会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村整備事業費 |
部局等の名称 | 中国四国農政局 |
補助の根拠 | 土地改良法(昭和24年法律第195号) |
補助事業者 | 徳島県 |
間接補助事業者(事業主体) | 徳島県麻植郡川島町(平成16年10月1日以降は吉野川市) |
補助事業 | 農村振興総合整備統合補助(地域環境整備) |
補助事業の概要 | 集落道を新設するため、平成15年度に舗装工、擁壁工等を実施するもの |
事業費 | 48,762,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 24,381,000円 |
不当と認める事業費 | 8,270,003円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 4,135,001円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、徳島県麻植郡川島町(平成16年10月1日以降は吉野川市)が、農村振興総合整備統合補助事業(地域環境整備)の一環として、同町神後地区において、集落道(延長246.1m)を新設するため、15年度に、舗装工、擁壁工等を工事費48,762,000円(国庫補助金24,381,000円)で実施したものである。
上記擁壁工のうち、切土部のコンクリート擁壁(高さ0.65mから2.7m、延長112.95m、以下「擁壁」という。)は、切土した箇所の法面の安定を図るために築造するもので、擁壁の設計に当たり、同町では、設計コンサルタント会社に設計業務を委託し、この委託契約に基づく成果品を基とするなどして施工していた。
そして、擁壁については、転倒や滑動等に対する所要の検討を行い、安定計算上安全であるとしていた(参考図1参照)
。
2 検査の結果
検査したところ、擁壁の設計が次のとおり適切でなかった。
設計コンサルタント会社が設計図面を作成する段階において、全延長について擁壁の前面に沿って排水路を築造する必要が生じたため、擁壁の底版のつま先部を削除した断面の設計図面を作成したが、これに関する安定計算の検討を行っていなかった(参考図2参照)
。
施工段階において、擁壁のうち延長25.35m(高さ2.25m)についてはかさ上げする必要が生じ、擁壁天端に直壁(高さ0.45m)を設ける設計変更を行っていたが、これに関する安定計算を行っていなかった(参考図3参照)
。
そこで、本件擁壁について、改めて安定計算を行うと、次のとおりとなる。
ア 転倒に対する安定については、擁壁の全延長において、水平荷重及び鉛直荷重の合力の作用位置が擁壁の底版幅の中央より0.070mから0.291mの位置となり、転倒に対して安全である範囲0.039mから0.175mを大幅に逸脱している。
イ 滑動に対する安定については、かさ上げするために直壁を設けた擁壁延長25.35mにおいて、その安全率が1.19となり、許容値1.5を大幅に下回っている。
このような事態が生じていたのは、同町において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに十分な検査を行わなかったこと及び設計変更に当たって必要な安定計算を行わなかったこと、並びに同町に対する徳島県の指導が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件擁壁は設計が適切でなかったため、擁壁等(工事費相当額8,270,003円)について所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額4,135,001円が不当と認められる。
(安定計算時の断面) |
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(成果品の設計図面):全延長分 |
(設計変更図面):25.35m分 |