会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村整備事業費 |
部局等の名称 | 中国四国農政局 |
補助の根拠 | 土地改良法(昭和24年法律第195号) |
補助事業者(事業主体) | 岡山県 |
補助事業 | 広域営農団地農道整備 |
補助事業の概要 | 橋りょうを新設するため、平成14、15両年度に橋台、橋脚の築造及び橋りょう上部工の製作、架設等を行うもの |
事業費 | 146,853,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 73,426,500円 |
不当と認める事業費 | 133,519,693円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 66,759,846円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、岡山県が、広域営農団地農道整備事業の一環として、井原市芳井地区において、橋りょう(こ道橋、橋長70m、幅員7m)を新設するため、平成14、15両年度に、橋台1基、橋脚1基の築造及び橋りょう上部工としてポストテンション方式連続合成桁の製作、架設等を工事費計146,853,000円(国庫補助金73,426,500円)で実施したものである。そして、この橋りょうは、上部構造と橋脚とが固定支承、上部構造と橋台とが可動支承によりそれぞれ連結された構造となっている。
この橋りょうの設計は、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づき行っていて、耐震設計については地震時保有水平耐力法(注1)
により行っている。これによると、橋脚の安全性の判定は、橋りょうを地震時に同一の振動をするとみなし得る設計振動単位に分割し、それぞれの単位の設計震度を算出し、これに構造物の重量を乗じて橋軸方向及び橋軸直角方向の慣性力を算定するなどして行うこととされている。
そして、本件橋りょうの設計の基礎となっている設計計算書によると、設計振動単位については、地震時水平力分散構造(注2)
により、橋台を含めた橋りょう全体を一つの単位ととらえる方式(以下「三基下部方式」という。)とした上で、慣性力を算定している(参考図1参照)
。
その結果、橋軸方向及び橋軸直角方向について、プレート境界型の大規模な地震を想定した地震動(以下「プレート境界型の地震動」という。)及び内陸直下型地震を想定した地震動(以下「直下型の地震動」という。)のいずれの場合も、橋脚の地震時保有水平耐力が橋脚に作用する慣性力を上回ることから、本件橋りょうは耐震設計上安全であるとして、これにより施工していた。
(注1) | 地震時保有水平耐力法 大規模地震を想定した耐震設計法で、地震に対して構造物に適切なねばりを持たせ、構造物全体としての崩壊を防止するという観点から定められた耐震設計法。安全であることの判定は、構造物が有している地震時保有水平耐力が、地震時に作用する慣性力以上になることにより行う。 |
(注2) | 地震時水平力分散構造 地震時の上部構造の慣性力を複数の下部構造で分担する構造で、ゴム支承や免震支承を用いる場合などがある。 |
2 検査の結果
検査したところ、橋りょうの設計が、次のとおり適切でなかった。
すなわち、本件橋りょうは、前記のとおり、上部構造と橋脚とが固定支承、上部構造と橋台とが可動支承によりそれぞれ連結された構造であることから、橋りょう全体を設計振動単位とするのではなく、橋台とは別に上部構造と橋脚とを一つの単位(以下「一基下部方式」という。)として慣性力を算定すべきであるのに(参考図2参照)
、誤って三基下部方式としていた。
一基下部方式では上部構造の慣性力が橋脚に集中することになるなどのため、三基下部方式に比べて橋脚に作用する慣性力は大幅に大きくなることから、本件橋脚について、設計振動単位を一基下部方式とするなどして、改めて地震時保有水平耐力及び慣性力を計算すると、次のような結果となっている。
プレート境界型の地震動の場合、橋軸方向では地震時保有水平耐力4,049kNに対し慣性力が4,470kN、直下型の地震動の場合は、橋軸方向では地震時保有水平耐力4,051kNに対し慣性力が6,310kN、橋軸直角方向では地震時保有水平耐力4,074kNに対し慣性力が4,617kNと、地震時保有水平耐力が慣性力を大幅に下回っている。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋りょうは設計が適切でなかったため、橋脚及びこれに架設されたポストテンション方式連続合成桁等(これらの工事費相当額計133,519,693円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額66,759,846円が不当と認められる。
三基下部方式の概念図
一基下部方式の概念図