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  • 昭和42年度|
  • 第2章 国の会計|
  • 第5節 各所管別の事項

農林省


第5 農林省

(一般会計)

 昭和42年度歳入歳出決算額は、歳入309億3160万余円、歳出6167億6972万余円で、歳出決算額のうちおもなものは、食糧管理ほか5特別会計に対する繰入金3082億9214万余円、地方公共団体等の施行する事業に対する国庫補助金、負担金、交付金および補給金2343億7296万余円、国が直轄でまたは道県に委託して施行した土地改良等の事業費319億1162万余円である。上記の国庫補助金は201費目2074億4002万余円に上っており、そのうち公共事業関係は土地改良、災害復旧等の事業に対する114費目1503億5281万余円であり、公共事業関係以外は農業構造改善事業等に対する87費目570億8721万余円となっている。

 国が直轄で施行した工事については、かんがい排水事業、開墾建設事業、漁港修築事業等107億9513万余円につき実地に検査したところ、別項記載のとおり、直轄工事の施行が設計と相違しているもの があり、また、土地改良事業における直轄工事の予定価格の積算について 、43年11月、農林大臣あて改善の意見を表示した。

 公共事業関係の国庫補助金については、その事業の実施および経理につき実地に検査したところ、別項記載のとおり、国庫補助金等の経理当を得ないもの がある。

 公共事業関係を除く国庫補助金等については、その交付および使用の状況につき実地に検査したところ、別項記載のとおり、農業構造改善事業等において国庫補助金の経理当を得ないもの農業改良資金助成補助金を財源とする都道府県の貸付金の運営当を得ないもの がある。

 なお、災害復旧事業については、事業費査定の適否につき実地に検査したところ、別項記載のとおり、査定額を減額させたもの がある。

 上記のほか、次のとおり留意を要すると認められるものがある。

 (かんがい排水事業の施行について)

 かんがい排水事業は、土地改良法(昭和24年法律第195号)に基づいて農業生産の基盤の整備および開発を図り、もって農業の生産性の向上、農業構造の改善等に資することを目的として施行しているものである。

 しかして、都道府県が国の補助を受けて施行したかんがい排水事業のうち、宮城県ほか35都府県において、昭和38年度以降に事業が完了しまたは現在継続して施行中の222地区、受益面積431,388ヘクタール、事業費1104億3862万余円(国庫補助金相当額552億6625万余円)についてその施行状況を調査したところ、89地区において、事業の施行中または完了後、住宅、工場用地等農業目的以外の用途に本事業の受益地の一部が転用され、農業生産の基盤の整備が必ずしも期待どおり行なわれているとは認められないものが14,387ヘクタールあり、また、本事業の受益地の全部または一部が都市計画による住居地域、工業地域等として指定され将来農業地域として存続するのは周辺の状況からみて困難となっていると認められるものも32,433ヘクタールに上っており、これらは、主として事業着手後継続して工事を施行している間に情勢が変化したことによるものと認められるが、なかには、事業採択当時すでに上記の指定が行なわれていた地域をも受益地として採択したものもある状況である。

 ついては、今後事業採択にあたっては、関係行政庁との間の連絡調整を十分に行なって適切な計画のものを採択するように努めるとともに、着工後における状況の変化についての対応策を考慮するなど適切な処置を講ずるよう配慮の要があると認められる。

(食糧管理特別会計)

 本特別会計の昭和42年度中に取り扱った食糧等の所要経費は、買入費1兆4969億6887万余円、集荷、運搬、保管等に要する管理費545億5737万余円ならびに食糧証券の償還および利子支払等に充てるための国債整理基金特別会計への繰入れ5385億9584万余円等総額2兆1214億2713万余円で、この財源には、食糧等の売払代1兆0300億7397万余円、一般会計から受入れ2466億9695万余円、食糧証券収入8400億5100万円等総額2兆1271億2316万余円を充当している。

 しかして、本特別会計は、国内米管理、国内麦管理、輸入食糧管理、農産物等安定、輸入飼料、業務および調整の各勘定に区分して経理されており、

(1) 国内米管理勘定、国内麦管理勘定および輸入食糧管理勘定の損益についてみると、

 (ア) 国内米管理勘定においては、国内米の買入れ989万余トン(トン当り平均129,759円)、売渡し742万余トン(トン当り平均109,892円)等によって生じた売買損失1385億0902万余円と集荷、運搬、保管および事務人件費等の費用から違約金等の収益を差し引いた額(以下「中間経費」という。)1037億5961万余円とにより2422億6863万余円の損失を生じており、

 (イ) 国内麦管理勘定においては、国内麦類の買入れ96万余トン(トン当り平均大麦46,502円、はだか麦53,810円、小麦52,007円)、売渡し94万余トン(トン当り平均大麦28,442円、はだか麦30,629円、小麦32,328円)等によって生じた売買損失193億3085万余円と中間経費57億7257万余円とにより251億0343万余円の損失を生じており、

 (ウ) 輸入食糧管理勘定においては、外国米の買入れ36万余トン(トン当り平均62,984円)、売渡し36万余トン(トン当り平均85,549円)および外国麦類の買入れ296万余トン(トン当り平均29,316円)、売渡し293万余トン(トン当り平均35,941円)によって生じた売買利益280億9189万余円と中間経費67億3563万余円とにより差引き213億5625万余円の利益を生じている。

 上記各勘定の利益213億5625万余円および損失2673億7206万余円を調整勘定へ移して整理した結果、2460億1580万余円の損失を生じたので、その損失相当額を一般会計から受け入れた調整資金の42年度末現在額2480億1193万余円(うち42年度受入額2415億円)から減額して処理した。

(2) 農産物等安定勘定および輸入飼料勘定の損益についてみると、

 (ア) 農産物等安定勘定においては、でん粉の売渡し1万余トン(トン当り平均75,201円)によって生じた売買利益3億4535万余円と中間経費2091万余円とにより差引き3億2444万余円の利益を生じたので、これを積立金として積み立てることとしている。

 (イ) 輸入飼料勘定においては、飼料用外国麦類等の買入れ184万余トン(トン当り平均28,244円)、売渡し167万余トン(トン当り平均27,585円)等によって生じた売買損失10億3163万余円と中間経費20億7726万余円とにより31億0890万余円の損失を生じており、一般会計から34億円を受け入れてこれを補てんしている。

検査の結果、次のとおり留意を要すると認められるものがある。

 (輸入食糧等のはしけ運送における敷物の使用および量目調整について)

 食糧庁で、昭和42年度中、外国産の米穀および麦類(以下「輸入食糧等」という。)512万余トンの買入れにあたり、本船から輸入港港頭倉庫またはサイロ等に庫入れするなどに要した経費は総額50億2966万余円に上っている。

 しかして、上記輸入食糧等の荷さばき状況を調査したところ、本船からはしけに沖取りのうえ庫入れした277万余トンについては、汚損を防止するなどのためはしけに敷物を使用させ、その経費として1億1865万余円を要しているが、輸入港におけるはしけの保有状況をみると、近年、鋼船の新造等はしけの改良が行なわれて、良好な状態のはしけが増加しており、しかも、食糧運送にあたってはそれに適したはしけが優先して使用されている状況などを考慮すれば、敷物を使用する必要が少なくなっているものと認められる。

 ついては、上記の状況からみて、一律に敷物を使用させることなく、はしけの状態に応じ、食糧庁が必要やむを得ないと認めたものについてだけこれを使用することとして経費の節減を図るよう配慮の要があると認められる。

 また、外国砕米8万余トンについては、積地において袋詰めしたものの正味重量が均一でないため、輸入港で袋ごとに計量のうえ正味重量が100キログラムとなるよう量目の調整を実施させ、その経費として1523万余円を要しているが、本件砕米は酒類、味そ等の原料として実需者に多量の売渡しをしているものであるから、多額の経費を要してまで袋ごとに開袋のうえ量目調整を行なわなくてもとくに差しつかえがあるとは認められない状況である。

 ついては、上記の実態を考慮し、袋ごとに量目調整を行なうことに代え、経済的かつ適切な方途を講じ、経費の節減を図るよう配慮の要があると認められる。

 (飼料小麦の売渡予定価格の積算について)

 食糧庁で、飼料需給安定法(昭和27年法律第356号)に基づき、昭和42年度中、外国小麦(以下「飼料小麦」という。)121万余トンを総額351億9843万余円で買い入れ、ふすまの増産を図るため、日本製粉株式会社小樽工場ほか157工場に対し、108万余トンを総額314億0154万余円で売り渡しているが、その売渡価格は、飼料の需給および価格の安定を図りもって畜産の振興に寄与するよう考慮して決定されており、結局、本件売渡しに関する本特別会計の財政負担額は約11億円に上っている。

 しかして、本件飼料小麦の売渡しにあたっては、ふすまの生産量を買受原麦数量の55%以上とすることなどの条件を付し、その予定価格は、買受け時の原麦数量1トンに対しふすま550キログラムおよび小麦粉450キログラムが生産されるものとして計算した収入額から加工経費等を差し引いて算定している。しかしながら、製粉工場においては小麦を加工する際ばん砕効率の向上のため加水を行なっているので、製品の生産数量は原麦数量を上回るものであるから、今後、飼料小麦の売渡しにあたっては、この加工の実情を予定価格に反映させ、もって適切な売渡価額の決定を図るよう配慮の要があると認められる。

(農業共済再保険特別会計)

 本特別会計は、再保険金支払基金、農業、家畜および業務の各勘定に区分して経理されており、そのうちおもな勘定である農業勘定の昭和42年度歳入歳出決算額は、歳入210億7023万余円、歳出140億3766万余円で、また、損益は、再保険料138億0401万余円、一般会計より農業共済組合連合会等補助及交付金見合受入71億5324万余円等の利益209億8334万余円、再保険金70億1039万余円、農業共済組合連合会等補助及交付金70億2726万余円の損失140億3766万余円で、差引き69億4567万余円の利益となっているが、これは主として42年産水稲の被害が少なかったことによるものである。

しかしながら、前年度繰越損失が298億6947万余円あるため、次年度への繰越損失は229億2379万余円であり、一般会計から受け入れた歳入不足補てん金の42年度末残高は259億8114万余円、再保険金支払基金勘定からの受入額の42年度末残高は39億7532万余円に上っている。しかして、本勘定においては農家の掛金の一部を負担するなどのため毎年度一般会計から繰入れを受けており、その額は42年度において209億5719万余円となっている。

 また、農業共済組合等の事務費を負担するため、別途一般会計から毎年度農業共済事業事務費負担金を支出しているものがあり、42年度におけるその額は89億6937万余円である。

 このように多額の国費が支出されている事情にかんがみ、農業共済保険事業の運営について農業共済組合等を調査したところ、別項記載のとおり、組合における共済金の経理が適切を欠いているもの がある。

(漁船再保険及漁業共済保険特別会計)

 本特別会計は、漁業災害補償法の一部を改正する法律(昭和42年法律第124号)の規定により、漁船再保険事業を経営するため設置されていた漁船再保険特別会計を42年8月漁船再保険及漁業共済保険特別会計に改め、新たに国が実施することとなった漁業共済保険事業をあわせて経理することとなったもので、漁船普通、漁船特殊、漁船乗組員給与および漁業共済の各保険勘定ならびに業務勘定に区分して経理されており、そのうちおもな勘定である漁船普通保険勘定の昭和42年度歳入歳出決算額は、歳入70億0895万余円、歳出39億0819万余円で、また、損益は、再保険料47億7962万余円、前年度繰越未経過再保険料18億9843万余円等の利益74億9296万余円、再保険金37億6155万余円、次年度繰越未経過再保険料22億4652万余円等の損失67億9938万余円で、差引き6億9358万余円の利益となっており、次年度への繰越利益は38億8346万余円となっている。一方、漁業者の保険料の一部を負担するため毎年度一般会計から保険料国庫負担金の繰入れを受けており、その額は42年度において11億7050万余円であって、本勘定開設以来42年度までの累計額は83億9036万余円となっている。

 検査の結果、別項記載のとおり、漁船普通保険勘定において、再保険金の支払にあたり処置当を得ないもの がある。

(特定土地改良工事特別会計)

 昭和42年度歳入歳出決算額は、歳入342億5484万余円、歳出299億4128万余円であり、実施した事業は、直轄かんがい排水事業、直轄干拓事業および代行干拓事業計61地区265億9541万余円である。

 しかして、これらのうち17地区113億2746万余円についで実地に検査したところ、別項記載のとおり、直轄工事の施行が設計と相違しているもの があり、また、土地改良事業における直轄工事の予定価格の積算について 、43年11月、農林大臣あて改善の意見を表示した。

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