

一方、全府省研修とは別に、各府省等は、研修の目的や内容が所属職員の育成のためのものであっても、他府省等においても必要となる専門的知識や技能の付与が含まれるなどの場合に、自府省研修であるが、所属職員だけではなく他府省等の職員も受講対象としているものがある。

例えば、農林水産省においては酪農を取り巻く諸状況の認識を目的とした畜産技術に関する研修、経済産業省においては「エネルギー使用の合理化等に関する法律」(昭和54年法律第49号)の執行業務を行う職員が規制対象事業者の指導・監督を行うために必要な専門知識等を修得し業務の円滑な遂行に資することを目的とした省エネルギー政策に関する研修、国土交通省においては官公庁の営繕行政に関する総合的な知識の修得や施策の企画・立案能力等の向上を目的とした官庁営繕に関する研修について、他府省等の職員も受講対象としている。

そこで、25年度から27年度までの間に各府省等が実施する自府省研修のうち、実際に他府省等の職員が受講している研修数をみると、図表2-9のとおり、一般職の国家公務員に対する研修の研修数は、25年度の152研修から27年度の173研修となっていた。そして、他府省等の職員の受講者数は、25年度の797人から27年度の994人となっていた。

また、特別職の国家公務員に対する研修の研修数は、25年度の4研修から27年度の6研修、受講者数は25年度の50人から27年度の42人となっていた。

図表2-9 自府省研修の研修数等の推移(平成25年度~27年度)

(単位:研修、人)
区分 平成25年度 26年度 27年度
自府省研修 受講者数 うち他府省等の職員が受講しているもの 自府省研修 受講者数 うち他府省等の職員が受講しているもの 自府省研修 受講者数 うち他府省等の職員が受講しているもの
    研修数 他府省等の受講者数     研修数 他府省等の受講者数     研修数 他府省等の受講者数
一般職 14,543 519,409 152 797 18,683 643,678 166 1,189 18,169 680,559 173 994
特別職 796 14,623 4 50 860 14,650 9 72 804 17,165 6 42
15,339 534,032 156 847 19,543 658,328 175 1,261 18,973 697,724 179 1,036

27年度に他府省等の職員が受講している179研修のうち20時間以上の研修125研修について、各府省等への情報提供の状況をみると、当該研修を実施する研修施設等のホームページで情報提供しているものが72研修、過去に受講した実績のある一部の府省等へ個別に情報提供しているものが53研修となっていて、研修連絡会議等で研修の実施時期や研修内容等の情報提供がされている全府省研修と異なり、他府省等の職員に対して受講対象としている研修について十分に情報提供されていない状況が見受けられた。

また、各府省等は、他府省等の職員を受講対象としていない研修について、自府省等において必要と思われる知識や技術を習得することを最優先にしていたり、他府省等のニーズはないと考えていたりなどしているため、他府省等の職員を受講対象としていないとしていた。

各府省等は、他府省等の職員も受講対象としている研修について、他府省等の職員を更に追加して受講させたとしても業務の遂行上問題がないと認められる場合には、過去に受講した実績のない府省等に対しても情報提供することを検討したり、他府省等の職員を受講対象としていない研修について、相互に情報提供を行い、研修の目的や内容が、他府省等においても必要となる専門的知識や技能の付与が含まれるなど、他府省等のニーズがある場合には、他府省等の職員も受講対象として実施することを検討したりなどする必要がある。

(ウ) 全府省研修及び自府省研修における派遣研修の実施状況等

各府省等における派遣研修は、海外の大学院等に派遣する在外研修と国内の大学院等に派遣する国内研修とに分かれていて、全府省研修及び自府省研修において実施されている。

国家公務員の留学費用の償還に関する法律(平成18年法律第70号。以下「償還法」という。)によれば、裁判所職員及び防衛省の特別職の職員を含む国家公務員は、留学中又は留学終了後の在職期間が5年に達するまでの期間に離職した場合には、留学費用相当額の全部又は一部を償還しなければならないこととされている。

そして、内閣人事局及び人事院は、毎年度、上記国家公務員の留学費用の償還等に関する状況を調査している(以下、この調査を「留学費用償還状況調査」という。)。留学費用償還状況調査によると、25年度から27年度までの間の在外研修又は国内研修の年度別の留学開始人数は、償還法の対象となっていない国会職員を除いて、25年度は391人(在外研修231人、国内研修160人)、26年度は386人(同230人、同156人)、27年度は417人(同243人、同174人)となっている。

また、国会職員については、国会職員法に基づき、償還法に規定する職員の例によることとなっている。国会職員における27年度の留学開始人数は、衆議院は5人(在外研修3人、国内研修2人)、参議院は2人(同1人、同1人)、国立国会図書館は1人(同1人、同0人)の計8人となっている。

27年度に在外研修又は国内研修のために留学を開始した者を府省等別にみると、図表2-10のとおり、在外研修は248人、国内研修は177人となっていた。

図表2-10 平成27年度に留学を開始した者の府省等別の状況

(単位:人)
区分 衆議院 参議院 国立国会図書館 最高裁判所 人事院 内閣府 公正取引委員会 警察庁 金融庁 総務省 法務省 外務省 財務省 国税庁 文部科学省 厚生労働省 農林水産省 経済産業省 特許庁 国土交通省 海上保安庁 環境省 原子力規制委員会 防衛省 会計検査院
在外研修 3 1 1 10 1 2 3 8 12 10 10 56 25 3 10 8 8 29 5 19 0 5 0 17 2 248
国内研修 2 1 0 0 0 0 1 1 4 2 0 0 16 8 2 0 1 2 0 2 4 1 3 124 3 177
5 2 1 10 1 2 4 9 16 12 10 56 41 11 12 8 9 31 5 21 4 6 3 141 5 425

留学費用償還状況調査によると、償還法が制定された18年から27年度までの間に留学を開始した者は計3,816人となっていて、このうち留学中又は留学終了後の在職期間が5年に達するまでの期間に離職した者(以下「償還義務者」という。)の計133人について、各府省等は、償還義務が発生した場合、償還法に基づいて償還義務者の償還金額を算出し、償還計画を作成するなどして適切に債権の管理を行っているとしている。そして、27年度末時点では、償還計画に基づいて償還義務者のうち117人は留学費用の償還が終了しており、償還中の16人の償還状況は、図表2-11のとおり、償還義務額が64,233,767円で、償還残額が41,633,893円となっていた。また、国会職員について、27年度末時点での償還中の者はいない。

図表2-11 平成27年度末時点での償還状況

(単位:円)
区分 償還義務額 償還済額 償還残額
在外研修 56,422,909 22,599,874 33,823,035
国内研修 7,810,858 0 7,810,858
64,233,767 22,599,874 41,633,893
(エ) 委託研修の実施状況

Off-JTには、図表2-12のとおり、各府省等が自ら実施する研修のほかに、専門教育機関等に委託して行う研修(以下「委託研修」という。)がある。

図表2-12 Off-JTの実施形態別の分類

図表2-12 Off-JTの実施形態別の分類 画像

27年度の一般職の国家公務員に対する18,434研修のうち、委託研修は1,220研修となっていて、主な研修として語学研修や情報処理研修がある。また、27年度の特別職の国家公務員に対する817研修のうち、委託研修は361研修となっていて、主な研修として情報処理研修がある。

そして、27年度に実施した一般職の国家公務員に対する委託研修に要した経費(注11)は、計9億0866万余円、特別職の国家公務員に対する委託研修に要した経費は、計1億6481万余円となっていた。

(注11)
委託研修に要した経費  民間企業等に一括して委託して実施した研修に要した経費。自ら実施する研修の一部カリキュラムを委託したものに要した経費は除外している。

また、委託した主な理由をみると、図表2-13のとおり、一般職の国家公務員に対する研修においては、自ら実施することが困難であったためとしているものが764研修(1,220研修の62.6%)、委託研修として継続して実施してきたためとしているものが260研修(委託研修に要した経費計8311万余円、1,220研修の21.3%)、特別職の国家公務員に対する研修においては、自ら実施することが困難であったためとしているものが220研修(361研修の60.9%)、委託研修として継続して実施してきたためとしているものが95研修(委託研修に要した経費計1071万余円、361研修の26.3%)等となっていた。

図表2-13 委託した主な理由(平成27年度)

(単位:研修)
区分 研修数(A) 委託した主な理由
自ら実施することが困難であったため(B) 委託研修として継続して実施してきたため(C) 民間企業等に研修を委託することにより、自府省で主催するよりも経費がかからないなどのため(D) その他(E)
(B/A) (C/A) (D/A) (E/A)
一般職   1,220 764 260 19 177
  (構成比) (100%) (62.6%) (21.3%) (1.5%) (14.5%)
特別職   361 220 95 9 37
  (構成比) (100%) (60.9%) (26.3%) (2.4%) (10.2%)
1,581 984 355 28 214
  (構成比) (100%) (62.2%) (22.4%) (1.7%) (13.5%)

研修を委託した主な理由を、委託研修として継続して実施してきたこととしている研修については、今後、研修の実施に当たり、研修の効果に照らして経済性を十分考慮して委託研修として継続するかどうか検討する必要がある。

委託研修の実施に当たり、委託研修として継続して実施するかどうか検討したものについて、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例3> 委託研修の実施に当たり、委託研修として継続して実施するかどうか検討したもの

参議院は、平成27年度に、一般財団法人日本人事行政研究所が主催する有償の「服務・懲戒実務研修会」に委託研修として職員を派遣して、国家公務員の職務に専念する義務、懲戒制度の理論と手続等に係る研修を受講させている。

一方、関係各庁は、国家公務員の職務に専念する義務等について人事院が主催する一般職の国家公務員を対象とした無償の「本府省職員を対象とする勤務時間制度及び服務・懲戒制度等の説明会」(以下「説明会」という。)に職員を派遣している。

人事院によれば、説明会は、一般職の国家公務員の制度に関するものであるが、特別職の国家公務員についても希望があり、かつ、説明会の会場のスペースに余裕がある場合には受講することは可能であるとしていることから、参議院は、人事院から説明会に関する情報を入手し、委託研修として継続するかを検討し、従来の委託研修に代わって、28年度は説明会に職員を派遣した。

(オ) eラーニング研修の実施状況

25年度から27年度までの間に実施されたeラーニング研修の実施状況をみると、図表2-14のとおり、25年度は68研修、受講者数66,584人、26年度は80研修、受講者数77,051人、27年度は79研修、受講者数116,532人となっていて、受講者数は年々増加傾向にある。特に、26年度から27年度にかけて大幅に増加した主な理由は、内閣人事局で実施している人事評価(評価者向け)の研修対象者が本府省課室長相当職以上の職員から全評価者に拡大されたことによるものである。

図表2-14 eラーニング研修の実施状況の推移(平成25年度~27年度)

(単位:研修、人)
区分 平成25年度 26年度 27年度
研修数 受講者数 研修数 受講者数 研修数 受講者数
一般職 64 66,439 74 76,854 75 116,393
特別職 4 145 6 197 4 139
68 66,584 80 77,051 79 116,532

上記eラーニング研修の実施状況について全府省研修及び自府省研修別にみると、図表2-15のとおり、全府省研修のeラーニング研修は、総務省の情報システム統一研修、内閣人事局の人事評価(評価者向け)やメンタルヘルス等の研修の実施により27年度の受講者数は増加しているものの、自府省研修におけるeラーニング研修の推移は、ほぼ横ばいの状況となっている。

図表2-15 eラ―ニング研修の実施形態別の推移(平成25年度~27年度)

(単位:府省等、研修、人)
  平成25年度 26年度 27年度
区分 府省等数 研修数 受講者数 府省等数 研修数 受講者数 府省等数 研修数 受講者数
全府省研修 17 8 12,623 17 8 18,116 17 9 54,091
自府省研修 13 60 53,961 13 72 58,935 13 70 62,441
68 66,584 80 77,051 79 116,532

自府省研修におけるeラーニング研修の導入が進んでいない理由について、各府省等は、eラーニング研修の効果は集合研修に比べて限定的であり、別途経費を要してまで実施する必要がないとしていたり、単に教材を使用するだけでは研修の効果が把握できず、対話型の研修の方がより研修の効果が高いとしていたりなどしている。

そのため、eラーニング研修に加えて、集合研修も実施するようにしている府省等も見受けられた。

また、25年度から27年度までの間に実施された自府省研修におけるeラーニング研修の形態別の実施状況をみると、図表2-16のとおりである。

27年度におけるeラーニング研修の形態別の実施状況は、民間企業等に委託してeラーニングシステムを利用しているものが9府省等で19研修、受講者数25,405人となっていて、研修内容は、語学や資格等の専門知識の習得のために実施していたり、多数の職員を対象とした情報セキュリティ研修を実施したりしているものが多く、各府省等において研修の実施を担当している部局等(以下「研修実施部局」という。)は、研修の効果測定等について民間企業等から報告を受けている。

また、自府省等でeラーニングシステムの開発、改良等により構築し実施しているものが、7府省等で25研修、受講者数25,882人となっていて、研修内容は、多数の職員を対象とした情報セキュリティ研修を実施したり、集合研修の予習的な研修を実施したりなどしているものが多く、研修実施部局は、eラーニングシステム上で研修の効果測定等を確認している。

一方、研修教材を府省等内ホームページ等に掲載して職員の自席等で研修を受講するものが、6府省等で26研修、受講者数11,154人となっていて、研修内容は、セキュリティや倫理研修等で一度に多数の受講者を研修に参加させることができ、研修実施部局は、研修に要する経費を抑えているものの、府省等内ホームページ等で研修の効果測定等を実施することがシステム上で困難なため、受講者からのアンケートを回収するなどして確認しなければ把握できない体制となっているものが多い。

図表2-16 eラーニング研修の形態別の実施状況(平成25年度~27年度)

(単位:府省等、研修、人)
区分 eラーニング研修の形態 平成25年度 26年度 27年度
府省等数 研修数 受講者数 府省等数 研修数 受講者数 府省等数 研修数 受講者数
自府省研修 民間企業等のeラーニングシステムを利用しているもの 9 20 27,169 9 19 25,392 9 19 25,405
自府省等においてeラーニングシステムを構築しているもの 7 17 19,063 7 26 22,551 7 25 25,882
研修教材を府省等内ホームページ等に掲載しているもの 6 23 7,729 6 27 10,992 6 26 11,154

また、25年度から27年度までの間に実施された自府省研修におけるeラーニング研修の1研修当たりの平均受講者数をみると、図表2-17のとおりとなっていて、27年度におけるeラーニング研修の1研修当たりの平均受講者数は、民間企業等のeラーニングシステムを利用しているものが1,337人、自府省等においてeラーニングシステムを開発、改良等して構築しているものが1,035人、研修教材を府省等内ホームページ等に掲載して職員の自席等で研修を受講するものが429人となっていて、eラーニング研修以外の他の研修に係る1研修当たりの平均受講者数33人と比べて多くなっている。

図表2-17 自府省研修におけるeラーニング研修の1研修当たりの平均受講者数(平成25年度~27年度)

(単位:人)
区分 eラーニング研修の形態 平成25年度 26年度 27年度
自府省研修 民間企業等のeラーニングシステムを利用しているもの 1,358 1,336 1,337
自府省等においてeラーニングシステムを構築しているもの 1,121 867 1,035
研修教材を府省等内ホームページ等に掲載しているもの 336 407 429

また、27年度におけるeラーニング研修のうち1研修当たり受講者数の多い上位5研修についてみると、農林水産省の情報セキュリティ対策研修21,702人、厚生労働省の共働支援システム内オンライン自習室10,867人、経済産業省の服務規律研修9,507人、環境省の情報セキュリティ研修2,549人、内閣府の倫理研修1,704人となっている。

このことから、eラーニング研修については、研修の効果は集合研修と比べて限定的であるなどとしている省庁等があるものの、一度に多くの受講者に研修の機会を確保でき、また、一定の期間内に同一内容の研修を実施できるという特徴もあることから、研修の効果に留意しつつ、上記の特徴を生かしながら活用していく必要がある。

(3) 各府省等の研修に係る評価、改善の状況等

ア 研修に係る評価の状況

基本方針によれば、内閣人事局及び関係各庁は、Off-JTの企画・運営を行うに当たって、不断の情報収集により研修ニーズの把握に努め、適時に適切な内容がカリキュラムに盛り込まれるようにすること、研修効果を高める観点から、研修対象者の参加意欲や学習意欲を引き出す工夫を行うこと、研修効果を把握し研修内容の改善に努めることなどを重視することとされている。

特に、Off-JTについては、職員に日常の執務を離れて受講させるものであることから、各府省等は、職員が知識及び技能を習得できたか、職員の能力及び資質は向上したかなど、研修に係る評価として効果測定や受講者に対するアンケート等による研修内容に関する評価を実施し、これらの結果を把握して研修内容の改善につなげていく必要がある。

(ア) 効果測定の実施状況

研修効果を把握するための効果測定には、研修実施部局が受講者に対して試験を行ったり、論文やレポートを提出させたり、研修中の受講者の行動を観察して評定したり、受講者同士でグループ討議をさせる検討会・反省会によって評価したりするなど様々な方法がある。

そこで、各府省等が27年度に実施した20時間以上の研修における効果測定の実施状況をみると、図表3-1のとおり、3,081研修のうち2,696研修(3,081研修の87.5%)では効果測定を実施していて、一般職の国家公務員に対する研修では2,694研修のうち2,354研修(2,694研修の87.3%)、特別職の国家公務員に対する研修では387研修のうち342研修(387研修の88.3%)で、それぞれ効果測定が実施されていた。上記2,696研修の効果測定の実施方法は、論文・レポートによるものが1,029研修(2,696研修の38.1%)、検討会・反省会によるものが802研修(同29.7%)、試験によるものが594研修(同22.0%)等となっていた。その他の実施方法によるとしている535研修(同19.8%)における効果測定の実施方法は、ヒアリング、自己採点、研修成果発表会、所属長への報告及び所属課での研修成果の共有、研修日誌の提出等、研修内容に応じた多種多様なものとなっていた。

一方、一般職の国家公務員に対する340研修(2,694研修の12.6%)、特別職の国家公務員に対する45研修(387研修の11.6%)で効果測定が実施されておらず、各府省等は、効果測定を実施していない理由について、研修内容が実務能力の向上を目的としており業務において効果を把握できるためとしていたり、新採用職員研修等の研修内容が効果測定になじまないものであるためとしていたりしてい
た(府省等別の効果測定の実施状況(平成27年度、20時間以上の研修)については、別表4参照)。

図表3-1 効果測定の実施状況(平成27年度、20時間以上の研修)

(単位:研修)
区分 研修数
(A)
効果測定の実施状況
効果測定を実施しているもの(B) 効果測定を実施していないもの(H)
  実施方法
論文・レポート(C) 検討会・反省会(D) 試験(E) 観察評定(F) その他(G)
(B/A) (C/B) (D/B) (E/B) (F/B) (G/B) (H/A)
一般職   2,694 2,354 930 753 543 439 353 340
  (構成比) (100%) (87.3%) (39.5%) (31.9%) (23.0%) (18.6%) (14.9%) (12.6%)
特別職   387 342 99 49 51 43 182 45
  (構成比) (100%) (88.3%) (28.9%) (14.3%) (14.9%) (12.5%) (53.2%) (11.6%)
3,081 2,696 1,029 802 594 482 535 385
  (構成比) (100%) (87.5%) (38.1%) (29.7%) (22.0%) (17.8%) (19.8%) (12.4%)
(注)
効果測定の実施方法として複数の方法を採った場合には、それぞれの件数を計上している。

また、各府省等が27年度に実施した20時間以上のOff-JTについて実施形態別に効果測定の実施状況をみると、図表3-2のとおり、計3,081研修のうち府省等が自ら実施する研修2,507研修では、効果測定を実施しているものが2,171研修(2,507研修の86.5%)となっており、委託研修574研修では、効果測定を実施しているものが525研修(574研修の91.4%)となっていた。

図表3-2 効果測定の実施形態別の実施状況(平成27年度、20時間以上の研修)

(単位:研修)
区分 研修数
(A)
効果測定の実施状況
効果測定を実施しているもの(B) 効果測定を実施していないもの(C)
(B/A) (C/A)
一般職 自ら実施する研修 2,235 1,937 298
  (構成比) (100%) (86.6%) (13.3%)
委託研修 459 417 42
  (構成比) (100%) (90.8%) (9.1%)
特別職 自ら実施する研修 272 234 38
  (構成比) (100%) (86.0%) (13.9%)
委託研修 115 108 7
  (構成比) (100%) (93.9%) (6.0%)
  3,081 2,696 385
自ら実施する研修 2,507 2,171 336
  (構成比) (100%) (86.5%) (13.4%)
委託研修 574 525 49
  (構成比) (100%) (91.4%) (8.5%)
(イ) 職員が他府省等の研修に参加した場合の効果測定の結果の把握状況

27年度に各府省等の職員が他府省等で実施している20時間以上の研修に参加した場合の効果測定の結果の把握状況をみると、研修実施部局において効果測定を実施している延べ研修数は、図表3-3のとおり、1,198研修となっているが、各府省等において、他府省等の研修実施部局等から効果測定の結果に関する報告を受けていないとしているものは、590研修(1,198研修の49.2%)となっていて、各府省等は、当該研修に所属職員を受講させているものの、当該研修において実施された効果測定の結果を把握しておらず、その研修の効果を十分に把握していない状況となっていた。

図表3-3 他府省等の研修に参加した場合の効果測定の結果の把握状況(平成27年度、20時間以上の研修)

(単位:研修)
区分 研修数
(A)
効果測定の実施状況
効果測定を実施しているもの(B) 効果測定を実施していないもの(D)
  左のうち他府省等から報告を受けていないもの(C)
(B/A) (C/B) (D/A)
一般職   1,050 1,020 513 30
  (構成比) (100%) (97.1%) (50.2%) (2.8%)
特別職   205 178 77 27
  (構成比) (100%) (86.8%) (43.2%) (13.1%)
1,255 1,198 590 57
  (構成比) (100%) (95.4%) (49.2%) (4.5%)
(注)
一つの研修に複数の府省等の職員が受講している研修があるため、その場合の研修数は重複している。

このように、各府省等の職員が他府省等で実施している研修に参加している場合、各府省等における効果測定の結果の把握については、各府省等間の相互の連携・協力が十分に行われていない状況となっていた。

(ウ) 研修内容に関する評価の実施状況

研修実施部局は、研修講師や受講者の意見、要望等を把握することで、初めて研修内容の改善が可能となることから、アンケートやヒアリング等により研修内容に関する評価を実施して、研修ニーズや改善すべき事項を適時適切に把握することが必要となる。

そこで、各府省等が27年度に実施したOff-JTのうち、20時間以上の研修の研修内容に関する評価の実施状況をみると、図表3-4のとおり、3,081研修のうち2,816研修(3,081研修の91.3%)では研修内容に関する評価を実施しており、研修内容に関する評価の実施方法は、受講者に対してアンケートを実施しているものが2,272研修(2,816研修の80.6%)、受講者に対してヒアリングを実施しているものが401研修(同14.2%)等となっていた。

一方、265研修(3,081研修の8.6%)では研修内容に関する評価を実施しておらず、各府省等は、その理由について、効果測定を実施しているため研修内容に関する評価は必要ないとしていたり、毎年度実施していて研修内容が定着しているため研修内容に関する評価を実施していないとしていたりしている。しかし、研修内容に関する評価は、研修ニーズや改善すべき事項を把握し、研修内容の改善につなげるための重要な手段であることから、現在、研修内容に関する評価を行っていない研修実施部局においては、研修内容に関する評価の実施を検討する必要がある(府省等別の研修内容に関する評価の実施状況(平成27年度、20時間以上の研修)については、別表5参照)。

図表3-4 研修内容に関する評価の実施状況(平成27年度、20時間以上の研修)

(単位:研修)
区分 研修数
(A)
研修内容に関する評価の実施状況
実施している(B) 実施していない(H)
  実施方法
受講者に対してアンケートを実施(C) 受講者に対してヒアリングを実施(D) 研修講師に対してアンケートを実施(E) 受講者の上司等に対してアンケートを実施(F) その他
(G)
(B/A) (C/B) (D/B) (E/B) (F/B) (G/B) (H/A)
一般職   2,694 2,461 2,030 348 132 96 303 233
  (構成比) (100%) (91.3%) (82.4%) (14.1%) (5.3%) (3.9%) (12.3%) (8.6%)
特別職   387 355 242 53 38 15 72 32
  (構成比) (100%) (91.7%) (68.1%) (14.9%) (10.7%) (4.2%) (20.2%) (8.2%)
3,081 2,816 2,272 401 170 111 375 265
  (構成比) (100%) (91.3%) (80.6%) (14.2%) (6.0%) (3.9%) (13.3%) (8.6%)
(注)
研修内容に関する評価の実施方法として複数の方法を採った場合には、それぞれの件数を計上している。

各府省等において、効果的に研修を実施していくためには、研修実施部局において、受講者に対するアンケート等により研修内容に関する評価を実施するだけではなく、その結果を取りまとめ、適切に分析することにより研修内容の改善につなげることが必要となる。

研修実施部局において、研修内容に関する評価を実施したものの、受講者等からアンケート等により聴取した研修内容に関する評価を取りまとめた報告書が、研修内容の改善につなげることができるものとなっていなかったものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> 研修内容に関する評価を取りまとめた報告書が、研修内容の改善につなげることができるものとなっていなかったもの

環境省環境調査研修所(以下「研修所」という。)は、我が国の環境保全に関わる人材育成の中核的機関として、国、地方公共団体等において環境行政を担当する職員等の能力の開発や資質の向上を図るために、環境保全に関する各種の研修を実施している。

そして、研修所は、翌年度の研修計画の改善や研修ニーズの把握等のために、研修終了時に受講者に対し科目等ごとのアンケート調査を実施するとともに、毎年度、アンケート集計業務に係る請負契約を民間会社と締結して、アンケートの集計結果を報告書として納品させていて、同報告書を翌年度の研修の課題検討に活用することとしていた。

しかし、平成27年度の報告書をみたところ、アンケート調査を実施した40研修435科目のうち36研修208科目(435科目の47.8%)について、別の科目等に対する評価を取り違えて記載していたり、集計が誤っていたりするなどしていて、報告書におけるアンケートの集計結果は、実際のアンケートの内容と大幅に異なっていた。

このため、研修所が28年度の研修の課題検討のために活用したとしている同報告書は、受講者からの研修内容に関する評価を正確に反映したものとはなっておらず、研修の改善につなげるための資料としては十分な内容とはなっていなかった。

一方、研修内容に関する評価を実施して研修内容の改善につなげているものについて、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例4> 研修内容に関する評価を実施して研修内容の改善につなげているもの

税務大学校は、受講者の理解度を把握するための「科目別(終講時)アンケート」と、研修期間、研修内容、実施方法等、研修全般に対する受講者の意見・要望を把握するための「卒業(修了)時アンケート」の2種類のアンケートを実施している。

研修実施担当者は、「科目別(終講時)アンケート」から、理解度、講義内容、講師等の項目ごとに、5点満点での点数化により、受講者の理解度にどのような項目がどの程度影響を与えているかの寄与度を分析している。特に、受講者の理解度が4点未満の科目については、分析結果に基づき、「評価シート」に、講義時間数、教材の見直し等受講者の理解度を深めるための改善すべき点を具体的に記入している。

また、研修実施担当者は、「卒業(修了)時アンケート」の結果も踏まえ、教育目標の達成度、教育課程の編成や授業内容等の評価・検証結果を「評価シート」に記入し、改善事項がある場合には、その根拠とともに具体的に記入している。

税務大学校は、翌年度の研修計画の策定に当たり、研修実施担当者による「評価シート」の記入結果に基づいて、講義時間、講師及び授業内容の変更等、研修内容の改善につなげている。

イ 研修記録の作成・保管の状況

研修の記録は、研修の実施状況について評価・分析を行い、翌年度以降の研修計画を改善するための重要な資料となる。

また、規則10-3及び「人事院規則10-3(職員の研修)の運用について」(昭和56年管研-842。以下「10-3運用通知」という。)によれば、関係各庁は、研修を実施したときは、研修計画の改善、職員の活用その他の人事管理に資するため、その効果の把握に努めるとともに、人事院の定める20時間又は3日を超えて行われた研修については記録を作成し、保管しなければならないとされていた。そして、研修の記録に記載する事項については、①研修の名称及び研修の実施に当たった機関の名称、②研修の目的、③研修の時期及び研修の時間数又は日数、④合宿を伴う研修、通勤による研修等の区分、⑤研修を受けた職員の選択の範囲及び方法、⑥主要な教科目の名称及び時間数並びにその実施方法、⑦教官、講師その他の研修指導者の氏名、⑧研修効果のは握の方法、⑨研修を受けた職員の氏名及び研修成績、⑩研修に要した経費、⑪研修の計画に当たって特に配慮した事項、研修結果に対する所見等の11項目と定められていた。

27年度に実施したOff-JTのうち20時間以上の3,081研修に係る研修記録の作成等の状況をみると、図表3-5のとおり、一般職の国家公務員に対する研修においては、研修実施部局で研修記録の記載項目が一覧できる様式となっているものが2,174研修(2,694研修の80.6%)となっていた。また、これらに係る各記載項目ごとの記載状況をみると、⑩研修に要した経費及び⑪特に配慮した事項、研修結果に対する所見等の2項目が記載されているものは、2,174研修のうち、それぞれ651研修(2,174研修の29.9%)及び1,023研修(同47.0%)となっていて、他の項目と比べて低くなっていた。

一方、特別職の国家公務員に対する研修においては、研修実施部局で研修記録の記載項目が一覧できる様式となっているものが、図表3-6のとおり、278研修(387研修の71.8%)となっていた。また、これらに係る各記載項目ごとの記載状況をみると、一般職の国家公務員に対する研修と比べて各項目とも低い傾向となっていた(府省等別の研修実施部局で記載項目が一覧できる様式となっている研修記録の記載状況(平成27年度、20時間以上の研修)については、別表6参照)。

図表3-5 一般職の国家公務員に対する研修において研修実施部局で記載項目が一覧できる様式となっている研修記録の記載状況(平成27年度、20時間以上の研修)

(単位:研修)
区分 研修数
(A)
記載項目が一覧できる様式となっている研修数(B) 11項目の記載状況
①研修の名称、実施機関の名称等(C) ②研修の目的(D) ③研修の時期、時間、日数等(E) ④合宿式、通勤式の区分(F) ⑤受講生の範囲及び方法(G) ⑥主要な教科目の内容等(H) ⑦教官、講師等の氏名(I) ⑧研修効果のは握の方法(J) ⑨受講生の氏名、研修成績(K) ⑩研修に要した経費(L) ⑪特に配慮した事項、研修結果に対する所見等(M)
(B/A) (C/B) (D/B) (E/B) (F/B) (G/B) (H/B) (I/B) (J/B) (K/B) (L/B) (M/B)
一般職 自ら実施する研修 2,235 1,808 1,808 1,590 1,786 1,373 1,348 1,513 1,380 1,323 1,129 515 940
  (構成比) (100%) (80.8%) (100%) (87.9%) (98.7%) (75.9%) (74.5%) (83.6%) (76.3%) (73.1%) (62.4%) (28.4%) (51.9%)
委託研修 459 366 366 301 354 235 224 242 172 208 218 136 83
  (構成比) (100%) (79.7%) (100%) (82.2%) (96.7%) (64.2%) (61.2%) (66.1%) (46.9%) (56.8%) (59.5%) (37.1%) (22.6%)
  2,694 2,174 2,174 1,891 2,140 1,608 1,572 1,755 1,552 1,531 1,347 651 1,023
(構成比) (100%) (80.6%) (100%) (86.9%) (98.4%) (73.9%) (72.3%) (80.7%) (71.3%) (70.4%) (61.9%) (29.9%) (47.0%)

図表3-6 特別職の国家公務員に対する研修において研修実施部局で記載項目が一覧できる様式となっている研修記録の記載状況(平成27年度、20時間以上の研修)

(単位:研修)
区分 研修数
(A)
記載項目が一覧できる様式となっている研修数(B) 11項目の記載状況
①研修の名称、実施機関の名称等(C) ②研修の目的(D) ③研修の時期、時間、日数等(E) ④合宿式、通勤式の区分(F) ⑤受講生の範囲及び方法(G) ⑥主要な教科目の内容等(H) ⑦教官、講師等の氏名(I) ⑧研修効果のは握の方法(J) ⑨受講生の氏名、研修成績(K) ⑩研修に要した経費(L) ⑪特に配慮した事項、研修結果に対する所見等(M)
(B/A) (C/B) (D/B) (E/B) (F/B) (G/B) (H/B) (I/B) (J/B) (K/B) (L/B) (M/B)
特別職 自ら実施する研修 272 222 222 135 213 14 153 32 22 11 46 51 21
  (構成比) (100%) (81.6%) (100%) (60.8%) (95.9%) (6.3%) (68.9%) (14.4%) (9.9%) (4.9%) (20.7%) (22.9%) (9.4%)
委託研修 115 56 56 42 48 10 7 40 13 10 42 21 36
  (構成比) (100%) (48.6%) (100%) (75.0%) (85.7%) (17.8%) (12.5%) (71.4%) (23.2%) (17.8%) (75.0%) (37.5%) (64.2%)
  387 278 278 177 261 24 160 72 35 21 88 72 57
(構成比) (100%) (71.8%) (100%) (63.6%) (93.8%) (8.6%) (57.5%) (25.8%) (12.5%) (7.5%) (31.6%) (25.8%) (20.5%)

ウ 研修計画の改善状況等

基本方針によれば、関係各庁は、研修効果を把握し、研修内容の改善に努めることとされている。また、特別職の国家公務員に対する研修についても、研修効果を把握し、研修内容の改善に努めることが望ましい。

しかし、前記のとおり、各府省等においては、効果測定を実施していなかったり、所属職員を他府省等の研修に参加させる場合においてその効果測定の結果に係る報告を受けていなかったり、研修内容に関する評価を実施していなかったりしていて、研修計画の見直しなどの改善につなげるための体制が整っていない状況が一部の府省等で見受けられた。

研修計画を策定する際に、研修実施部局以外の部局から研修に対する意見や要望等を調査し、研修計画及び研修内容の見直しなどに反映させる体制を構築しているものについて、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例5> 研修計画及び研修内容の見直しなどの改善につなげているもの

農林水産省は、平成21年度以降、毎年度、大臣官房秘書課、農林水産研修所、各局庁の研修担当者等から構成する担当者会議を開催している。そして、同会議において、事前に実施した各局庁の研修に関する意見・要望調査に対する回答、各研修の終了後に実施したアンケート結果等の研修に関する情報共有を行い、同会議における議論を踏まえて翌年度の研修計画や研修内容を見直すことにしている。

同省は、27年度の研修計画の策定に当たり、同会議における議論を踏まえて、研修の新設や廃止をしたり、研修の実施時期を職員が研修に参加しやすい時期に設定したり、カリキュラムを変更したりするなどして研修内容の見直しを行っていた。

各府省等は、研修実施部局がOff-JT終了後に実施する効果測定の結果や受講者に対するアンケート等の分析結果から、研修ニーズの把握や研修内容の具体的な課題の把握により一層努めるとともに、研修実施部局以外の部局からの意見等を踏まえて検討を行い、研修の新設、廃止、研修内容の見直しなどの研修計画の改善につなげることが重要である。

(4) 研修施設の保有状況等

ア 研修施設の保有状況

各府省等には、研修所等の研修施設を保有している府省等と、研修施設を保有しておらず、研修実施の都度、庁舎内外の会議室等を確保している府省等がある。

また、研修施設を保有している府省等は、本府省や外局がそれぞれ保有する研修施設で所属職員に対して研修を実施したり、本府省が保有する研修施設において本府省の所属職員だけでなく外局の所属職員も合わせて、研修を実施したりする場合等がある。

そこで、各府省等の研修施設の保有状況をみると、図表4-1のとおり、27年度末現在で、計136研修施設を保有していて、研修施設を最も多く保有している府省等は法務省の20研修施設、次いで財務省及び農林水産省の15研修施設となっていた。また、各府省等の宿泊施設が併設されている合宿研修施設の保有状況をみると、136研修施設のうち、90研修施設が合宿研修施設であり、合宿研修施設を最も多く保有している府省等は法務省の19研修施設、次いで国土交通省の14研修施設となっていた(研修施設一覧(平成28年3月31日現在)、研修施設の教室等及び宿泊施設の稼働状況(平成27年度)については、別表7参照)。

図表4-1 府省等が保有する研修施設数(平成27年度)

(単位:研修施設)
府省等名 研修施設数 うち合宿研修施設数
国立国会図書館 3 -
最高裁判所 10 10
人事院 2 1
内閣府 1 -
警察庁 9 9
金融庁 1 -
総務省 3 2
法務省 20 19
公安調査庁 1 1
外務省 2 1
財務省 15 2
国税庁 13 9
厚生労働省 1 -
農林水産省 15 3
林野庁 1 1
経済産業省 1 1
国土交通省 14 14
気象庁 2 1
海上保安庁 4 4
環境省 2 1
原子力規制委員会 2 -
防衛省 12 10
防衛装備庁 1 -
会計検査院 1 1
136 90

136研修施設について、研修施設の地域別の設置状況をみると、図表4-2のとおり、東京都に所在する研修施設は、35研修施設(136研修施設の25.7%)、東京都以外の関東地方に所在する研修施設は、26研修施設(同19.1%)となっており、関東地方に所在する研修施設数は61研修施設となっていて、136研修施設の44.8%を占めていた。また、90合宿研修施設の地域別の設置状況をみると、東京都に所在する合宿研修施設は17研修施設(90研修施設の18.8%)、東京都以外の関東地方に所在する合宿研修施設は20研修施設(同22.2%)となっており、関東地方に所在する合宿研修施設は37研修施設となっていて、90研修施設の41.1%を占めていた。

図表4-2 地域別の研修施設の設置状況(平成27年度)

(単位:研修施設)
区分 全国
(A)
地域別
北海道
(B)
東北地方
(C)
関東地方(D) 中部地方
(G)
近畿地方
(H)
中国地方
(I)
四国地方
(J)
九州地方
(K)
  うち東京都
(E)
うち東京都以外(F)
(B/A) (C/A) (D/A) (E/A) (F/A) (G/A) (H/A) (I/A) (J/A) (K/A)
研修施設数 136 7 11 61 35 26 12 16 8 7 14
  (構成比) (100%) (5.1%) (8.0%) (44.8%) (25.7%) (19.1%) (8.8%) (11.7%) (5.8%) (5.1%) (10.2%)
うち合宿研修施設数 90 6 9 37 17 20 7 11 7 5 8
  (構成比) (100%) (6.6%) (10.0%) (41.1%) (18.8%) (22.2%) (7.7%) (12.2%) (7.7%) (5.5%) (8.8%)

図表4-2 地域別の研修施設の設置状況(平成27年度) 画像

イ 研修施設の稼働状況

27年度において研修や研修に付随する説明会、報告会等の用に供した136研修施設の教室等全体の稼働状況(以下「教室等稼働率」という。)及び合宿研修施設を保有している90研修施設の宿泊施設の稼働状況(以下「宿泊施設稼働率」という。)をみると、図表4-3のとおり、教室等稼働率は、27年度の研修実施可能日数に対する1教室等以上が使用された日数の割合で算定した場合、30研修施設(136研修施設の22.0%)で50%を下回っていた。また、宿泊施設稼働率は、図表4-4のとおり、27年度の年間宿泊可能人日数に対する年間宿泊人日数の割合で算定した場合、58研修施設(90研修施設の64.4%)で50%を下回っていた。宿泊施設稼働率については、当該研修施設において実施する最大規模の研修員数に応じた室数が確保されなければならないことに留意する必要があるものの、3(2)のとおり、研修施設の維持管理に多額の経費を要しており、研修の実施に当たり研修施設の有効活用を図ることが必要である。

図表4-3 研修施設の稼働状況(教室等)(平成27年度)

(単位:研修施設)
区分 教室等稼働率0%以上~50%未満 教室等稼働率50%以上~80%未満 教室等稼働率80%以上~100%
研修施設数 136 30 54 52
  (構成比) (100%) (22.0%) (39.7%) (38.2%)
(注)
教室等稼働率については、平成27年度の研修実施可能日数243日に対する教室等稼働日数(1教室等以上が使用された日数)の割合を用いて算定している。

図表4-4 研修施設の稼働状況(宿泊施設)(平成27年度)

(単位:研修施設)
区分 宿泊施設稼働率0%以上~50%未満 宿泊施設稼働率50%以上~80%未満 宿泊施設稼働率80%以上~100%
合宿研修施設数 90 58 21 11
  (構成比) (100%) 注(2)(64.4%) (23.3%) (12.2%)
注(1)
宿泊施設稼働率については、平成27年度年間宿泊可能人日数(宿泊可能日数187日に宿泊施設定員数を乗じたもの)に対する年間宿泊人日数の割合で算定している。
注(2)
同一敷地内にある同一府省等内の他の研修施設の稼働率を一体として算定している合宿研修施設を含む。

教室等稼働率の割合が低調なものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 教室等稼働率の割合が低調なもの

水鳥救護研修センター(東京都日野市所在)では、同センター内に定員30人の教室1室を設置して、国及び地方公共団体の鳥獣行政等職員、獣医師等を対象に油等に汚染された水鳥の救護等に関する共通認識と技術を習得することなどを目的として研修を実施している。また、同センターは、油汚染事故が発生した場合、負傷した水鳥の救護の拠点施設となっている。

平成27年度における教室の稼働状況をみると、研修実施可能日数243日に対して研修の用に供した日数は17日であり、教室の稼働率は6.9%と低調となっていた。

なお、同センターは、前記の研修に加え、特定非営利活動法人野生動物救護獣医師協会が実施する油汚染水鳥救護実習等の研修の場として教室を提供し、教室の稼働率の向上に努めてきたが、研修以外に地域への施設の開放や油汚染に関連した展示等の充実を図り、施設見学の受入れを行うなどして、教室の有効活用に努めているとしている。

ウ 研修施設の連携・融通の状況

研修施設を保有している府省等は、自府省等の研修施設において研修を実施しているものの、前記のとおり、稼働状況が必ずしも高いとは言えない研修施設もある。その一方で、研修施設を保有していない府省等においては、研修実施の都度、有償で研修場所を確保している実績が見受けられ、借上げに要する経費として1研修当たり数万円から数百万円を支払っていることなどから、経済的に研修を実施できるよう、研修施設を保有している府省等は、研修施設を保有していない他府省等や関連団体等(以下、これらを合わせて「他機関等」という。)に対して研修施設の使用承認又は使用許可(以下「使用承認等」という。)を行うなど、各府省等間で連携して、研修施設の融通を行うことが必要であると思料される。

そこで、136研修施設について、27年度における他機関等への使用承認等の状況をみると、図表4-5のとおり、研修施設の使用承認等の実績があるのは14研修施設となっており、このうち、警察庁においては主に警視庁及び県警察本部に対して、法務省においては主に関連団体に対して、農林水産省においては主に国立研究開発法人や関連団体に対して、国税庁においては最高裁判所に対して、それぞれ使用承認等を行っていた。

図表4-5 他機関等に対して施設の使用承認等を行った14研修施設の状況(平成27年度)

(単位:件)
府省等名 研修施設名 教室等の使用承認等実績 宿泊施設の使用承認等実績
他府省等 関連団体等 他府省等 関連団体等
警察庁 警察大学校 0 34 0 0
東北管区警察学校 0 9 0 0
関東管区警察学校 0 0 0 10
中部管区警察学校 0 0 0 12
中国管区警察学校 0 0 0 18
法務省 矯正研修所仙台支所 0 1 0 0
法務総合研究所 名古屋支所 1 0 1 0
法務総合研究所 大阪支所 1 0 1 0
法務総合研究所 広島支所 1 0 0 0
国税庁 税務大学校 0 0 1 0
農林水産省 筑波産学連携支援センター 0 101 0 228
農林水産研修所つくば館 0 1 - -
農林水産研修所つくば館水戸ほ場 0 2 - -
環境省 水鳥救護研修センター 1 10 - -

各府省等間で連携して研修施設の融通を行ったものについて、事例を示すと次のとおりである。

<参考事例6> 各府省等間で連携して研修施設の融通を行ったもの

国税庁は、税務大学校(埼玉県和光市所在)において、国税庁職員等に対する研修を実施している。

また、最高裁判所は、司法研修所(埼玉県和光市所在)において、裁判官に対する研修のほか司法修習生に対する修習を実施している。そして、平成26年度から、修習開始段階で司法修習生に不足している実務基礎知識・能力に気付かせ、かつ、より効果的・効率的な分野別実務修習が円滑に行われることを目的とする導入修習を新たに実施している。

最高裁判所は、導入修習の実施に当たり、司法修習生の宿泊施設の利用希望者が司法研修所の宿泊施設の収容能力を上回ることが見込まれたことから、近隣に所在する税務大学校に対して、宿泊施設の利用希望者の一部について同大学校の宿泊施設へ受け入れるよう依頼した。

これを受けて、税務大学校は、26、27両年度については、導入修習実施時期となる12月は例年より研修生の数が少なかったこともあり、宿泊施設4棟のうち1棟を3週間程度使用するための国有財産の使用承認を行い、無償で司法修習生の宿泊の用に供していた(受入実績、26年度200人、27年度200人)。

前記のように14研修施設では使用承認等の実績がある一方で、122研修施設では使用承認等の実績がなかった。これら122研修施設で、研修施設の教室等及び宿泊施設の使用承認等の実績がなかった主な理由については、他機関等に対して教室等及び宿泊施設の使用承認等を行うための内部規程等を整備しているものの、他機関等からの申込実績が全くなかったためとするものや、稼働状況に照らして使用承認等を行う余裕がなかったためとするものが見受けられた。また、研修施設の宿泊施設の使用承認等の実績がなかった主な理由については、セキュリティ等の面から宿泊施設の使用承認等を行う体制になかったためとするものや、他機関等に対して宿泊料を徴収して宿泊施設の使用承認等を行うことは旅館業法(昭和23年法律第138号)に抵触するおそれがあるためとするものなどがあり、他機関等に対して宿泊施設の使用承認等を行うに当たり、様々な課題を抱えていた。

さらに、他機関等に対する研修施設の教室等及び宿泊施設の使用承認等に関する周知の状況をみると、一部の研修施設について、貸出要綱等をメールで周知したり、過去に使用承認等の実績がある他機関等に対して電話で周知したりしているものが見受けられたが、ほとんどの研修施設については使用承認等に関する周知を行っていなかった。

このように、研修施設の宿泊施設の使用承認等については、セキュリティ等の面から宿泊施設の使用承認等を行う体制になっていないこと、宿泊施設の使用に係る費用徴収の在り方について検討を要することなどの課題を解消する必要がある。一方で、研修施設の教室等の使用承認等については、内部規程等を整備しているものの、他機関等への使用承認等に関する各府省等間における相互の連携が十分に図られておらず、各府省等が保有する研修施設の年間使用計画等の情報を各府省等間で共有できていない状況となっていた。

(5) 内閣人事局による総合的企画及び調整並びに人事院による監視等の状況

ア 内閣人事局による総合的企画及び調整等の状況

内閣人事局によると、国家公務員法に規定されている「総合的企画」とは、研修についての計画の樹立及び実施に関する共通的事項及び研修についての計画の樹立及び実施が総合的・効果的に行われるような方策を構想すること、「調整」とは、総合的企画の内容を関係各庁に示し、関係各庁の実情等を踏まえて議論・交渉を重ねて政府全体の方針としていくこととしており、内閣総理大臣による基本方針及び基本方針の運用に関し必要な事項を定めた「国家公務員の研修に関する基本方針の運用について」(平成28年1月内閣人事局長決定。以下「基本方針の運用」という。)の策定自体が、国家公務員法に基づく研修についての計画の樹立及び実施に関する総合的企画及び調整に該当するとしている。

基本方針の運用の内容、策定経緯等をみると、26年5月に設置された内閣人事局は、同年9月に、関係各庁に対してアンケートを実施し、研修計画の作成状況、研修の実施状況の記録・報告の状況、「国家公務員研修概況」の活用状況等について聴取した。そして、内閣人事局及び人事院は、26年実施の25年度研修実施状況調査の取りまとめから共同で行い、このアンケート結果を踏まえるなどして、28年実施の27年度研修実施状況調査から報告項目を7項目とすることとし、内閣人事局は、28年1月に、基本方針の運用を策定して、関係各庁が前年度に実施した研修の状況に関する報告項目を定めた。また、人事院は、28年2月に「人事院規則10-14(人事院が行う研修等)の運用について」(平成26年人研調-664)を改正して、報告項目を減ずることとした。

研修実施状況調査における報告項目、規則10-3及び10-3運用通知に定められていた研修の記録に記載する事項を示すと図表5-1のとおりである。

図表5-1 研修実施状況調査における報告項目等の状況

区分 平成27年までの記録項目(11項目) 27年までの報告項目(9項目) 28年からの報告項目(7項目)
記録又は報告の根拠 規則10-3第9条、
10-3運用通知第9条関係
規則10-3第10条、
10-3運用通知第10条関係
規則10-14第5条、
同運用通知第5条関係(改正前)
「国家公務員の研修に関する基本方針」4
「国家公務員の研修に関する基本方針の運用について」2
規則10-14第5条、
同運用通知第5条関係(改正後)
報告先 内閣人事局、人事院 内閣人事局 人事院
項目 ①研修の名称及び研修の実施に当たった機関の名称 ①研修の名称及び研修の実施に当たった機関の名称 ①研修の名称及び研修の実施に当たった機関の名称 ①研修の名称及び研修の実施に当たった機関の名称
②研修の目的 ②研修の目的 ②研修の目的 ②研修の目的
③研修の時期及び研修の時間数又は日数 ③研修の時期及び研修の時間数又は日数 ③研修の時間数 ③研修の時間数
④合宿を伴う研修、通勤による研修等の区分 ④合宿を伴う研修、通勤による研修等の区分 ④研修の実施方法 ④研修の実施方法
⑤研修を受けた職員の選択の範囲及び方法 ⑤研修を受けた職員の選択の範囲及び方法 ⑤研修を受けた職員の選択の範囲及び数 ⑤研修を受けた職員の選択の範囲及び数
⑥主要な教科目の名称及び時間数並びにその実施方法 ⑥主要な教科目の名称及び時間数
⑦教官、講師その他の研修指導者の氏名
⑧研修効果のは握の方法 ⑦研修効果のは握の方法 ⑥研修効果の把握の方法 ⑥研修効果の把握の方法
⑨研修を受けた職員の氏名及び研修成績
⑩研修に要した経費 ⑧研修に要した経費
⑪研修の計画に当たって特に配慮した事項、研修結果に対する所見等 ⑨当該年度に実施した研修において特に配慮した事項 ⑦当該年度に実施した研修において特に配慮した事項 ⑦当該年度に実施した研修において特に配慮した事項

また、基本方針によれば、内閣人事局は、毎年度、自らが実施しようとする研修の計画を定め、これについて関係各庁に情報提供することとされている。また、Off-JTについて、内閣人事局及び関係各庁は、相互に連携・協力することにより、政府全体を通じて体系的で効果的な研修が実施されるよう努めることとされている。

そして、内閣人事局は、毎年3月に、「研修担当官会議」を開催し、関係各庁の研修担当官を集めて、当該年度に内閣人事局が実施した研修の実施状況について説明するとともに、翌年度の内閣人事局の研修実施計画について説明及び質疑応答を行っているとしている。

イ 人事院による監視等の状況

人事院は、自らが行う研修についての計画の樹立及び実施のほか、内閣総理大臣及び関係各庁が実施する研修の計画の樹立及び実施に関し、監視を行うこととされている。また、規則10-14によれば、人事院は監視の権限に基づき、内閣総理大臣又は関係各庁に対して、研修についての計画の樹立及びその実施に関し調査を行うことなどとされている。

人事院による監視の前提となる調査についてみると、人事院は、前記の研修実施状況調査における関係各庁からの報告を取りまとめる過程で、疑問点や矛盾点があれば関係各庁に対し質問して確認することがあり、これが広い意味での調査に当たるとしている。

そして、23年度以降、このような報告内容の確認作業以外の調査を行った実績はなく、報告を受けた研修の実施状況等の内容について、国家公務員法、人事院規則等に違反する事態や特段の問題はなかったとしている。

また、人事院は、関係各庁への支援として、研修担当官の能力向上のための研修の実施及び研修講師の派遣があるとしている。そして、人事院は、それぞれ毎年度一回、「研修所長等事例研究会」、「研修連絡会議」及び「行政研修に関する人事担当企画官等意見交換会」を主催し各府省等との間で意見交換等を行っているとしている。

ウ 内閣人事局及び人事院の対応

前記のとおり、研修計画等で対象者の範囲が明確になっていない事態、他府省等の職員も対象としている自府省研修について他府省等への研修実施の周知が十分でないなどの事態、研修施設の年間使用計画等の情報を関係各庁間で共有できていない事態等が見受けられた。

内閣人事局は、これらの事態の解消に資するような、関係各庁間の相互の連携・協力を図るための調整、研修を行うに当たり関係各庁間で研修施設の情報の共有に関する調整等は行っていないとしており、また、人事院は、研修計画等で対象者の範囲が明確になっていない事態は、報告内容には含まれていなかったため、把握していなかったとしている。