会計名及び科目 | 道路整備特別会計 (項)道路事業費 |
部局等の名称 | 山梨県 |
補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号) |
事業主体 | 山梨県 |
補助事業 | 一般国道300号道路改良 |
補助事業の概要 | トンネル内の道路照明設備を整備するなどのため、平成9年度に照明灯の設置等を施工するもの |
事業費 | 36,254,400円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 19,939,920円 |
不当と認める事業費 | 22,185,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 12,201,750円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、山梨県が、一般国道300号道路改良事業の一環として西八代郡下部町地区において、新設した長塩2号トンネル(延長336m、車道幅員6.5m)内に道路照明設備を整備するなどのため、平成9年度にトンネル内の照明灯153基の設置等を工事費36,254,400円(国庫補助金19,939,920円)で実施したものである。
トンネル内の道路照明設備は、自動車等の安全かつ円滑な交通を確保することを目的として設置されるもので、同県では本件トンネルの設計に当たって、建設省制定の「道路照明施設設置基準」等(以下「照明基準」という。)に基づいて設計することとしていた。
すなわち、照明基準によれば、道路照明は、〔1〕 トンネル全延長に共通の基本照明と、〔2〕 トンネルの入口部において、運転者に対し、野外とトンネル内との道路面の輝度(注1)
(以下「路面輝度」という。)の格差に適応させるため、徐々に減光するように設置する入口部照明とに区分することとしている。そして、本件トンネルの場合では、基本照明については、走行車両の設計速度が50km/h 、交通量が10,000台/日未満であることから、トンネル内の路面輝度を0.95cd/m2
としている。また、入口部照明については、トンネルの入口からの距離に応じて、路面輝度が16.3cd/m2
から10.3cd/m2
、そして0.95cd/m2
と漸減することとしている。
上記に基づき、本件トンネルの道路照明設備については、次のように設計し、施工することとしていた(参考図参照)
。
(ア) 基本照明として、トンネルの全延長について路面輝度0.95cd/m2 を上回るように、照明灯具(35Wの低圧ナトリウム灯)を12m間隔で設置する。
(イ) 入口部照明として、出入口からの距離に応じて、上記照明基準に定める路面輝度を満たすように、照明灯具(35Wから90Wの低圧ナトリウム灯)を増設する。
(ウ) 照明灯具はトンネルの左右両側に設置するが、その取付けに当たっては、照明の中心軸が対向車線の中央を指すように、鉛直方向に対して右側(歩道設置側)は52.0度、左側は44.5度の取付角度となるよう、支持金具を用いて設置する。このため、支持金具の形状は、右側は上部長30mm、下部長160mm(左側は同じく60mm、120mm)と上下の長さが異なるものとなっている。
2 検査の結果
検査したところ、トンネルの道路照明設備の施工が、次のとおり適切でなかった。
すなわち、本件トンネル内のすべての照明灯具について、その支持金具を誤って上部と下部とを逆にして取り付けていたため、その取付角度が設計に比べて、右側で28.1度、左側で15.0度それぞれ下向きに設置されていた。このため、左右両側の照明の中心軸は、それぞれ真下の車線の方向を指すようになっていた。
そこで、トンネル内の路面輝度が照明基準に基づく路面輝度を満足しているかを調査するため、自然光が差し込む入口部各12m(トンネルの両側で計24m)の区間を除いた312mの区間について、照明灯具の設置されている各箇所の照度(注2)
を測定して、トンネル内の基本照明及び入口部照明についての路面輝度を計算した。その結果、基本照明の路面輝度は0.83cd/m2
となり、照明基準に基づく路面輝度0.95cd/m2
を満足しないものとなっていた。また、入口部照明についても、前記の照明基準に基づく路面輝度16.3cd/m2
に対して12.4cd/m2
となるなど、ほとんどの区間において所要の路面輝度を満足しないものとなっていた。
したがって、本件トンネルの道路照明設備(工事費相当額22,185,000円)は、施工が設計と相違していたため、路面の明るさが照明基準に定める路面輝度を満足しないものとなっており、これに係る国庫補助金相当額12,201,750円が不当と認められる。
(注1) 輝度 ある方向の光源の強さを表したものを光度(cd:カンデラ)といい、光源や灯具またはこれらの光を反射している面などを、ある方向から見たときの明るさの程度を示したものを輝度(cd/m2 )という。
(注2) 照度 光源から放射される光の量を光束といい、単位面積当たりに入射する光束を照度(1x:ルクス)という。