ページトップ
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成20年11月

独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況に関する会計検査の結果について


第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の概要

 独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、横断的に調査・分析するとともに、業務の実施状況や財務の状況はどのようになっているか、契約事務は適切に行われて、公正性、競争性及び透明性は確保されているかなどに着眼して検査を実施した。
 検査の結果の概要は、次のとおりである。

(1) 業務及び財務の状況

ア 業務について

(ア) 中期目標の期間の終了時における主務大臣の見直しに基づいて、20年3月末までに統廃合の対象とされた23法人が9法人に整理されて、この結果14法人が削減されているが、統廃合された法人が行っていた業務の状況をみると、22法人は統合先法人に承継されており、1法人は国に再度移管されている。また、これ以外にも、業務の追加又は廃止により、新たな勘定の設置又は勘定の廃止が行われており、この結果13勘定が廃止されて、8勘定が新たに設置されている(前掲 参照>)。

(イ) 中期目標の設定と評価の状況についてみると、繰越欠損金が多額となっている11法人12勘定の中には、繰越欠損金の解消に向けての目標を設定しているものもあるが、当該勘定の収益等の改善を目標として設定したにとどまっていたり、繰越欠損金の解消や収支改善についての目標を設定していなかったりなどしていて、必ずしも、定量的かつ高水準の目標設定とはなっていないものがある。そして、上記について、18年度の年度評価の状況をみると、繰越欠損金が前年度に比べて増加している法人・勘定においても、中期目標又は中期計画を達成しているなどとしている状況である(前掲 参照)。

イ 財務について

(ア) 独立行政法人化に伴う政府出資金の増減の状況をみると、政府出資金が減少している法人は27法人であり、その減少額は、国が承継したことによるものなどを控除すると計11兆4017億円となっている。また、18年度末における独立行政法人に対する政府出資金に係る台帳価格(純資産額をもって評価された価格)は、97法人159勘定で計19兆5328億円となっていて、18年度末までに行った出資額の累計17兆6605億円と比べると計1兆8723億円増加している。しかし、このうち、台帳価格が出資額の累計に比べて減少している法人・勘定が59法人85勘定あり、その減少額は計1兆1981億円となっている。また、負債が資産を超過していることから、台帳価格が0円となっている法人・勘定が7法人7勘定あり、これらの法人・勘定における負債超過額は計5885億円となっている(前掲 参照)。

(イ) 18年度末までに中期目標期間の最終年度が到来した法人のうち、運営費交付金債務の収益化基準に費用進行基準のみを採用している57法人は、精算収益化額を計434億円計上している。しかし、当該基準を採用していても運営費交付金を全額使用しているため、精算収益化額が0円となっているものも4法人4勘定ある。また、精算収益化額を上回る前期からの繰越欠損金があることなどから、精算対象積立金を計上できないため、中期目標期間中に交付された運営費交付金のうち業務運営の財源に充てられなかった金額が国庫に納付されず、法人内部に現金・預金等として留保されることとなっているものが2法人2勘定、計3億円ある(前掲 参照)。

(ウ) 18年度末に繰越欠損金を計上しているものが30法人46勘定ある。この中には、独立行政法人化に伴い、旧法人が計上していた繰越欠損金を政府出資金等で処理したものの、再び10億円以上の繰越欠損金を計上しているものが2法人2勘定ある(前掲 参照)。

(エ) 政府出資又は政府出資見合いの資産を売却して得た資金については、相応の減資を行って政府出資金を国庫に納付する規定がないため、法人内部に留保されているものが14法人、計290億円ある。また、売却以外の資産の処分(敷金・保証金の返戻14法人、計27億円、関係会社の清算処理等4法人、計26億円)により得た資金や旧法人から承継した政府出資見合いの金融資産(1法人25億円)についても、同様の事態となっていて、法人内部に留保されているものが15法人、計79億円ある(前掲 参照)。

(2) 契約制度、落札率等入札及び契約の状況

ア 独立行政法人の契約制度について

(ア) 一般競争契約における公告については、公告期間、公告の方法等を明確に会計規程等で定めていない法人が4法人あり、公告期間の下限が国の基準を下回っている法人が45法人ある。また、指名競争契約限度額について、国の金額基準を上回る基準を設定している法人が11法人ある(前掲 参照)。

(イ) 随意契約の基準については、少額随契に係る随契限度額はすべての法人が国の金額基準と同額か又はこれを下回っているが、随意契約によることができる範囲が明確かつ具体的でない包括的随契条項又は契約相手方が公益法人の場合は随意契約ができるとする公益法人随契条項を設定している法人がそれぞれ54法人、11法人ある (前掲 参照)。

(ウ) 企画競争又は公募については、それぞれ93法人、71法人が制度を導入しているが、このうち実施方法に係る要領、マニュアル等を整備している法人はそれぞれ37法人、27法人にとどまる (前掲 参照)。

(エ) 契約の発注に際して、予定価格を作成しなければならない旨が会計規程等に明確に定められていない法人が3法人ある。また、予定価格の作成の省略に関する取扱いについても、省略する理由や対象範囲が明確でなく、その妥当性に疑義のあるものがある。さらに、国の場合、予定価格が100万円を超えないものに限って作成を省略できるとしているが、これよりも高額に設定している法人も36法人ある(前掲 参照)。

イ 入札及び契約全般の状況について

(ア) 契約方式の状況をみると、随意契約の割合は、件数では18年度75.5%、19年度(12月まで)74.4%、支払金額では18年度71.5%、19年度(12月まで)75.1%となっていて、競争契約の割合よりも高い。そして、平均落札率も競争契約が18年度88.8%、19年度(12月まで)89.0%となっているのに対して、随意契約はそれぞれ96.5%、96.4%となっていて、競争契約より7.7ポイント、7.4ポイント高く、競争性及び経済性の面で十分ではない状況となっている。また、契約相手方別にみると、競争契約の割合は、「民間企業」が件数では18年度30.0%、19年度(12月まで)32.8%、支払金額では18年度36.9%、19年度(12月まで)34.1%と最も高く、「公益法人等」はそれに比べて件数では18年度23.9ポイント、19年度(12月まで)23.6ポイント、支払金額では18年度35.1ポイント、19年度(12月まで)26.9ポイントも低い状況となっている(2ヶ所参照 )。

(イ) 競争契約における応札者数の状況をみると、応札者が5者以上のものは、18年度39.3%、19年度(12月まで)29.1%である一方、1者応札のものが18年度25.7%、19年度(12月まで)35.3%ある。競争契約について応札者数と平均落札率の関係をみると、1者応札の場合は、平均落札率が18年度95.3%、19年度(12月まで)95.1%となっているのに対して、複数応札の場合はこれをそれぞれ8.9ポイント、9.7ポイント下回っており、競争契約であっても1者応札については実質的に競争性を確保しにくい状況となっている(2ヶ所参照 )。

ウ 随意契約の実施状況及び随意契約とした理由の妥当性について

(ア) 随意契約とした適用理由をみると、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとする契約が半数以上を占めているが、「法人独自の規定による少額随契」や「法人独自の理由による随意契約」を適用理由とするものも相当数あり、これらも含めると9割を超えている。
 そして、契約の一部を抽出して随意契約とした理由の妥当性を実際に検証したところ、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」等を理由として契約相手方を選定している随意契約の中には、その理由の妥当性に関して検討すべきであったと認められた契約が955件見受けられた(2ヶ所参照 参照)。

(イ) 随意契約に当たり企画競争を実施している場合があるが、企画競争を導入している93法人のうち、3法人は参加者の募集を公示していなかったり、10法人は企画書等の審査に当たり評価項目等をすべて参加者に開示していなかったりなど、公正性及び透明性の確保が十分でないものがある(前掲 参照)。

エ 公益法人等に対する随意契約について

(ア) 公益法人等を契約相手方とする契約については、随意契約の割合が件数では18年度93.8%、19年度(12月まで)90.7%、支払金額では18年度98.1%、19年度(12月まで)92.7%となっていて、対象契約全体でみた場合よりも件数では18年度18.3ポイント、19年度(12月まで)16.3ポイント、支払金額では18年度26.6ポイント、19年度(12月まで)17.6ポイント高い状況となっている。また、随意契約としている適用理由については、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」に該当するためとしている契約の割合が半数を超えている(前掲 参照)。

(イ) 契約相手方が公益法人等である随意契約における再委託については、契約条項において再委託に関する規定を設けていないものが18年度14.9%、19年度17.2%ある。また、再委託が行われている契約の再委託率をみると、再委託率が50%以上となっているものの割合が件数で46.0%、支払金額で44.8%を占めており、再委託率が90%を超えているものも、それぞれ4.4%、1.7%ある(前掲 参照)。

オ 契約の適正化及び透明性の向上に向けた取組について

 各独立行政法人は、競争入札の増加等に伴う事務量の増加に対処するため、複数年契約の活用等による契約の合理化、仕様書等の様式の統一や契約事務の電子化等による事務処理の効率化・省力化等の取組を講じている。また、随意契約の理由の妥当性については、70法人が契約担当部門の審査を含む複数の部門等による事前の審査を実施している。また、契約に係る情報については、ほとんどの法人は、おおむね適切に公表している(前掲 参照)。

カ 発注元独立行政法人退職者の再就職について

 発注元独立行政法人退職者の再就職者は、19年4月1日現在で、随契先公益法人等のうち129法人に827人(うち国家公務員出身者は114人)、主な随契先民間企業等のうち92法人に395人(同59人)がそれぞれ在籍している。そして、発注元独立行政法人退職者の再就職者が在籍している公益法人等は、在籍していない公益法人等に比べて、1法人当たりの随意契約件数や支払金額が多く、また、随意契約のうち企画競争又は公募を経ない随意契約の支払金額の割合も高い状況となっている(前掲 参照)。

2 所見

 独立行政法人制度は、導入以来7年が経過している。この間、人件費や財政支出の削減、自己収入の増加、透明性の確保について一定の成果があったとされている一方、業務運営の在り方や契約の状況等について、様々な問題点が指摘されている。  政府は、前記のとおり整理合理化計画を策定して、これを着実に実行するとともに、独立行政法人制度の原点に立ち返った見直しなどを行うため、独立行政法人の評価機能の一元化、保有資産の見直しのための法整備等を内容とする通則法の改正案を第169回国会に提出している。
 したがって、以上の検査結果を踏まえて、各独立行政法人等は、整理合理化計画において講ずることとされている措置を着実に実施するとともに、次の点に留意することが必要である。

(1) 業務及び財務の状況

ア 業務について

(ア) 中期目標期間の終了時における業務の見直しに当たって、主務大臣は、独立行政法人制度の原点に立ち返り、各法人が行っている事務・事業が国民にとって真に不可欠であるかの検討を一層厳格に行うとともに、引き続き当該法人が事務・事業を行う場合であっても、その適正化・効率化等を推進する。

(イ) 中期目標の設定に当たって、主務大臣は、業務運営等の評価をより厳正に行うことができるよう、できる限り定量的かつ高水準な目標を的確に設定する。

イ 財務について

(ア) 精算収益化額に相当する額が国庫に納付されず、法人内部に留保されることとなる法人について、政府は、精算収益化額に相当する額を精算対象積立金に計上して国庫に納付している他の法人との均衡を失しないよう適切な取扱いを検討する。

(イ) 繰越欠損金を計上している法人・勘定については、その解消等に向けて計画的に取り組む。特に、独立行政法人化後に再び繰越欠損金を計上している法人や政府出資金の台帳価格が減少している、あるいは0円となっている法人・勘定にあっては、より効率的な業務運営等に努める。

(ウ) 政府出資又は政府出資見合いの資産の処分等により得た資金や旧法人から承継した政府出資見合いの金融資産で、引き続き法人内部に留保されることとなる資金について、政府は、国庫に納付することが可能となるよう、減資に関する立法措置を速やかに講ずる。

(2) 契約制度、落札率等入札及び契約の状況

ア 独立行政法人の契約制度について

(ア) 一般競争契約における公告期間、公告の方法等や予定価格の作成に関する定めなど、契約の適正化を図る上で重要な契約手続については、会計規程等において明確に定める。

(イ) 随意契約の基準において、包括的随契条項又は公益法人随契条項を設定している場合や、予定価格の作成の省略に関する取扱いについて、省略する理由や対象範囲が明確でない場合は、し意的な運用を排除するため、各法人の業務の特性等を踏まえて、これらに係る基準をできる限り明確かつ具体的に定める。

(ウ) 公告期間の下限が国の基準を下回る場合や、指名競争契約限度額や予定価格の作成の省略に関する取扱いを国の金額基準を上回って設定している場合は、業務運営上真にやむを得ないものを除き見直しを行う。

(エ) 総合評価方式、企画競争、公募、複数年契約等、契約の適正化及び透明性の向上に効果があると認められる取組については、今後更なる導入を図るとともに、実施に当たっては、要領、マニュアル等の整備を行う。

イ 入札及び契約全般における競争性の確保について

(ア) 国や他の独立行政法人等の契約実例を調査して参考にするとともに、発注する業務の内容に係る仕様書等を工夫したり、事業者の審査を適切に行ったりするほか、少額購入等を予定している調達についてもこれを計画的に集約することにより一括契約を可能とするなどして競争契約を拡大して、契約の透明性の向上を図る。併せて、競争契約を実施する場合においては、業務運営の安定的かつ確実な実施等に十分配慮した上で、実質的な競争性の確保を図る。

(イ) やむを得ず随意契約によらざるを得ないとき、特に「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」という理由を適用する場合には、他に履行可能な者がいないかの把握等を、公募を適切に実施するなどして厳格に行う。

(ウ) 仕様書等の内容を具体的に提示できる場合は、総合評価方式を含む競争契約に移行することに努める。そして、仕様書等の内容の具体的な提示が困難で随意契約によらざるを得ない場合でも、可能な限り企画競争を実施することに努める。そして、企画競争の実施に当たっては、参加者の募集は公示により行うとともに、審査の方法、評価項目等の設定を適切に行い、これらの状況や審査結果等を適時適切に開示するなどして契約の公正性及び透明性の一層の向上を図る。

ウ 公益法人等に対する随意契約について

(ア) 従来公益法人等を契約相手方としてきた随意契約について、契約の具体的な業務内容を精査して、他に履行可能な者がおらず、真に随意契約によらざるを得ない場合に該当するもの以外は、速やかに競争契約に移行する。

(イ) 再委託については、契約の適正な履行を確保するため、契約の内容に応じて、再委託を禁止したり、再委託に当たっては発注者の承認を要することとしたりなどする旨の契約条項を設けるとともに、再委託率が高率となっている契約については、随意契約とした理由との整合性に留意する。

エ 契約の適正化及び透明性の向上に向けた取組について

 随意契約の見直しを確実に実施するため、契約事務の合理化、効率化等を引き続き進めるとともに、契約の適正化に向けた審査体制の一層の充実に努める。また、契約の透明性の向上を図るため、契約に係る情報を引き続き適切に公表するとともに公表方法の一層の充実に努める。

オ 発注元独立行政法人退職者の再就職について

 発注元独立行政法人退職者の再就職者が在籍している法人を随意契約の相手方とする場合には、特に透明性の確保に留意して、随意契約とした理由の妥当性等について十分に説明責任を果たせるようにする。
 また、会計検査院としては、政府出資又は政府出資見合いの資産の処分等により得た資金、旧法人から承継した政府出資見合いの金融資産で、法人内部に留保されている資金の管理はどのようになされるか、また、保有資産の見直しのための法整備の状況を踏まえて、各独立行政法人に留保されている資金は適切に国庫納付がなされることになるかについて、今後とも注視していくこととする。

 会計検査院としては、本報告の取りまとめに際して、19年12月に策定された随意契約見直し計画に基づく個別の随意契約の見直し状況に係る検証を終えるに至っていない部分があることなどから、これを中心に引き続き検査を実施して、検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。