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  • 令和6年5月

マイナンバー制度における地方公共団体による情報照会の実施状況について


3 検査の状況

(1) マイナンバー情報照会の実績

情報照会者は、社会保障、税及び災害対策の各分野における情報連携事務の処理に当たり、事務手続を指定してマイナンバー情報照会を実施することにより、情報提供NWSを通じて情報提供者から当該事務手続に係る特定個人情報の提供を受けることができることとなっている。

そして、国は、情報連携を支える基盤となる情報提供NWSを整備して運用するとともに(整備及び運用に要した経費749億余円)、情報連携に必要となる地方公共団体における情報システムの整備等に対して国庫補助金を交付して(国庫補助金交付額1400億余円)、地方公共団体におけるマイナンバー情報照会の実施環境の整備を推進している。

そこで、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実績について、情報提供NWSを管理するデジタル庁から各事務手続に係る情報照会者別のマイナンバー情報照会の照会件数のデータ(以下「照会実績データ」という。)の提供を受けて、これを集計し、分析したところ、次のとおりとなっていた。

ア 情報連携の運用開始以降のマイナンバー情報照会の照会件数の状況

情報連携は、平成29年7月に試行運用が開始され、同年11月から本格運用が開始されている。同年7月以降に地方公共団体が実施したマイナンバー情報照会の照会件数について年度別にみると、図表1-1のとおり、29年度の149万余件に対して、令和4年度には3029万余件となっており、毎年度増加している傾向が見受けられた。

また、4年度に地方公共団体が実施したマイナンバー情報照会の照会件数3029万余件について特定個人情報の種類別にみると、照会件数が最も多かったものは地方税関係情報(マイナンバー法別表第二に定める「地方税法その他の地方税に関する法律に基づく条例の規定により算定した税額又はその算定の基礎となる事項に関する情報」をいう。以下同じ。)の2058万余件(3029万余件の67.9%)となっていた。地方税関係情報について、地方公共団体がマイナンバー情報照会を実施することにより、申請者にとっては、各種申請の際の課税証明書等の提出が省略でき、課税証明書等の発行に係る手数料等の負担が軽減され、地方公共団体にとっては、転入者の前住所地の地方公共団体に対する文書照会が不要となり、郵送等に係る作業に要する時間や労力、通信費等が削減されることになる。

次に多かったものは年金給付関係情報(マイナンバー法別表第二に定める「国民年金法、私立学校教職員共済法、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法又は地方公務員等共済組合法による年金である給付の支給又は保険料の徴収に関する情報」をいう。以下同じ。)の536万余件(3029万余件の17.7%)となっていた。年金給付関係情報について、地方公共団体がマイナンバー情報照会を実施することにより、申請者にとっては、各種申請の際の年金証書等の提出が省略でき、年金証書等の提出に係る負担が軽減され、地方公共団体にとっては、日本年金機構等に対する文書照会が不要となり、郵送等に係る作業に要する時間や労力、通信費等が削減されることになる。

そして、これらの地方税関係情報及び年金給付関係情報に係る照会件数の合計は、照会件数全体の85.6%を占めていた。

図表1-1 地方公共団体が実施したマイナンバー情報照会の照会件数(平成29年度~令和4年度)

地方公共団体が実施したマイナンバー情報照会の照会件数(平成29年度~令和4年度)

イ 社会保障、税及び災害対策の各分野の事務手続に係るマイナンバー情報照会の照会件数等の状況

地方公共団体は、社会保障、税及び災害対策の各分野における情報連携事務の処理に当たり、事務手続を指定してマイナンバー情報照会を実施することにより、情報提供NWSを通じて、情報提供者から当該事務手続に係る特定個人情報の提供を受けることができることとなっている。

社会保障、税及び災害対策の各分野の事務手続数をみたところ、図表1-2のとおり、事務手続一覧(令和5年3月27日時点)に基づく地方公共団体を情報照会者とする1,429手続のうち、社会保障分野の事務手続が1,358手続(1,429手続の95.0%)、税分野の事務手続が43手続(同3.0%)、災害対策分野の事務手続が28手続(同1.9%)となっていて、社会保障分野の事務手続が多くを占めていた。

そして、各事務手続に係るマイナンバー情報照会の照会件数をみたところ、1,429手続のうちの895手続(同62.6%)において地方公共団体がマイナンバー情報照会を実施しており、残りの534手続(同37.3%)において照会件数が皆無となっていた。また、上記895手続のうち、5手続(同0.3%。社会保障分野が4手続、税分野が1手続)で照会件数が100万件以上となっていた一方、683手続(同47.7%)で照会件数が1件以上1,000件未満となっていて、社会保障及び税の分野においては、事務手続によって照会件数が大きく異なっているなどの状況となっていた。

図表1-2 社会保障、税及び災害対策の各分野の照会件数別の事務手続数(令和4年度)

(単位:手続、%)
分野
(注)
事務
手続数
照会件数別の事務手続数
0件 1件以上
1件以上
1千件未満
1千件以上
1万件未満
1万件以上
10万件未満
10万件以上
100万件未満
100万件以上
社会
保障
労働 3 2 1 1 - - - -
福祉 1,093 386 707 555 79 49 22 2
医療 155 41 114 77 8 20 9 -
その他 107 63 44 32 7 1 2 2
1,358 492 866 665 94 70 33 4
(95.0)
43 15 28 17 6 2 2 1
(3.0)
災害対策 28 27 1 1 - - - -
(1.9)
合計 1,429 534 895 683 100 72 35 5
(100.0) (37.3) (62.6) (47.7) (6.9) (5.0) (2.4) (0.3)

(注) マイナンバー法に基づく「社会保障」「税」及び「災害対策」の各分野に区分するとともに、社会保障分野については、更に、事務手続の所管府省庁が事務分野として設定している「年金」「労働」「福祉」「医療」「年金・医療」及び「その他」の6区分のうちの地方公共団体を情報照会者とする事務手続に該当する4区分を記載している。

(2) 個別の事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況

ア マイナンバー情報照会の利用実績を踏まえた事務手続の選定及び分析の方法

(ア) マイナンバー情報照会の利用実績を踏まえた事務手続の選定

地方公共団体を情報照会者とする事務手続は5年3月時点で1,429手続と多数に上っているため、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の個別の事務手続に係る実施状況を分析するに当たり、デジタル庁から提供を受けた照会実績データを基に、社会保障、税及び災害対策の各分野から対象とする事務手続を選定した。

上記1,429手続のうちの生活保護業務(マイナンバー法別表第二の事務番号26「生活保護法による保護の決定及び実施又は徴収金の徴収に関する事務であって主務省令で定めるもの」をいう。)に係る171手続を除いた(注12)1,258手続を対象として、4年度の照会実績データを基に、各事務手続において情報照会者とされている地方公共団体数(注13)に占めるマイナンバー情報照会の利用実績があった地方公共団体数の比率(以下「地方公共団体比率」という。)を確認したところ、図表2-1のとおり、地方公共団体比率が0%の事務手続が485手続(1,258手続の38.5%)、0%超10%未満の事務手続が649手続(同51.5%)となっていた一方、地方公共団体比率が高い事務手続は少数となっていた。

(注12)
生活保護業務に係る171手続については、1(5)のとおり検査結果を令和3年度決算検査報告に掲記していることから、選定対象から除いている。
(注13)
事務手続一覧(令和5年3月27日時点)の「情報照会者機関種別」欄に記載されている各事務手続に係る地方公共団体の団体数をいう。

図表2-1 マイナンバー情報照会について地方公共団体の利用実績があった事務手続の分布(令和4年度)

マイナンバー情報照会について地方公共団体の利用実績があった事務手続の分布(令和4年度)

上記の1,258手続について、地方公共団体比率別に各事務手続に係るマイナンバー情報照会の照会件数の合計の分布をみたところ、図表2-2のとおり、地方公共団体比率が高い事務手続においてマイナンバー情報照会の照会件数が多くなっていた。また、地方公共団体比率が50%以上の事務手続についてみると、計33手続と少数であるものの、マイナンバー情報照会の照会件数全体の75.3%(2460万余件のうち1855万余件)を占めていた。

図表2-2 地方公共団体比率別の各事務手続に係るマイナンバー情報照会の照会件数の合計の分布(令和4年度)

地方公共団体比率別の各事務手続に係るマイナンバー情報照会の照会件数の合計の分布(令和4年度)

そして、地方公共団体比率が50%以上の事務手続(図表2-2の計33手続のうちの32手続(注14))と50%未満の事務手続(同計1,225手続)について、事務手続ごとのマイナンバー情報照会の照会件数及びマイナンバー情報照会を利用した地方公共団体数の分布をみたところ、図表2-3のとおり、地方公共団体比率が50%以上の事務手続と50%未満の事務手続とでは、これらの差異が顕著となっていた。

(注14)
33手続のうち、情報照会者が1地方公共団体のみとなっている1手続を除いている。

図表2-3 地方公共団体比率が50%以上の事務手続と50%未満の事務手続に係るマイナンバー情報照会の照会件数及びマイナンバー情報照会を利用した地方公共団体数の分布(令和4年度)

地方公共団体比率が50%以上の事務手続と50%未満の事務手続に係るマイナンバー情報照会の照会件数及びマイナンバー情報照会を利用した地方公共団体数の分布(令和4年度)

そこで、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施状況の分析の対象とする個別の事務手続として、地方公共団体比率が50%以上となっている33手続のうち32手続と、50%未満となっている1,225手続のうち社会保障、税及び災害対策の各分野の事務手続から地方公共団体を情報照会者とするマイナンバー法別表第二に定める各種の情報連携事務がそれぞれ対象となるように選定した168手続との計200手続を選定した。そして、情報照会者とされている地方公共団体の半数以上がマイナンバー情報照会を利用していた32手続(地方公共団体比率が50%以上の事務手続)を中心に分析することとして、32手続については、マイナンバー情報照会の実施の効果や未実施の要因を分析し、情報照会者とされている地方公共団体の過半がマイナンバー情報照会を利用していなかった168手続(地方公共団体比率が50%未満の事務手続)については、未実施の要因を分析した(地方公共団体を情報照会者とする情報連携事務と選定した200手続との対応関係については別図表2参照)。

(イ) 選定した事務手続に係る分析の方法

地方公共団体によるマイナンバー情報照会の個別の事務手続に係る実施状況について分析するに当たり、検査の対象とした451地方公共団体(11県、11県の全市町村(435市町村)、1一部事務組合及び4広域連合)に対して、事務手続ごとに、マイナンバー情報照会を実施することが可能であった事務の件数(注15)(以下「事務の発生件数」という。)を確認し、図表2-4のとおり、事務手続が発生していた地方公共団体(当該事務手続に係る事務の発生件数が1件以上となっていた地方公共団体をいう。以下同じ。)について、事務の発生件数に対するマイナンバー情報照会の照会件数の割合(以下「マイナンバー情報照会実施率」という。)を算出した。

(注15)
実数の把握が困難であった又は実数での把握に過度の負担が見込まれる地方公共団体については、事務の発生件数の概数としている。

図表2-4 地方公共団体におけるマイナンバー情報照会実施率の算出方法

地方公共団体におけるマイナンバー情報照会実施率の算出方法

そして、情報照会者とされている地方公共団体の半数以上がマイナンバー情報照会を利用していた32手続について、マイナンバー情報照会を活用している地方公共団体(マイナンバー情報照会実施率が50%以上の地方公共団体)から、マイナンバー情報照会を実施することにより具体的にどのような効果があったかを聴取した。また、マイナンバー情報照会を十分に活用していない地方公共団体(マイナンバー情報照会実施率が50%未満の地方公共団体)から、マイナンバー情報照会以外の方法により事務を処理した理由(以下「未実施理由」という。)を聴取する(注16)などして、当該地方公共団体においてどのような問題が生じているかを確認した。

一方、情報照会者とされている地方公共団体の過半がマイナンバー情報照会を利用していなかった168手続については、事務手続ごとの事務の発生件数の状況を確認するとともに、マイナンバー情報照会を十分に活用していない地方公共団体(マイナンバー情報照会実施率が50%未満の地方公共団体)から未実施理由を聴取するなどして、当該地方公共団体においてどのような問題が生じているかを確認した。

(注16)
会計実地検査を行った174地方公共団体(11県、11県の159市町村、1一部事務組合及び3広域連合)によるマイナンバー情報照会の実施状況を踏まえて、未実施理由の項目を整理した上で、検査の対象とした451地方公共団体に対して調書の作成を依頼し、当該項目から該当する項目を選択させることによりその状況を確認した(複数選択可。未実施理由の一覧については別図表3参照)。

本報告では、検査の対象とした435市町村の状況が全国の傾向を推し量ることができるものとなっているかを確認するために、事務の発生件数が人口の多寡に関係することを前提として、層化抽出法により、人口に関して全国の1,741市区町村と統計的に有意な差がない市町村の組合せとして、435市町村から217市町村を抽出した上で(図表2-5参照)、事務手続ごとに、435市町村におけるマイナンバー情報照会実施率の平均と217市町村におけるマイナンバー情報照会実施率の平均との差が有意なものかなどについて統計的に検定した。そして、有意な差が見受けられなかった場合には、435市町村におけるマイナンバー情報照会実施率の状況は、全国の1,741市区町村についてみても、おおむね同じ状況になると考えられる(有意水準は5%としている。検定の結果については後述イ(ア)及びウ(イ)a参照)。

図表2-5 検査の対象とした435市町村と217市町村との関係のイメージ

検査の対象とした435市町村と217市町村との関係のイメージ

イ 地方公共団体の半数以上が利用していた事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況

情報照会者とされている地方公共団体の半数以上がマイナンバー情報照会を利用していた32手続について、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施状況を分析したところ、次のとおりとなっていた。

32手続の運用状況をみると、そのうち30手続については、本格運用が平成29年11月から令和2年6月までの間に開始されており、4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた。

また、残りの2手続については、4年度中に試行運用等の期間が含まれていて、該当する事務手続は、「高等学校等就学支援金の支給時(申請時)における、世帯所得に係る要件適合性の確認」に関する事務手続(管理番号91-7)及び「特定公的給付の支給をするための基礎とする情報の管理(特例対応分)」に関する事務手続(管理番号8-107)となっていた(2手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況については別図表4参照)。

(ア) 事務手続別のマイナンバー情報照会実施率の状況

4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた30手続について、451地方公共団体における同年度のマイナンバー情報照会実施率を確認したところ、図表2-6のとおり、事務手続が発生していた地方公共団体は延べ6,423地方公共団体となっており、このうち延べ5,418地方公共団体(延べ6,423地方公共団体の84.3%)においてマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた。

一方、28手続に係る延べ1,005地方公共団体(同15.6%)においてマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっており、このうち延べ506地方公共団体(同7.8%)はマイナンバー情報照会を全く実施していなかった(30手続に係る情報連携事務の発生状況及びマイナンバー情報照会実施率の詳細については別図表5参照)。

30手続のうち、都道府県等を情報照会者とする13手続については、事務手続が発生していた延べ257地方公共団体のうちの延べ158地方公共団体においてマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた一方、11手続に係る延べ99地方公共団体において50%未満となっていた。

また、市町村等を情報照会者とする17手続については、事務手続が発生していた延べ6,166地方公共団体のうちの延べ5,260地方公共団体においてマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた一方、延べ906地方公共団体において50%未満となっていた。そして、検査の対象とした435市町村における各事務手続のマイナンバー情報照会実施率が50%以上の地方公共団体と50%未満の地方公共団体の構成比は、全国の1,741市区町村についてみても、統計的にはおおむね同じになると考えられる(注17)

(注17)
例えば、図表2-6の「個人住民税の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用」に関する事務手続(管理番号16-12)では、事務手続が発生していた396地方公共団体のうち、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていたのは370地方公共団体(396地方公共団体の93.4%)、50%未満となっていたのは26地方公共団体(同6.5%)であり、このような構成比は、全国の1,741市区町村についてみても、統計的にはおおむね同じになると考えられる。

図表2-6 地方公共団体の半数以上が利用していた30手続に係るマイナンバー情報照会実施率の状況(令和4年度)

(単位:地方公共団体、%)
事務手続名、特定個人情報の種類及び管理番号注(1) 事務手続が発生していた地方公共団体数 マイナンバー
情報照会実施率
50%
以上
50%
未満
0%
都道府県等を情報照会者とする事務手続(13手続)注(2)
257 158 99 57
1 児童福祉法による小児慢性特定疾病医療費の支給の認定[地方税関係情報](7-11) 41 27 14 6
2 精神障害者保健福祉手帳の更新[特別障害給付金関係情報](14-30)注(3) 20 11 9 6
3 精神障害者保健福祉手帳の交付(地方公務員共済組合又は全国市町村職員共済組合連合会への照会)[年金給付関係情報](14-37) 16 9 7 6
4 精神障害者保健福祉手帳の更新(国家公務員共済組合連合会への照会)[年金給付関係情報](14-39) 21 12 9 6
5 精神障害者保健福祉手帳の更新(地方公務員共済組合又は全国市町村職員共済組合連合会への照会)[年金給付関係情報](14-40) 21 13 8 5
6 精神障害者保健福祉手帳の更新(日本私立学校振興・共済事業団への照会)[年金給付関係情報](14-41) 19 10 9 6
7 精神障害者保健福祉手帳の交付(日本年金機構への照会)[年金給付関係情報](14-52) 22 12 10 6
8 精神障害者保健福祉手帳の更新(日本年金機構への照会)[年金給付関係情報](14-53) 22 11 11 4
9 精神障害者保健福祉手帳の障害等級の変更(日本年金機構への照会)[年金給付関係情報](14-54) 20 8 12 6
10 特別支援学校への就学奨励に関する法律施行令第2条の規定に基づく保護者等の属する世帯の収入額及び需要額の算定【本人同意要】[地方税関係情報](26-3) 11 9 2 2
11 高等学校等就学支援金の支給時(申請時)における、世帯所得に係る要件適合性の確認[地方税関係情報](91-1) 11 11 - -
12 高等学校等就学支援金の支給時(届出時)における、世帯所得に係る要件適合性の確認[地方税関係情報](91-4) 11 11 - -
13 特定医療費の支給認定[地方税関係情報](98-4) 22 14 8 4
市町村等を情報照会者とする事務手続(17手続)注(2)
6,166 5,260 906 449
1 個人住民税の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用[地方税関係情報](16-12) 396 370 26 14
2 国民健康保険税の賦課[地方税関係情報](16-13) 371 332 39 9
3 高齢受給者証の交付[地方税関係情報](30-16) 321 268 53 27
4 児童扶養手当の認定請求に係る事実についての審査[地方税関係情報](37-4) 373 326 47 32
5 児童扶養手当の届出に係る事実についての審査[地方税関係情報](37-38) 313 259 54 42
6 認定の請求に係る事実の審査(生計を維持する程度が高い者の確認)[地方税関係情報](56-4) 357 335 22 20
7 認定の請求に係る事実の審査(所得の確認)[地方税関係情報](56-5) 416 407 9 6
8 認定の請求に係る事実の審査(被用者・非被用者の別の確認)[年金給付関係情報](56-6) 357 224 133 53
9 現況の届出に係る事実の審査(生計を維持する程度が高い者の確認)[地方税関係情報](56-11) 330 307 23 19
10 現況の届出に係る事実の審査(所得の確認)[地方税関係情報](56-12) 388 372 16 11
11 現況の届出に係る事実の審査(被用者・非被用者の別の確認)[年金給付関係情報](56-13) 360 316 44 26
12 認定の請求に係る事実の審査(世帯構成員の確認)[住民票関係情報](56-25)注(4) 329 263 66 46
13 保険料賦課要件の確認[地方税関係情報](68-8) 361 288 73 10
14 住所移転後の要介護認定及び要支援認定の要件の確認[介護保険給付等関係情報](68-172)注(5) 334 192 142 50
15 介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費及び特例訓練等給付費の支給決定[地方税関係情報](84-4) 371 292 79 30
16 自立支援医療費の支給認定[地方税関係情報](84-52) 385 347 38 24
17 子どものための教育・保育給付に係る支給認定(利用者負担区分の決定等)の申請に係る事実についての審査[地方税関係情報](94-10) 404 362 42 30
30手続の計 6,423 5,418 1,005 506
(100.0) (84.3) (15.6) (7.8)
  • 注(1) 情報照会者とされている地方公共団体の半数以上がマイナンバー情報照会を利用していた32手続のうち、令和4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた30手続を対象に記載している。また、事務手続名を記載するとともに、[ ]で取り扱う特定個人情報の種類を、( )で管理番号を記載している。
  • 注(2) 注(1)の30手続に係る情報照会者とされている地方公共団体は、事務手続によって異なっているため、事務手続一覧に定める各事務手続の情報照会者に基づき、都道府県等と市町村等とに区分している。なお、都道府県と市町村の両方を情報照会者とする事務手続については、令和4年度の照会件数が多い方の事務手続として整理している。
  • 注(3) 「特別障害給付金関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律による特別障害給付金の支給に関する情報」をいう。
  • 注(4) 「住民票関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「住民基本台帳法第7条第4号に規定する事項」をいう。
  • 注(5) 「介護保険給付等関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「介護保険法による保険給付の支給、地域支援事業の実施又は保険料の徴収に関する情報」をいう。
(イ) マイナンバー情報照会の実施の効果に関する認識の状況

4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた30手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた延べ5,418地方公共団体に対して、マイナンバー情報照会の実施の効果に関する認識を確認したところ、図表2-7のとおり、国民の利便性の向上について、「向上につながった」とする地方公共団体が延べ4,702地方公共団体(延べ5,418地方公共団体の86.7%)、行政運営の効率化について、「効率化につながった」とする地方公共団体が延べ4,772地方公共団体(同88.0%)となっていた(事務手続別の状況については別図表6参照)。

そして、効果に関する認識の具体的な内容は、国民の利便性の向上については、地方税関係情報の確認に必要となる課税証明書等や年金給付関係情報の確認に必要となる年金証書等の提出が省略されて「添付書類を準備する手間が掛からなくなった」「手数料を負担する必要がなくなった」などとなっていた。また、行政運営の効率化については、地方税関係情報や年金給付関係情報の確認のために行っていた文書照会が不要になるなどして「事務処理に要する時間が短縮された」「事務処理に係る作業負担が軽減された」などとなっていた。

図表2-7 地方公共団体の半数以上が利用していた30手続に係るマイナンバー情報照会の実施の効果に関する認識の状況(マイナンバー情報照会実施率が50%以上の延べ5,418地方公共団体)

(ウ) 事務手続別の未実施理由等の状況

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた28手続に係る延べ1,005地方公共団体における情報連携事務の処理方法及び未実施理由について、事務手続ごとに確認し、事務手続ごとの未実施理由について、複数の地方公共団体が選択した未実施理由のうち選択数が多かった上位2項目(以下「事務手続ごとの主な未実施理由」という。)の状況を更に確認した。

未実施理由等の状況について、事務手続によって情報照会者とされている地方公共団体が異なっていることから、都道府県等を情報照会者とする事務手続と市町村等を情報照会者とする事務手続の別に示すと、次のとおりとなっていた。

a 都道府県等を情報照会者とする事務手続に係る事務手続別の未実施理由等の状況

(a) 未実施理由等の状況

都道府県等を情報照会者とする13手続のうちの11手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた延べ99地方公共団体について、マイナンバー情報照会以外の方法による処理件数や未実施理由を確認したところ、図表2-8のとおり、情報連携事務計244,314件がマイナンバー情報照会以外の方法により処理されていた。

図表2-8 都道府県等を情報照会者とする11手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた延べ99地方公共団体のマイナンバー情報照会以外の方法による処理件数や事務手続ごとの主な未実施理由の状況(令和4年度)

(単位:地方公共団体、件)
事務手続名、特定個人情報の種類
及び管理番号注(1)
地方公共団体数 左の地方公共団体の
処理件数の合計
事務手続ごとの主な未実施理由注(2)
マイナンバー情報照会 マイナンバー情報照会以外
1 児童福祉法による小児慢性特定疾病医療費の支給の認定[地方税関係情報](7-11) 14 472 11,950 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[9]、世帯単位での照会ができない[5]
2 精神障害者保健福祉手帳の更新[特別障害給付金関係情報](14-30)注(3) 9 20 145 得られる情報項目が不足している[4]、添付書類を提出してもらった方が効率的[3]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[3]
3 精神障害者保健福祉手帳の交付(地方公務員共済組合又は全国市町村職員共済組合連合会への照会)[年金給付関係情報](14-37) 7 1 52 得られる情報項目が不足している[4]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[2]
4 精神障害者保健福祉手帳の更新(国家公務員共済組合連合会への照会)[年金給付関係情報](14-39) 9 14 158 得られる情報項目が不足している[6]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[4]
5 精神障害者保健福祉手帳の更新(地方公務員共済組合又は全国市町村職員共済組合連合会への照会)[年金給付関係情報](14-40) 8 9 138 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[4]、得られる情報項目が不足している[4]
6 精神障害者保健福祉手帳の更新(日本私立学校振興・共済事業団への照会)[年金給付関係情報](14-41) 9 3 96 得られる情報項目が不足している[6]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[4]
7 精神障害者保健福祉手帳の交付(日本年金機構への照会)[年金給付関係情報](14-52) 10 270 8,049 得られる情報項目が不足している[5]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[4]
8 精神障害者保健福祉手帳の更新(日本年金機構への照会)[年金給付関係情報](14-53) 11 4,783 45,832 得られる情報項目が不足している[7]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[5]
9 精神障害者保健福祉手帳の障害等級の変更(日本年金機構への照会)[年金給付関係情報](14-54) 12 87 4,463 得られる情報項目が不足している[6]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[4]
10 特別支援学校への就学奨励に関する法律施行令第2条の規定に基づく保護者等の属する世帯の収入額及び需要額の算定【本人同意要】[地方税関係情報](26-3) 2 - 28,556 申請者等の同意を得るのが困難[2]
11 特定医療費の支給認定[地方税関係情報](98-4) 8 1,080 144,875 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[6]、世帯単位での照会ができない[5]
11手続の計 99 6,739 244,314  
  • 注(1) 事務手続名を記載するとともに、[ ]で取り扱う特定個人情報の種類を、( )で管理番号を記載している。また、本図表の11手続は、全て社会保障分野の事務手続である。
  • 注(2) [ ]内の数字は当該未実施理由を選択した地方公共団体数である。
  • 注(3) 「特別障害給付金関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律による特別障害給付金の支給に関する情報」をいう。

マイナンバー情報照会以外の方法による処理件数が最も多いのは、厚生労働省が所管する「特定医療費の支給認定」に関する事務手続(管理番号98-4)である。この手続においては、都道府県又は政令指定都市がマイナンバー情報照会を実施することにより、従来添付書類として提出することとされていた課税証明書等の提出を省略できるが、8地方公共団体は、4年度に発生した情報連携事務計144,875件の処理に必要な地方税関係情報についてマイナンバー情報照会を実施せず、申請者等に対して課税証明書等の添付書類を提出させるなどすることにより処理していた。これらの8地方公共団体における未実施理由は、「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」「世帯単位での照会ができない」などとなっていた。

また、マイナンバー情報照会以外の方法による処理件数が2番目に多いのは、「精神障害者保健福祉手帳の更新(日本年金機構への照会)」に関する事務手続(管理番号14-53)である。この手続においては、都道府県又は政令指定都市がマイナンバー情報照会を実施することにより、添付書類である精神障害を支給事由とする年金給付を現に受けていることを証する書類の写しの提出を省略できるが、11地方公共団体は、4年度に発生した情報連携事務計45,832件の処理に必要な年金給付関係情報についてマイナンバー情報照会を実施せず、文書照会を行って日本年金機構から年金給付関係情報の提供を受けるなどすることにより処理していた。これらの11地方公共団体における未実施理由は、「得られる情報項目が不足している」「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」等となっていた。

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体における未実施理由等の状況について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 「特定医療費の支給認定」に関する事務手続(管理番号98-4)について、患者等から課税証明書等の提出を受けることにより地方税関係情報を確認していて、マイナンバー情報照会を実施していなかったもの(令和4年度のマイナンバー情報照会実施率:0%、未実施理由:「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」等)

新潟県は、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)に基づき、指定難病(注)に係る医療費(以下「特定医療費」という。)の指定難病の患者に対する支給認定事務を行っている。

同事務において、都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)は、患者に支給する特定医療費の額を算定するために、患者又はその扶養者(以下、これらを「患者等」という。)が国民健康保険以外の医療保険に加入している場合は、同保険に加入している患者等の地方税関係情報を、患者等が国民健康保険又は後期高齢者医療制度に加入している場合は、同一世帯に属する同保険等に加入している全ての者の地方税関係情報を確認して、患者等の家計の負担能力等をしんしゃくすることとなっている。

都道府県等は、同事務に必要な情報を確認するために、マイナンバー法に基づき、マイナンバー情報照会によって、患者等が居住する市町村から地方税関係情報、住民票関係情報(マイナンバー法別表第二に定める「住民基本台帳法第7条第4号に規定する事項」をいう。)等の提供を受けられることとなっている。そして、マイナンバー情報照会を実施した場合には、患者等から課税証明書、住民票の写しなどを提出させることなどを省略できることとなっている。なお、同事務のうち地方税関係情報を確認する事務手続において、患者等が市町村民税世帯非課税者に該当すると思われる場合は、非課税証明書等を提出させることとなっている。

検査したところ、同県において、同事務のうち地方税関係情報を確認する事務については、令和4年度に、患者等が市町村民税世帯非課税者に該当する事務約3,800件を含む計約13,700件発生していたが、その全件について、マイナンバー情報照会を実施することなく、患者等から申請の際に課税証明書等の提出を受けることにより地方税関係情報を確認していた(マイナンバー情報照会実施率0%)。

未実施理由について、同県は、マイナンバー情報照会による確認のための業務フローの作成等に当たり、地方税関係情報以外の特定個人情報を確認する事務手続も含めて多種の添付書類の確認をマイナンバー情報照会によって行うなどの検討を行っているため、業務フローの作成等が未了であるとしていた。

しかし、同県は、同事務に係る情報連携の本格運用が開始された平成29年11月から5年経過した令和4年度においても、上記検討のために業務フローの作成等を完了しておらず、前記の地方税関係情報を確認する事務手続に係るマイナンバー情報照会の活用に至っていなかった。

(注)
指定難病  難病のうち、当該難病の患者数が本邦において厚生労働省令で定める人数に達せず、かつ、当該難病の診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっていることその他の厚生労働省令で定める要件を満たすものであって、当該難病の患者の置かれている状況からみて当該難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いものとして、厚生労働大臣が厚生科学審議会の意見を聴いて指定するもの

<事例2> 「精神障害者保健福祉手帳の更新(日本年金機構への照会)」に関する事務手続(管理番号14-53)について、日本年金機構に対して文書照会を行うことにより年金給付関係情報を確認していて、マイナンバー情報照会を実施していなかったもの(令和4年度のマイナンバー情報照会実施率:0%、未実施理由:「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」「一括照会ができない」「得られる情報項目が不足している」)

北九州市は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)に基づき、精神障害者保健福祉手帳に関する事務を行っている。

同事務において、都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」という。)は、申請者が精神障害の状態にあることについて、精神障害を支給事由とする年金給付を現に受けていることを証する書類の写し(以下「年金証書等の写し」という。)又は医師の診断書により審査し、精神障害の状態にあると認めたときは、申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付している。そして、当該手帳の交付を受けた者は、2年ごとに、年金証書等の写し又は医師の診断書により更新申請を行い、都道府県等は、更新申請を行った者が精神障害の状態にあると認めたときは、当該手帳の更新を行っている。

都道府県等は、精神障害を支給事由とする年金給付を現に受けていることを確認するために、マイナンバー法に基づき、マイナンバー情報照会によって、日本年金機構から年金給付関係情報の提供を受けられることとなっている。そして、マイナンバー情報照会を実施した場合には、申請者は、年金証書等の写しの提出を省略できることとなっている。ただし、一部のケースについては、マイナンバー情報照会により得られる情報だけでは精神障害を支給事由とする年金給付であるかを確認することができない場合があるため、一度はマイナンバー情報照会を実施するものの、実施した結果、そのようなケースに該当することが判明した場合は、別途、日本年金機構へ文書照会を行うこととなっている。

検査したところ、同市において、精神障害者保健福祉手帳の更新に関する事務のうち年金給付関係情報を確認する事務が令和4年度に2,387件発生していたが、その全件について、マイナンバー情報照会を実施することなく、日本年金機構へ一律に文書照会を行うことにより年金給付関係情報を確認していた(マイナンバー情報照会実施率0%)。

未実施理由について、同市は、マイナンバー情報照会を実施したとしても確認できないケースが含まれている場合は当該ケースについて文書照会を行うこと、また、同市のシステムの仕様上、事務が集中した場合においても複数人分を一括してマイナンバー情報照会を実施することができず、1件ずつの照会しかできないことから、全件について一律に文書照会により確認を行っているとしていた。

しかし、同市が実際に文書照会により確認したケースについてみたところ、そのほとんどはマイナンバー情報照会により得られる情報のみでの確認が可能であったこと、また、当該事務は特定の時期に一度に発生する事務ではなく年間を通じて随時発生する事務であったことから、業務フローを見直すなどすれば、マイナンバー情報照会の活用が見込まれる状況となっていた。

また、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部は、3年6月、4年6月及び同年10月に都道府県等宛てに事務連絡を発出し、マイナンバー情報照会の具体的な手順や文書照会が必要となるパターンを示すなどして、マイナンバー情報照会の利用促進を図るよう周知しているが、同市は、当該事務連絡を踏まえた業務フローの見直しなども行っていなかった。

(b) マイナンバー情報照会の実施における問題

4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた30手続については、多くの地方公共団体においてマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっており、これらの地方公共団体は、従来の行政手続に係る業務フローを見直すなどした上で、マイナンバー情報照会を活用することにより情報連携事務を処理していた。そして、マイナンバー情報照会の実施による国民の利便性の向上や行政運営の効率化に係る効果があると認識されている状況となっていた。

また、平成29年11月の事務連絡「情報連携の本格運用開始に関するQ&A」において、地方公共団体の個別の事情により情報連携を行うことができない事務手続がある場合には速やかに問題を解決することなどが示されている。

そこで、図表2-8の11手続について、事務手続ごとの主な未実施理由から、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体においてどのような問題が生じているかを確認したところ、次のとおりとなっていた。

事務手続ごとの主な未実施理由は、図表2-9のとおり、①から⑤までの5項目である。

図表2-9 都道府県等を情報照会者とする13手続のうちの11手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由の状況

(単位:手続)
事務手続ごとの主な未実施理由 11手続に係る図表2-8の事務手続の番号 手続数
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11   ①②
(2項目)
③④
(2項目)
業務フローの見直しやマニュアル作成が未了   10 10  
得られる情報項目が不足している       8
世帯単位での照会ができない                   2   3
添付書類を提出してもらった方が効率的                     1
申請者等の同意を得るのが困難                     1    

事務手続ごとの主な未実施理由のうち、1手続に係る「申請者等の同意を得るのが困難」(図表2-9⑤)については、図表2-8の10の事務手続名においても示されているとおり、当該1手続がマイナンバー情報照会の実施に際して申請者等の同意が必要となる手続であって、申請者等の意向等によりマイナンバー情報照会を実施していなかったものであることから、地方公共団体の取組だけではマイナンバー情報照会の活用を推進することが難しいと考えられるものである。

これに対して、10手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由の「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」(同①)については、地方公共団体が、事例1のように業務フローの作成等に着手していたものの作成に時間を要していることや、事例2のように業務フローの見直しを行っていないことなどにより、マイナンバー情報照会の実施の手順や方法についての職員の理解が十分でないことを理由としてマイナンバー情報照会を実施していなかったものである。一方、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた地方公共団体は、業務フローの見直しを行うなどした上で、マイナンバー情報照会を活用して情報連携事務を処理している。

また、上記10手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由のうち8手続に係る「得られる情報項目が不足している」(同②)については、地方公共団体が、事例2のように、マイナンバー情報照会だけでは審査等に必要な情報を得ることができない場合があると認識していて、それを理由として、マイナンバー情報照会を実施していなかったものである。一方、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた地方公共団体は、マイナンバー情報照会を活用するための検討を経て、発生した情報連携事務の多くをマイナンバー情報照会により得られる情報を基に審査等を行うことで処理している。

これらのことから、上記の10手続については、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体において、マイナンバー情報照会をどのように活用するかといったマイナンバー情報照会の活用方策について十分に検討されていない状況になっていると認められた。

また、上記10手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由のうち2手続に係る「世帯単位での照会ができない」(同③)及び1手続に係る「添付書類を提出してもらった方が効率的」(同④)については、地方公共団体が、世帯単位でまとめて特定個人情報を把握する必要がある場合に、個人単位でのマイナンバー情報照会では手間が掛かり作業効率の改善につながらないことや、必要な添付書類を申請者等が携行していて添付書類として提出してもらった方が効率的であることを理由として、マイナンバー情報照会を実施していなかったものである。

これらのことから、上記2項目の未実施理由に係る3手続については、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体において、マイナンバー情報照会を活用した事務処理の効率面に問題があると認識されている状況になっていると認められた。

このように、事務手続ごとの主な未実施理由から、前記11手続のうちの10手続について、地方公共団体におけるマイナンバー情報照会の活用方策の検討に関する問題又はマイナンバー情報照会を活用した事務処理の効率面に関する問題の両方又はいずれかが見受けられた。

当該10手続については、図表2-7のように、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた地方公共団体の多くでマイナンバー情報照会の実施による国民の利便性の向上や行政運営の効率化に係る効果があると認識されており、また、情報連携を行う特定個人情報が地方税関係情報や年金給付関係情報等となっていて、地方公共団体がマイナンバー情報照会を実施することにより、申請者にとっては課税証明書等の発行に係る手数料等の負担や年金証書等の提出に係る負担が軽減され、地方公共団体にとっては文書照会の郵送等に係る作業に要する時間や労力、通信費等が削減されるなどするものである。

したがって、当該10手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていて、マイナンバー情報照会が十分に活用されていない地方公共団体においては、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化というマイナンバー法の基本理念や、多額の国費を投じてマイナンバー制度関連システムの整備等が行われていることなどを踏まえて、これらの問題の解決に取り組む必要があると認められた。

b 市町村等を情報照会者とする事務手続に係る事務手続別の未実施理由等の状況

(a) 未実施理由等の状況

市町村等を情報照会者とする17手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた延べ906地方公共団体について、マイナンバー情報照会以外の方法による処理件数や未実施理由の状況を確認したところ、図表2-10のとおり、情報連携事務計296,847件がマイナンバー情報照会以外の方法により処理されていた。

図表2-10 市町村等を情報照会者とする17手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた延べ906地方公共団体のマイナンバー情報照会以外の方法による処理件数や事務手続ごとの主な未実施理由の状況(令和4年度)

(単位:地方公共団体、件)
事務手続名、特定個人情報の種類
及び管理番号注(1)
地方公共団体数 左の地方公共団体の
処理件数の合計
事務手続ごとの主な未実施理由注(2)
マイナンバー情報照会 マイナンバー情報照会以外
1 個人住民税の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用[地方税関係情報](16-12) 26 2,447 6,854 得られる情報項目が不足している[10]、住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる[9]
2 国民健康保険税の賦課[地方税関係情報](16-13) 39 7,361 21,978 前住所地への情報照会だけでは処理が完結しない[21]、税情報解禁後では事務処理が間に合わない[7]
3 高齢受給者証の交付[地方税関係情報](30-16) 53 23,365 32,686 事務の発生件数が少ない[12]、照会結果を業務システムに取り込めない[9]
4 児童扶養手当の認定請求に係る事実についての審査[地方税関係情報](37-4) 47 86 774 事務の発生件数が少ない[11]、業務システムから情報照会ができない[7]
5 児童扶養手当の届出に係る事実についての審査[地方税関係情報](37-38) 54 150 2,033 事務の発生件数が少ない[14]、申請者等が自主的に添付書類を提出[11]
6 認定の請求に係る事実の審査(生計を維持する程度が高い者の確認)[地方税関係情報](56-4) 22 7 11,870 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[5]、住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる[5]
7 認定の請求に係る事実の審査(所得の確認)[地方税関係情報](56-5) 9 83 11,498 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[3]、住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる[3]
8 認定の請求に係る事実の審査(被用者・非被用者の別の確認)[年金給付関係情報](56-6) 133 5,145 46,680 添付書類を提出してもらった方が効率的[109]、最新の情報が得られない[23]
9 現況の届出に係る事実の審査(生計を維持する程度が高い者の確認)[地方税関係情報](56-11) 23 565 28,199 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[7]、住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる[4]、照会結果を業務システムに取り込めない[4]、端末の設置場所が不便[4]、一括照会ができない[4]
10 現況の届出に係る事実の審査(所得の確認)[地方税関係情報](56-12) 16 2,701 33,022 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[5]、業務システムから情報照会ができない[4]、端末の設置場所が不便[4]
11 現況の届出に係る事実の審査(被用者・非被用者の別の確認)[年金給付関係情報](56-13) 44 705 12,732 添付書類を提出してもらった方が効率的[28]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[8]
12 認定の請求に係る事実の審査(世帯構成員の確認)[住民票関係情報](56-25)注(3) 66 1,202 14,752 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[20]、事務の発生件数が少ない[13]
13 保険料賦課要件の確認[地方税関係情報](68-8) 73 7,401 26,496 税情報解禁後では事務処理が間に合わない[38]、一括照会ができない[21]
14 住所移転後の要介護認定及び要支援認定の要件の確認[介護保険給付等関係情報](68-172)注(4) 142 1,737 6,584 添付書類を提出してもらった方が効率的[73]、申請者等が自主的に添付書類を提出[73]
15 介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費及び特例訓練等給付費の支給決定[地方税関係情報](84-4) 79 1,170 4,394 申請者等が自主的に添付書類を提出[31]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[21]
16 自立支援医療費の支給認定[地方税関係情報](84-52) 38 16,051 26,522 事務の発生件数が少ない[12]、業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[10]、業務システムから情報照会ができない[10]
17 子どものための教育・保育給付に係る支給認定(利用者負担区分の決定等)の申請に係る事実についての審査[地方税関係情報](94-10) 42 1,732 9,773 業務フローの見直しやマニュアル作成が未了[18]、事務の発生件数が少ない[10]
17手続の計 906 71,908 296,847  
  • 注(1) 事務手続名を記載するとともに、[ ]で取り扱う特定個人情報の種類を、( )で管理番号を記載している。
  • 注(2) [ ]内の数字は当該未実施理由を選択した地方公共団体数である。
  • 注(3) 「住民票関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「住民基本台帳法第7条第4号に規定する事項」をいう。
  • 注(4) 「介護保険給付等関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「介護保険法による保険給付の支給、地域支援事業の実施又は保険料の徴収に関する情報」をいう。

図表2-8の11手続は、全て社会保障分野の事務手続であったのに対して、上記の17手続については、図表2-10の3から17までの15手続が社会保障分野の事務手続となっていて、1及び2の2手続が税分野の事務手続となっている。当該2手続は、総務省が所管する「個人住民税の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用」及び「国民健康保険税の賦課」に関する事務手続(管理番号16-12及び16-13)である。当該2手続においては、市町村がマイナンバー情報照会を実施することにより、従来行っていた文書照会等が不要となるが、「個人住民税の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用」に関する事務手続においては、26地方公共団体が情報連携事務計6,854件の処理に必要な地方税関係情報について、マイナンバー情報照会を実施せず、郵送による文書照会等により処理していた。そして、当該26地方公共団体における未実施理由は、「得られる情報項目が不足している」「住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる」などとなっていた。また、「国民健康保険税の賦課」に関する事務手続においては、39地方公共団体が情報連携事務計21,978件の処理に必要な地方税関係情報について、マイナンバー情報照会を実施せず、郵送による文書照会等により処理していた。そして、当該39地方公共団体における未実施理由は、「前住所地への情報照会だけでは処理が完結しない」「税情報解禁後では事務処理が間に合わない」などとなっていた。

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体における未実施理由等の状況について、税分野の事務手続の事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 「個人住民税の配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用」に関する事務手続(管理番号16-12)について、他の市町村に対して文書照会を行うことにより地方税関係情報を確認していて、マイナンバー情報照会を実施していなかったもの(令和4年度のマイナンバー情報照会実施率:0%、未実施理由:「得られる情報項目が不足している」「住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる」)

広島県竹原市は、地方税法(昭和25年法律第226号)に基づき、控除対象配偶者、控除対象扶養親族等(以下、これらを合わせて「控除対象配偶者等」という。)を有する者の個人住民税に係る配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等(以下、これらを合わせて「配偶者控除等」という。)の適用に関する事務を行っている。

同事務において、市町村は、納税義務者から控除対象配偶者等の申告があった場合、申告があった控除対象配偶者等が配偶者控除等の所得要件に該当するかなどについて、控除対象配偶者等の地方税関係情報により確認している。控除対象配偶者等が他の市町村に居住しているなどの場合は、その所得要件等の確認に当たり、市町村は、マイナンバー法に基づき、マイナンバー情報照会によって、控除対象配偶者等の地方税関係情報を有する他の市町村から同情報の提供を受けられることとなっている。そして、マイナンバー情報照会を実施した場合には、上記他の市町村へ文書照会を行うことにより地方税関係情報の提供を受けることなどを省略できることとなっている。

検査したところ、同市において、控除対象配偶者等の所得要件等の確認に当たり、他の市町村が有する地方税関係情報を確認する事務が令和4年度に計282件発生していたが、その全件について、マイナンバー情報照会を実施することなく、これらの市町村へ文書照会を行うことにより地方税関係情報を確認していた(マイナンバー情報照会実施率0%)。

未実施理由について、同市は、控除対象配偶者等が居住市町村で既に別の者に扶養されているなどの重複扶養が疑われる場合、市町村間で調整を行い、各扶養者に書面により照会して、その回答書に基づいて扶養者を決定することになり、マイナンバー情報照会で得られる情報だけでは手続が終了せず、文書照会を行う必要が生ずる場合があること、控除対象配偶者等のマイナンバーの確認等が必要な場合に手間が掛かることから、全件について一律に文書照会により確認を行っているとのことであった。

しかし、前記の発生件数282件についてみたところ、文書照会が必要となる重複扶養の確認を行った件数は3件となっており、残りの279件については、マイナンバー情報照会により得られる情報だけで所得要件等の確認が可能であったことから、マイナンバー情報照会の活用方策について十分な検討を行うなどすれば、マイナンバー情報照会の活用が見込まれる状況となっていた。

(b) マイナンバー情報照会の実施における問題

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体が見受けられた前記の17手続について、事務手続ごとの主な未実施理由から、当該地方公共団体においてどのような問題が生じているかを確認したところ、次のとおりとなっていた。

事務手続ごとの主な未実施理由は、図表2-11のとおり、①から⑬までの13項目である。

図表2-11 市町村等を情報照会者とする17手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由の状況

(単位:手続)
事務手続ごとの
主な未実施理由
17手続に係る図表2-10の事務手続の番号 手続数
  ①~③
(3項目)
④~⑩
(7項目)

(1項目)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17  
業務フローの見直しやマニュアル作成が未了
                9 11    
得られる情報項目が不足している
                                1
最新の情報が得られない
                                1
住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる
                          4   13  
業務システムから情報照会ができない
                            3
添付書類を提出してもらった方が効率的
                            3
照会結果を業務システムに取り込めない
                              2
端末の設置場所が不便
                              2
一括照会ができない
                              2
前住所地への情報照会だけでは処理が完結しない
                                1
事務の発生件数が少ない
                      6     6
申請者等が自主的に添付書類を提出
                            3      
税情報解禁後では事務処理が間に合わない
                              2

事務手続ごとの主な未実施理由のうち、「申請者等が自主的に添付書類を提出」(図表2-11⑫)については、申請者等の意向等に関するもの、「税情報解禁後では事務処理が間に合わない」(同⑬)については、地方税関係情報に係る情報連携全体の運用スケジュールに関するものであり、いずれも地方公共団体の取組だけではマイナンバー情報照会の活用を推進することが難しいと考えられるものである。

これに対して、事務手続ごとの主な未実施理由のうち9手続に係る「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」(同①)については、地方公共団体が、業務フローの見直しを行っていないことなどにより、マイナンバー情報照会の実施の手順や方法についての職員の理解が十分でないことを理由として、マイナンバー情報照会を実施していなかったものである。また、1手続に係る「得られる情報項目が不足している」(同②)及び1手続に係る「最新の情報が得られない」(同③)については、地方公共団体が、事例3のようにマイナンバー情報照会だけでは審査等に必要な情報を得ることができない場合があることや、マイナンバー情報照会を実施する時点において必要な情報が情報提供者側で登録等されていない場合があると認識していて、それを理由として、マイナンバー情報照会を実施していなかったものである。一方、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた地方公共団体は、マイナンバー情報照会を活用するための検討を経て、発生した情報連携事務の多くをマイナンバー情報照会により得られる情報を基に審査等を行うことで処理している。

これらのことなどから、上記3項目の未実施理由に係る11手続については、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体において、マイナンバー情報照会の活用方策について十分に検討されていない状況になっていると認められた。

また、前記17手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由のうち4手続に係る「住所履歴のない住民の照会に手間が掛かる」(同④)、3手続に係る「業務システムから情報照会ができない」(同⑤)、3手続に係る「添付書類を提出してもらった方が効率的」(同⑥)、2手続に係る「照会結果を業務システムに取り込めない」(同⑦)、2手続に係る「端末の設置場所が不便」(同⑧)、2手続に係る「一括照会ができない」(同⑨)及び1手続に係る「前住所地への情報照会だけでは処理が完結しない」(同⑩)については、地方公共団体が、事例3のようにマイナンバー情報照会を実施する際にマイナンバーの確認等の作業が手間であることや、システムの仕様上、日常業務で使用している業務システムから直接マイナンバー情報照会を実施することができず、その都度マイナンバー情報照会用のシステムにログインし直す必要があること、必要な添付書類を申請者等が携行していて添付書類として提出してもらった方が効率的であることなどを理由として、マイナンバー情報照会を実施していなかったものである(上記7項目の具体的な内容については別図表3参照)。

これらのことなどから、上記7項目の未実施理由に係る13手続については、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体において、マイナンバー情報照会を活用した事務処理の効率面に問題があると認識されている状況になっていると認められた。

さらに、前記17手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由のうち6手続に係る「事務の発生件数が少ない」(同⑪)については、地方公共団体が、事務の発生件数が少なく行政運営の効率化のためにマイナンバー情報照会を活用する機会が乏しいことを理由として、マイナンバー情報照会を実施していなかったものである。

このことから、上記の未実施理由に係る6手続については、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体において、事務の発生件数が少数であった場合にマイナンバー情報照会の活用に係る動機付けがされにくい状況になっていると認められた。

このように、事務手続ごとの主な未実施理由から、前記の17手続全てについて、地方公共団体におけるマイナンバー情報照会の活用方策の検討に関する問題、マイナンバー情報照会を活用した事務処理の効率面に関する問題又は事務の発生件数が少数であった場合のマイナンバー情報照会の活用に係る動機付けに関する問題の複数又はいずれかが見受けられた。

当該17手続については、図表2-7のように、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた地方公共団体の多くでマイナンバー情報照会の実施による国民の利便性の向上や行政運営の効率化に係る効果があると認識されており、また、情報連携を行う特定個人情報が地方税関係情報や年金給付関係情報等となっていて、地方公共団体がマイナンバー情報照会を実施することにより、申請者にとっては課税証明書等の発行に係る手数料等の負担や年金証書等の提出に係る負担が軽減され、地方公共団体にとっては文書照会の郵送等に係る作業に要する時間や労力、通信費等が削減されるなどするものである。

したがって、当該17手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていて、マイナンバー情報照会が十分に活用されていない地方公共団体においては、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化というマイナンバー法の基本理念や、多額の国費を投じてマイナンバー制度関連システムの整備等が行われていることなどを踏まえ、これらの問題の解決に取り組む必要があると認められた。

(エ) 地方公共団体の種類別の未実施理由の具体的状況

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた前記の28手続に係る延べ1,005地方公共団体における未実施理由について、地方公共団体の種類別にどのような未実施理由が選択されているか、更にその状況を具体的に確認した。

県又は市町村等における未実施理由の状況をみたところ、県においては、図表2-12のとおり、「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」が最も多く選択されており(県が選択した未実施理由の項目数全体の20.0%)、次いで、「業務システムから情報照会ができない」が多く選択されていた(同12.6%)。

また、市町村等においては、「添付書類を提出してもらった方が効率的」が最も多く選択されており(市町村等が選択した未実施理由の項目数全体の14.6%)、次いで、「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」が多く選択されていた(同11.3%)。

このように、県及び市町村等において「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」という未実施理由は共通して多く選択されていたが、個別事務システムの仕様や窓口での審査業務の運用等を踏まえて、県では「業務システムから情報照会ができない」、市町村等では「添付書類を提出してもらった方が効率的」という未実施理由が多く選択されていた。

図表2-12 地方公共団体の半数以上が利用していた28手続に係る県又は市町村等における未実施理由の状況

地方公共団体の半数以上が利用していた28手続に係る県又は市町村等における未実施理由の状況

また、上記の市町村等における未実施理由の状況について、市と町村とで人口規模が異なっていること(注18)を踏まえて、それぞれにおいてどのような未実施理由が選択されているか、市と町村の選択率(注19)の状況を確認した。

市における未実施理由の主なもののうち、市町村等を情報照会者とする図表2-11の17手続で見受けられた問題に関するものは、図表2-13のとおり、「添付書類を提出してもらった方が効率的」(市での選択率28.9%)、「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」(同17.0%)、「一括照会ができない」(同10.4%)、「事務の発生件数が少ない」(同9.2%)及び「照会結果を業務システムに取り込めない」(同9.2%)となっていた。

一方、町村における未実施理由の主なもののうち、上記の問題に関するものは、「事務の発生件数が少ない」(町村での選択率23.7%)、「添付書類を提出してもらった方が効率的」(同20.3%)、「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」(同17.3%)及び「業務システムから情報照会ができない」(同11.2%)となっていた。

そして、これらの未実施理由のうち、「添付書類を提出してもらった方が効率的」(市での選択率28.9%、町村での選択率20.3%。両者の差8.6ポイント)及び「一括照会ができない」(市での選択率10.4%、町村での選択率5.0%。両者の差5.4ポイント)については、市で多く選択されている傾向となっていた。これらの未実施理由は、必要な添付書類を申請者等が携行していて、添付書類として提出してもらった方が効率的であることや、システムの仕様上、複数人分を一括してマイナンバー情報照会を実施することができないことから、作業効率の改善につながらないことを理由としてマイナンバー情報照会を実施していなかったものであり、町村と比べて人口が多い市において、マイナンバー情報照会を活用した事務処理の効率面に問題があると認識されている傾向となっていた。

他方、「事務の発生件数が少ない」(市での選択率9.2%、町村での選択率23.7%。両者の差14.5ポイント)については、町村で多く選択されている傾向となっていて、市と比べて人口が少ない町村において、事務の発生件数が少数であった場合にマイナンバー情報照会の活用に係る動機付けがされにくい傾向となっていた。

(注18)
令和5年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口について、市の平均値は133,098人、中央値は65,852人となっており、町村の平均値は11,267人、中央値は8,233人となっている。
(注19)
市町村等を情報照会者とする17手続に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた市又は町村の数に占める未実施理由の各項目を選択した市又は町村の数の割合をいう。

図表2-13 市又は町村における未実施理由の選択率の状況

市又は町村における
未実施理由の主なもの
市での選択率 町村での選択率 市での選択率と町村での選択率との差(注)
a 順位 b 順位 a-b
添付書類を提出してもらった方が効率的 28.9% 1 20.3% 2
8.6
*
申請者等が自主的に添付書類を提出 19.9% 2 13.9% 4
6.0
業務フローの見直しやマニュアル作成が未了 17.0% 3 17.3% 3
-0.3
一括照会ができない 10.4% 4 5.0% 9
5.4
*
事務の発生件数が少ない 9.2% 5 23.7% 1
-14.5
*
照会結果を業務システムに取り込めない 9.2% 5 6.8% 8
2.4
税情報解禁後では事務処理が間に合わない 9.2% 5 4.1% 11
5.1
*
業務システムから情報照会ができない 6.8% 11 11.2% 5
-4.4

(注) 未実施理由ごとの市又は町村での選択率の状況については、検査の対象とした435市町村を対象として統計的に検定するとともに、図表2-5の217市町村を対象として同様に検定した。そして、両群において同様の傾向が見受けられ、全国の1,741市区町村についてみても、おおむね同じ傾向にあると考えられるものに「*」を付している。

以上のように、情報照会者とされている地方公共団体の半数以上がマイナンバー情報照会を利用していた32手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況をみたところ、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた地方公共団体の多くでマイナンバー情報照会の実施による国民の利便性の向上や行政運営の効率化に係る効果があると認識されていた。一方、図表2-14のとおり、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体が見受けられた事務手続について、当該地方公共団体における未実施理由から、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施における問題が見受けられた。

図表2-14 マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体で見受けられたマイナンバー情報照会の実施における問題

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体で見受けられたマイナンバー情報照会の実施における問題

そして、これらの所管府省庁であるこども家庭庁、総務省、文部科学省及び厚生労働省に対して、所管する事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況をどのように把握しているか確認したところ、当該4省庁は、把握の対象が全国に及ぶことから、各地方公共団体に対して照会件数の状況を確認するなどしておらず、前記のような問題が見受けられるなどしたマイナンバー情報照会の実施状況について十分に把握していなかった。

また、デジタル庁は、照会実績データにより、各地方公共団体のマイナンバー情報照会の照会件数の状況を把握していたものの、事務手続の所管府省庁に提供していなかった。

したがって、こども家庭庁、総務省、文部科学省及び厚生労働省は、地方公共団体において、マイナンバー情報照会の実施による国民の利便性の向上や行政運営の効率化に効果があると認識されていて、情報照会者とされている地方公共団体の半数以上でマイナンバー情報照会が利用されている事務手続について、その実施がより一層推進され、マイナンバー制度関連システムの整備等の効果が十分に発現されるよう、地方公共団体が実施したマイナンバー情報照会の照会件数の状況についてデジタル庁から定期的に提供を受けるなどして、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施状況を把握するとともに、実施状況が低調となっている地方公共団体において生じている問題を具体的に把握する必要がある。

そして、これらを踏まえて、同庁と連携し、当該地方公共団体に対して、マイナンバー情報照会の活用方策の検討について周知するとともに、マイナンバー情報照会を活用している地方公共団体の取組の実例を示すなどして効率的な実施方法について具体的に周知するなど、当該問題の解決に資する適切な助言を行う必要がある。

ウ 地方公共団体の過半が利用していなかった事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況

情報照会者とされている地方公共団体の過半がマイナンバー情報照会を利用していなかった168手続について、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施状況を分析したところ、次のとおりとなっていた。

168手続の運用状況をみると、そのうち127手続については、本格運用が29年11月から令和3年10月までの間に開始されており、4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた。

また、残りの41手続については、4年度中に試行運用の期間が含まれていて、該当する事務手続は、公金受取口座に関する特定個人情報(マイナンバー法別表第二に定める「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律第3条第3項第1号から第3号までに規定する事項」をいう。)の情報連携を行う事務手続(26手続)、災害対策分野に係る個別避難計画及び避難行動要支援者名簿の作成に係る事務手続(10手続)等となっていた(41手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況については別図表7参照)。

(ア) 事務の発生件数の状況

4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた前記の127手続について、451地方公共団体における同年度の事務の発生件数を確認したところ、図表2-15のとおり、25手続については、地方公共団体の人口規模を考慮して算出するなどした事務の発生件数が年間100件以上となっていて(注20)、地方公共団体における事務の発生件数が一定規模以上となっていた。

一方、残りの102手続については年間100件未満となっていて、地方公共団体における事務の発生件数が少数又は皆無となっていた(25手続及び102手続に係る情報連携事務の発生状況については別図表8及び別図表9参照)。

(注20)
事務手続ごとに、事務手続一覧に定める情報照会者とされている地方公共団体における事務の発生件数を合計し、これを当該地方公共団体数で除して算出した。事務の発生件数の算出に当たっては、地方公共団体の人口規模を考慮して、市町村における事務の発生件数については、人口10万人当たりの件数を算出して使用している。また、情報照会者とされている地方公共団体の半数以上がマイナンバー情報照会を利用していた事務手続の大半で事務の発生件数が年間100件以上となっていたことから、127手続に係る事務の発生件数について、年間100件以上又は年間100件未満で区分している。

図表2-15 検査の対象とした451地方公共団体における事務の発生件数別の事務手続数の状況(令和4年度)

検査の対象とした451地方公共団体における事務の発生件数別の事務手続数の状況(令和4年度)

(イ) 事務の発生件数が年間100件以上となっていた事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況
a 事務手続別のマイナンバー情報照会実施率の状況

地方公共団体の人口規模を考慮して算出するなどした事務の発生件数が年間100件以上となっていた前記の25手続について、451地方公共団体における4年度のマイナンバー情報照会実施率の状況を確認したところ、図表2-16のとおり、事務手続が発生していた地方公共団体は延べ2,903地方公共団体となっており、このうち20手続に係る延べ821地方公共団体(延べ2,903地方公共団体の28.2%)においてマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた。

一方、24手続に係る延べ2,082地方公共団体(同71.7%)においてマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっており、このうち23手続に係る延べ1,441地方公共団体(同49.6%)はマイナンバー情報照会を全く実施していなかった(マイナンバー情報照会実施率の詳細については別図表8参照)。

25手続のうち、都道府県等を情報照会者とする14手続については、事務手続が発生していた延べ215地方公共団体のうちの9手続に係る延べ26地方公共団体においてマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた一方、13手続に係る延べ189地方公共団体において50%未満となっていた。

また、市町村等を情報照会者とする11手続については、事務手続が発生していた延べ2,688地方公共団体のうちの延べ795地方公共団体においてマイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていた一方、延べ1,893地方公共団体において50%未満となっていた。そして、検査の対象とした435市町村における各事務手続のマイナンバー情報照会実施率が50%以上の地方公共団体と50%未満の地方公共団体の構成比は、全国の1,741市区町村についてみても、統計的にはおおむね同じになると考えられる。

図表2-16 地方公共団体の過半が利用していなかった25手続に係るマイナンバー情報照会実施率の状況(令和4年度)

(単位:地方公共団体、%)
事務手続名、特定個人情報の種類及び管理番号注(1) 事務手続が発生していた地方公共団体数 マイナンバー
情報照会実施率
50%
以上
50%
未満
0%
都道府県等を情報照会者とする事務手続(14手続)注(2)
215 26 189 170
  1 他の法令による給付との調整(健康保険法)[児童福祉法第19条の7に規定する他の法令による給付の支給に関する情報](7-76) 20 - 20 20
2 児童福祉法による小児慢性特定疾病医療費の支給の認定(国民健康保険法)[医療保険給付関係情報](7-179)注(3) 27 - 27 27
3 入院措置又は費用の徴収[地方税関係情報](14-56) 20 6 14 12
4 自動車税(種別割)の減免[障害者関係情報](16-18)注(4) 11 - 11 11
5 狩猟税の課税[地方税関係情報](16-26) 11 - 11 11
6 特別支援学校への就学奨励に関する法律施行令第2条の規定に基づく保護者等の属する世帯の収入額及び需要額の算定[住民票関係情報](26-4)注(5) 2 2 - -
7 特別支援教育就学奨励費の経費の支弁の基準に基づく保護者等の区分の算定に必要な資料の受理[生活保護関係情報](26-5)注(6) 9 4 5 5
8 入院患者の医療に要する費用の負担の申請の受理、審査【本人同意要】[地方税関係情報](70-2) 31 9 22 14
9 他の法令による給付との調整(健康保険法)[感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第39条第1項に規定する他の法律による医療に関する給付の支給に関する情報](70-17) 15 1 14 12
10 特定医療費の支給認定[生活保護関係情報](98-2)注(6) 17 1 16 13
11 特定医療費の支給認定[住民票関係情報](98-5)注(5) 9 1 8 8
12 他の法令による給付との調整(健康保険法)[難病の患者に対する医療等に関する法律第12条に規定する他の法令による給付の支給に関する情報](98-33) 7 - 7 7
13 特定医療費の支給認定(健康保険法)[医療保険給付関係情報](98-57)注(3) 20 1 19 18
14 特定医療費の支給認定(地方公務員共済組合又は全国市町村職員共済組合連合会への照会)[国民年金法その他の法令による給付の支給に関する情報](98-67) 16 1 15 12
市町村等を情報照会者とする事務手続(11手続)注(2)
2,688 795 1,893 1,271
  1 予防接種法による予防接種の実施[予防接種法による予防接種の実施に関する情報](10-17) 315 25 290 224
2 個人住民税の障害者控除、所得金額調整控除の適用[障害者関係情報](16-3)注(4) 132 71 61 43
3 家賃の決定[地方税関係情報](19-4) 156 31 125 113
4 国民健康保険料の賦課[地方税関係情報](30-129) 91 78 13 -
5 国民健康保険法第6条各号に該当しなくなったことによる被保険者の資格取得に係る届出の確認[医療保険給付関係情報](30-147)注(3) 432 11 421 223
6 国民健康保険法第6条各号に該当するに至ったことによる被保険者の資格喪失に係る届出の確認[医療保険給付関係情報](30-149)注(3) 432 10 422 242
7 児童扶養手当の届出に係る事実についての審査(日本年金機構への照会)[児童扶養手当法第3条第2項に規定する公的年金給付の支給に関する情報](37-41) 300 215 85 59
8 現況の届出に係る事実の審査(世帯構成員の確認)[住民票関係情報](56-26)注(5) 300 251 49 33
9 要介護認定における医療保険被保険者資格の認定[医療保険給付関係情報](68-155)注(3) 136 13 123 106
10 自立支援医療費の支給認定(健康保険法)[障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第7条に規定する他の法令により行われる給付の支給に関する情報](84-132) 178 4 174 155
11 自立支援医療費の支給認定(日本年金機構への照会)[国民年金法その他の法令による給付の支給に関する情報](84-180) 216 86 130 73
25手続の計 2,903 821 2,082 1,441
(100.0) (28.2) (71.7) (49.6)
  • 注(1) 情報照会者とされている地方公共団体の過半が利用していなかった168手続のうち、令和4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていて、地方公共団体の人口規模を考慮して算出するなどした事務の発生件数が年間100件以上となっていた25手続を対象に記載している。また、事務手続名を記載するとともに、[ ]で取り扱う特定個人情報の種類を、( )で管理番号を記載している。
  • 注(2) 注(1)の25手続に係る情報照会者とされている地方公共団体は、事務手続によって異なっているため、事務手続一覧に定める各事務手続の情報照会者に基づき、都道府県等と市町村等とに区分している。なお、都道府県と市町村の両方を情報照会者とする事務手続については、令和4年度の照会件数が多い方の事務手続として整理している。
  • 注(3) 「医療保険給付関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律による医療に関する給付の支給又は保険料の徴収に関する情報」をいう。
  • 注(4) 「障害者関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「身体障害者福祉法による身体障害者手帳、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による精神障害者保健福祉手帳又は知的障害者福祉法にいう知的障害者に関する情報」をいう。
  • 注(5) 「住民票関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「住民基本台帳法第7条第4号に規定する事項」をいう。
  • 注(6) 「生活保護関係情報」は、マイナンバー法別表第二に定める「生活保護法による保護の実施又は就労自立給付金若しくは進学準備給付金の支給に関する情報」をいう。
b 事務手続別の未実施理由の状況

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体が見受けられた24手続について、事務手続ごとの主な未実施理由を確認したところ、2手続(国民健康保険の被保険者の資格取得又は資格喪失に係る届出の確認に関する事務手続(管理番号30-147及び30-149))については、いずれも「最新の情報が得られない」及び「添付書類を提出してもらった方が効率的」となっていた。当該2手続については、多くの市町村がマイナンバー情報照会を実施しておらず、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた市町村の9割以上において「最新の情報が得られない」が選択されており、未実施理由が共通していた。そして、マイナンバー情報照会によって適時に最新情報を取得できない場合が生ずるという、地方公共団体の取組だけでは解消が困難な問題が見受けられた。

また、残りの22手続については、事務手続ごとの主な未実施理由が「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」「添付書類を提出してもらった方が効率的」「事務の発生件数が少ない」などとなっていて、前記の地方公共団体におけるマイナンバー情報照会の活用方策の検討に関する問題、マイナンバー情報照会を活用した事務処理の効率面に関する問題又は事務の発生件数が少数であった場合のマイナンバー情報照会の活用に係る動機付けに関する問題の複数又はいずれかが見受けられた(2手続及び22手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由の状況については別図表8参照)。

c 地方公共団体の取組だけでは解消が困難な問題が見受けられた事務手続に係る未実施理由等の具体的状況

地方公共団体の取組だけでは解消が困難な問題が見受けられた2手続(国民健康保険の被保険者の資格取得又は資格喪失に係る届出の確認に関する事務手続(管理番号30-147及び30-149))に係る未実施理由等の状況を確認したところ、次のとおりとなっていた。

国民健康保険法(昭和33年法律第192号)及び国民健康保険法施行規則(昭和33年厚生省令第53号)によれば、健康保険法(大正11年法律第70号)の規定による被保険者等に該当しなくなったことにより国民健康保険の被保険者の資格を取得した者があるときは、資格を取得した者の氏名、資格取得の年月日及びその理由等を記載した国民健康保険資格取得に係る届出(以下「資格取得届」という。)を、また、健康保険法の規定による被保険者に該当するに至ったことにより、国民健康保険の被保険者の資格を喪失した者があるときは、資格を喪失した者の氏名、資格喪失の年月日及びその理由等を記載した国民健康保険資格喪失に係る届出(以下「資格喪失届」という。)を、その者の属する世帯の世帯主は14日以内にそれぞれ世帯主が住所を有する市町村に提出しなければならないこととされている。

市町村は、図表2-17のとおり、資格取得届の提出を受けた場合は、前に加入していた国民健康保険以外の医療保険(以下「被用者保険」という。)の被保険者資格を喪失したことを示す書類に基づき被用者保険資格喪失の年月日を、資格喪失届の提出を受けた場合は、健康保険証等の添付書類に基づき被用者保険資格取得の年月日をそれぞれ確認することとなっている。

市町村は、マイナンバー法に基づき、前記の2手続に係るマイナンバー情報照会によって、資格を喪失又は取得することになった被用者保険の医療保険者から、被保険者の特定個人情報(マイナンバー法別表第二に定める「医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律による医療に関する給付の支給又は保険料の徴収に関する情報」。以下「医療保険給付関係情報」という。)の提供を受けられることとなっている。そして、マイナンバー情報照会を実施した場合には、当該世帯主から前に加入していた被用者保険の被保険者資格を喪失したことを示す書類又は新たに加入した被用者保険の健康保険証等を提出させることを省略できることとなっている。

また、全国健康保険協会、健康保険組合等の医療保険者は、被保険者の資格喪失又は取得に際して、医療保険給付関係情報を医療保険者等向け中間サーバー(注21)に登録することとなっている。

これらの2手続の所管府省庁である厚生労働省は、管内の市町村における事務の運用に当たっての参考とするために、平成29年10月に都道府県に対して事務連絡を発出していた。そして、被用者保険の医療保険者側での医療保険給付関係情報の登録作業等には一定期間を要することから、医療保険給付関係情報をマイナンバー情報照会により確認することが可能となるまでの標準的な日数(注22)を被用者保険の医療保険者ごとに示すとともに、医療保険者による登録作業が終了するまでの間においては、マイナンバー情報照会を実施しても最新の情報が得られない可能性があることを周知していた。また、資格取得届又は資格喪失届を14日以内に提出することとなっていることを踏まえて、医療保険給付関係情報の登録までに要する日数が短縮できるよう調整していくとしていた。

(注21)
医療保険者等向け中間サーバー  被用者保険等の医療保険者に係る医療保険給付関係情報等を副本データとして管理して、他機関からのマイナンバー情報照会に対して情報の提供を行うもの
(注22)
法令に規定されている医療保険資格に係る届出を提出すべき日数等から算出したものであり、平成29年時点では被用者保険の資格を喪失した場合については、全国健康保険協会は資格喪失日から19日後、健康保険組合は同日から7日後、被用者保険の資格を取得した場合については、全国健康保険協会は資格取得日から29日後、健康保険組合は同日から8日後となっている。なお、全国健康保険協会においては、事業主が日本年金機構に届出を提出することとしており、日本年金機構では事業主からの届出の内容を審査した上で、全国健康保険協会に情報を連携することとしている。そのため、健康保険組合と比較して、標準的な日数が長くなっている。

図表2-17 市町村が資格取得届又は資格喪失届の提出を受けた場合のマイナンバー情報照会の概要

市町村が資格取得届又は資格喪失届の提出を受けた場合のマイナンバー情報照会の概要

これらの2手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況や医療保険者における医療保険給付関係情報の登録状況をみたところ、次のような状況が見受けられた。

(a) 市町村によるマイナンバー情報照会の実施状況

図表2-16のとおり、資格取得届の確認に関する事務(管理番号30-147)については421市町村(432市町村の97.4%)、資格喪失届の確認に関する事務(管理番号30-149)については422市町村(432市町村の97.6%)において、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた。このうち、資格取得届の確認に関する事務については223市町村(同51.6%)、資格喪失届の確認に関する事務については242市町村(同56.0%)において、マイナンバー情報照会が全く実施されていなかった。

上記の市町村における未実施理由を確認したところ、離職や就職から間を空けずに申請者等から資格取得届又は資格喪失届が提出されることがあるにもかかわらず最新の情報が得られないこと、また、前記の標準的な日数を経過した後にマイナンバー情報照会を実施したにもかかわらず被保険者に係る医療保険給付関係情報が医療保険者において登録されていないものがあったため以後マイナンバー情報照会を実施しないことにしたことなどとなっていて、上記両事務の処理に当たり、マイナンバー情報照会によって適時に最新情報を取得できない場合が生ずるという問題が見受けられた。

(b) 医療保険者による医療保険給付関係情報の登録状況

厚生労働省が事務連絡を発出してから5年以上が経過した令和4年度末時点においても最新の情報が得られない状況、又は標準的な日数を経過した後に医療保険給付関係情報が医療保険者において登録されていない状況となっていたことから、同省が医療保険者による医療保険給付関係情報の登録状況について把握しているか確認したところ、同省は、全く把握していなかった。

そこで、会計検査院において、被用者保険の資格喪失又は資格取得に係る登録状況を医療保険者ごとに確認したところ、図表2-18のとおり、5年4月1日に国民健康保険資格を取得した者に占める資格取得届の提出期限である14日を経過した時点で被用者保険の資格喪失に係る登録が行われていなかった者の割合は、全国健康保険協会において24.3%、健康保険組合において12.1%となっていた。また、同年6月1日に国民健康保険資格を喪失した者に占める資格喪失届の提出期限である14日を経過した時点で被用者保険の資格取得に係る登録が行われていなかった者の割合は、全国健康保険協会において18.7%、健康保険組合において19.6%となっていて、被用者保険の資格喪失又は資格取得に係る登録に一定の期間を要している状況となっていた。

図表2-18 被用者保険の資格喪失又は資格取得に係る登録状況

区分 被用者保険の資格喪失に係る
登録状況
被用者保険の資格取得に係る
登録状況注(1)
全国健康保険協会 健康保険組合 全国健康保険協会 健康保険組合
人数
(人)
割合
(%)
人数
(人)
割合
(%)
人数
(人)
割合
(%)
人数
(人)
割合
(%)
令和5年4月1日に国民健康保険資格を取得した者又は同年6月1日に国民健康保険資格を喪失した者注(2) 236,435   131,454   660   102  
  14日を経過した時点で被用者保険の資格喪失又は資格取得に係る登録が行われていなかった者 57,467 24.3 16,037 12.1 124 18.7 20 19.6
  • 注(1) 令和5年6月1日に国民健康保険資格を喪失した者の被用者保険の資格取得に係る登録状況を確認したのは、医療保険者が医療保険者等向け中間サーバーに被保険者に係る医療保険給付関係情報を登録するまでの期間を5日以内とする健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)の改正が同日に施行されたことによるものである。
  • 注(2) 令和5年5月31日までに「令和5年4月1日に国民健康保険資格を取得した者」として登録された者又は同年7月31日までに「同年6月1日に国民健康保険資格を喪失した者」として登録された者を集計している。
  • 注(3) 被用者保険の資格喪失に係る登録状況の詳細については別図表10、被用者保険の資格取得に係る登録状況の詳細については別図表11参照

したがって、厚生労働省において、医療保険者による医療保険給付関係情報の登録状況について把握するとともに、事業主及び医療保険者に対して、被用者保険の資格を喪失又は取得した者があった場合は速やかに届出及び登録を行うよう周知するなど、被保険者の医療保険給付関係情報が提供可能となるまでの期間の短縮に努めること、また、同期間の短縮の状況を市町村に適宜周知して、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化のためにマイナンバー情報照会の利活用につなげることが必要である。

(ウ) 事務の発生件数が年間100件未満となっていた事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況

図表2-15のとおり、4年度の全期間が情報連携の本格運用期間となっていた127手続のうちの88手続(図表2-15の56手続と32手続の計)については、地方公共団体の人口規模を考慮して算出するなどした事務の発生件数が年間0件超100件未満となっており、地方公共団体における事務の発生件数が少数となっていた。

上記の88手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況を確認したところ、事務手続が発生していた延べ4,233地方公共団体のうち、マイナンバー情報照会実施率が50%以上となっていたものは66手続に係る延べ801地方公共団体(延べ4,233地方公共団体の18.9%)となっていて、50%未満となっていたものは87手続に係る延べ3,432地方公共団体(同81.0%)となっていた(マイナンバー情報照会実施率の詳細については別図表9参照)。

そして、87手続に係る事務手続ごとの主な未実施理由をみると、66手続について、「事務の発生件数が少ない」となっていた(事務手続ごとの主な未実施理由の状況については別図表9参照)。

上記の87手続については、事務の発生件数が少数となっていて、マイナンバー情報照会の活用に係る動機付けがされにくい状況にあるものの、前記のとおり、多額の国費を投じてマイナンバー制度関連システムの整備等が行われていることや、情報連携を活用して事務処理を行うことが基本であって、省略可能な添付書類の提出を求め続けることが不適切であるとされていることに照らせば、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていて、マイナンバー情報照会が十分に活用されていない地方公共団体においては、行政のデジタル化を見据えて、利用者の視点に立って業務フローの見直しを行うなど、マイナンバー情報照会の活用に向けた取組を進めていくことが重要である。

また、地方公共団体における事務の発生件数が少数となっていた前記88手続のうち、前記の発行手数料を伴う添付書類の省略により国民の利便性の向上が図られる事務手続や、情報の利活用の推進を目的として情報連携の運用が開始された事務手続については、特に、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施の推進が必要になると考えられる。

そこで、これらの事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況を確認したところ、次のとおりとなっていた。

a 地方税関係情報等の情報連携が行われる事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況

地方公共団体がマイナンバー情報照会を実施することにより、申請者は、申請の際に従来の行政手続で必要とされていた課税証明書や住民票の写しなどの添付書類の提出を省略できることとなっている。課税証明書及び住民票の写しについては一般的に発行に係る手数料が発生することから、申請者等にとっては、マイナンバー情報照会が実施されることにより、これらの発行に係る手数料についての負担が軽減されることになる。

前記88手続のうち、マイナンバー情報照会により提供される情報が地方税関係情報となっている18手続については課税証明書等の提出が省略でき、また、住民票関係情報(マイナンバー法別表第二に定める「住民基本台帳法第7条第4号に規定する事項」をいう。以下同じ。)となっている1手続については住民票の写しなどの提出が省略できる。

そこで、上記のマイナンバー情報照会により提供される情報が地方税関係情報となっている18手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況を確認したところ、17手続については、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた延べ313地方公共団体が、申請者等に課税証明書等の添付書類を提出させていた。また、マイナンバー情報照会により提供される情報が住民票関係情報となっている1手続については、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた9地方公共団体が、申請者等に住民票の写しなどの添付書類を提出させていた(17手続及び1手続の計18手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況については別図表9参照)。

b 情報の利活用の推進を目的とする事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況

母子保健法(昭和40年法律第141号)によれば、市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならないとされている。当該健康診査の実施又は勧奨に関する事務については、前記168手続のうち「母子保健法第13条第1項の健康診査の実施又は勧奨に関する事務」に関する事務手続(管理番号49-28)が運用されている(注23)

厚生労働省は、地方公共団体において、乳幼児健康診査の母子保健情報の利活用を推進するために、乳幼児健康診査の受診の有無等に係る情報について、転居時に市町村間で引き継がれる仕組みや市町村が乳幼児健康診査の個人の健康情報歴を一元的に確認できる仕組みを構築するとして、当該事務手続について、情報連携の本格運用を2年10月に開始した(注24)

また、「乳幼児健診等母子保健情報における情報連携開始に当たっての運用ルール等について」(令和2年3月31日付け厚生労働省子ども家庭局母子保健課事務連絡。以下「運用ルール」という。)によれば、乳幼児健康診査の受診履歴については、転居時に市町村間で引き継ぐことを目的としたデータ項目であり、情報連携を用いて把握することを原則とするなどとされている。

この1手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況を確認したところ、事務手続が発生していた105市町村のうちの73市町村(105市町村の69.5%)において、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた。

そして、図表2-19のとおり、当該73市町村は、4年度に発生した情報連携事務計7,355件をマイナンバー情報照会以外の方法により処理しており、事務手続ごとの主な未実施理由は「添付書類を提出してもらった方が効率的」及び「事務の発生件数が少ない」となっていた。

(注23)
「母子保健法第13条第1項の健康診査の実施又は勧奨に関する事務」に関する事務手続のほか、母子保健法に基づく健康診査の実施等に関する事務手続は、令和4年度末時点で6手続が運用されており、これら7手続の所管府省庁は、5年4月以降、こども家庭庁となっている。
(注24)
厚生労働省は、母子保健法に基づく健康診査の実施等に関する7手続に係る情報連携を開始するなどのために、図表0-6のとおり、令和元、2両年度に母子保健衛生費国庫補助金により母子保健情報連携システム改修事業を実施している。

図表2-19 「母子保健法第13条第1項の健康診査の実施又は勧奨に関する事務」に関する事務手続(管理番号49-28)に係るマイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた73市町村のマイナンバー情報照会以外の方法による処理件数や事務手続ごとの主な未実施理由の状況(令和4年度)

(単位:地方公共団体、件)
事務手続名、特定個人情報の種類
及び管理番号注(1)
地方公共団体数 左の地方公共団体の
処理件数の合計
事務手続ごとの主な未実施理由注(2)
マイナンバー情報照会 マイナンバー情報照会以外
母子保健法第13条第1項の健康診査の実施又は勧奨に関する事務[母子保健法による妊産婦又は乳児若しくは幼児に対する健康診査に関する情報](49-28) 73 31 7,355 添付書類を提出してもらった方が効率的[44]、事務の発生件数が少ない[17]
  • 注(1) 事務手続名を記載するとともに、[ ]で取り扱う特定個人情報の種類を、( )で管理番号を記載している。
  • 注(2) [ ]内の数字は当該未実施理由を選択した地方公共団体数である。

上記の73市町村におけるマイナンバー情報照会以外の処理方法や未実施理由について具体的に確認したところ、「母子健康手帳によって確認している」などのように、マイナンバー情報照会は事務の実施に際して特に必要がある場合に利用するとの理解にとどまっており、乳幼児健康診査の母子保健情報の利活用を推進するという本事務手続の運用を開始した目的やマイナンバー情報照会の実施を原則とする運用ルールについて、市町村において十分に理解されていなかった。このような状況のまま続けば、乳幼児健康診査の受診履歴に係る情報が転居時に市町村間で適切に引き継がれず、本事務手続の運用を開始した目的である母子保健情報の利活用の推進が十分に図られないことになると思料される。

(エ) 地方公共団体の種類別の未実施理由の具体的状況

情報照会者とされている地方公共団体の過半がマイナンバー情報照会を利用していなかった168手続のうち111手続(注25)に係る延べ5,514地方公共団体における未実施理由について、県又は市町村等における未実施理由の状況を確認した。

県においては、図表2-20のとおり、「添付書類を提出してもらった方が効率的」が最も多く選択されており(県が選択した未実施理由の項目数全体の15.6%)、次いで、「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」(同11.5%)が選択されていた。

また、市町村等においては、「添付書類を提出してもらった方が効率的」が最も多く選択されており(市町村等が選択した未実施理由の項目数全体の28.0%)、次いで、「事務の発生件数が少ない」が多く選択されていた(同13.9%)。

このように、県及び市町村等において「添付書類を提出してもらった方が効率的」という未実施理由が共通して最も多く選択されていた。この未実施理由は、マイナンバー情報照会の実施により生活保護受給証明書、健康保険証、身体障害者手帳等の提出を省略できる事務手続に係る未実施理由として多く選択されており、県及び市町村等において、申請者等が保有しているこれらの添付書類の提出を受けて事務処理を行う方が効率的であると認識されている状況が見受けられた。

(注25)
(イ)aの地方公共団体の人口規模を考慮して算出するなどした事務の発生件数が年間100件以上となっていて、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体が見受けられた24手続と、(ウ)の同事務の発生件数が年間0件超100件未満となっていて、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体が見受けられた87手続の計である。

図表2-20 地方公共団体の過半が利用していなかった111手続に係る県又は市町村等における未実施理由の状況

地方公共団体の過半が利用していなかった111手続に係る県又は市町村等における未実施理由の状況

なお、情報照会者とされている地方公共団体の半数以上がマイナンバー情報照会を利用していた28手続に係る未実施理由と比較したところ、図表2-21のとおり、県において、28手続では「業務フローの見直しやマニュアル作成が未了」という未実施理由が最も多く、情報照会者とされている地方公共団体の過半がマイナンバー情報照会を利用していなかった111手続では「添付書類を提出してもらった方が効率的」という未実施理由が最も多く選択されていた。

市町村等においては、28手続及び111手続ともに「添付書類を提出してもらった方が効率的」という未実施理由が最も多く選択されており、111手続では、事務の発生件数が年間100件未満となっていることなどを受けて、「事務の発生件数が少ない」という未実施理由が多く選択されていた。

図表2-21 地方公共団体の半数以上が利用していた28手続に係る未実施理由と地方公共団体の過半が利用していなかった111手続に係る未実施理由の比較

方公共団体の半数以上が利用していた28手続に係る未実施理由と地方公共団体の過半が利用していなかった111手続に係る未実施理由の比較

以上のように、情報照会者とされている地方公共団体の過半がマイナンバー情報照会を利用していなかった168手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況をみたところ、図表2-22のとおり、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施における問題等が見受けられた。

図表2-22 マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体で見受けられたマイナンバー情報照会の実施における問題等

マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体で見受けられたマイナンバー情報照会の実施における問題等

事務の発生件数が年間100件以上となっていて、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体が見受けられた事務手続について、地方公共団体の取組だけでは解消が困難な問題や、前記のマイナンバー情報照会の実施における問題が見受けられた。

また、事務の発生件数が年間100件未満となっていて、マイナンバー情報照会実施率が50%未満となっていた地方公共団体が見受けられた事務手続について、地方公共団体において、一般的に発行に係る手数料が発生する課税証明書や住民票の写しなどを申請者等に提出させていた状況や、事務手続の運用を開始した目的や運用ルールが十分に理解されていなかった状況が見受けられた。

そして、これらの所管府省庁であるこども家庭庁、総務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省に対して、所管する事務手続に係るマイナンバー情報照会の実施状況をどのように把握しているか確認したところ、当該5省庁は、把握の対象が全国に及ぶことから、各地方公共団体に対して照会件数の状況を確認するなどしておらず、前記のような問題が見受けられるなどしたマイナンバー情報照会の実施状況について十分に把握していなかった。

また、デジタル庁は、照会実績データにより、各地方公共団体のマイナンバー情報照会の照会件数の状況を把握していたものの、事務手続の所管府省庁に提供していなかった。

したがって、こども家庭庁、総務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省は、情報照会者とされている地方公共団体の過半でマイナンバー情報照会が利用されていない事務手続について、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施が推進され、マイナンバー制度関連システムの整備等の効果が十分に発現されるよう、地方公共団体が実施したマイナンバー情報照会の照会件数の状況についてデジタル庁から定期的に提供を受けるなどして、特に国民の利便性の向上や行政運営の効率化等に資する事務手続を優先して、地方公共団体によるマイナンバー情報照会の実施状況を把握するとともに、実施状況が低調となっている地方公共団体において生じている問題を具体的に把握する必要がある。

そして、これらを踏まえて、同庁と連携し、上記の地方公共団体に対して問題の解決に資する適切な助言を行うとともに、多くの地方公共団体に共通し、地方公共団体の取組だけでは解消が困難な問題について、解決に向けた方策を検討し、適切に対応していく必要がある。