(昭和44年11月21日付け44検第265号 農林大臣あて)
農林省において、直轄で施行する土地改良事業等は、昭和43年度において、事業費約460億円に上っている。そして、これら事業の請負工事の予定価格は、同省で制定した「土地改良事業等請負工事の価格積算要領」等の積算基準により作成するものである。この基準では、直接労務に必要な役付および雑役の経費を間接労務費として算定することとしている。しかして、本院において、44年中、河川土木工事、その他土木工事403件について検査したところ、間接労務費が工事施行の実情に即していないため工事費の積算が適正でないと認められるものが352件あった。
同省において間接労務費と称しているのは、一般労務者の指揮監督に当たる世話役と労務者関係の炊事等に従事する雑役の労務費である。そして、この費用は、従来各工事の直接労務費に対応させて計算していたものを、40年以降、積算基準に工事の種類(高えん堤関連、トンネル、道路および橋りょう、舗装土木、河川土木、その他土木、鉄筋コンクリート建築、木造建築)ごとの間接労務比率を定めて、この比率を純工事費(間接労務費を除く。以下同じ。)に乗じて積算することにしたものである。しかして、この間接労務比率は、37年度以前に同省が実施した工事例を基礎資料として純工事費中に占める直接労務費の比率を調査し、これと同時に調査した直接労務費に対する間接労務費の比率をこれに乗じて算定したものである。
しかして、上記の間接労務比率は、その後の工事の機械化施工等から実情にそわなくなったため、42年度以降は、機械損料と業者持主要既成品費の合計額が直接工事費の60%をこえる場合にはそのこえた部分に対し間接労務比率を補正することとしているものである。
しかしながら、近年、河川土木工事、その他土木工事においては、工事の機械化やコンクリート二次製品の使用が著しく、前記352件について純工事費に対する直接労務費の比率をみると、同省が37年度に調査した比率の約6割に低減している。また、直接労務費に対する間接労務費の比率については、本院の実態調査の結果によっても、同省が定めている比率をやや上回っている程度であまり開差がなかった。
したがって、純工事費に対する間接労務費の比率は、相当低くなると認められ、同省で現在行なっている補正では、この実情にほとんど即応できない状況である。
ついては、近年、機械施工の分野が増加し、その能率も向上したことおよびコンクリートブロック等既成品の使用率が増加することにより直接労務費が減少する傾向にあることにかんがみ、工事施行の実態を適確には握して現行の積算基準を施工の実態に即するよう改訂するなどして工事費積算の適正を図る要があると認められる。