会計検査院は、令和元年6月10日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月11日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。
一、会計検査及びその結果の報告を求める事項
(一)検査の対象
(二)検査の内容
① 大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況
② 技能実習制度の適正化に係る取組の状況
③ 外国人材の受入れに係る国の支援の状況
参議院は、元年6月10日に決算委員会において、検査を要請する旨の上記の決議を行うとともに、平成29年度決算に関して内閣に対し警告すべきものと議決し、同月14日に本会議において内閣に対し警告することに決している。
この警告決議のうち、前記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。
4 東京福祉大学の外国人留学生が多数所在不明となり同大学を除籍されていることを契機として、外国人の在留管理を行う法務省や、留学生の在籍状況を把握する立場にある文部科学省等の関係省庁間の情報共有が不十分な事態が明らかとなったこと、また、近年、所在不明となっている外国人留学生が不法就労で摘発される事例が多数発生していることは、遺憾である。
政府は、同様の事態が他の大学等で生じていないか早急に点検し、再発防止策を講じるとともに、在留資格としての留学が不法就労の手段となっていないか実態を調査し、結果に応じて実態を是正すべく関係省庁間の情報共有体制を一層強化し、外国人留学生の出入国・在留管理を徹底すべきである。
我が国は、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)を基本とする関係法令に基づき外国人の出入国在留管理を行っている。我が国に入国して在留する外国人は、入管法が規定する在留資格のうちのいずれかを有する必要があり、この在留資格の範囲内で活動することができるとされている。在留資格は、「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」等の身分・地位に基づくものと、「外交」「公用」「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」「留学」「特定活動」等の我が国での活動範囲を定めたものに分けられる。また、近年では、平成27年4月に「高度専門職」、29年9月に「介護」、31年4月に「特定技能」(注1)の各在留資格が新設されたり、令和元年5月に制度が改正され、我が国の大学卒業者が日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務を希望する場合は、在留資格「特定活動」による入国・在留が認められるようになったりするなど、在留資格は多様化している。
外国人が我が国に在留することができる在留期間は、在留資格に応じて、無期限、5年、3年、1年、3月等と定められており、当初の在留期間を超えて引き続き在留することを希望する場合は、入管法に基づいて在留期間の更新許可の申請手続を行い、在留審査を受けて更新許可を受ける必要がある。
出入国在留管理庁(平成31年3月31日以前は法務省入国管理局。以下同じ。)は、中長期在留者(注2)の人数と特別永住者(注3)の人数を合わせた在留外国人数を定期的に公表している。令和元年末時点の在留外国人数をみると、中長期在留者数は262万0636人、特別永住者数は31万2501人、計293万3137人であり、平成30年末(273万1093人)に比べて20万2044人増加し(増加率7.3%)、過去最高となっている。このうち中長期在留者を在留資格別にみると、「永住者」が79万3164人と最も多く、次いで「技能実習」が41万0972人、「留学」が34万5791人となっていて、これらを合わせると中長期在留者数の59.1%を占めている(別図表0-1参照)。
また、令和2年末時点の在留外国人数をみると、第1の3(1)オにおいて後述する新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の感染拡大に伴う入国制限等の影響を受け、中長期在留者数は258万2686人、特別永住者数は30万4430人、計288万7116人であり、元年末の293万3137人から4万6021人減少している(減少率1.5%)。このうち中長期在留者を在留資格別にみると、「永住者」が80万7517人と最も多く、次いで「技能実習」が37万8200人、「技術・人文知識・国際業務」が28万3380人、「留学」が28万0901人となっており、「留学」は元年末の34万5791人から6万4890人減少し(同18.7%)、2年末までの1年間で最も在留外国人数が減少している在留資格となっていた(別図表0-1参照)。
このように、新型コロナの感染拡大の影響等により全体としては在留外国人数が減少している中で、逆に在留外国人数が増加している在留資格も見受けられる。そのうち元年末と2年末を比較した増加率が高い在留資格についてみると、「特定技能」は1,621人から1万5663人へと1万4042人の増加(増加率866.2%)、「介護」は592人から1,714人へと1,122人の増加(同189.5%)となっていて、他に比べて増加率が特に大きくなっている(別図表0-1参照)。この理由について、出入国在留管理庁は、在留資格「特定技能」については、制度の運用開始当初は海外における技能試験等が十分に実施されていなかったが、2年から大幅に試験実施回数が増加したことに加えて、「特定技能」に関する二国間の協力覚書を作成した相手国において必要な送出手続の整備が進み、外国人の送り出しが本格化したこと、在留資格「介護」については、平成29年9月に在留資格が新設され、それ以降制度の普及により在留資格の取得者が増加したことなどが要因として考えられるとしている。
また、在留資格「特定活動」は、6万5187人から10万3422人へと3万8235人の増加(同58.6%)となっている(別図表0-1参照)。この理由について、出入国在留管理庁は、在留資格「技能実習」を有する在留外国人(以下「技能実習生」という。第1の3(1)ウにおいて後述)のうち技能実習の継続が困難となった者や新型コロナの感染拡大の影響により航空便の減少や移動の制限を受けて帰国困難となった外国人に対して、その救済措置として「特定活動」への在留資格変更許可を認める特例措置を同庁が実施したことなどが要因として考えられるとしている。
在留資格「留学」は、高等学校、特別支援学校等を含め、我が国の大学、高等専門学校、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関等において教育を受ける活動ができる資格をいう。
在留資格「留学」を有する在留外国人数の推移をみると、29年末の31万1505人から令和元年末には34万5791人となり、2年の間に3万4286人増加していたが、前記のとおり、新型コロナの感染拡大に伴う入国制限等の影響により2年末には28万0901人となり大幅に減少した(別図表0-1参照)。
そして、在留資格「留学」を有する在留外国人のうち、高等学校、特別支援学校等を除いた、我が国の大学(大学院を含む。)、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)、中等教育の課程の修了までに12年を要しない国の学生に対して我が国の大学入学資格を与えるために文部科学大臣が指定した課程(以下「準備教育課程」という。)を設置する教育施設及び出入国在留管理庁の告示により定められた日本語教育機関(以下「日本語教育機関」という。)において教育を受ける学生(以下「外国人留学生」という。)については、平成20年7月に策定された「『留学生30万人計画』骨子」(文部科学省ほか5関係省庁による閣僚懇談会報告。以下「骨子」という。)によれば、我が国を世界により開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する「グローバル戦略」を展開する一環として、令和2年を目途に30万人を受け入れることを目指すとされている。
在留資格「技能実習」は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(平成28年法律第89号。以下「技能実習法」という。)の認定を受けた技能実習計画に基づいて、講習を受け、及び技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)に係る業務に従事する活動ができる資格をいう。
従来、技能実習制度(第1の3(3)アにおいて後述)において法務省令や労働基準関係法令の違反が発生したことなどを踏まえて、平成29年11月に技能実習法が施行され、技能実習制度の適正化に関する事項が規定されるとともに、制度の拡充が行われ技能実習期間が従来の最長3年間から更に2年間延長可能となり最長5年間となるなどした(以下、技能実習法施行後の制度を「新制度」、技能実習法施行前の制度を「旧制度」という。)。
技能実習生数の推移をみると、29年末の27万4233人から令和元年末には41万0972人となり、2年の間に13万6739人増加し、平成30年末と令和元年末を比較した増加率においても、中長期在留者数の増加率が8.7%であるのに対して、技能実習生数の増加率は25.1%と高くなっているが、2年末には、前記のとおり、新型コロナの感染拡大に伴う入国制限等の影響により37万8200人に減少している(別図表0-1参照)。
なお、技能実習生数を国・地域の別にみると、2年末で、ベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)20万8879人(技能実習生数に占める割合55.2%)、中華人民共和国(以下「中国」という。)6万3741人(同16.8%)、インドネシア共和国(以下「インドネシア」という。)3万4459人(同9.1%)、フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)3万1648人(同8.3%)、その他の国・地域3万9473人となっており、ベトナムと中国で全体の72.0%を占めている。
平成30年2月の経済財政諮問会議において、有効求人倍率が43年ぶりの高水準となる中、深刻な人手不足が生じており、専門的・技術的な外国人受入れの制度の在り方について早急に検討を進める必要があるとされた。このような状況を受けて、政府は、「未来投資戦略2018」(平成30年6月閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月閣議決定。以下「骨太方針2018」という。)において、従来の専門的・技術的分野における外国人材に限定せず、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築する必要があり、真に必要な分野に着目し、移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、新たな在留資格を創設するとした。また、外国人留学生の日本国内での就職を更に円滑化するなど、従来の専門的・技術的分野における外国人材受入れの取組を更に進めるほか、外国人が円滑に共生できるような社会の実現に向けて取り組むとした。
そして、政府は、骨太方針2018を踏まえて、法務省において外国人の受入れ環境の整備に関する企画及び立案並びに総合調整(以下「総合調整等」という。)を行うこととし、同省において総合調整等に取り組むに当たり、内閣の重要政策に関する基本的な方針として「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」(平成30年7月閣議決定。以下「外国人受入れ基本方針」という。)を定めた。
これらを受けて、30年12月に入管法が改正され、31年4月に一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を受け入れるため、新たな在留資格「特定技能」が創設されるとともに、出入国在留管理庁が新設されるなどした。
また、外国人受入れ基本方針に基づき、30年7月に、関係行政機関の緊密な連携の下、政府一体となって総合的な検討を行うため、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」(以下「関係閣僚会議」という。)が開催された。そして、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するための目指すべき方向性を示すものとして、関係閣僚会議において、30年12月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(以下「総合的対応策」という。)が公表された。さらに、令和元年12月には、それまでの関連施策の実施状況を踏まえるなどして総合的対応策の改訂が行われ、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)」(以下「総合的対応策(改訂)」という。)、2年7月には、新型コロナへの対応を適切に行いつつ、外国人材を円滑に受け入れ、受入れ環境を更に充実させることなどとした「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和2年度改訂)」(以下「総合的対応策(令和2年度改訂)」という。)が公表された。政府は、総合的対応策等において、在留資格を有する全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立ち、外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し安心して生活することができる環境を全力で整備していくとしている。
法務省は、感染が世界的に拡大していた新型コロナの我が国への流入防止の観点から、2年1月31日の閣議了解に基づき、同年2月以降、我が国への上陸の申請日前14日以内に中国湖北省における滞在歴がある外国人及び中国湖北省において発行された中国旅券を所持する外国人について、特段の事情がない限り、我が国への上陸を拒否することとした。それ以降、法務省は、累次にわたる閣議了解等を踏まえて、上陸を拒否する対象地域(以下「上陸拒否対象地域」という。)を追加し、同年3月27日までに計26か国・地域(うち2か国については一部地域のみ)を上陸拒否対象地域に指定し、さらに、同年4月3日には、我が国へ多くの外国人留学生及び技能実習生を送り出しているベトナム、中国等を含む49か国・地域を上陸拒否対象地域に追加したことにより、計73か国・地域を対象に、これらの国・地域に滞在歴のある外国人について、特段の事情がない限り、上陸を拒否することとした。それ以降も法務省は、累次にわたる閣議了解等を踏まえて上陸拒否対象地域を追加するなどして、3年4月末現在、計152か国・地域を上陸拒否対象地域に指定している(別図表0-2参照)。
一方、これと併せて政府は国際的な人の往来の再開に向けた外国人に対する入国制限の緩和を段階的に進めてきた。外国人に対する入国制限の緩和の主な変遷についてみると、政府は、まず、一般の国際的な往来とは別に、新型コロナの感染状況が比較的落ち着いている国・地域を対象に、ビジネス上必要な人材等について、必要な防疫措置を講ずることなどを条件に、例外的に相手国又は我が国への双方向の人の往来を可能とする仕組み(以下「ビジネス関係者の往来緩和措置」という。)を試行することとした。ビジネス関係者の往来緩和措置には、入国・帰国後の14日間の自宅等待機が維持される仕組み(主に長期滞在者用。以下「レジデンストラック」という。)と、入国・帰国後の14日間の自宅等待機期間中も行動範囲を限定した形でビジネス活動を可能とする仕組み(主に短期出張者用)がある。そして、政府は、2年7月末から、まず、ベトナム及びタイ王国(以下「タイ」という。)について、ビジネス上必要な人材等、すなわち「技能実習」「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」等の在留資格を有する外国人の入国制限の緩和を開始し、その後、同年11月末までに計11か国・地域との間でビジネス関係者の往来緩和措置を開始した(別図表0-2参照)。
また、政府は、新型コロナの感染拡大の影響による上陸拒否の措置により渡日できずにいた外国人留学生についても入国制限を緩和する措置を講ずる方針を固め、同年8月から日本政府奨学金(第1の3(2)イにおいて後述)の受給者(以下「国費外国人留学生」という。)について入国制限の緩和を開始することとした。
そして、政府は、同年9月からは、再入国許可をもって出国した在留資格を有する外国人について、在留資格や出国日にかかわらず、出国前72時間以内の検査証明の取得等の追加的防疫措置に従うことを条件に再入国を認めることとし、さらに、同年10月からは、原則として全ての国・地域から、全ての中長期の在留資格又は商用目的の在留資格「短期滞在」を有する外国人について、入国後の14日間の自宅等待機を行うなどレジデンストラックと同様の条件により新規入国を認める仕組み(以下「全世界を対象とした新規入国緩和措置」という。)を開始し、例外的に上陸を認める対象とする国・地域や在留資格を大幅に拡大した。そして、同年11月からは、ベトナム、中国等を含む9か国・地域について上陸拒否対象地域の指定を解除している(別図表0-2参照)。
このように、政府は外国人に対する入国制限の緩和を段階的に進めてきたが、同年12月、新型コロナの変異ウイルスの感染が世界的に拡大した影響を受け、同月28日から、全世界を対象とした新規入国緩和措置を一時停止するとし、3年1月14日からは、計11か国・地域との間で開始していたビジネス関係者の往来緩和措置についても一時停止とするなど、2年7月から開始してきた前記の外国人に対する入国制限の緩和措置は、3年4月末現在、再入国許可をもって出国した在留資格を有する外国人の再入国を除いて、全て運用を停止している(別図表0-2参照)。
前記の入国制限及びその緩和の変遷を踏まえた上で、外国人入国者数の推移をみると、図表0-1のとおり、上陸拒否開始前の2年1月以前は1月当たりの外国人入国者数は200万人以上で推移していたが、上陸拒否を開始した同年2月には、図表0-1に記載した中で最も外国人入国者数が多い月である同年1月の269万8824人に対して半数以下の115万5960人(同年1月比42.8%)に減少し、さらに、同年3月には21万7679人(同8.0%)となり、上陸拒否対象地域を大幅に拡大した同年4月には5,312人(同0.1%)にまで減少するなど、同年4月から6月までの間については1万人以下で推移している状況となっている。
一方で、同年7月以降についてみると、入国制限を緩和する措置の実施に伴い外国人入国者数は徐々に増加傾向となっている。観光を目的とする外国人の入国制限が続いているため上陸拒否開始前の同年1月と比較すると全体的には大幅に減少しているものの、同年12月は6万9742人となっており、最も外国人入国者数が減少した同年5月の4,488人と比較すると、6万5254人増加している。
そして、3年1月以降についてみると、2年12月末からの新型コロナの変異ウイルスの感染拡大に伴う外国人に対する入国制限緩和措置の一時停止の影響により外国人入国者数は再び減少し、3年2月以降は1万人台になっている。
図表0-1 外国人入国者数の推移
年月 | 令和元年 11月 |
元年12月 | 2年1月 | 2年2月 | 2年3月 | 2年4月 | 2年5月 | 2年6月 | 2年7月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
外国人 入国者数 |
2,384,737 | 2,482,441 | 2,698,824 | 1,155,960 | 217,679 | 5,312 | 4,488 | 8,028 | 10,300 |
年月 | 2年8月 | 2年9月 | 2年10月 | 2年11月 | 2年12月 | 3年1月 | 3年2月 | 3年3月 | 3年4月 |
外国人 入国者数 |
15,882 | 18,861 | 35,578 | 66,603 | 69,742 | 55,718 | 13,832 | 19,398 | 17,558 |
前記のとおり、平成20年7月に策定された骨子は、文部科学省及び5関係省庁(外務、法務、厚生労働、経済産業、国土交通各省)により取りまとめられたもので、中央教育審議会の示した考え方に基づき、「グローバル戦略」展開の一環として、「2020年を目途に留学生受入れ30万人を目指す」とされている。その際、優秀な外国人留学生を戦略的に獲得していき、また、諸外国に対する知的国際貢献等を果たすことにも努めていくとされている。
「日本再興戦略」(平成25年6月閣議決定)において、「留学生30万人計画」の実現を目指し、外国人留学生の受入れを促進することなどが明記された。そして、「日本再興戦略2016」(平成28年6月閣議決定)において、外国人留学生の日本国内での就職率を当時の3割から5割に向上させることを目指すとされている。
また、「未来投資戦略2018」において、国際的な人材獲得競争が激化する中、優秀な外国人留学生の日本国内における就職率の向上に向けて、外国人留学生の呼び込みから就職に至るまで一貫した対応を行うなどとされている。
さらに、総合的対応策(改訂)等において、外国人留学生が我が国で就職して活躍するための前提として、外国人留学生が学業に専念し、高度な専門性・技術や日本語能力を身に付けて適正に課程を修了することができるよう、各大学、高等専門学校、専修学校に対して、外国人留学生の適切な受入れ及び学業成績、資格外活動の状況等の的確な把握や適切な指導等の在籍管理の徹底を求めるとされている。
以上のように、近年の外国人留学生に係る施策は、従来の目的である国際貢献に加えて、国家戦略として優秀な外国人留学生の受入れを促進し、卒業後に日本国内での就職を拡大することを目指すものとなっている。
外国人留学生の受入れに係る文部科学省等の奨学金、日本私立学校振興・共済事業団(以下「私学事業団」という。)が私立大学等を設置する学校法人に対して交付している私立大学等経常費補助金(以下「経常費補助金」という。)、文部科学省が大学等における外国人留学生の受入れの促進等に関して大学等に交付している補助金等の概要は次のとおりとなっている。
文部科学省は、我が国において研究を行うことを通じて、我が国と自国との架け橋となり、両国ひいては世界の発展に貢献するような人材を育成することなどを目的として、国費外国人留学生制度実施要項(昭和29年文部大臣裁定)等に基づき、我が国の大学院、大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)及びこれら大学等への入学に先立ち実施される日本語等の予備教育を行う教育施設に在学し、学習又は研究を行う外国の国籍を有する者に対して学士課程等の課程区分等に応じた給与(奨学金)を支給している。国費外国人留学生の給与(奨学金)は、学士課程が月額117,000円、博士課程が月額145,000円等となっている。
また、国費外国人留学生については、上記の給与(奨学金)以外にも、入学検定料、入学金、授業料等(以下「教育費」という。)や、渡日・帰国旅費について、文部科学省、大学等が負担している。
独立行政法人日本学生支援機構(以下「JASSO」という。)は、独立行政法人日本学生支援機構一般勘定運営費交付金等を財源として、優秀な外国人留学生の戦略的な受入れを促進し我が国の高等教育機関の国際化に資するために、我が国の大学院、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)、準備教育課程を設置する教育施設及び日本語教育機関に在籍する外国人留学生で、学業、人物共に優れ、かつ、経済的理由により修学が困難である者に対して、文部科学省外国人留学生学習奨励費給付制度(28年度以降は留学生受入れ促進プログラム)による学習奨励のための奨学金(以下「学習奨励費」という。)を給付している。
外国人留学生が学習奨励費の給付を受けようとするときは、在籍する大学等の長を通じて申請することとなっており、大学等の長は、学習奨励費の給付を受けるにふさわしい者を受給候補者として、一般枠(注4)、特別枠(注5)又は予約枠(注6)の推薦区分からそれぞれJASSOに推薦することとなっている。
また、学習奨励費の月額は、日本語教育機関に在籍している外国人留学生が30,000円、それ以外の教育機関に在籍している外国人留学生が48,000円となっている。
JASSOは、文部科学省からの補助金を財源として、我が国の高等教育機関の学生交流の充実を図るとともに我が国の高等教育機関の国際化・国際競争力強化に資するために、我が国の高等教育機関と諸外国の高等教育機関との学生交流に関する協定等に基づいて、諸外国の高等教育機関に在籍したまま8日以上1年以内の短期間、我が国の高等教育機関が実施する受入プログラムに参加する外国人留学生に対して、留学に係る費用の一部を、海外留学支援制度(協定受入)による奨学金(以下「協定受入奨学金」という。)として支援している。
協定受入奨学金は月額80,000円となっており、JASSOは受入期間を31日ごとに区切って算出した支給月数(回数)に上記の月額を乗じた額を我が国の高等教育機関に交付し、我が国の高等教育機関は支援対象となる月ごとに支援対象者へ協定受入奨学金を支給している。
私学事業団は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、文部科学省からの補助金を財源として、私立大学等を設置する学校法人に対して、経常費補助金を交付している。経常費補助金は、私立大学等の教育又は研究に係る経常的経費の2分の1以内を補助する一般補助のほか、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のために特に必要があると認められるときは経常費補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。
このうち、特別補助については、私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定。以下「配分基準」という。)によると、「大学等の国際交流の基盤整備」のうち外国人留学生に係る項目として、「海外からの学生の受入れ」「大学等の教育研究環境の国際化」及び「留学生に対する授業料減免」がある。
配分基準等によれば、「大学等の国際交流の基盤整備」の特別補助は、外国人留学生の受入れにおいて、各外国人留学生の出欠状況、学業成績、資格外活動の状況等を的確に把握し、長期欠席者や学業成績の良好でない者に対して連絡や指導を行い、出欠状況等の改善を図っているなどの体制を整備している大学等を対象に行うこととされている。また、「海外からの学生の受入れ」及び「大学等の教育研究環境の国際化」の特別補助については、30年度までは図表0-2の1から7まで(「海外からの学生の受入れ」については1から5まで)の取組のいずれかを実施することなどが要件とされていたが、令和元年度からは、取組が15項目に増え、そのうち6項目以上の取組を実施することとされるなど、要件の見直しが行われた。そして、「大学等の教育研究環境の国際化」の特別補助の額については、平成30年度までは図表0-2に掲げる1から7までの各区分の取組の実施件数に1件当たり30万円を乗じて得た額とされていたが、令和元年度からは、大学等の規模に応じた単価が新たに設定され、図表0-2に掲げる1から15までの各区分の取組の実施1件当たりに、当該年度の5月1日現在の収容定員が4,000人未満の場合は30万円、4,000人以上8,000人未満の場合は60万円、8,000人以上の場合は120万円を乗じて得た額とされている。
図表0-2 特別補助の算定対象となる取組
区分 | 取組 | |
---|---|---|
1 | 留学生の受入体制の整備 | 留学生の受入体制として、留学生の入学及び修学に係る相談窓口の設置や相談員の配置、寄宿舎(学校所有又は借上げ)の整備、職員の語学研修(国内外は問わない。)又は海外研修派遣のいずれかを実施している。 |
2 | 留学生の修学支援 | 留学生や派遣学生を対象とする大学等独自の奨学金制度(授業料等減免や貸与等を含む。)、留学生に対するチューター制度又は留学生を対象とした日本語教育の授業のいずれかを実施している。 |
3 | 留学生の就職支援 | 留学生の就職支援のため、留学生の就職に係る相談窓口の設置や相談員の配置、留学生受入れ企業の情報収集・提供等を組織的に実施している。 |
4 | 留学生向けの入学選抜制度の実施 | 秋季入学制度や留学生に対する特別の入学試験(当該年度に入学する留学生を選抜する試験)を実施している。 |
5 | 教育課程の編成 | 教育研究環境の国際化のため外国語のみによる授業、海外の大学との単位互換又はダブル・ディグリーのいずれかを実施している。 |
6 | 留学プログラムの実施 | 海外の大学等と学生の交流や教職員の研修を行うためのプログラム(事前・事後の研修や指導等を伴うもの。)を実施している。 |
7 | 帰国留学生のフォローアップ | 帰国した外国人留学生のフォローアップのために、帰国留学生の同窓会等の組織化支援、活動支援を実施している。 |
8 | シラバスの外国語化・公表 | シラバスの外国語化を行い、ホームページで公表している。 |
9 | 外国語のみでの履修による卒業 | 外国語のみによる授業科目のみの履修で卒業、又は課程を修了できる学部・課程・コース等を開講している。 |
10 | 日本人学生の海外留学必修化 | 日本人学生に対し、在学中に海外の大学等への留学(単位修得を目的としたものに限る。)を必修化している履修形態がある。 |
11 | 海外大学等へ留学する学生の割合 | 前年度に海外の大学等へ留学した学生の割合が5%以上である。 |
12 | 海外大学等との教職員の人事交流 | 海外の大学と教員、研究者又は職員の人事交流に関する大学間交流協定等を締結しており、かつ前年度又は当該年度に交流実績がある。 |
13 | 学術論文の国際共著数 | 前年度の大学等の全体の学術論文における国際共著論文の割合が15%以上である。 |
14 | 達成度の把握・フォローアップ | 外国語の到達目標として、外部試験による達成度の把握及びフォローアップの仕組みを構築している。 |
15 | 職員派遣、現地説明会の開催 | 職員を海外へ派遣し、当該校への入学や留学等について現地で説明会を開催している。 |
また、「留学生に対する授業料減免」の特別補助は、経済的に修学困難な外国人留学生を対象とした授業料減免等を実施するなどしている私立大学等を対象に行うこととされている。
なお、私学事業団は、国際環境整備、地域の国際化等、多様なグローバル化に取り組む大学等を重点的に支援する「私立大学等改革総合支援事業(タイプ4 グローバル化)」の支援対象校として文部科学省により選定された私立大学等に対して経常費補助金の増額を行っていたが、当該支援は平成30年度で終了した。
JASSOは、独立行政法人日本学生支援機構一般勘定運営費交付金等を財源として、外国人留学生のために宿舎を効果的、効率的かつ安定的に確保することなどを目的として、留学生借り上げ宿舎支援事業を実施している。
文部科学省は、外国人留学生の受入れの増加を目指すことなどを目的として、国際競争力強化の実現を図り、優れた能力を持つ人材を育成する環境基盤を整備するスーパーグローバル大学創成支援事業等の大学等に対する補助事業や、就職に必要なスキルである日本語能力等を学ぶ環境を創設する取組の支援等を行う留学生就職促進プログラム等の大学等への委託事業を実施している(別図表0-3参照)。
外国人留学生が在籍する教育機関には、学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づくなどして設置された大学、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)、準備教育課程を設置する教育施設及び日本語教育機関がある。同法によれば、大学には大学院、専攻科及び別科を、短期大学には専攻科及び別科を、高等専門学校には専攻科を置くことができるとされている。このうち、専攻科は、精深な程度において特別の事項を教授し、その研究を指導することを目的とするものである。また、別科は、大学の入学資格を有する者に対して、簡易な程度において特別の技能教育を施すことを目的とするものであり、特別の技能教育の中には外国人留学生が大学等に入学するための準備教育として日本語等を教育することを目的とするもの(以下「留学生別科」という。)がある。さらに、大学等においては、各大学等の規程に基づき、研究生、聴講生等として外国人留学生を受け入れることがある。
そして、次のとおり、文部科学省、出入国在留管理庁等においては、これらの各教育機関に対して外国人留学生の在籍管理の指導等を行ったり、報告を求めたりなどしており、また、大学等においては、これらの指導等を踏まえて外国人留学生の在籍管理を行っている。
なお、外国人留学生の在籍管理を巡る問題として、31年3月に、外国人留学生の在籍数が国内有数である、学校法人茶屋四郎次郎記念学園が設置する東京福祉大学(30年5月現在5,133人)において、多数の外国人留学生が所在不明となっていることなどが報道され、令和元年6月の文部科学省等の調査で平成28年度から30年度までの間に計1,610人の外国人留学生が所在不明となっていることが判明している。
文部科学省は、文部科学省設置法(平成11年法律第96号)等に基づき国立、公立又は私立の大学及び高等専門学校に対して通知を発して、外国人留学生の受入れ、在籍管理の徹底等を適切に行うよう要請するなどしている。
また、文部科学省は、私立等の専修学校等に対して在籍管理に関する指導等の直接の権限はないが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)に基づき、都道府県に対して通知を発して、専修学校等における外国人留学生の適切な受入れなどを指導するよう求めている。
一方、日本語教育機関は、株式会社等の営利法人、公益財団法人等の非営利法人等が設置しているものなど様々な設置形態があり、在籍管理に関する指導等を含めて日本語教育機関全体を総合的に管理・監督している省庁はない。
出入国在留管理庁は、外国人留学生の入国・在留の際の審査に当たって、入学・在学の事実、外国人留学生本人の勉学の意思・能力、生活費及び学費の経費支弁能力等について、本人及び教育機関からの申請書や必要に応じて申請書の内容を立証する資料を求めるなどして確認している。
また、出入国在留管理庁は、入管法により中長期在留者を受け入れている所属機関が届け出るよう努めなければならないこととされている「所属機関による届出」として、大学、日本語教育機関等の教育機関に対して、在留資格「留学」を有する中長期在留者の受入れを開始した年月日、受入れを終了した年月日等を記載した「中長期在留者の受入れの開始及び終了に関する届出」(以下「受入れに関する届出」という。)を外国人留学生の受入れの開始又は終了が発生した都度それぞれ14日以内に提出することなどを求めており、「受入れに関する届出」を外国人留学生の在留の管理に活用している。
そして、出入国在留管理庁は、これらの在留の管理に当たり情報システムを整備して活用している。
大学等は、各大学等が定めている規程に基づくなどして、外国人留学生が入学する際に在留カードを提示させるなどして在留資格を確認したり、入学後については、授業の際に出欠状況を確認したり、各大学等が運営している情報システムに学業成績の状況を入力して常時学業成績を確認したりなどしている。また、日本政府奨学金等を受給している外国人留学生の在籍管理については、JASSOが定めているマニュアル等に基づき、受給の都度、当該外国人留学生本人に大学等の窓口において在籍確認簿にサインさせるなどしている。
技能実習制度は、我が国で培われた技能等の開発途上地域等への移転を図り、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として5年4月に創設された制度であり、外国人を我が国に一定期間受け入れ、実習実施者(企業等の技能実習を行わせる者をいう。旧制度における実習実施機関を含む。以下同じ。)との雇用契約に基づいて技能等に係る業務に従事することで当該技能等を技能実習生に修得、習熟又は熟達(以下、これらを合わせて「修得等」という。)させるものである。
外国人研修・技能実習制度(「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」(平成21年法律第79号。以下「21年改正法」という。)が施行された22年7月以前の技能実習制度。以下同じ。)で受け入れている外国人の在留資格は「特定活動」とされていたが、21年改正法の施行により、新たな在留資格「技能実習」が創設され、「技能実習1号」(入国1年目)、「技能実習2号」(入国2、3年目)と最長で3年間の技能実習を行うことができることとなり、入国1年目から雇用関係の下、労働関係法令が適用されるなど、技能実習生の法的保護及びその法的地位の安定化を図るための措置が講じられてきた。
さらに、28年11月には技能実習法が公布され、29年11月から施行(外国人技能実習機構(以下「技能実習機構」という。)の設立規定は28年11月の公布時に施行)された。
また、前記のとおり、技能実習生数が令和2年末には減少しているものの増加傾向にある中で、平成31年3月に、法務省に設置された「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム」の調査・検討結果報告書(以下「技能実習PT報告書」という。)において、技能実習生の行方不明者数が29年に7,089人、30年に9,052人となっており、技能実習法の施行後も増加傾向にあることなどが公表されたり、厚生労働省が定期的に公表している実習実施者に対する監督指導等の状況報告において、監督指導を実施した実習実施者の約70%で、違法な時間外労働、割増賃金の未払等の労働基準関係法令違反に該当する事態が認められるなどしたりしている。
技能実習機構は、29年1月に、外国人の技能等の修得等に関して、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的として、資本金の全額を政府が出資する法人として設立された認可法人である(注7)。
技能実習機構は、技能実習法等に基づき、技能実習計画の認定、実習実施者届出書の受理、監理団体(実習実施者等と技能実習生等との間における雇用関係の成立のあっせん及び実習実施者に対する技能実習の実施に関する監理(以下「実習監理」という。)を行う事業(以下「監理事業」という。)を実施する営利を目的としない商工会議所、商工会、中小企業団体等の法人をいう。以下同じ。)の許可に関する調査、実習実施者及び監理団体へ報告を求め実地に検査する事務(以下、この実地に検査することを「機構実地検査」という。)のほか、技能実習生からの申告の受理等の業務を行っており、これらの業務を実施するために、毎年度、法務大臣及び厚生労働大臣(以下「主務大臣」という。)から外国人技能実習機構交付金(以下「機構交付金」という。)の交付を受けている。
そして、各年度末時点の職員数は、28年度37人(全て本部)、29年度186人(本部50人、地方事務所等136人)、30年度400人(同83人、同317人)、令和元年度582人(同102人、同480人)となっている。
(注7) 本部は東京都に置かれており、地方事務所・支所は、全国13か所(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡各事務所、水戸、長野、富山、松山、熊本各支所)にある。
技能実習法は、技能実習に関して、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、技能実習計画の認定及び監理団体の許可の制度を設けることなどにより、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的としている。そして、技能実習の基本理念として、技能実習は、技能等の適正な修得等のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならないこと、労働力の需給を調整するための手段として行われてはならないこととされている。
また、技能実習法に基づき政府全体で取り組む技能実習制度の見直しの趣旨を明らかにするとともに、技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を達成するための基本的な考え方を示すものとして、主務大臣は、「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針」(平成29年法務省・厚生労働省告示第1号。以下「技能実習基本方針」という。)を策定している。技能実習基本方針には、技能実習の基本理念、技能実習計画の認定制及び監理団体の許可制の趣旨、技能実習生の保護及び政府間での取決めに関する事項、国及び技能実習機構の役割、技能等の移転の推進に係る調査の実施に関する事項等が記載されている。
そして、技能実習基本方針においては、技能実習制度の適正化に関する技能実習法の規定の概要として、次の事項等が示されている。
① 技能実習生ごとに作成する技能実習計画を認定制とし、技能実習生が修得等した技能等に係る評価を行うことなどの認定の基準等を定めること
② 実習実施者は届出制とすること、また、監理団体は許可制とし、許可の基準等を定めること
③ 技能実習生の保護に関する措置として、技能実習生に対する人権侵害行為等の禁止、違反に対する罰則を規定するとともに、技能実習生に対する相談対応や情報提供、技能実習生の実習先変更の連絡調整等を行うこと
④ 技能実習機構を認可法人として新設し、技能実習計画の認定、機構実地検査、実習実施者届出書等の受理、監理団体の許可に関する調査等を行わせること
また、同様に、技能実習制度の拡充に関する技能実習法の規定の概要として、優良な実習実施者及び監理団体に限定して、技能実習期間を従来の最長3年間から2年間延長して最長5年間とする技能実習生の受入れを可能とすることが示されている。
新制度の概要は、次のとおりである(新制度と旧制度の比較は別図表0-4参照)。
技能実習生の受入れ方式には、次の二つの方式がある。
① 「企業単独型」
実習実施者が外国に開設している事業所等の実習実施者と一定の事業上の関係を有する機関から技能実習生を受け入れて技能実習を行わせる。
② 「団体監理型」
監理団体が技能実習生の送り出しを希望する国の送出機関から技能実習生を受け入れ、当該監理団体の傘下にある実習実施者において技能実習を行わせる。
そして、2年末時点で我が国に在留する技能実習生37万8200人について、これを受入れ方式別にみると、企業単独型による者は6,402人、団体監理型による者は37万1798人であり、98.3%が団体監理型による受入れとなっている。
技能実習生の在留資格「技能実習」については、次の①から③までのとおり区分されており、図表0-3のとおり、技能実習生の受入れ方式に応じて、更に企業単独型と団体監理型とに区分されている。
① 技能等を修得するために、講習を受け、技能等に係る業務に従事する活動を行うことができる「技能実習1号」(入国1年目)
② 技能等に習熟するために、技能等を要する業務に従事する活動を行うことができる「技能実習2号」(入国2、3年目)
③ 技能等に熟達するために、技能等を要する業務に従事する活動を行うことができる「技能実習3号」(入国4、5年目)
図表0-3 技能実習に係る在留資格
区分 | 企業単独型 | 団体監理型 |
---|---|---|
入国1年目 (技能等を修得) |
第1号企業単独型技能実習 (在留資格「技能実習1号イ」) |
第1号団体監理型技能実習 (在留資格「技能実習1号ロ」) |
入国2、3年目 (技能等に習熟) |
第2号企業単独型技能実習 (在留資格「技能実習2号イ」) |
第2号団体監理型技能実習 (在留資格「技能実習2号ロ」) |
入国4、5年目 (技能等に熟達) |
第3号企業単独型技能実習 (在留資格「技能実習3号イ」) |
第3号団体監理型技能実習 (在留資格「技能実習3号ロ」) |
そして、第1号企業単独型技能実習又は第1号団体監理型技能実習(以下、これらを合わせて「第1号技能実習」という。)から第2号企業単独型技能実習又は第2号団体監理型技能実習(以下、これらを合わせて「第2号技能実習」という。)へ、第2号技能実習から第3号企業単独型技能実習又は第3号団体監理型技能実習(以下、これらを合わせて「第3号技能実習」という。)へそれぞれ移行するためには、技能実習生本人が所定の技能検定等に合格していることが必要となっている。
技能実習法によれば、技能実習を行わせようとする者は、技能実習生ごとに、技能実習計画を作成し、これを出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出して、その技能実習計画が適当である旨の認定を受けることができることとされている。
そして、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、認定の申請があった場合において、その技能実習計画が、技能実習生に修得等させる技能等が本国において修得等が困難なものであることなど所定の要件のいずれにも適合すると認めるときは、その認定をすることとされており、技能実習法等に基づき、技能実習機構に、技能実習計画の認定に関する事務を行わせている。
また、技能実習基本方針によれば、技能実習は認定された技能実習計画に基づいて行われなければならないとされており、技能実習法によれば、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、実習実施者が認定された技能実習計画に従って技能実習を行わせていないと認めるときなどは、改善命令や認定の取消しを行うことができることとされている。
技能実習法によれば、実習実施者は、技能実習を開始したときは、遅滞なく、開始した日その他「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則」(平成28年法務省・厚生労働省令第3号。以下「技能実習規則」という。)で定める事項を記載した実習実施者届出書を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に提出しなければならないこととされている。そして、出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣は、技能実習法等に基づき、技能実習機構に、実習実施者届出書の受理に係る事務を行わせている。
技能実習法によれば、監理事業を行おうとする者は、主務大臣の許可を受けなければならないこととされている。
そして、主務大臣は、許可の申請を受けたときは、監理団体の許可の申請書等に係る事実関係について調査を行うこととされており、主務大臣のうち厚生労働大臣については、上記の許可をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴かなければならないこととされている。また、主務大臣は、許可の申請があった場合において、その申請者が、我が国に所在する営利を目的としない法人であることなど所定の要件のいずれにも適合すると認めるときでなければ、その許可をしてはならないこととされており、技能実習法等に基づき、技能実習機構に、上記事実関係の調査を行わせている。
監理団体の許可には、「特定監理事業」と「一般監理事業」の二つの事業区分があり、特定監理事業の許可を受ければ第1号団体監理型技能実習及び第2号団体監理型技能実習のみに係る監理事業を、一般監理事業の許可を受ければ第1号団体監理型技能実習から第3号団体監理型技能実習までに係る監理事業を行うことができる。そして、平成29年度から令和元年度までの間に許可を受けた計2,942件について、事業区分別にみると、特定監理事業が2,174件(許可件数全体に占める割合73.8%)、一般監理事業が768件(同26.1%)となっている。
また、主務大臣は、監理団体が、技能実習法等の規定に違反した場合において、監理事業の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、当該監理団体に対して改善命令を行うことができることとされ、前記の許可に係る要件のいずれかに適合しなくなったと認めるときなどは、許可の取消しを行うことができることとされている。
技能実習法によれば、実習監理を行う者等は、暴行等の手段によって技能実習生の意思に反して技能実習を強制すること、技能実習生等との間で技能実習に係る契約の不履行について違約金を定めること、技能実習生の旅券又は在留カードを保管することなどをしてはならないこととされている。そして、実習実施者、監理団体等に技能実習法の規定に違反する事実がある場合においては、技能実習生は、その事実を出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣に申告できることとされ、実習実施者、監理団体等は、この申告をしたことを理由に、技能実習生に対して技能実習の中止その他不利益な取扱いをしてはならないこととされている。
また、実習実施者及び監理団体は、技能実習実施困難時届出書の提出等をしようとするときは、引き続き技能実習を行うことを希望する技能実習生が技能実習を継続できるよう、当該技能実習生の実習先を他の実習実施者へ変更させるなど必要な措置を講じなければならないこととされている。
そして、技能実習機構は、実習実施者及び監理団体が新たな実習先を確保することができない場合に実習先変更の支援を行ったり(以下、この支援を「個別支援」という。)、実習実施者又は監理団体による不適正な行為等のやむを得ない事情により技能実習を行うことが困難となった技能実習生であって、引き続き技能実習を行うことを希望しているものの宿泊先がない技能実習生に対して、一定期間宿泊場所の提供を実施したり(以下、この支援を「宿泊支援」という。)などしている。
旧制度では、行方不明者の発生防止等を名目に、技能実習生本人から保証金等を徴収する不適正な送出機関の存在が指摘されるなどしていたが、新制度では、技能実習基本方針によれば、技能実習生の送り出しを希望する国との政府間での二国間取決めを順次作成し、この二国間取決めを通じて、送出国と協力し、不適正な送出機関の排除や、制度の趣旨・目的を理解し真に技能等の修得等に努めようとしている技能実習生に絞った受入れを目指すこととされている。そして、我が国と二国間取決めをした相手国との間において、我が国は、相手国が送出機関の適格性を審査し適正なものとして認定した認定送出機関のみから技能実習生を受け入れることとされている。また、技能実習規則によれば、認定送出機関を含む外国の送出機関は、技能実習を修了して帰国した技能実習生(以下「帰国後技能実習生」という。)に対して就職先のあっせんその他の必要な支援を行うこととされている。
二国間取決めは、3年3月末現在、ベトナム等14か国との間で作成されており、認定送出機関の数は計1,581機関となっている(別図表0-5参照)。
また、技能実習生数が多い上位10か国に関して、二国間取決めの作成状況を整理すると、3年3月末現在、中国を除く送出国とは二国間取決めが作成されており、中国に関しても作成に向けた協議が行われている(別図表0-6参照)。
そして、二国間取決めにおいては、双方が定期協議等を行うことなど具体的な取組を定め、定期協議の開催、不適正な送出機関、実習実施者及び監理団体に関する情報提供等を行い、我が国と送出国が技能実習を適正かつ円滑に行うために連携を図ることになっている。
外国人受入れ基本方針によれば、外国人材の受入れを更に進めていくに当たり、外国人の受入れ環境の整備に係る様々な分野における取組を政府全体として強化し、進める必要があるとされている。そして、出入国の管理等を所掌する法務省が、外国人の受入れ環境の整備に関する総合調整等を行うこと、その司令塔的機能の下、関係府省が連携を強化し、地方公共団体とも協力しつつ、外国人の受入れ環境の整備を効果的・効率的に進めること、また、関係府省のうち法務省等3省は、外国人の受入れ環境の整備に関する事務を分担することとされている(別図表0-7参照)。
総合的対応策等は、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するための目指すべき方向性を示すものとされており、これらの概要を示すと、次のとおりである。
総合的対応策に示された各施策は、外国人材の受入れ・共生のための取組をより強力に、かつ、包括的に推進する観点から取りまとめられたものであり、
① 外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等
② 生活者としての外国人に対する支援
③ 外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取組
④ 新たな在留管理体制の構築
に分類されている。
そして、上記施策の中には、様々な具体的施策が挙げられており、これら具体的施策の総数は計125施策(注8)となっている。また、平成30年12月に法務省が公表した「総合的対応策関連予算」によれば、総合的対応策の関連予算については、計211億円(注9)(30年度第2次補正予算額61億円及び令和元年度当初予算額150億円)とされている。
(注8) 関係閣僚会議において了承された総合的対応策は、再掲により重複する1施策が具体的施策数として計上されているため、126施策となっている。
(注9) 地域における外国人材の活躍と多文化共生社会の実現を図る地方公共団体に対する地方創生推進交付金による支援や事業主体等が雇用労働者に対して職務に関連した専門的な知識等を習得させるための職業訓練に対する人材開発支援助成金による助成等のように総合的対応策に関連する予算ではあるものの、具体的施策に対応する予算額を算出することが困難であるとして総合的対応策の関連予算の合計額に含められていないものがある。
総合的対応策(改訂)の施策は、総合的対応策と同様の基本的な考え方に沿って改訂が行われたものであり、
① 外国人との共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動等
② 外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組
③ 生活者としての外国人に対する支援
④ 新たな在留管理体制の構築
に分類されている。
そして、上記施策の中には、様々な具体的施策が挙げられており、これら具体的施策の総数は計172施策であり、総合的対応策と比べて、②外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組、③生活者としての外国人に対する支援等に係る施策において拡充が図られている。また、2年1月に出入国在留管理庁が公表した「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)関連令和2年度当初予算等について」によれば、総合的対応策(改訂)の関連予算については、計244億5788万余円(注10)(元年度補正予算額43億3624万円及び2年度当初予算額201億2164万余円)とされている。
(注10) 総合的対応策(改訂)の具体的施策の中には、国の行政機関と地方公共団体の相談窓口の連携を図るなどの予算を要しないものがある。また、総合的対応策と同様に総合的対応策(改訂)に関連する予算ではあるものの、具体的施策に対応する予算額を算出することが困難であるとして総合的対応策(改訂)の関連予算の合計額に含められていないものがある。
総合的対応策(令和2年度改訂)の施策は、総合的対応策等と同様の基本的な考え方に沿って改訂が行われており、総合的対応策(改訂)の①から④までと同じ区分で分類されている。
そして、上記施策の中には、総合的対応策(改訂)と同様に様々な具体的施策が挙げられており、総合的対応策(令和2年度改訂)の具体的施策の総数は計191施策であり、総合的対応策(改訂)と比べて、②外国人材の円滑かつ適正な受入れの促進に向けた取組、③生活者としての外国人に対する支援及び④新たな在留管理体制の構築に係る施策において拡充が図られている。
政府は、新型コロナの感染拡大及び経済への影響を受け、令和2年度第1次補正予算、令和2年度第2次補正予算及び令和2年度第3次補正予算により財政措置を講じた。
上記補正予算のうち、前記要請の検査対象である法務省、文部科学省及び厚生労働省に係る外国人を主な支援対象としている事業についてみると、図表0-4のとおりとなっている。
図表0-4 令和2年度補正予算に基づく各事業のうち外国人を主な支援対象としている事業
所管名 | 事業名 | 事業の概要 | 第1次 補正予算額 |
第2次 補正予算額 |
第3次 補正予算額 |
計 |
---|---|---|---|---|---|---|
法務省 | 新型コロナウイルス感染拡大により困難を抱える外国人材の受入れ支援体制強化 | 特定技能制度の活用促進のための取組に関する案内や新型コロナの感染拡大の影響により解雇等された技能実習生等に対する再就職に関する在留資格上の各種手続案内、その他の問合せに対応する臨時の相談窓口の設置等を行う。 | 1,074 | - | - | 1,074 |
厚生 労働省 |
外国人の適切な医療機関受診方法等の周知 | 新型コロナに感染した疑いのある外国人が医療機関を適切に受診できるようにするため、英語、中国語等の主要な言語に対応したポスターやリーフレット等を作成し、外国人へ周知を図る。 | 50 | - | - | 50 |
外国人労働者に係る相談支援体制等の強化 | 外国人を雇用する事業主に対する雇用維持のための相談支援や外国人求職者に対する相談支援への対応のため、ハローワークにおける相談員等を増員し、相談支援等を実施する。 | 370 | 250 | 13 | 634 | |
計 | 3事業 | 1,495 | 250 | 13 | 1,759 |
また、令和2年度補正予算により実施される上記の事業以外に、上記の各省が3年4月末現在実施している新型コロナに関連する外国人を主な支援対象としている取組についてみると、図表0-5のとおりとなっている。
図表0-5 令和3年4月末現在実施している外国人を支援対象としている新型コロナに関連する主な取組(令和2年度補正予算によるものを除く。)
所管省庁 | 取組の概要(令和3年4月末現在) |
法務省 (出入国在留管理庁) |
本国等への帰国が困難な外国人について、以下の取扱いを認めている。
①「技能実習」等の在留資格で在留している外国人等
⇒就労を希望する場合は、「特定活動(6か月・就労可)」への在留資格の変更等を許可
②「留学」の在留資格で在留している外国人等
⇒就労を希望する場合は、「特定活動(6か月・週28時間以内のアルバイト可)」への在留資格の変更等を許可
③①及び②以外の在留資格で在留している外国人等
⇒「特定活動(6か月・就労不可)」等への在留資格の変更等を許可するとともに、我が国での生計維持が困難な場合は、資格外活動を許可
|
文部科学省 | 国費外国人留学生及び学習奨励費の受給候補者等について、以下の取扱いなどを認めている。
・ 新型コロナに係る入国制限等により渡日が遅れた場合における入学時期等の変更
・ 通常、日本政府奨学金(給与)又は学習奨励費の支給に必要となる在籍確認のサインについて、渡日直後の14日間の自宅等待機によりサインができないなど、渡日しているものの新型コロナに起因する理由によりやむを得ずサインができない場合等に奨学金の支給を認めるなどの特例措置の実施
|
会計検査院は、外国人留学生に係る経常費補助金の算定は適切かなどについて検査した結果、不当事項、意見を表示し又は処置を要求した事項等として検査報告に掲記しており、また、国会からの要請を受けて政府開発援助に係る技術協力の留学生受入事業や外国人研修・技能実習制度について検査し、その結果を平成20年10月に国会に報告するなどしている(別図表0-8参照)。
(ア) 令和2年を目途に30万人の外国人留学生を受け入れることを目指すとしている骨子に対して、大学等における外国人留学生の在籍状況はどのようになっているか。
(イ) 外国人留学生に係る文部科学省等の奨学金、補助金等の金額、対象者数等はどのように推移しているか。
(ウ) 大学等は、文部科学省等の指導に基づくなどして外国人留学生の受入れを行っているか。文部科学省等は、受入れのための支援をどのように行っているか。
(エ) 文部科学省及び法務省は、大学等や都道府県等に対して、外国人留学生の在籍管理について、どのような指導等を行っているか。出入国在留管理庁が在留の管理に用いている情報システムは有効に活用されているか。文部科学省等の補助事業に係る補助要件等において、大学等における在籍管理の状況が適切に考慮されているか。
(オ) 外国人留学生の卒業等後の進路はどのようになっているか。大学等は、外国人留学生の就職等の支援をどのように行っているか。
(ア) 技能実習機構の予算及び決算の状況や機構交付金の執行状況はどのようになっているか。
(イ) 技能実習機構による技能実習計画の認定、監理団体の許可に関する調査、機構実地検査等の実施状況はどのようになっているか。技能実習機構は、実習実施者届出書の提出の督促及び行方不明事案に対する対応を適切に実施しているか。
(ウ) 技能実習生が技能実習で身に付けた技能について、技能実習修了後の活用状況はどのようになっているか。
(ア) 外国人材の受入れに係る国の支援について、予算の執行状況はどのようになっているか。
(イ) 国の支援の一環として法務省、文部科学省及び厚生労働省が実施している補助事業や委託事業において、3省は、補助や委託を受けた事業主体等が行う事業の実施状況等を適切に把握しているか。
会計検査院は、大学等への外国人留学生受入れに係る施策の状況については、原則として平成27年度から令和元年度まで(ただし、第2の1(5)ア及びイは平成29年度から令和元年度まで、第2の1(5)ウは平成27年度から30年度まで)の国立大学法人運営費交付金、日本政府奨学金、文部科学省の補助金等による施策を、技能実習制度の適正化に係る取組の状況については、原則として29年度(ただし、技能実習機構の予算、決算等の状況については28年度)から令和元年度までの機構交付金、法務省等による施策を、外国人材の受入れに係る国の支援の状況については、原則として総合的対応策が取りまとめられた平成30年度(ただし、総合的対応策の具体的施策のうち法務省、文部科学省及び厚生労働省において関連予算が計上されている事業については、総合的対応策の取りまとめ前の事業に係る実施状況を確認等するため、遡及して27年度)及び令和元年度の総合的対応策及び総合的対応策(改訂)による施策をそれぞれ対象として検査した。
検査に当たっては、出入国在留管理庁及び5出入国在留管理局等、文部科学本省、厚生労働本省及び2労働局、技能実習機構本部及び3事務所、私学事業団、独立行政法人日本学術振興会、JASSO市谷事務所、独立行政法人国立高等専門学校機構(以下「高専機構」という。)本部、13国立大学法人、14学校法人、5府県、13市並びに1公益財団法人において、508人日を要して会計実地検査を行った(会計実地検査を行った箇所は別図表0-9参照)。また、18府省庁等、5出入国在留管理局等、3労働局、技能実習機構本部及び4事務所、私学事業団、独立行政法人日本学術振興会、JASSO市谷事務所及びJASSOが設置する2教育センター、高専機構本部及び高専機構が設置する2高等専門学校、13国立大学法人が設置する13国立大学、14学校法人が設置する14私立大学等、45道府県、139市区町村並びに1公益財団法人から調書及び関係資料を徴したり、担当者等から説明を聴取したりなどするとともに、公表されている資料を活用して調査・分析を行うなどした(調査・分析を行うなどした箇所は別図表0-10参照)。