会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村整備事業費 |
部局等の名称 | 東海農政局 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 | 三重県 |
間接補助事業者 (事業主体) |
三重県安芸郡芸濃町 |
補助事業 | 農業集落排水 |
補助事業の概要 | 農業集落排水施設を新設するため、平成10、11両年度に汚水処理水槽、管理棟の建設等を行うもの |
事業費 | 164,673,600円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 82,336,800円 |
不当と認める事業費 | 20,283,473円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 10,141,736円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、三重県安芸郡芸濃町が、農業集落排水事業の一環として同町多門地区において汚水処理施設を新設するため、平成10、11両年度に汚水処理水槽及びその上部の管理棟の建設等を工事費164,673,600円(国庫補助金82,336,800円)で実施したものである。
上記の管理棟は、高さ7.9m、床面積134.4m2
の鉄筋コンクリート造平屋建ての建築物で、耐力壁、床版等で構成される壁式構造となっている。
この耐力壁は、建築物の壁のうち、窓や扉等の開口部がない箇所で、建築物にかかる荷重を負担してこれを支えるもので、構造上重要な部材であることから、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)に基づく建設省告示(昭和58年第1319号)等において、安全上必要な技術的基準が定められている。その具体的な設計、施工に当たっては、「壁式鉄筋コンクリート造設計施工指針」(日本建築センター制定)、「壁構造配筋指針」(日本建築学会制定)等によることになっている。
そして、本件管理棟の耐力壁の配筋に当たっては、「壁構造配筋指針」に基づいて、縦方向及び横方向の鉄筋を格子状に組んだものを二列に配筋し、さらに、横方向の鉄筋(径10mm)の定着を図るため、端部にU字型の鉄筋(径10mm、幅約12cm、定着長さ40cm)を用いて縦方向の鉄筋(径13mm)を包み込む形状で配筋することとしていた(参考図1参照)
。そして、このような耐力壁を管理棟の外周壁や間仕切り壁として用い、厚さは18cmで、管理棟の長辺方向に14箇所計17.1m、短辺方向に8箇所計28.9m配置していた(参考図2参照)
。
これにより、上記のとおり設計された耐力壁の厚さと各方向のそれぞれの長さの合計が、建設省告示等に基づいて算出された安全上必要な耐力壁の厚さ15.0cm、長さ16.1mをいずれも上回ることなどから、地震時に作用する地震力に対して安全な耐力を確保できることとしていた。
2 検査の結果
検査したところ、本件耐力壁の施工が次のとおり設計と著しく相違していた。
すなわち、設計では上記のように横方向の鉄筋とU字型の鉄筋により縦方向の鉄筋を包み込む形状で施工することになっているのに、誤って、設計に比べて幅及び定着長さが著しく不足しているU字型の鉄筋(径10mm、幅約7cm、定着長さ約12cm)が縦方向の鉄筋の内側に配筋されていて、縦方向の鉄筋を包み込む形状で施工されていなかった(参考図1参照)
。
このような施工では、横方向の鉄筋の定着が図られず、地震力に対して有効に機能しないため、本件管理棟において耐力壁としている壁のうち、長辺方向14箇所17.1mのうち14.0m、短辺方向8箇所28.9mのうち6箇所11.8mは構造上耐力壁とは認められない。
この結果、耐力壁と認められる壁の長さの合計が長辺方向では3.1mとなり、前記の安全上必要な耐力壁の長さ16.1mを大幅に下回っていることから、本件管理棟は構造上安全であるとは認められない。
このような事態が生じていたのは、同町における工事の監督及び検査が適切でなかったこと、同町に対する三重県の指導が十分でなかったことによる。
したがって、本件管理棟(工事費相当額20,283,473円)は、施工が設計と著しく相違したものとなっていて工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額10,141,736円が不当と認められる。