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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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補助金


(208) 歩道橋整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台の胸壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)都市計画事業費
部局等の名称 北海道
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法(昭和41年法律第45号)
補助事業者
(事業主体)
北海道札幌市
補助事業 道道花畔札幌線伏篭橋歩道橋整備
補助金の概要 歩道橋を新設するため、平成11、12両年度において、(1)橋台の築造等、(2)鋼桁の製作、(3)同桁の架設等を行うもの
事業費 (1) 90,174,000円
(2) 123,900,000円
(3) 76,101,900円
290,175,900円
上記に対する国庫補助金交付額 (1) 45,087,000円
(2) 61,950,000円
(3) 38,050,950円
145,087,950円
不当と認める事業費 (1) 2,973,000円
(2) 123,900,000円
(3) 48,136,000円
175,009,000円
不当と認める国庫補助金交付額 (1) 1,486,500円
(2) 61,950,000円
(3) 24,068,000円
87,504,500円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、北海道札幌市が、道道花畔札幌線伏篭橋歩道橋整備事業の一環として、同市北区東茨戸地区において既設橋りょうの両側に歩道橋(橋長70.05m、歩道幅員3.5m)を新設するものである。この新設工事は、平成11、12両年度に、(1)の工事において橋台4基の築造等を工事費90,174,000円(国庫補助金45,087,000円)で、(2)の工事において鋼桁の製作を工事費123,900,000円(国庫補助金61,950,000円)で、(3)の工事において同桁の架設等を工事費76,101,900円(国庫補助金38,050,950円)で実施したものである。
 この歩道橋については、地震発生時における鋼桁の落下による落橋を防止するため、橋台の胸壁と鋼桁をPC鋼材で連結する落橋防止装置を各胸壁の中央部1箇所、計4箇所に設置していた(参考図参照)
 上記の落橋防止装置を設置する場合、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)によると、地震発生時に落橋防止装置を通じて作用する力についても考慮して、橋台の設計を行う必要があるとしている。
 そして、本件橋台の設計の基礎となっている設計計算書によると、地震発生時に本件橋台の胸壁基部に作用する曲げモーメントは(注1) 、落橋防止装置を通じて作用する力を考慮しても、設計上の耐荷力を下回ることから応力計算上安全であるとし、これにより施工していた。

2 検査の結果

 検査したところ、橋台の胸壁の設計が、次のとおり適切でなかった。
 すなわち、示方書によると、落橋防止装置を通じて橋台の胸壁に作用する力には、上記曲げモーメントのほか、押抜きせん断力(注2) 及びせん断力(注3) があり、その設計に当たっては、これらについても考慮する必要があるとされているのに、本件橋台の設計に当たり、これらについては全く考慮されていなかった。
 そこで、本件橋台の胸壁に作用する押抜きせん断力及びせん断力について応力計算を行ったところ、次のような結果となり、それぞれ設計上の耐荷力を上回っていた。
(ア)本件橋台の各胸壁に作用する押抜きせん断応力度は11.5kgf/cm2 となり、各胸壁の許容押抜きせん断応力度(注2) である8.5kgf/cm2 を大幅に上回っていた。
(イ)本件橋台の各胸壁に作用するせん断力は210.6tfとなり、各胸壁のせん断耐力(注3) である139.1tf(上流側)及び130.9tf(下流側)をそれぞれ大幅に上回っていた。
 このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品である設計計算書に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件歩道橋は設計が適切でなかったため、胸壁及びこれと落橋防止装置で連結されている鋼桁等(これらの工事費相当額175,009,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額87,504,500円が不当と認められる。

(注1) 曲げモーメント 外力が部材に作用し、これを曲げようとする力の大きさをいう。
(注2) 押抜きせん断力・押抜きせん断応力度・許容押抜きせん断応力度 「押抜きせん断力」とは、平板状のコンクリートに局部的に集中荷重が作用する場合において、荷重作用位置の周辺に沿って円すい状または角すい状にコンクリートを押し抜こうとする力の大きさをいう。押抜きせん断力を受けたとき、そのために部材の内部に生じる力の単位面積当たりの大きさを「押抜きせん断応力度」といい、その数値が設計上許される上限を「許容押抜きせん断応力度」という。
(注3) せん断力・せん断耐力 「せん断力」とは、部材に作用してこれを切断しようとする力の大きさをいい、せん断力を受ける部材断面のせん断破壊に対する耐荷力を「せん断耐力」という。

(参考図)

(参考図)

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