平成３年度決算検査報告
| 所管、会計名及び科目 | 大蔵省 産業投資特別会計(社会資本整備勘定) (項)土地改良事業資金貸付金 |
| 部局等の名称 | 北陸農政局 |
| 補助の根拠 | 土地改良法(昭和24年法律第195号) |
| 事業主体 | 石川県 |
| 補助事業 | 広域営農団地農道整備 |
| 補助事業の概要 | 広域農道を新設するため、平成2年度に、アーチカルバート工及び護岸工等を施工するもの |
| 事業費 | 148,362,230円 |
| 上記に対する国庫補助金交付額 （無利子貸付金の貸付額） |
77,890,170円 |
| 不当と認める事業費 | 34,333,868円 |
| 不当と認める国庫補助金交付額 （無利子貸付金の貸付額） |
18,025,280円 |
１ 補助事業の概要
この補助事業は、石川県が、広域営農団地農道整備事業の一環として、輪島市三井町地内に広域農道を新設するため、平成２年度に、アーチカルバート（以下「カルバート」いう。）及び護岸の築造等を工事費１４８，３６２，２３０円（国庫補助金７７，８９０，１７０円）で実施したものである。
上記のうちカルバート（延長８２．７２m、内空断面の幅５m、高さ４．９m（頂部））は、広域農道の新設に伴い遮断される河川の代替として築造されたものである。そして、同県では、これを土被りの厚さに応じて１号、２号及び３号の３種類に区分し、このうち、２号カルバート（最大土被り１５．８４７m、底版の厚さ１．２m、延長２７．５８m）の底版の上面側に配置する主鉄筋については、その配筋図において、径２９mmの鉄筋を上段側にのみ２５cm間隔に配置することとして設計し、これにより施工していた（参考図参照） 。
２ 検査の結果
検査したところ、２号カルバートの底版上面側の主鉄筋については、設計の基礎となっている設計計算書による配筋と異なっていることが判明した。すなわち、設計計算書では、径２９mmの鉄筋を上下２段にそれぞれ１２．５cm間隔に配置することとし、これによれば、同主鉄筋に生ずる引張応力度（注１） （常時）（注２） は１，５５９kg/cm2 となり、許容引張応力度（注１） １，６００kg/cm2 を下回るので応力計算上安全であったものを、配筋図を作成する際に、誤って上記のように鉄筋を配置することとしたものである。
このため、２号カルバートの底版上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度（常時）は４，９４９kg/cm2 と許容引張応力度を大幅に上回り、応力計算上安全な範囲を超えている。
したがって、本件２号カルバート（工事費相当額３４，３３３，８６８円）は、設計が適切でなかったため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額１８，０２５，２８０円が不当と認められる。
（注１） 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。
その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
（注２） 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
（参考図）
