会計名及び科目 | 一般会計 (組織)建設本省 (項)河川等災害復旧事業費 |
部局等の名称 | 山梨県 |
補助の根拠 | 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号) |
補助事業者 (事業主体) |
山梨県南都留郡道志村 |
補助事業 | 村道善之木〜水の元線道路災害復旧 |
補助事業の概要 | 被災した橋りょうを復旧するため、平成10、11両年度に橋台2基の築造、H鋼桁の製作・架設等を施工するもの |
事業費 | 27,877,500円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 6,722,659円 |
不当と認める事業費 | 21,696,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 5,228,736円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、山梨県南都留郡道志村が、平成10年8月の豪雨により被災した村道善之木〜水の元線を復旧する道路災害復旧事業の一環として、同村善之木地区の道志川において、橋りょう(橋長23.0m、幅員4.2m)を築造するため、10、11両年度に橋台2基の築造、H鋼桁の製作・架設等を工事費27,877,500円(国庫補助金6,722,659円)で実施したものである。
このうち橋台は、掘削した地盤上に直接築造する逆T式橋台である。この橋台の設計に当たっては、設計計算書において「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編)に基づき、橋台の基礎底面地盤の支持力の計算などを行うこととしていた。これによると、この支持力の計算に当たって用いることとなっている橋台基礎の有効根入れ深さは、設計上の地盤面から基礎底面までの長さであるとされている。そして、この設計上の地盤面を定めるには、地盤が長期にわたり安定して存在し水平抵抗が期待できるものであることが必要であるとしている。
同村では、設計上の地盤面を堤防の地盤高線(河川の法面の上端から3m後方の地点と法尻を結ぶ線)であるとして、橋台基礎の有効根入れ深さを左岸側橋台で1.8m、右岸側橋台で1.4mとするなどしていた(参考図参照)
。
そして、これに基づき安定計算を行った結果、地震時における基礎底面地盤の許容鉛直支持力(注)
は左岸側橋台で331.9tf、右岸側橋台で414.8tfとなり、地盤に対し作用する鉛直力(注)
のそれぞれ173.6tf、275.4tfを上回っていることから、本件橋台は安定計算上安全であるとしていた。
同村では、上記に基づくなどして、左岸側橋台を高さ4.5m、底盤幅3.5m、また右岸側橋台を高さ5.0m、底盤幅5.5mと設計し、これにより施工していた。
2 検査の結果
検査したところ、橋台の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、本件橋台の設計上の地盤面についてみると、前記のとおり地盤が長期にわたり安定して存在し水平抵抗が期待できるのは計画河床面であるのに、同村では、誤って、橋台の位置を決定する際に用いることになっている堤防の地盤高線を設計上の地盤面としていた。そして、上記のとおり設計上の地盤面を計画河床面とすると、橋台基礎の有効根入れ深さは左岸側橋台で0m、右岸側橋台で0.107mとなる(参考図参照)
。
そこで、この有効根入れ深さを用いるなどして改めて地震時における基礎底面地盤の許容鉛直支持力を計算すると、左岸側橋台で45.9tf、右岸側橋台で132.7tfとなり、鉛直力のそれぞれ173.6tf、275.4tfを大幅に下回っていた。
このような事態が生じていたのは、同村において、委託した設計業務の成果品である設計計算書に誤りがあったのに、これに対する検収が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋台は設計が適切でなかったため、橋台2基及びこれに架設されたH鋼桁(これらの工事費相当額21,696,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額5,228,736円が不当と認められる。