会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業施設災害復旧事業費 |
部局等の名称 | 九州農政局 |
補助の根拠 | 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等 |
補助事業者 | 熊本県 |
間接補助事業者(事業主体) | 熊本県水俣市 |
補助事業 | 農業用施設災害復旧 |
補助事業の概要 | 被災した頭首工の機能回復を図るため、平成15、16両年度にえん体、エプロン等を築造するもの |
事業費 | 10,500,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 10,447,500円 |
不当と認める事業費 | 10,500,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 10,447,500円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、熊本県水俣市が、農業用施設災害復旧事業の一環として、同市湯出前田地区において、豪雨により被災した頭首工(注)
の機能回復を図るため、平成15、16両年度に頭首工のえん体、エプロン等の築造を工事費10,500,000円(国庫補助金10,447,500円)で実施したものである。
上記の工事は、15年7月の豪雨に伴う洪水により2級河川湯出川(河川全幅37.5m)に設置された頭首工のえん体等の一部が損壊し、農業用水を取水することができなくなったことから、この機能を回復するため、新たに頭首工のえん体、エプロン等を築造するものである。同市では、頭首工は、洗掘のおそれがある礫及び砂の混合の浸透性地盤に設置させることから、次のように設計し、これにより施工していた(参考図1参照)
。
〔1〕 えん体は、河川の横断方向に長さが24.5m、断面が上端幅0.6m、下端幅1.9m、高さ1.38mの台形状のコンクリート構造とする。
〔2〕 えん体の上流側には、浸透水により砂礫が流出して基礎地盤が洗掘されることを防止するため止水壁を、えん体の下流側には、越流水によるえん体下流部の洗掘を防止するためエプロン、水叩きコンクリート等をそれぞれ設ける。
2 検査の結果
検査したところ、頭首工の設計は次のとおり適切でなかった。
すなわち、上記の頭首工の設計は、15年11月に実施された災害査定を受けて同市が当初の設計を次のように変更したものであった。
〔1〕 当初の設計においては、農林水産省制定の「土地改良事業計画設計基準・設計「頭首工」」(以下「頭首工設計基準」という。)等に基づき、エプロン下流側の河床の洗掘を防止するための護床工が必要であると判断し、えん体を越えた高速の越流水の勢いを、上面部の凹凸により減勢するため、護床ブロックを用いた護床工(長さ16.0m)を設けることとしていた(参考図2参照)
。
〔2〕 現地で行われた災害査定において、「護床ブロックは削除。ただし、実施に当り現地の石を活用する。水たたきコンクリートを追加。」などと示された。
〔3〕 同市では、〔2〕の内容について護床工は不要であると理解したため、実施設計においては水叩きコンクリートを追加する一方、護床工は設けない構造とした。
しかし、上記の現地査定の「護床ブロックは削除」の趣旨は、越流水の流れを漸次減勢し下流の流速と等しくするためには、護床ブロックを用いて護床工を設けるのではなく、現地にある転石を利用することとしたものであり、護床工そのものを不要であるとしたものではないことから、本件頭首工において、護床工を設けていないことは適切と認められない。
そして、頭首工は、工事完成後5箇月後の会計実地検査時(16年11月)において、水叩きコンクリートの下流側の河床が既に40cm洗掘されていた。
このような事態が生じていたのは、同市が査定の内容を誤って理解したことによるものと認められる。
したがって、本件頭首工(工事費10,500,000円)は、設計が適切でなかったため、河床の洗掘に対応できない構造となっていて、今後、河床の洗掘が進行して頭首工が転倒するなど頭首工の機能が確保できなくなるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金10,447,500円が不当と認められる。
実施設計の断面図
当初設計の断面図