会計名及び科目 | 道路整備特別会計 (項)道路事業費 |
部局等の名称 | 奈良県 |
補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号) |
補助事業者 (事業主体) |
奈良県 |
補助事業 | 一般国道425号道路災害防除 |
補助事業の概要 | 山からの落石による道路災害を防止するなどのため、平成10年度にポケット式落石防止網工等を施工するもの |
事業費 | 76,965,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 38,482,500円 |
不当と認める事業費 | 8,350,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 4,175,000円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、奈良県が、一般国道425号の道路災害防除事業の一環として吉野郡下北山村浦向地区において、道路の山側法面の地山の崩落及び落石による災害を防止するため、平成10年度にコンクリート吹付工及びポケット式落石防止網工等を工事費76,965,000円(国庫補助金38,482,500円)で実施したものである。
このうちポケット式落石防止網工(施工面積760m2
)は、金網をポケット状にして山からの落石を受け止めるため、法面の中段に鋼製の支柱29基(高さ2m、2.5m又は3m)を水平方向に一列に設置し、これを支点に法面に沿ってワイヤロープを山型に張ったうえ、支柱より下方のワイヤロープに金網を取り付けるものである。そして、法面には、岩盤用ルーフアンカー(長さ1m、径22mm、25mm又は32mm。以下「ルーフアンカー」という。)を、支柱を取り付けるために58本、ワイヤロープを取り付けるために法面の上部に29本、左右に12本及び下部に4本、計103本打ち込み、落石が金網に衝突した場合、主として法面の上部及び左右のルーフアンカーによって金網を支えることとしている(参考図参照)
。
これらのルーフアンカーについては、設計図書等によると次のように施工することとしていた。
(ア) ルーフアンカーを打ち込む箇所の表土を取り除いて岩盤を露出させ、削岩機で深さ85cmから90cmの削孔を行う。
(イ) 削孔した孔内にルーフアンカーを挿入し、打込み用パイプを用いてハンマーで打ち込み、ルーフアンカーの先端部分を開かせて岩盤に定着させる。
(ウ) 注入材(セメントミルク)を孔内に充てんし、ルーフアンカーを岩盤に固定させる。
2 検査の結果
検査したところ、法面に打ち込んだルーフアンカーの施工が、次のとおり適切でなかった。
すなわち、ルーフアンカーの施工に当たっては、前記のとおり、法面が表土に覆われている場合には表土を取り除いて岩盤に直接削孔することとされているのに、打込み箇所の表土を取り除くことなく削孔して施工していた。
このため、落石の衝撃から金網を支える役割を果たす法面上部のルーフアンカーについては、29本のうち25本は岩盤への根入れが全くなく表土中に挿入されたままとなっていたり、岩盤への根入れが10cmから66cm程度不足していたりしていた。また、金網をポケット状にするための支柱を取り付けるルーフアンカーについては、58本のうち20本は岩盤への根入れが8cmから37cm程度不足していた。
上記のことから、これらのルーフアンカーは岩盤に固定されていない状態となっていて、当該ルーフアンカーに支えられているポケット式落石防止網は、落石を受け止める効果を十分発現できないものとなっている。
このような事態が生じていたのは、ポケット式落石防止網工のルーフアンカーの施工に当たり、請負業者の施工が著しく粗雑であったのに、これに対する県の監督、検査が適切でなかったことによると認められる。
したがって、本件ポケット式落石防止網工(工事費相当額8,350,000円)は、その施工が著しく粗雑となっていて工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額4,175,000円が不当と認められる。