国際機関等に対する拠出等のうち歳出予算による拠出等に係る予算額及び決算額を各府省庁等に確認して集計したところ、図表1-1のとおり、平成30年度から令和5年度までの決算額の合計は2兆6818億余円となっていた。
そして、各年度の決算額をみたところ、新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために拠出等を行ったことなどにより、2年度以降の決算額が元年度以前の決算額を上回っていた(府省庁等別の予算額及び決算額については別図表3参照。新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために拠出した任意拠出金については後掲図表1-10参照)。
(単位:万円)
| 会計名 | 区分 | 平成30年度 | 令和元年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般会計 | 予算額(A) | 3417億4574 | 3368億2429 | 5095億1626 | 3838億5020 | 4991億9441 | 5791億0407 | 2兆6502億3498 |
| 決算額(B) | 3401億4520 | 3361億5713 | 5062億7740 | 3822億0906 | 4982億8987 | 5736億0192 | 2兆6366億8061 | |
| 執行率(B/A) | 99.5% | 99.8% | 99.3% | 99.5% | 99.8% | 99.0% | 99.4% | |
| 特別会計 | 予算額(A) | 60億0507 | 59億0067 | 62億7485 | 66億4993 | 98億5500 | 123億5087 | 470億3642 |
| 決算額(B) | 57億5574 | 56億2186 | 59億5573 | 63億1801 | 95億0789 | 119億8663 | 451億4590 | |
| 執行率(B/A) | 95.8% | 95.2% | 94.9% | 95.0% | 96.4% | 97.0% | 95.9% | |
| 計 | 予算額(A) | 3477億5081 | 3427億2496 | 5157億9112 | 3905億0013 | 5090億4941 | 5914億5495 | 2兆6972億7140 |
| 決算額(B) | 3459億0095 | 3417億7900 | 5122億3314 | 3885億2708 | 5077億9777 | 5855億8855 | 2兆6818億2651 | |
| 執行率(B/A) | 99.4% | 99.7% | 99.3% | 99.4% | 99.7% | 99.0% | 99.4% |
また、拠出国債及び出資国債の発行額、償還額及び未償還額を各府省庁等に確認して集計したところ、図表1-2のとおり、平成30年度から令和5年度までの発行額の合計は2兆3419億余円となっていた。
そして、各年度の発行額をみたところ、歳出予算による拠出等に係る決算額と同様に、新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために拠出等を行ったことなどにより、2年度以降の発行額は、元年度以前の発行額を上回っていた。このうち5年度の発行額は、ウクライナを支援するための任意拠出金の拠出を拠出国債の発行により行ったことなどにより、特に多額となっていた(拠出金等別の拠出国債及び出資国債の発行額、償還額及び未償還額については別図表4参照。ウクライナを支援するために拠出した任意拠出金については後掲図表1-11参照)。
図表1-2 拠出国債及び出資国債の発行額、償還額及び未償還額
(単位:万円)
| 区分 | 平成30年度 | 令和元年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 拠出国債 | 発行額 | 850億3482 | 612億0925 | 992億3778 | 941億1329 | 704億3663 | 7761億8668 | 1兆1862億1848 |
| 償還額 | 763億5434 | 823億6204 | 1026億2832 | 1111億0723 | 1000億4838 | 969億4251 | 5694億4285 | |
| 未償還額 | 2024億5379 | 1813億0099 | 1779億1045 | 1609億1652 | 1313億0477 | 8105億4894 | ||
| 出資国債 | 発行額 | 1313億2414 | 1551億4736 | 1766億1223 | 2227億4429 | 2726億9270 | 1972億3085 | 1兆1557億5159 |
| 償還額 | 1089億0735 | 1419億7079 | 2382億2743 | 2211億0971 | 2267億6594 | 2132億6579 | 1兆1502億4703 | |
| 未償還額 | 988億0770 | 1119億8427 | 503億6907 | 520億0366 | 979億3042 | 818億9548 | ||
| 計 | 発行額 | 2163億5896 | 2163億5662 | 2758億5002 | 3168億5759 | 3431億2934 | 9734億1753 | 2兆3419億7008 |
| 償還額 | 1852億6170 | 2243億3284 | 3408億5576 | 3322億1694 | 3268億1432 | 3102億0830 | 1兆7196億8988 | |
| 未償還額 | 3012億6149 | 2932億8527 | 2282億7953 | 2129億2018 | 2292億3520 | 8924億4443 | ||
平成30年度から令和5年度までの国際機関等に対する拠出等の全体額をみるために、拠出金等722件について、歳出予算による拠出等に係る決算額並びに拠出国債及び出資国債の発行額(以下、これらを合わせて「拠出額」という。)の合計額を集計したところ、5兆0237億余円となっていた。
また、各年度の拠出額をみたところ、図表1-3のとおり、平成30、令和元両年度は5600億円前後であったが、2年度以降は7000億円を超え、5年度は1兆5000億円を超える規模となっていた。
平成30年度から令和5年度までの拠出額を国際機関等の分類別にみたところ、図表1-4のとおり、国際開発金融機関等が2兆5620億余円(全体の50.9%)、国際連合(事務局)が5657億余円(同11.2%)等となっており、これを年度別にみると、図表1-5のとおり、国際開発金融機関等が増加傾向にあり、5年度には1兆円を超える規模となっていた(国際機関等の分類別の拠出額等については別図表5参照)。
図表1-4 国際機関等の分類別の拠出額(平成30年度から令和5年度までの計)
平成30年度から令和5年度までの拠出額を拠出金等の種類別にみたところ、図表1-6のとおり、任意拠出金が3兆0292億余円(全体の60.2%)、出資金が1兆1581億余円(同23.0%)及び義務的拠出金が8363億余円(同16.6%)となっており、これを年度別にみたところ、図表1-7のとおり、任意拠出金の拠出額が増加傾向にあり、5年度には1兆円を超える規模となっていた(拠出金等の種類別の拠出額等については別図表5参照。府省庁等別及び拠出金等の種類別の拠出額等については別図表6参照)。
図表1-6 拠出金等の種類別の拠出額(平成30年度から令和5年度までの計)
平成30年度から令和5年度までに拠出された義務的拠出金は、162国際機関等の229件であり、拠出額は計8363億余円となっていた(図表1-6及び別図表7参照)。
これらの義務的拠出金のうち拠出額が多い上位10件は、図表1-8のとおりであり、「国連平和維持活動(PKO)分担金」の拠出額が3610億余円と最も多く、次いで「国際連合通常分担金」の拠出額が1571億余円となっていた。そして、これらの拠出額計5181億余円で義務的拠出金の拠出額全体の6割超(8363億余円の61.9%)を占めていた。
図表1-8 拠出額が多い上位10件の義務的拠出金(平成30年度~令和5年度)
(単位:万円)
| 順位 | 通番 | 府省庁等名 | 国際機関等名 | 義務的拠出金名 | 義務的拠出金の概要 | 拠出年度 | 拠出額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 74 | 外務省 | 国際連合 | 国連平和維持活動(PKO)分担金 | 国際連合の平和維持活動(PKO)に対する財政的貢献を通じて、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、国際社会の平和と安定に積極的に貢献するとともに、国際連合における我が国の地位及び影響力の維持や向上につなげる。 | 平成30年度~令和5年度 | 3610億1889 |
| 2 | 73 | 外務省 | 国際連合 | 国際連合通常分担金 | 国際連合の諸活動に対する我が国の財政貢献を通じて、国際社会の平和と安全の確保及び持続可能な開発の実現に積極的に貢献するとともに、国際連合における我が国の地位及び影響力の維持や向上を図る。 | 平成30年度~令和5年度 | 1571億3675 |
| 3 | 123 | 文部科学省 | イーター国際核融合エネルギー機構 | 国際核融合エネルギー機構分担金 | エネルギー問題と環境問題を根本的に解決すると期待される核融合エネルギーの実現に向けて、国際約束に基づき、核融合実験炉ITERの建設及び運転を通じて、核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証する。 | 平成30年度~令和5年度 | 297億2765 |
| 4 | 85 | 外務省 | 国際連合食糧農業機関 | 国連食糧農業機関分担金 | 世界各国国民の栄養水準及び生活水準の向上、食糧及び農産物の生産及び流通の改善等の施策を通じて、世界経済の発展及び人類の飢餓からの解放を実現する。 | 平成30年度~令和5年度 | 294億5256 |
| 5 | 144 | 厚生労働省 | 世界保健機関 | 世界保健機関分担金 | 世界の全ての人々ができる限り高い水準の健康に到達することを目的として、保健医療分野における事業を支援し、国際協力を推進する。 | 平成30年度~令和5年度 | 292億1247 |
| 6 | 65 | 外務省 | 国際原子力機関 | 国際原子力機関(IAEA)分担金 | 原子力の平和的利用並びに核不拡散体制の維持及び強化を通じて我が国のエネルギーの安定供給及び安全保障の確保に貢献する。 | 平成30年度~令和5年度 | 251億4587 |
| 7 | 146 | 厚生労働省 | 国際労働機関 | 国際労働機関分担金 | 国際労働機関(ILO)を通じて、国際労働基準の策定及び監視、労働生活条件の向上、雇用機会の増進、基本的人権の増強のための国際的な政策や計画の策定及び国際的技術協力等の活動を実施する。 | 平成30年度~令和5年度 | 232億6384 |
| 8 | 82 | 外務省 | 国際連合教育科学文化機関 | ユネスコ分担金 | ユネスコの組織運営及びユネスコが取り組む教育、自然科学、人文・社会科学、文化及び情報・コミュニケーションの5分野における国際的な知的協力及び倫理的活動、加盟国の能力開発等に関する各種事業、法規範設定等を実施する。 | 平成30年度~令和5年度 | 194億1947 |
| 9 | 54 | 外務省 | 経済協力開発機構 | 経済協力開発機構分担金 | 加盟国の経済成長、開発途上国に対する政策及び自由かつ多角的な貿易の拡大を目標として、マクロ経済、貿易、投資、環境・持続可能な開発、科学技術、労働、社会政策、開発途上国援助等の広範な分野にわたる加盟国間の情報及びノウハウの交換、分析及び政策提言、共同研究等の協力を行う。 | 平成30年度~令和5年度 | 184億3522 |
| 10 | 63 | 外務省 | 国際刑事裁判所 | 国際刑事裁判所分担金 | 国際社会における最も重大な犯罪の訴追及び処罰を通じて、国際の平和と安全の維持に貢献し、国際社会における法の支配の確立を促進する。 | 平成30年度~令和5年度 | 178億5387 |
平成30年度から令和5年度までに拠出された任意拠出金は、250国際機関等の487件であり、拠出額は計3兆0292億余円となっていた(図表1-6及び別図表8参照。イヤーマーク拠出金及びノンイヤーマーク拠出金別の拠出額については別図表9参照。単独拠出及び協調拠出別の拠出額については別図表10参照)。
これらの任意拠出金のうち拠出額が多い上位10件は、図表1-9のとおりであり、ウクライナを支援するために拠出した「国際復興開発銀行ウクライナ復旧・復興基金拠出金」の拠出額が6850億円と最も多く、また、新型コロナウイルスの感染拡大の防止等のために拠出した「Gaviワクチンアライアンス(イヤーマーク)」の拠出額が1308億余円で6番目に多くなっていた。
図表1-9 拠出額が多い上位10件の任意拠出金(平成30年度~令和5年度)
(単位:万円)
| 順位 | 通番 | 府省庁等名 | 国際機関等名 | 任意拠出金名 | 拠出の対象となった事業等の概要 | 拠出年度 | 拠出額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 510 | 財務省 | 国際復興開発銀行 | 国際復興開発銀行ウクライナ復旧・復興基金拠出金 | 国際復興開発銀行のウクライナへの融資に対して、ドナーによる国債の拠出を通じた信用補完を行うことで、世界銀行のウクライナ政府に対する支援枠を拡大し、ウクライナ政府の抱える膨大な財政ニーズを支援する。 | 令和5年度 | 6850億0000 |
| 2 | 511 | 財務省 | 国際復興開発銀行 | 国際復興開発銀行・国際開発協会拠出金(日本開発政策・人材育成基金(PHRD),日本社会開発基金(JSDF)) | 国際復興開発銀行に設置された信託基金を通じて、開発途上国への技術支援等を実施する。 | 平成30年度~令和5年度 | 2371億3074 |
| 3 | 475 | 外務省 | 緑の気候基金 | 緑の気候基金拠出金 | 開発途上国における温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)を支援し、開発途上国における気候変動対策の着実な実施を支援する。 | 平成30、令和2、3、4、5各年度 | 2033億7721 |
| 4 | 496 | 財務省 | アジア開発基金 | アジア開発基金(ADF)拠出金 | アジア開発銀行(ADB)に設置されたアジア開発基金(ADF)を通じて、低所得国向けの無償資金支援を行う。 | 平成30年度~令和5年度 | 1815億6099 |
| 5 | 438 | 外務省 | 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド) | 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)拠出金 | 開発途上国における三大感染症(エイズ・結核・マラリア)の2030年(令和12年)までの撲滅及び三大感染症対策を通じた保健システム強化を支援する。 | 平成30年度~令和5年度 | 1698億0394 |
| 6 | 492 | 外務省 | Gaviワクチンアライアンス | Gaviワクチンアライアンス(イヤーマーク) | 新型コロナウイルス感染症等の収束に向けて、医療従事者、高齢者等のハイリスク層への早期のワクチン接種を含めて、世界全体でのワクチンへの平等なアクセスを確保する。 | 平成30年度~令和5年度 | 1308億2636 |
| 7 | 613 | 経済産業省 | 日・ASEAN経済産業協力委員会 | 日・ASEAN経済産業協力拠出金 | 日・ASEAN経済大臣会合の下部組織である日・ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)への拠出を通じて、日・ASEANの経済協力を進め、日・ASEANの経済関係を深化させる。 | 平成30年度~令和5年度 | 1016億3375 |
| 8 | 513 | 財務省 | 地球環境ファシリティ | 地球環境ファシリティ拠出金 | 地球環境ファシリティ(GEF)を通じて、開発途上国の地球環境保全に資するプロジェクトに対し、主に無償資金を供与する。GEFは、日本の重視する生物多様性分野や水俣条約対応の活動にも注力している。 | 元、2、3、5各年度 | 948億2244 |
| 9 | 509 | 財務省 | 国際通貨基金 | 国際通貨基金(IMF)拠出金 | 国際通貨基金の実施する財政、金融等の分野の能力開発活動の支援、奨学金制度を通じた開発途上国の行政能力強化等を行うとともに、国際収支の問題が生じている又は生ずる可能性のある低所得国等に対する資金支援を行う。 | 平成30年度~令和5年度 | 719億3749 |
| 10 | 497 | 財務省 | アジア開発銀行 | アジア開発銀行拠出金 | アジア開発銀行に設置された信託基金を通じて、アジア・太平洋地域の開発途上国への技術支援等を実施する。 | 平成30年度~令和5年度 | 657億2015 |
我が国は、近年、新型コロナウイルスの感染拡大の防止や、ウクライナ情勢の緊迫化を受けた人道支援等に関しても、国際機関等に対して多額の拠出等を行っている。そこで、新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために拠出した任意拠出金及びウクライナを支援するために拠出した任意拠出金の主なものについてみたところ、次のような状況となっていた。
新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために拠出した任意拠出金のうち、拠出額が50億円以上のものは、図表1-10のとおり、2年度から5年度までの間に拠出した4件となっていた。
図表1-10 新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために拠出した任意拠出金(拠出額が50億円以上のもの)(令和2年度~5年度)
(単位:万円)
| 通番 | 府省庁等名 | 国際機関等名 | 任意拠出金名 | 拠出の対象となった事業等の概要 | 拠出年度 | 拠出額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 267 | 外務省 | アジア欧州財団 | アジア欧州財団(ASEF)拠出金(任意拠出金)(補正) | 新型コロナウイルス感染症等の急激な流行に鑑み、感染症対策に必要な医療用個人防護具、抗ウイルス剤等を購入して備蓄し、開発途上国を含む参加国等からの要請に応じて迅速に提供する。 | 令和2年度 | 56億9373 |
| 414 | 外務省 | 国際連合プロジェクト・サービス機関 | 国連プロジェクト・サービス機関拠出金 | 新型コロナウイルスの感染拡大を防止し、劣悪な環境に置かれている難民及び国内避難民を始めとするぜい弱層の環境を改善するために、保健や医療機材の供与を行う。 | 2年度~5年度 | 110億9412 |
| 492 | 外務省 | Gaviワクチンアライアンス | Gaviワクチンアライアンス(イヤーマーク) | 新型コロナウイルス感染症等の収束に向けて、医療従事者、高齢者等のハイリスク層への早期のワクチン接種を含めて、世界全体でのワクチンへの平等なアクセスを確保する。 | 2年度~5年度 | 1266億5947 |
| 560 | 厚生労働省 | COVAXファシリティ | COVAXファシリティ拠出金 | COVAXファシリティへの参加を通じて、新型コロナウイルス感染症のワクチンを確保して、国際的に公平なワクチンの普及に向けて貢献する。 | 2、4両年度 | 279億7685 |
このうち、最も拠出額が多い「Gaviワクチンアライアンス(イヤーマーク)」は、新型コロナウイルス感染症等の収束に向けて、医療従事者、高齢者等のハイリスク層への早期のワクチン接種を含めて、世界全体でのワクチンへの平等なアクセスを確保するために拠出されたものである。
また、次いで拠出額が多い「COVAXファシリティ拠出金」は、COVAXファシリティへの参加を通じて、新型コロナウイルス感染症のワクチンを確保して、国際的に公平なワクチンの普及に向けて貢献するために拠出されたものである。
ウクライナを支援するために拠出した任意拠出金のうち、拠出額が50億円以上のものは、図表1-11のとおり、4年度又は5年度に拠出した4件となっていた。
図表1-11 ウクライナを支援するために拠出した任意拠出金(拠出額が50億円以上のもの)(令和4、5両年度)
(単位:万円)
| 通番 | 府省庁等名 | 国際機関等名 | 任意拠出金名 | 拠出の対象となった事業等の概要 | 拠出年度 | 拠出額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 354 | 外務省 | 国際連合開発計画 | 国連開発計画拠出金/ウクライナにおける重要エネルギー・インフラの復旧とエネルギー機材の即時提供のための支援 | ウクライナにおける重要エネルギー・インフラの復旧とエネルギー機材の即時提供のための活動を支援する。 | 令和4年度 | 75億6000 |
| 358 | 外務省 | 国際連合開発計画 | 国連開発計画拠出金(日UNDPパートナーシップ基金/戦争による多次元的な危機への対応を通したウクライナにおける人間の安全保障の推進) | 戦争による多次元的な危機への対応を通したウクライナにおける人間の安全保障の推進のための活動を支援する。 | 4年度 | 102億5263 |
| 510 | 財務省 | 国際復興開発銀行 | 国際復興開発銀行ウクライナ復旧・復興基金拠出金 | 国際復興開発銀行のウクライナへの融資に対して、ドナーによる国債の拠出を通じた信用補完を行うことで、世界銀行のウクライナ政府に対する支援枠を拡大し、ウクライナ政府の抱える膨大な財政ニーズを支援する。 | 5年度 | 6850億0000 |
| 606 | 経済産業省 | 国際連合工業開発機関 | ウクライナ復興支援事業補助金 | 我が国が高い技術力を有する農業、DX、省エネ、水素等のグリーン燃料等の分野における我が国の企業及びウクライナの企業の共同事業に対して資金を援助する。 | 5年度 | 257億9947 |
このうち、最も拠出額が多い「国際復興開発銀行ウクライナ復旧・復興基金拠出金」は、国際復興開発銀行がウクライナの復興等のために実施する融資について我が国が信用補完を行うために拠出されたものである。当該拠出は、5年度の拠出国債の発行により行われており、ウクライナが債務不履行に陥って同銀行から償還の請求があった場合に拠出国債が償還されることになっているが、6年度末時点において償還は行われておらず、発行額の全額が未償還額となっていた。なお、財務省は、同銀行の融資は、国際的に優先弁済権が認められていて、その債権の返済は他の債権より優先されることなどから、当該拠出国債の償還が行われることは考えにくいとしている。
また、次いで拠出額が多い「ウクライナ復興支援事業補助金」は、我が国が高い技術力を有する農業、DX、省エネ、水素等のグリーン燃料等の分野における我が国の企業及びウクライナの企業の共同事業に対して資金を援助するために拠出されたものである。
国際機関等に対して出資された出資金は、国有財産法(昭和23年法律第73号)等に基づき、国有財産として管理されており、出資額等を国有財産台帳に記載することとなっている。そして、出資金等の国有財産については、毎年度、当該年度末の現況において、財務大臣の定めるところにより評価(注5)して、その評価額により台帳価格を改定しなければならないこととなっている。
平成30年度から令和5年度までに国際機関等に対して出資された出資金は、6国際機関等の6件であり、出資額は計1兆1581億余円となっていた(図表1-6及び別図表11参照)。また、平成30年度から令和5年度までの間には出資が行われていないものの平成29年度以前に出資が行われていて令和5年度末時点において国有財産台帳に計上されている出資金は、5国際機関等の5件となっていた(別図表12参照)。
そして、これらの6件及び5件の出資金について、国際機関等別に、平成30年度から令和5年度までの出資額、国有財産台帳における5年度末時点の出資累計額(平成29年度以前に出資された額を含む。)及び評価額を確認したところ、図表1-12のとおりとなっていた。30年度から令和5年度までの出資額が最も多かったのは国際開発協会の9053億余円、次いでアフリカ開発基金の1069億余円となっていた。そして、出資累計額が最も多かったのは国際開発協会の5兆8206億余円、次いで国際通貨基金の4兆9954億余円となっていた。また、出資累計額と評価額との差額についてみると、国際開発協会とアフリカ開発基金は、各国から出資された資金を用いて融資等を行うほか、所得水準の低い国に対して無償資金供与を行うなどしているため、いずれも評価額が出資累計額を下回っていた。
図表1-12 国際機関等別の出資額、出資累計額及び評価額(令和5年度末時点)
(単位:万円)
| 通番 | 国際機関等 名 |
平成30年度から令和5年度までの出資額 | 国有財産台 帳上の出資 累計額 |
国有財産台 帳上の評価 額 |
差額 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成 30年度 |
令和 元年度 |
2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | 計 | (A) | (B) | (B-A) | ||
| 717 | アフリカ開発基金 | 128億 7898 |
- | 331億 7655 |
175億 0216 |
- | 433億 7167 |
1069億 2938 |
6578億 0048 |
3896億 7962 |
△2681億 2085 |
| 718 | アフリカ開発銀行 | 25億 9635 |
- | 48億 8371 |
48億 8371 |
48億 8371 |
50億 7541 |
223億 2291 |
665億 8757 |
1119億 9682 |
454億 0924 |
| 719 | 国際開発協会 | 1158億 4880 |
1146億 0957 |
1366億 1300 |
1387億 4533 |
2507億 4493 |
1487億 8376 |
9053億 4539 |
5兆8206億 3546 |
4兆1299億 7237 |
△1兆6906億 6309 |
| 720 | 国際金融公社 | - | - | 19億 3897 |
496億 1334 |
90億 9124 |
- | 606億 4355 |
1063億 8713 |
3713億 1764 |
2649億 3051 |
| 721 | 国際復興開発銀行 | - | 405億 3779 |
- | 119億 9973 |
79億 7281 |
- | 605億 1034 |
2519億 7150 |
6092億 6124 |
3572億 8973 |
| 722 | 米州投資公社 | 8億 1721 |
8億 0262 |
5億 0186 |
1億 6249 |
1億 5900 |
- | 24億 4319 |
95億 0898 |
177億 0305 |
81億 9406 |
| 723 | アジア開発銀行 | - | - | - | - | - | - | - | 1369億 8329 |
1兆2914億 8864 |
1兆1545億 0534 |
| 724 | 欧州復興開発銀行 | - | - | - | - | - | - | - | 687億 8427 |
3041億 4569 |
2353億 6141 |
| 725 | 国際通貨基金 | - | - | - | - | - | - | - | 4兆9954億 0487 |
5兆9175億 0068 |
9220億 9580 |
| 726 | 多数国間投資保証機関 | - | - | - | - | - | - | - | 26億 2125 |
114億 8691 |
88億 6565 |
| 727 | 米州開発銀行 | - | - | - | - | - | - | - | 353億 0772 |
2914億 7889 |
2561億 7116 |
| 計 | 1321億 4135 |
1559億 4998 |
1771億 1409 |
2229億 0678 |
2728億 5171 |
1972億 3085 |
1兆1581億 9479 |
12兆1519億 9259 |
13兆4460億 3159 |
1兆2940億 3900 |
|
拠出金等のうち任意拠出金は、義務的拠出金や出資金と異なり、拠出国等が有益と認めて支援すべきと判断した特定の事業等に対して任意の額を自発的に拠出するものである。そして、拠出国等が拠出した任意拠出金を財源として当該特定の事業等が実施されるが、一般に、拠出国等が直接的に事業等の実施や拠出した資金の管理等に携わることはない。
このため、我が国が拠出した資金が国際機関等に滞留しないよう国際機関等と意思疎通を図り、我が国の意見を反映させるために、次のことが重要となる。
① 拠出前に、国際機関等が実施する事業等に係る計画(以下「事業計画」という。)や拠出の条件等について国際機関等との間で合意すること(以下、国際機関等との合意の内容を定めた文書を「合意書」という。)
② 拠出してから事業等が終了するまでの間(以下「拠出後」という。)に、国際機関等から事業報告及び会計報告を定期的に受領して、事業等の終了後に、事業最終年度の事業報告及び会計報告を受領するとともに、必要に応じて国際機関等に問い合わせるなどして、事業等の実施状況、拠出した資金の状況等を適時適切に把握すること
③ 事業等の終了後に、事業等に使用されることなく余った資金(以下「残余金」といい、残余金のうち我が国の拠出の割合等に応じた返納を要する額を「要返納額」という。)の状況を把握すること
そこで、任意拠出金の拠出に係る手続、拠出前における拠出の条件等に関する合意、拠出後における資金の把握、事業等の終了後における残余金の処理等についてみたところ、次のような状況となっていた。
各府省庁等が実施している任意拠出金の拠出に係る手続について、拠出前、拠出後及び事業等の終了後の各段階における主なものを整理すると、図表2-1のとおりとなっていた。
このように、任意拠出金の拠出に係る手続には様々なものがあることから、会計実地検査を行った14府省庁等において、任意拠出金の拠出に係る手続を組織的かつ計画的に進めるために、府省庁等ごとに統一的な取扱いを定めているかを確認したところ、次のような状況となっていた。
① 外務省は、国際機関等における事業等の進捗状況、資金管理の状況等を的確に把握するために、毎年度、任意拠出金の拠出に係る手続に関する遵守事項等を定めた「分担金・拠出金の取扱いについて」(大臣官房会計課事務連絡)を同省内に周知していた。
② 農林水産省は、任意拠出金の拠出に係る手続のうち一部の手続を同省内の各部局が行う際に、特定の部局(輸出・国際局新興地域グループ)が関与することとして、統一的な運用が確保されるようにしていた。
③ 残りの12府省庁等は、いずれも、任意拠出金の拠出に係る手続について統一的な取扱いを定めていなかった。
任意拠出金の拠出前においては、国際機関等が策定した事業計画とその実施に必要とされる金額を確認するなどして拠出の検討等を行い、拠出額等の拠出の条件等の内容について国際機関等との間で合意を交わすなどして明確にしておくことが重要となる。
そこで、会計実地検査を行った14府省庁等において、任意拠出金の拠出前における国際機関等との間の拠出の条件等に関する合意等の状況をみたところ、任意拠出金の拠出に当たり、事業等の実施のために必要とされる金額を確認しておらず、拠出額の根拠が不明確なまま拠出していた任意拠出金が見受けられた。
上記について、詳細を示すと次のとおりである。
<事例1> 任意拠出金の拠出に当たり、事業等の実施のために必要とされる金額を確認しておらず、拠出額の根拠が不明確なまま拠出していたもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|
| 552 | 国際労働機関 | 厚生労働省 | 国際労働機関拠出金(日本語通訳実施経費) | 計1億1830万余円 |
厚生労働省は、国際労働機関(以下「ILO」という。)が総会を開催する際の日本語通訳費に充てることを目的として、平成30、令和元、3、4、5各年度に「国際労働機関拠出金(日本語通訳実施経費)」計1億1830万余円をILOに対して拠出している。
同拠出金の拠出前における拠出の条件等に関する合意等の状況をみたところ、同省は、ILOとの間で合意書を作成して、会計報告を定期的に提出すること、拠出した資金を管理する銀行口座の残高は全て翌会計年度に繰り越すことなどを定めていたが、合意書には同拠出金の拠出額が記載されていなかった。
そこで、会計検査院が拠出額の根拠を確認したところ、同省は、各年度の同拠出金の拠出に当たり、ILOにおいて事業等の実施のために必要とされる金額を確認しておらず、拠出額の根拠が不明確なまま、各年度とも予算額と同額の2366万余円を拠出していた。
各府省庁等が国際機関等から受領する会計報告には、一般に、我が国が拠出した任意拠出金を含む資金に関して、国際機関等が定める会計期間における収支の状況等が記載されている。
各府省庁等は、会計報告を定期的に受領することなどにより、繰越額を適時に把握することができる。そして、繰越額のうち、事業等に使用する予定がある資金の額と、それ以外の資金(以下「余剰資金」という。)の額を国際機関等に確認することなどにより、追加拠出について検討する際の判断材料とすることや、国際機関等に余剰資金が滞留しないように働きかけることなどが可能となる。
また、会計検査院は、会計報告の提出や拠出金等の繰越等に関する検査の状況を26年報告により報告するなどしている(別図表1参照)。
これらを踏まえて、各府省庁等において、①国際機関等から会計報告を定期的に受領しているか、②繰越額を定期的に把握しているか、③余剰資金の有無等を確認しているかについて、任意拠出金を拠出してから会計報告を受領するまでに一定期間を要することを考慮して、平成30年度から令和3年度までの間に拠出した任意拠出金(5年度末時点で拠出してから2年以上が経過した任意拠出金)426件の状況を確認したところ、図表2-2のとおり、余剰資金が生じているかを把握できていない任意拠出金が見受けられた(別図表13参照)。
図表2-2 会計報告の受領、繰越額の把握及び余剰資金の有無等の確認の状況(令和5年度末時点)
そして、会計報告の受領状況、繰越額の把握及び余剰資金の有無等の確認の状況の詳細については、次のとおりとなっていた。
各府省庁等において、国際機関等から会計報告を定期的に受領しているかを確認したところ、任意拠出金426件のうち382件(426件の89.6%)については定期的に受領していたが、10府省庁等(注6)の44件(同10.3%)については定期的に受領していなかった。
また、国際機関等から定期的に会計報告を受領するためには、会計報告の提出を拠出の条件としてあらかじめ定めておくことが有用であるが、会計報告を定期的に受領していなかった44件のうち7府省庁等(注7)の27件については、合意書に会計報告の提出に関する規定が定められていなかった。(注8)
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2> 合意書に会計報告の提出に関する規定が定められていないなどしていて、会計報告を定期的に受領していなかったもの
| 通番 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|
| 559 | 厚生労働省 | 医療関係の日本企業のアジア展開促進拠出金 | 19億1080万円 |
| 587 | 農林水産省 | 東アジア・アセアン経済研究センター拠出金 | 計1億4483万円 |
| 614 | 経済産業省(本省) | 東アジア経済統合研究協力拠出金(イヤーマーク) | 計108億0024万余円 |
| 615 | 東アジア経済統合研究協力拠出金(ノンイヤーマーク) | 計60億円 | |
| 632 | 経済産業省(資源エネルギー庁) | 東アジア経済統合研究協力拠出金(イヤーマーク) | 計37億9000万円 |
| 633 | 東アジア経済統合研究協力拠出金(ノンイヤーマーク) | 計46億0871万余円 | |
| 636 | 経済産業省(特許庁) | 東アジア経済統合研究協力拠出金 | 計6億円 |
| 705 | 環境省 | 東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)拠出金 | 計8億3000万円 |
| 706 | 東アジア・アセアン経済研究センター拠出金 | 計1億1952万円 | |
| 計 | 288億0411万円 | ||
東アジア・アセアン経済研究センター(以下「ERIA」という。)は、平成18年8月の第13回日ASEAN経済大臣会合における我が国の提唱に基づき、20年6月に東アジア経済統合の推進のための政策研究及び政策提言を行うことを目的として設立された国際機関である。厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び環境省の4省は、30年度から令和5年度までの間に、ERIAに対して9件の任意拠出金(拠出額計288億0411万円)を拠出している。
各任意拠出金について、会計報告の定期的な受領状況をみたところ、表のとおり、厚生労働省、農林水産省及び環境省の3件については、会計報告を定期的に受領していたが、経済産業省及び環境省の6件については、6年1月の会計実地検査時点で、会計報告を定期的に受領していなかった。
また、各任意拠出金について、合意書における会計報告の提出に関する規定の有無を確認したところ、会計報告を定期的に受領していた厚生労働省、農林水産省及び環境省の3件については、当該規定が定められていたが、会計報告を定期的に受領していなかった経済産業省及び環境省の6件のうち経済産業省の5件については、6年1月の会計実地検査時点で、当該規定が定められていなかった。なお、4省は、ERIAに対する拠出について、各省の間で合意書の内容を情報共有していなかった。
そして、会計検査院の検査を受けて、経済産業省がERIAに対して5年度末時点の繰越額を確認したところ、経済産業省(本省)が拠出する「東アジア経済統合研究協力拠出金(イヤーマーク)」及び経済産業省(資源エネルギー庁)が拠出する「東アジア経済統合研究協力拠出金(イヤーマーク)」において、69億9597万余円及び26億0759万余円の繰越額がそれぞれ生じていることが判明した。
| 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 会計報告の定期的な受領の有無 | 合意書における会計報告の提出に関する規定の有無 |
|---|---|---|---|
| 厚生労働省 | 医療関係の日本企業のアジア展開促進拠出金 | 有 | 有 |
| 農林水産省 | 東アジア・アセアン経済研究センター拠出金 | 有 | 有 |
| 経済産業省(本省) | 東アジア経済統合研究協力拠出金(イヤーマーク) | 無 注(1) | 無 注(2) |
| 東アジア経済統合研究協力拠出金(ノンイヤーマーク) | 無 | 無 | |
| 経済産業省(資源エネルギー庁) | 東アジア経済統合研究協力拠出金(イヤーマーク) | 無 | 無 注(2) |
| 東アジア経済統合研究協力拠出金(ノンイヤーマーク) | 無 | 無 | |
| 経済産業省(特許庁) | 東アジア経済統合研究協力拠出金 | 無 | 無 |
| 環境省 | 東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)拠出金 | 有 | 有 |
| 東アジア・アセアン経済研究センター拠出金 | 無 注(3) | 有 |
各府省庁等において、会計報告を確認することなどにより繰越額を定期的に把握しているかをみたところ、会計報告を定期的に受領していた任意拠出金382件のうち324件(382件の84.8%)については、繰越額を定期的に把握していたが、13府省庁等(注9)の58件(同15.1%)については、繰越額を定期的に把握していなかった。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例3> 余剰資金が生じている可能性があることを把握していたのに、国際機関等に問合せを行うなどしておらず、繰越額を把握していなかったもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|
| 559 | 東アジア・アセアン経済研究センター | 厚生労働省 | 医療関係の日本企業のアジア展開促進拠出金 | 19億1080万円 |
厚生労働省は、アジア各国において国際共同治験等の実施体制を構築するための調査及び分析を行うことなどを目的として、平成30年度に、東アジア・アセアン経済研究センター(以下「ERIA」という。)に対して「医療関係の日本企業のアジア展開促進拠出金」19億1080万円を拠出している。
同省は、ERIAから定期的に会計報告を受領していたが、当該会計報告は繰越額が記載されない様式となっていた。
一方、ERIAは、同省の拠出後に、本件事業の一部を外部の研究機関に委託していたが、委託した事業の一部について、当該研究機関が実施する別の事業と内容が重複する可能性があることが判明したため、同省、ERIA及び当該研究機関の3者で協議を行い、当該研究機関の資金も充当して実施することとしていた。そのため、本件事業を実施するために必要な資金の額が拠出時の想定よりも減少して、繰越額及び余剰資金が生じている可能性がある状況となっていた。
このような状況となっていたのに、同省は、本件事業が令和2年度から11年度までの10年間にわたる事業として計画されているものであることから、事業が終了するまでの間は、繰越額を把握して余剰資金の有無等を確認する必要はないとして、ERIAに問合せを行うなどしておらず、繰越額を把握していなかった。
また、繰越額を定期的に把握していた任意拠出金324件のうち繰越額が生じていなかった52件を除いた272件について、余剰資金の有無等を確認しているかをみたところ、229件(272件の84.1%)は確認したとしていたが、8府省庁等(注10)の43件(同15.8%)は確認しなかったとしていた。
そして、繰越額を定期的に把握していなかった13府省庁等及び余剰資金の有無等を確認しなかったとしていた8府省庁等に対して確認したところ、主に次の理由によるとしていた。
① 繰越額の把握や余剰資金の有無等の確認について府省庁等内の統一的な取扱いが定められておらず、担当部局において繰越額を把握する必要があることなどについて認識していなかったため
② 国際機関等の判断を尊重しつつ我が国が国際社会の中で一定のプレゼンスを発揮するためには、繰越額や余剰資金の状況に左右されることなく必要と考えられる任意拠出金を拠出する必要があり、繰越額を定期的に把握して余剰資金の有無等を確認する意義が乏しいと考えたため
しかし、繰越額を適時に把握して余剰資金の有無等を確認することは、事業等を実施するために必要な資金の規模を超える資金を我が国が追加拠出するのを回避することや、国際機関等に余剰資金が滞留しないように働きかけて資金の有効活用を促すことなどにつながると思料される。
平成30年度から令和3年度までの間に拠出した任意拠出金426件のうち、元年度から5年度までの間に追加拠出が行われていたのは384件であり、このうち①会計報告を定期的に受領していなかったものは38件、②繰越額を定期的に把握していなかったものは49件、③余剰資金の有無等を確認しなかったとしていたものは36件となっていた(注11)。
このように、①から③までの任意拠出金計123件を所管する15府省庁等(注12)は、余剰資金が生じているかを把握しておらず、追加拠出に当たり、拠出額が国際機関等において事業等を実施するために必要な資金の規模を超えていないことなどについての確認が十分でなかったおそれがあると認められた。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例4> 繰越額が累増していたのに、余剰資金の有無等を確認しないまま追加拠出を行っていたもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|
| 259 | 東南アジア諸国連合 | 総務省 | 日ASEAN情報通信技術基金 | 計6850万円 |
総務省は、東南アジア諸国連合(以下「ASEAN」という。)のニーズを踏まえつつ、我が国のこれまでの経験及び知見を活用した調査及び研究を共同で実施して、ASEAN地域におけるICTの発展及び我が国ICT産業の国際展開の促進を目指すことを目的として、平成21年度に、ASEANに対して「日ASEAN情報通信技術基金」を拠出し、22年度以降も毎年度追加拠出を行っている。
同省が定期的にASEANから受領していた会計報告によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響等により事業実施件数が減少して支出額が減少したため、繰越額が表のとおり増加しており、令和5年度末の繰越額は59万余米ドル(邦貨換算額8155万余円)となっていた。
しかし、同省は、追加拠出に当たり、ASEANから事業計画の提示を受けて、事業計画に記載された事業費の額を確認した上で拠出しており、また、各国において本件事業の実施要望が多いことを踏まえて、余剰資金の有無等を確認しないまま、平成30年度から令和5年度まで、毎年度同額(10万米ドル)の追加拠出(追加拠出額計6850万円)を行っていた。
なお、同省は、会計検査院の検査を受けて、直近の年度の繰越額と今後の支出見込額等を比較する資料を作成することとし、当該資料を用いるなどして追加拠出について検討することとした。
表 「日ASEAN情報通信技術基金」に係る追加拠出額及び繰越額
| 項目 | 平成30年度 | 令和元年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 追加拠出額 | (米ドル) (円) |
100,000 11,200,000 |
100,000 11,000,000 |
100,000 11,000,000 |
100,000 10,800,000 |
100,000 10,800,000 |
100,000 13,700,000 |
| 繰越額 | (米ドル) | 331,567 (37,135,566) |
375,054 (41,256,029) |
399,598 (43,955,850) |
454,092 (49,041,974) |
520,108 (56,171,740) |
595,324 (81,559,520) |
一方、余剰資金の有無等を確認したとしていた任意拠出金229件((イ)参照)のうち、元年度から5年度までの間に追加拠出が行われていた215件について、余剰資金の有無等の確認方法をみたところ、3府省庁等(注13)の任意拠出金4件については、国際機関等への問合せや、繰越額の使用予定が明記された関係資料等により確認するのではなく、事業報告に記載された事業成果に関する情報等により余剰資金がないと判断したなどとしていて、余剰資金の有無等についての確認方法が適切ではなかったと認められた。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例5> 追加拠出に当たり、余剰資金の有無等についての確認方法が適切ではなかったもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|
| 652 | 国際連合(地域開発センター/主要執行理事会/経済社会局) | 国土交通省 | 国際連合(地域開発センター/主要執行理事会/経済社会局)拠出金 | 計4億1119万余円 |
国土交通省は、世界の水防災に貢献することを目的として、平成30年度から令和5年度までに、「国際連合(地域開発センター/主要執行理事会/経済社会局)拠出金」計4億1119万余円を拠出している。同拠出金は、国際連合の地域開発センター(以下「UNCRD」という。)、主要執行理事会及び経済社会局の3部局に対して資金を拠出するものであり、同拠出金の拠出額のうちUNCRDに対する拠出額は1億9800万余円(170万余米ドル)となっている。
同省は、UNCRDから定期的に事業報告及び会計報告を受領しており、会計報告等によると、表のとおり、繰越額は増加しており、5年度末の繰越額は60万余米ドル(邦貨換算額8225万余円)となっていた。
そして、同省は、事業報告及び国際会議で得られた事業成果に関する情報に基づき、同拠出金による事業が十分な成果を上げていることから、余剰資金は生じていないと判断したとしていた。
しかし、事業が成果を上げているかどうかということと、余剰資金が生じているかどうかということは、性質が異なる事柄であり、同省における余剰資金の有無等についての確認方法は適切ではなかったと認められる。
また、2年度以降の繰越額のうち12万余米ドル(邦貨換算額1386万余円)は、主要執行理事会からUNCRDに振り替えられた資金であるが、同省は、当該資金が同省がUNCRDに対して拠出した資金と合わせて使用することができる資金かどうかについても把握していなかった。
| 項目 | 令和元年度 | 2年度 | 3年度 | 4年度 | 5年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 拠出額 | (米ドル) (円) |
310,000 34,100,000 |
278,100 30,591,000 |
356,400 38,491,200 |
316,832 34,217,856 |
442,365 60,604,005 |
| 繰越額 | (米ドル) | 148,674 (16,354,140) |
注(2)285,877 (31,446,470) |
362,697 (39,171,276) |
465,301 (50,252,508) |
600,434 (82,259,458) |
元年12月に新型コロナウイルス感染症が確認されて以降、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、国際的な人の往来が制限され、また、各国において、外出や職場への出勤の自粛、会議等の開催制限、各種施設の使用制限等の措置が実施されるなどして、国際機関等が行う各種の活動についても大きな影響を受けた。
そこで、平成30年度から令和5年度までの間に拠出された任意拠出金であって、拠出額が50億円以上のものについて、新型コロナウイルスの感染拡大等による影響を確認したところ、拠出の対象となった事業等に進捗の遅れや計画の変更等が生じている任意拠出金が10件見受けられた。
そして、当該10件のうち8件は、繰越額を定期的に把握して余剰資金の有無等を確認したとしていた任意拠出金であったが、2件は、繰越額を定期的に把握していなかった任意拠出金であった。
当該2件については、新型コロナウイルスの感染拡大等の影響により、事業の実施期間が延長され、又は拠出の対象となった事業の内容が一部変更されるなどしていたが、これらの任意拠出金を所管する外務省は、繰越額を定期的に把握しておらず、余剰資金が生じているかを把握していなかった。そのため、事業等の進捗の遅れや計画の変更等に伴う資金需要の変化を捉えて、国際機関等に余剰資金が滞留しないよう適時適切に働きかけを行うことができる状況となっていなかった(繰越額を定期的に把握していなかった任意拠出金に係る新型コロナウイルスの感染拡大等の影響については別図表14参照)。
各府省庁等は、任意拠出金の拠出前に会計報告の提出を拠出の条件とする合意を行うことにより、拠出後に国際機関等から会計報告を定期的に受領するとともに、会計報告等により繰越額を定期的に把握した上で、余剰資金の有無等を国際機関等に問い合わせるなどして、拠出した資金の状況等を適時適切に把握する必要がある。
特に、国際機関等において追加の資金需要が生じた場合や、拠出の対象となった事業等に進捗の遅れや計画の変更等が生じているような場合には、余剰資金の有無等の確認を確実に行い、国際機関等における資金需要の変化を捉えて、国際機関等に余剰資金が滞留しないよう適時適切に働きかけを行うことができるようにする必要がある。
任意拠出金の拠出の対象となった事業等が終了した後、残余金が発生している場合には、我が国と国際機関等との間でその取扱いに関する協議を行い、要返納額の返納等の残余金の処理が行われる。
また、会計検査院は、拠出金等の返納に関する検査の状況を26年報告により報告するなどしている(別図表1参照)。
これらを踏まえて、事業等の終了後における残余金の処理等についてみたところ、次のような状況となっていた。
平成30年度から令和5年度までの間に拠出が行われた任意拠出金487件について、合意書に残余金の取扱いに関する規定が定められているかを確認したところ、240件(487件の49.2%)については、当該規定が定められていた(注14)が、247件(同50.7%)については、当該規定が定められていなかった。
そして、合意書に残余金の取扱いに関する規定が定められていた240件について、当該規定の内容をみると、図表2-3のとおり、拠出国等に返納することなどとなっていた。
| 規定の内容 | 件数 |
|---|---|
| 拠出国等に返納する | 122 |
| 国際機関等と拠出国等が協議を行う | 85 |
| 同一の拠出金により実施している他の事業に振替等を行う | 28 |
| その他 | 5 |
| 計 | 240 |
また、合意書に残余金の取扱いに関する規定が定められていなかった247件の任意拠出金について、各府省庁等に確認したところ、主に次の理由によるとしていた。
① 国際機関等との間に信頼関係があり、合意書に残余金の取扱いに関する規定が定められていなくても返納に向けた協議を円滑に行うことができると考えたため
② 残余金の取扱いに関する規定を合意書に定めることについて認識していなかったため
③ 事業等の終了後における残余金の処理は国際機関等の判断等に基づいて行われると認識していたため
しかし、事業等の終了後における残余金の処理が速やかに行われるようにするためには、残余金の取扱いについて拠出の条件としてあらかじめ合意書に定めておくことが有用であると思料される。
各府省庁等において、事業等の終了後、速やかに残余金の発生状況を把握しているかについて、平成30年度から令和4年度までの間に事業等の終了予定時期が到来した任意拠出金(5年度末時点で終了予定時期から1年以上が経過した任意拠出金)171件の状況を確認した。その結果、168件(171件の98.2%)については、残余金の発生状況を把握しており、このうち残余金が生じていたものが79件(注15)、残余金が生じていなかったものが89件となっていた。一方、3府省庁等(注16)の3件(同1.7%)については、残余金の発生状況を把握していなかった(別図表15参照)。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例6> 事業最終年度の事業報告及び会計報告が提出されていないのに、事業の進捗状況や会計報告の作成状況について国際機関等に問い合わせるなどしておらず、残余金の発生状況を把握していなかったもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|
| 646 | 国際民間航空機関 | 国土交通省 | 国際民間航空機関アジア太平洋地域航空安全情報分析・共有実証事業に対する拠出金 | 計1110万円 |
国土交通省は、我が国の航空会社や旅客の安全性を向上させるなどのために、アジア太平洋地域における航空安全情報の分析及び共有の実証事業を実施することを目的として、平成30、令和元両年度に、国際民間航空機関(以下「ICAO」という。)に対して「国際民間航空機関アジア太平洋地域航空安全情報分析・共有実証事業に対する拠出金」計1110万円を拠出している。
本件事業は、当初、平成29年度から令和2年度までの時限的な事業として実施される予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により事業の実施期間が延長され、事業終了予定時期は3年12月となっていた。また、当該拠出金の合意書にはICAOが我が国に対して定期的に事業報告及び会計報告を提出することなどが定められていた。
しかし、同省は、事業終了予定時期が到来して以降、ICAOから事業最終年度の事業報告及び会計報告が提出されていないのに、事業の進捗状況や会計報告の作成状況についてICAOに問い合わせるなどしておらず、残余金の発生状況を把握していなかった。
なお、同省は、6年2月に会計検査院の検査を受けた後、本件事業が終了していることは確認できたものの、事業最終年度の事業報告及び会計報告を作成するために必要な会議等の開催日が決定されていないなどのため、7年3月末時点で残余金の発生状況を把握できていない。
事業等の終了後において残余金が生じていた任意拠出金79件について、残余金の処理の状況を確認したところ、図表2-4のとおり、5年度末時点で、要返納額が我が国に返納済みとなっていたものが39件(返納額計23億2883万余円)、返納の手続中のものが22件となっていた。
| 残余金の処理の状況 | 件数 |
|---|---|
| 我が国に返納済み | 39 |
| 同一の拠出金により実施している他の事業に振替済み | 26 |
| 返納の手続中 | 22 |
| 振替等の手続中 | 15 |
| その他 | 6 |
| 計 | 79 |
返納済みとなっていた39件について、事業等の終了時期から要返納額が返納されるまでに要した期間をみたところ、図表2-5のとおり、大半の任意拠出金については3年以内に返納されていたが、3年超を要したものも5件見受けられた(別図表15参照)。
図表2-5 事業等の終了時期から要返納額が返納されるまでに要した期間
| 要した期間 | 1年以内 | 1年超2年以内 | 2年超3年以内 | 3年超 |
|---|---|---|---|---|
| 件数 | 10 | 17 | 7 | 5 |
| 累計件数 | 10 | 27 | 34 | 39 |
また、返納の手続中となっていた22件について、事業等の終了時期からの期間をみたところ、5年度末時点で、事業等の終了時期から3年を超えているものが8件見受けられた(別図表15参照)。
残余金の取扱いについて定めた合意書の規定に基づいて速やかに要返納額の返納が完了していた参考事例を示すと次のとおりである。
<参考事例> 残余金の取扱いについて定めた合意書の規定に基づいて速やかに要返納額の返納が完了していたもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|
| 590 | ASEAN事務局 | 農林水産省 | ASEAN事務局拠出金 | 計13億2212万余円 |
農林水産省は、ASEAN諸国のフードバリューチェーンの構築等に寄与することを目的として、平成30年度から令和5年度までに、ASEAN事務局に対して「ASEAN事務局拠出金」計13億2212万余円を拠出している。
同省は、省内の統一的な運用として、残余金について国際機関等が同省と協議の上で適切に処理することなどを合意書に定めることとしており、同拠出金の拠出に当たっても、当該内容が合意書に定められていた。
同拠出金により平成30年度から令和5年度までの間に実施された10事業のうち4事業は、5年度末時点において事業が終了しており、このうち3事業については、残余金が生じていた。
同省は、当該3事業について、合意書の規定に基づいてASEAN事務局と要返納額の返納に向けた協議を行い、いずれの事業についても事業終了後1年以内に返納が完了しており、我が国に計1億6552万余円が返納されていた。
各府省庁等は、事業等の終了後、適時適切に残余金の発生状況を把握して、残余金が生じている場合には、合意書に定められた残余金の取扱いに関する規定に基づくなどして、国際機関等との間で協議を行い、要返納額の返納等の残余金の処理が速やかに行われるよう努める必要がある。
国際機関等に拠出された任意拠出金には、近年は拠出が行われていないものの、拠出の対象となった事業等の性質、国際情勢の変化に伴う事業計画の変更等により、事業等が休止したままとなっているものや、事業等の終了後の手続に長期間を要しているものが含まれている可能性がある。
長期未完了任意拠出金について確認したところ、長期未完了任意拠出金は28件あり、当該28件の5年度末時点における事業等の実施状況をみたところ、図表3-1のとおり、事業等が実施中のものが24件(28件の85.7%)となっていた(別図表16及び別図表17参照)。
図表3-1 長期未完了任意拠出金に係る事業等の実施状況(令和5年度末時点)
(単位:件)
| 事業等が実施中 | 事業等が休止中 | 事業等の終了後の手続中 | 計 |
|---|---|---|---|
| 24 | 1 | 3 | 28 |
一方、残りの4件のうち1件については、事業等が休止中となっていたが、当該任意拠出金を所管する財務省は、事業等の実施状況及び資金の状況を適切に把握していなかった。
上記について、詳細を示すと次のとおりである。
<事例7> 事業等の実施状況及び資金の状況を適切に把握していなかったもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 最終拠出年度である平成15年度の拠出額 |
|---|---|---|---|---|
| 751 | 国際連合貿易開発会議 | 財務省 | 国連貿易開発会議・特恵技術援助計画拠出金 | 3050万円 |
財務省は、開発途上国において我が国の特恵関税制度を周知して、その利用を促進することにより、開発途上国の輸出振興に資することなどを目的として、平成15年度に、国際連合貿易開発会議(以下「UNCTAD」という。)に対して、「国連貿易開発会議・特恵技術援助計画拠出金」3050万円を拠出しており、その後、追加拠出は行われていない。
会計検査院は、同拠出金について、国際情勢等の変化により、UNCTADにおいて事業が延期されるなどして事業の実施期間が長期化していて、25年度第1四半期までは事業が休止されていたこと、25年度第2四半期から新たな事業が開始されたことなどを26年報告により報告している。また、同拠出金に係る合意書には、UNCTADが毎年度会計報告を提出することが定められている。
そこで、同省に対して、同拠出金に係る25年度第2四半期以降の事業等の実施状況及び資金の状況を確認したところ、同省は、令和4年度以降の事業報告及び会計報告がUNCTADから提出されていないのに、UNCTADに事業報告及び会計報告の提出を促すなどしておらず、事業等の実施状況及び資金の状況を把握していなかった。
会計検査院の検査を受けて、同省がUNCTADに確認したところ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により事業が中止されるなどして事業の休止状態が長期化したことなどから、UNCTADの運用方針に基づき4年度以降は会計報告を提出していなかったとのことであった。そして、UNCTADには、6年4月末時点で、余剰資金6万余米ドル(邦貨換算額866万余円)が滞留している状況となっていた。
各府省庁等は、拠出の対象となった事業等が長期にわたり休止して、国際機関等に余剰資金が滞留することのないよう、必要に応じて国際機関等に問い合わせるなどして、事業等の実施状況、資金の状況等を適時適切に把握する必要がある。
我が国は、国際機関等と協調して国際社会が直面する諸課題の解決に向けて取り組むことにより、国際社会の平和、安定等に貢献し、これにより国益を確保することなどを目的として、多様な分野において専門性を有する国際機関等に対して、毎年度、多額の拠出等を行っており、当該拠出等については、国民の理解を得るための情報開示の充実が求められている。
また、会計検査院は、拠出金等に係る情報開示に関する検査の状況を26年報告により報告するなどしている(別図表1参照)。
さらに、衆議院財務金融委員会及び参議院財政金融委員会は、特定の国際機関への加盟に伴う措置に関する法律を改正する法律案の議決に際して、国際機関の活動や我が国の貢献について国民の理解を得るために、広報活動や情報公開のより一層の充実に努めることなどとする附帯決議をそれぞれ行っている。
これらを踏まえて、拠出金等に係る情報開示についてみたところ、次のような状況となっていた。
外務省は、毎年度、18府省庁等(注17)に対して拠出等の状況についての報告(以下「実績報告」という。)の作成を依頼し、18府省庁等から提出された実績報告を取りまとめて拠出金等報告書等として公表するなどしている。
そこで、平成30年度から令和3年度まで(注18)の間に拠出等を行った拠出金等(義務的拠出金214件、任意拠出金424件及び出資金6件)に関する情報が、拠出金等報告書等に含まれていたかを確認したところ、図表4-1のとおり、9府省庁等(注19)が拠出した義務的拠出金10件(注20)(拠出額計41億1682万余円)及び任意拠出金48件(拠出額計1595億2082万余円)については、実績報告に記載されておらず、これらの拠出金に関する情報が拠出金等報告書等に含まれていなかった(別図表18参照)。
図表4-1 拠出に係る情報が拠出金等報告書等に含まれていなかった拠出金(実績報告に記載されていなかった拠出金がある9府省庁等に係るもの)
(単位:件、万円)
| 拠出金の種類 | 平成30年度 | 令和元年度 | 2年度 | 3年度 | 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数(注) | 金額 | |
| 義務的拠出金 | 10 | 10億3189 | 10 | 10億3224 | 10 | 10億1545 | 10 | 10億3722 | 10 | 41億1682 |
| 任意拠出金 | 28 | 129億2275 | 26 | 92億5918 | 29 | 869億0433 | 29 | 504億3455 | 48 | 1595億2082 |
| 計 | 38 | 139億5465 | 36 | 102億9142 | 39 | 879億1979 | 39 | 514億7177 | 58 | 1636億3765 |
そして、9府省庁等は、実績報告に記載しなかったことについて、主に次の理由によるとしていた。
① 各府省庁等内において担当部局に作成依頼がなされなかったため
② 外務省が各府省庁等に実績報告の作成を依頼した際の作成要領において、非国家間機関等に対する拠出等が作成対象となるかどうかが明確になっておらず、担当部局において非国家間機関等に対する拠出等は作成対象ではないと誤認したため
③ 担当部局において、前年度に実績報告を作成した拠出金等のみが作成対象であると誤認したため
また、外務省は、会計検査院が検査の対象とした24府省庁等のうち6府省庁等(注21)については、実績報告の作成対象としていなかったが、6府省庁等が拠出した拠出金に関する情報は、各府省庁等が作成する財務書類に拠出金名、拠出額等が記載されるなどして公表されていた。なお、6府省庁等が、平成30年度から令和3年度までの間に拠出した拠出金は、義務的拠出金12件(拠出額計4億8857万余円)及び任意拠出金2件(拠出額計2767万余円)となっており、出資金は出資されていなかった(拠出に係る情報が拠出金等報告書等に含まれていなかった拠出金については、図表4-2及び別図表19参照)。
図表4-2 拠出に係る情報が拠出金等報告書等に含まれていなかった拠出金(実績報告の作成対象とされていなかった6府省庁等に係るもの)
(単位:件、万円)
| 拠出金の種類 | 平成30年度 | 令和元年度 | 2年度 | 3年度 | 計 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数(注) | 金額 | |
| 義務的拠出金 | 12 | 1億2738 | 12 | 1億2802 | 11 | 1億1569 | 11 | 1億1747 | 12 | 4億8857 |
| 任意拠出金 | 2 | 896 | 2 | 633 | 2 | 624 | 2 | 613 | 2 | 2767 |
| 計 | 14 | 1億3634 | 14 | 1億3436 | 13 | 1億2193 | 13 | 1億2360 | 14 | 5億1625 |
義務的拠出金に係る情報開示については、平成30年度の拠出は、拠出金等報告書において公表され、令和元年度以降の拠出は、拠出金等報告書では公表されておらず、外交青書において公表されている。
そこで、平成30年度の拠出について拠出金等報告書において公表されている情報の内容と、令和元年度から5年度までの拠出について外交青書において公表されている情報の内容を比較したところ、平成30年度の拠出について拠出金等報告書には、義務的拠出金の拠出件数、拠出総額等の拠出の全体的な情報に加えて、各義務的拠出金の拠出金名、府省庁等名、拠出先の国際機関等名、拠出額等の拠出の個別的な情報が記載されていた。これに対して、令和元年度から5年度までの拠出について外交青書には、義務的拠出金、任意拠出金及び出資金の合計額のほか、外務省が拠出した義務的拠出金のうち、拠出した額が多い上位50国際機関等について、国際機関等名と当該国際機関等に拠出した額等が記載されているものの、それ以外の義務的拠出金については、拠出の個別的な情報は記載されていなかった。
そして、同省によると、平成30年度以前の拠出については、参考として義務的拠出金の情報も拠出金等報告書により公表していたが、令和元年度以降の拠出については、我が国が国際機関等の活動や事業を有益と認めて我が国の知恵を生かす場としてふさわしいと判断する場合に相当と考えられる額を拠出する任意拠出金と出資金のみを拠出金等報告書による公表の対象とすることにしたとしている。
しかし、国際機関等の事務局運営費等に充てるための資金として我が国が負担している義務的拠出金についても、多様な分野において専門性を有する国際機関等に対して、毎年度、多額の拠出等を行っており、拠出金名、拠出額、拠出先の国際機関等名等の基本的な情報について開示することの重要性に変わりはないと思料される。
任意拠出金のうちイヤーマーク拠出金については、拠出金等報告書に、拠出金の概要として拠出金の目的や使途等を記載することとなっている。また、拠出金等報告書には、各年度に各府省庁等が拠出した拠出金について記載することとなっており、イヤーマーク拠出金の使途を変更した場合であっても、実績報告の作成対象となる年度に拠出が行われていない拠出金については記載することとなっていない(図表4-3参照)。
図表4-3 使途が変更された年度に拠出が行われていない場合の情報開示の概念図
そこで、各府省庁等と国際機関等との協議に基づき事業計画が変更されるなどして、合意書における使途が変更された任意拠出金について、使途が変更されたことが公表されているかを確認したところ、拠出前に合意していた使途から使途が変更されたことが公表されていない任意拠出金が見受けられた。
上記について、詳細を示すと次のとおりである。
<事例8> 拠出前に合意していた使途から使途が変更されたことが公表されていないもの
| 通番 | 国際機関等名 | 府省庁等名 | 任意拠出金名 | 拠出額(平成30年度~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|
| 560 | COVAXファシリティ | 厚生労働省 | COVAXファシリティ拠出金 | 計279億7685万余円 |
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症のワクチンを共同購入する国際的な仕組みへ参加することを目的として、令和2年度に、COVAXファシリティに対して「COVAXファシリティ拠出金」171億7685万余円(1億5615万余米ドル)を拠出している。同拠出金は、合意書において自国用ワクチン購入事業に使途を特定して拠出を行ったイヤーマーク拠出金となっていた。なお、同拠出金の拠出に必要な予算は、「令和2年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用について」(令和2年9月閣議決定)により、「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンを共同購入する国際的な仕組みへの参加に必要な経費」として措置されたものである。当該予備費の使用(注)について、内閣は3年12月に「令和2年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書」を第207回国会(臨時会)に提出し、4年5月に国会において承諾されている。
同省は、2年10月に拠出した後、4年3月に、合意書における使途を自国用ワクチン購入事業から途上国用ワクチン購入支援事業に変更しており、我が国が拠出した資金のうち未使用額1億5111万余米ドル(邦貨換算額166億2276万円)は、途上国用ワクチン購入支援事業に充てられることとなっていた(図参照)。そして、同省は、当該使途の変更について、自国用ワクチンを別途確保することができたことから、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大していた状況の下で国際貢献に資するための事業に柔軟に振替を行ったものであるとしていた。
図 COVAXファシリティにおけるワクチン共同購入の仕組み
同拠出金に関する拠出金等報告書における情報開示の状況について確認したところ、次のとおり、使途を変更したことを含めて同拠出金に関する情報は公表されていなかった。
① 同省は、非国家間機関であるCOVAXファシリティに対する拠出について実績報告の作成対象ではないと誤認し、同拠出金について実績報告に記載しておらず、同拠出金に関する情報は、2年度の拠出に係る拠出金等報告書において公表されていなかった。
② 使途が変更された3年度には追加拠出が行われておらず、同拠出金に関する情報は、3年度の拠出に係る拠出金等報告書において公表されていなかった。
③ 同省は、4年度に、途上国用ワクチン購入支援事業に使途を特定して108億円を追加拠出していたが、2年度に拠出した際と同様に、同拠出金について実績報告に記載しておらず、同拠出金に関する情報は、4年度の拠出に係る拠出金等報告書においても公表されていなかった。
また、同省は、2年度に自国用ワクチン購入事業に使途を特定して拠出した資金の使途を変更して、当該資金のうち未使用額が途上国用ワクチン購入支援事業に充てられることとなったことについて、拠出金等報告書以外の方法によっても公表していなかった。
なお、同省は、当該使途の変更については、途上国での感染症対策が国内の感染症対策にも資することなどから、拠出した資金が予備費使用決定における目的の費途以外に使用されることになるものではないとしている。
また、残余金が生じていた任意拠出金79件((2)エ(イ)参照)のうちイヤーマーク拠出金は75件となっており、これらの拠出金に係る残余金の処理の状況を確認したところ、2府省庁等(注22)の2件については、図表4-4のとおり、各府省庁等と国際機関等との協議に基づき、拠出前に合意した使途とは別の使途に残余金を振り替えていた。そして、2府省庁等は、拠出前に合意した使途とは別の使途に残余金を振り替えたことについて公表していなかった。
図表4-4 拠出前に合意した使途とは別の使途に残余金を振り替えていたもの
| 通番 | 府省庁等名 | 国際機関等名 | 任意拠出金名 | 残余金の処理方法 | 振り替えられた残余金額の計(平成30~令和5年度) |
|---|---|---|---|---|---|
| 597 | 経済産業省 | アジア太平洋経済協力 | アジア太平洋経済協力推進拠出金(APEC/PSU) | 国際機関等の運営経費に振替 | 210,575米ドル |
| 479,641シンガポールドル | |||||
| 708 | 環境省 | 水俣条約事務局 | 有害廃棄物等の環境上適正な管理事業等拠出金 | 別の拠出金(水銀に関する水俣条約拠出金)(通番683)により実施している事業(2019年アジア太平洋地域準備会合開催支援)に振替 | 15,000米ドル |
国際機関等に拠出された任意拠出金には、近年は拠出が行われていないものの、事業等が長期にわたり実施されるものがある。一方、拠出金等報告書には、各年度に各府省庁等が拠出した拠出金について記載することとなっており、実績報告の作成対象となる年度に拠出が行われていない拠出金については記載することとなっていない(図表4-5参照)。
図表4-5 平成30年度以降に追加拠出が行われていない場合の情報開示の概念図
そこで、長期未完了任意拠出金28件について、事業等の実施状況に係る情報が、行政事業レビューシートや、これらの拠出金を所管している5府省庁等(注23)のウェブサイト等において公表されているかを確認したところ、一部の拠出金を除いて公表されていることを確認できなかった(注24)。
各府省庁等は、拠出金等に係る情報開示が確実に行われるようにするとともに、義務的拠出金の基本的な情報についての開示の在り方について検討を行い、より一層の情報開示を行うことが重要である。また、拠出後に使途を変更した任意拠出金や、近年は追加拠出が行われていないものの事業等の実施期間が長期にわたっている任意拠出金等に関する情報について公表する方法を検討することが重要である。