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  • 平成8年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
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  • 不当事項

補助金


(201) ため池等整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため余水吐の流入部等が不安定な状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農地等保全管理事業費
部局等の名称 東北農政局
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)
事業主体 福島県
補助事業 ため池等整備
補助事業の概要 ため池を改修するため、平成7年度に、余水吐等を施工するもの
事業費 49,654,240円
上記に対する国庫補助金交付額 24,827,120円
不当と認める事業費 10,130,557円
不当と認める国庫補助金交付額 5,065,278円
 上記の補助事業において、余水吐の設計が適切でなかったため、余水吐の流入部等が不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額5,065,278円が不当と認められる。

1 補助事業の概要

 この補助事業は、福島県が、ため池等整備事業の一環として、西白河郡矢吹町大池地区において、ため池(貯水量75,000m3 )を改修するため、平成7年度に、余水吐の築造、堤体の改修等を工事費49,654,240円(国庫補助金24,827,120円)で実施したものである。

 このうち余水吐は、ため池の余剰水を農業用排水路を通じて河川に放流するために設けられた施設で、U字形の鉄筋コンクリート構造の流入部(延長20.0m)とこれに接続するボックスカルバート等の水路(同59.9m)及び取付壁(同6.0m)とからなっている(参考図1参照)

 この余水吐の設計に当たっては、その大部分の水路の両側壁が土砂等により埋め戻されることから、滑動に対する安定計算は行わないで、土圧等に対して構造物が耐え得るよう応力計算を行って設計し、これにより施工していた。

2 検査の結果

 検査したところ、本件余水吐の流入部及び取付壁については、次のとおり滑動しやすい状況となっていた(参考図2参照)

(ア) 流入部はその断面がU字形となっているため、地下水等による浮力の影響を受けやすい構造となっている。

(イ) 本件の場合、ため池の水位は通常満水となっており、また公園側の地下水位がため池の水位とほぼ同一となっていることから、流入部の底面には常に浮力が作用している。

(ウ) 流入部は、両側壁のうち公園側の背後が土砂等によって埋め戻されるのに対して、ため池側が池の水に接した構造となっているため、流入部には公園側からの土圧が一方的に作用している。

 そこで、流入部について、滑動に対する安定の安全率を計算すると、常時(注) 及び地震時において0.64及び0.23となり、それぞれ許容値1.5及び1.2を大幅に下回っている。

 また、取付壁についても、流入部と同様な状況にあるため、滑動に対する安定の安全率は許容値を大幅に下回っている。

 したがって、本件余水吐は滑動に対する安定計算を行わずに設計していたため、流入部及び取付壁(工事費相当額計10,130,557円)が不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額5,065,278円が不当と認められる。

(注)  常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

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