会計名及び科目 | 道路整備特別会計 (項)道路事業費 |
部局等の名称 | 青森県 |
補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号) |
補助事業者 (事業主体) |
青森県 |
補助事業 | 一般国道280号道路改良 |
補助事業の概要 | 道路を新設するため、平成10、11両年度に土工、法覆工等を施工するもの |
事業費 | 135,288,300円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 74,408,565円 |
不当と認める事業費 | 7,901,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 4,345,550円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、青森県が、一般国道280号道路改良事業の一環として東津軽郡平舘村野田地区において道路を新設するため、平成10、11両年度に土工、法覆工等を工事費135,288,300円(国庫補助金74,408,565円)で実施したものである。
上記工事のうち土工は、道路の路床等を築造するなどのため、山側の土砂が崩落している箇所を含む区間において切土等を施工するものである。また、法覆工は、切土した道路山側法面の崩落等を防止するため、法面にコンクリート製法枠を格子状に据え付け、法枠内の地山2,306m2
について、雨水等による浸食から法面を護りその安定を図るために植生工として人工張芝工を施工するなどのものである(参考図参照)
。
このうち人工張芝工は、その施工に当たり適用することとされていた「道路土工−のり面工・斜面安定工指針」(社団法人日本道路協会編)及び設計図書等によると、次のように施工することとしていた。
(ア) 切土で発生する土のうち、芝の生育に適する土を選定するため、必要に応じて土壌硬度(注1)
、土壌酸度(注2)
等の特性を調査する。
(イ) 芝の生育に適する土を法枠内の地山に客土する。
(ウ) 客土した土の表面に、むしろに芝の種子及び肥料を付着させた人工張芝を張り付ける。
2 検査の結果
検査したところ、人工張芝工2,306m2
のうち2,154m2
の法枠内では芝が生育しておらず、このうち766m2
の法枠内については芝が全く生えていない状況となっていた。そして、法枠内に客土された土には多数の礫が混入するなどしていた。
本件工事の切土箇所においては、植物の生育に適する表土があるものの、当該箇所は土砂が崩落していた箇所などであり、このため、客土として用いられる発生土は、施工上、表土ばかりでなく下層の土砂も混じることが考えられたのに、必要に応じて行うとされている土壌の特性の調査が実施されていなかった。
そこで、上記の2,154m2
の法枠内に客土された土について、全体の特性を調査するために90箇所を抽出して土壌硬度及び土壌酸度を測定した。その結果、27箇所において、土壌硬度がほとんどの植物の根の伸長が困難であるとされている硬度23mm以上となっており、また26箇所において、土壌酸度が植生を阻害するとされているpH値4以下となっていた。
そして、このいずれの指標にも適合していない箇所が7箇所あることから、90箇所のうち46箇所において指標に適合していないことになっていた。
さらに、上記90箇所のうち12箇所の土を採取して、「道路緑化技術基準・同解説」(社団法人日本道路協会編)に基づき、土壌が芝の生育基盤材として適当であるかについて土性(注3)
を、保水性が確保されているかについて礫含有率(注4)
を、養分の供給が可能であるかについて腐植含有率(注5)
をそれぞれ分析した。その結果、土性については4箇所が、礫含有率については7箇所が、腐植含有率については12箇所すべてが、植物の健全な生育が阻害されるおそれのあるものとなっていた。
このような事態が生じていたのは、請負業者が人工張芝工の施工に当たり、芝の生育に適する土を選定するために必要な調査を行わず、切土により発生した土をそのまま客土として使用していたのに、これに対する同県の監督、検査が適切でなかったことによると認められる。
したがって、人工張芝工2,154m2
(工事費相当額7,901,000円)は、施工が著しく粗雑となっていたため、雨水等による浸食から法面を護りその安定を図る効果が期待できないものとなっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額4,345,550円が不当と認められる。