利根川はその源を群馬県利根郡みなかみ町の大水上山に発し太平洋に注ぐ、幹川流路延長322km、流域面積16,840km2
の一級河川である。その流域は1都5県にまたがり、流域内人口は日本の総人口の約10分の1に当たる約1214万人に達している。
このように、利根川は首都圏を貫流する大河川であり、利根川水系の治水についての意義は極めて大きいものとなっている。
利根川水系における河川整備等の治水事業について検査したところ、次のような状況になっていた。
利根川水系では、明治以降「明治33年改修計画」等各改修計画に基づき築堤、河道掘削等の治水事業が行われてきているが、平成22年度末現在において利根川水系河川整備計画が未策定であるため、利根川水系河川整備基本方針及び利根川水系工事実施基本計画に基づき河川の改修工事が行われている。そして、利根川水系においては、上記の基本方針等に基づき、利根川等において洪水調節等を目的として湯西川ダム建設事業等計九つの大規模な治水事業が実施されている(図表6-1
及び図表6-2
参照)。
なお、上記の大規模な治水事業計9事業のうち5事業(八ッ場ダム建設、吾妻川上流総合開発、利根川上流ダム群再編、思川開発(南摩ダム)、霞ヶ浦導水各事業)は、国土交通省の検証対象のダム建設事業等とされている。
河川名 | 事業名 | 所在地 | 事業開始年度 | 目的 | ダム建設事業等検証状況 | 備考 |
湯西川 | 湯西川ダム建設事業 | 栃木県日光市 | 昭和57 | 洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道用水等の確保 | - | 参照 1 2 |
吾妻川 | 八ッ場ダム建設事業 | 群馬県長野原町 | 昭和42 | 洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道用水等の確保等 | 検証中 | 参照 1 2 |
湯川等 | 吾妻川上流総合開発事業 | 群馬県中之条町ほか | 平成4 | 流水の正常な機能の維持、発電 | 中止の方針を決定 | 参照 1 2 |
赤谷川等 | 利根川上流ダム群再編事業 | 群馬県みなかみ町ほか | 平成14 | 洪水調節 | 検証中 | 参照 1 2 |
南摩川 | 思川開発事業(南摩ダム) | 栃木県鹿沼市 | 昭和44 | 洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道用水の確保 | 検証中 | 参照 1 2 |
霞ヶ浦 | 霞ヶ浦導水事業 | 茨城県稲敷市ほか | 昭和51 | 水質浄化、流水の正常な機能の維持、水道用水等の確保 | 検証中 | 参照 |
渡良瀬川 | 渡良瀬遊水池調節池化工事 | 栃木県栃木市ほか | 昭和45 | 洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道用水の確保 | - | 参照 |
利根川 | 稲戸井遊水池調節池化工事 | 茨城県守谷、取手両市 | 昭和45 | 洪水調節 | - | 参照 |
利根川、 江戸川 |
高規格堤防整備事業 | 埼玉県加須市ほか | 昭和62 | 超過洪水対策 | - | 参照 |
イ 計画規模
利根川等の基準地点における基本高水のピーク流量等は図表6-3 のとおりである。
(単位:m3 /s)
河川名 | 基準地点 | 基本高水のピーク流量 | 洪水調節施設による調節流量 | 河道への配分流量 | 基本高水のピーク流量の設定 | 各河川に関連する事業 |
利根川 | 八斗島 | 22,000 | 5,500 | 16,500 | 観測史上最大流量 | 湯西川ダム建設事業、八ッ場ダム建設事業、吾妻川上流総合開発事業、利根川上流ダム群再編事業、思川開発事業(南摩ダム)、霞ヶ浦導水事業、渡良瀬遊水池調節池化工事、稲戸井遊水池調節池化工事、高規格堤防整備事業 |
渡良瀬川 | 高津戸 | 4,600 | 1,100 | 3,500 | 確率流量(1/100確率規模) | 渡良瀬遊水池調節池化工事 |
鬼怒川 | 石井 | 8,800 | 3,400 | 5,400 | 確率流量(1/100確率規模) | 湯西川ダム建設事業、稲戸井遊水池調節池化工事 |
小貝川 | 黒子 | 1,950 | 650 | 1,300 | 観測史上最大流量 | 稲戸井遊水池調節池化工事 |
利根川の基準地点における基本高水のピーク流量については「昭和24年改修改訂計画」では17,000m3 /sであったが、昭和55年利根川水系工事実施基本計画の策定時に22,000m3 /sに変更されている。これは基準地点における基本高水のピーク流量を設定する際に、1/200確率規模の洪水流量(21,200m3 /s)と観測史上最大流量(22,000m3 /s)のいずれか大きい方を採用することとし、観測史上最大流量を基本高水のピーク流量としたことによるものである。また、渡良瀬川、鬼怒川及び小貝川については、55年工事実施基本計画の策定時に基本高水のピーク流量を設定する際に、1/100確率規模の洪水流量と観測史上最大流量とを比較して大きい方を採用することとしてピーク流量を決定している。そして、平成18年の利根川水系河川整備基本方針の策定に際して流量確率(注) 等による検証が実施され、各基準地点における既定計画の基本高水のピーク流量(図表6-3 参照)は妥当であると判断されている。
利根川の基準地点は八斗島(やったじま)(図表6-2 参照)であり、上記の基本方針によると、八斗島地点における基本高水のピーク流量を22,000m3 /sとし、このうち流域内の洪水調節施設により5,500m3 /sを調節し、河道へ16,500m3 /sを配分することとされている。このように、基準地点において基本高水のピーク流量が設定され、その基本高水に対して河道と洪水調節施設への配分や主要な地点における計画高水流量が定められている。そして、利根川の計画高水流量図は図表6-4 のとおりとなっている。
利根川において八斗島が基準地点に設定されたのは、国土交通省によると、大きな支川の合流直下の地点に位置し、既往の水理・水文資料の十分な蓄積があることによるもので、基準地点として設定されたのは妥当であるとしているが、具体的な設定経緯や設定理由については、設定当時の関係資料を保有していないとしていた。また、渡良瀬川、鬼怒川及び小貝川において、それぞれ高津戸、石井及び黒子(図表6-2 参照)が基準地点に設定された理由についても同様の関係資料を保有していないとしていた。
ウ 河川整備計画
前記利根川水系河川整備基本方針の目標は22年度末現在での最終目標であるが、利根川における治水安全度が、利根川上流でおおむね1/30から1/40確率規模、利根川下流でおおむね1/10から1/20確率規模の洪水を流下させることができる程度であることなどからみて、この最終目標を達成するまでには多額の費用及び長期の事業期間を要することになる。このため、河川法に基づき、20年から30年程度の間に実施する河川の整備区間、河川の整備内容等を具体的に定めた河川整備計画を策定して、その当面の目標に向けて段階的に洪水調節施設等の整備を行うことが事業を実施する上で肝要であるが、前記のとおり利根川水系では、9年に河川法が改正され河川整備計画の策定に関する規定が定められてから13年以上が経過した22年度末現在においても河川整備計画が策定されていない状況である。
河川整備計画の策定に向けた検討状況についてみると、関東地方整備局は、国で管理する区間を5ブロック(〔1〕 利根川・江戸川、〔2〕 渡良瀬川、〔3〕 鬼怒川・小貝川、〔4〕 霞ヶ浦、〔5〕 中川・綾瀬川)に分割してブロックごとに学識経験者等の意見を聴く場(以下「学識者等の会議」という。)を開催(図表6-5
参照)している。そして、同局は、23年10月末現在、学識者等の会議等で出された意見を踏まえて、利根川水系河川整備計画の案の基礎となる原案の作成を行っているとしている。
ブロック | 学識者等の会議の開催状況 | ||||
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | |
利根川・江戸川 | 平成18年12月4日 | 18年12月18日 | 19年2月22日(合同開催) | 20年5月23日(合同開催) | 未定 |
渡良瀬川 | 18年11月29日 | 18年12月20日 | |||
鬼怒川・小貝川 | 18年12月4日 | 18年12月20日 | |||
霞ヶ浦 | 18年11月29日 | 18年12月18日 | |||
中川・綾瀬川 | 18年12月4日 | 18年12月18日 |
学識者等の会議は、20年5月に第4回の会議が開催されて以来3年以上開催されていないが、23年10月末現在で、利根川水系河川整備計画の案の基礎となる原案は、上記のとおり、関東地方整備局において作成中であるとしており、学識者等の会議に対してこの原案の提示は行われておらず、次回の会議の開催日程は未定となっている。このようなことから、利根川水系河川整備計画の本体が策定される時期についての見通しは立っていないが、同局は、河川整備計画の策定が遅れている理由について、流域内には1都5県のほか、市町村が150以上と関係自治体が多数あること、流域面積が広く河川を巡る関係者が様々であり、その意見が複雑であることなどによるとしている。
しかし、早期に河川整備計画で当面の目標を定めて事業を行うことは重要であり、利根川水系においては、20年から30年程度の間に実施する具体的な河川の整備内容等の目標が定められておらず、また、地域の意見を反映する手続を経て策定された河川整備計画がないまま治水事業が継続して実施されていて、9年の河川法の改正による新たな取組を取り入れた治水事業が実施されていない状況となっている。
このようなことから、関東地方整備局においては、利根川水系河川整備計画の案の基礎となる原案を早急に作成して学識者等の会議へ提示するなどして、利根川水系河川整備計画の策定に向けて関係自治体等と連絡及び調整を十分行うなどの取組をより促進させることが必要であると認められる。
また、利根川水系において関係する1都5県が管理する区間の河川整備計画の策定状況についてみると、各都県は、利根川水系の河川を複数の圏域やブロックに分割し、その圏域等ごとに河川整備計画を策定することとしていた。そして、1都5県の全28圏域等のうち20圏域等では河川整備計画が策定済みであるが、4県の8圏域等では策定されていなかった。
このように、利根川水系では、国が管理する区間も含めて計画的に河川の整備を実施すべき全ての区間において河川整備計画が策定されているわけではなく、河川整備計画間での内容の比較ができないことから、水系全体で河川整備計画の内容について整合が図られているか十分確認できない状況となっている。
4県の8圏域等の河川整備計画が策定されていない理由について、県が策定する河川整備計画を認可する立場である関東地方整備局では掌握していないとしているが、これら4県が管理する区間において策定されていない河川整備計画についても早急に河川整備計画が策定されることが必要であり、同局において、河川整備計画の策定に向けて4県との情報共有及び連携をより一層図る必要があると認められる。
前記のとおり、利根川において実施されている大規模な治水事業は計9事業であり、このうち洪水調節を事業の目的の一つとしている事業は6事業(湯西川ダム建設事業、八ッ場ダム建設事業、利根川上流ダム群再編事業、思川開発事業(南摩ダム)、渡良瀬遊水池調節池化工事、稲戸井遊水池調節池化工事)となっている。そして、これら洪水調節施設は、洪水を安全に流下させる点において河道及び堤防と密接に関係することから、流下目標の洪水規模に対して洪水調節施設、河道及び堤防の整備は連携して実施されることが肝要となる。しかし、利根川水系においては、河川整備計画が策定されていないため20年から30年程度の間に実施する具体的な河川の整備内容等の目標が明らかにされておらず、そのため洪水調節施設等の整備がその当面の目標に向かって連携して実施されているのか確認できない状況となっている。
上記について、具体的な整備状況を示すと次のとおりである。
(ア) 洪水調節施設として鬼怒川の支川である鬼怒川上流の湯西川に湯西川ダムが建設されている。湯西川ダムは鬼怒川の基準地点である石井の基本高水のピーク流量の一部を既設の五十里、川俣、川治各ダムとともに調節する効果を持つものである。そして、鬼怒川における河川整備の最終目標は、1/100確率規模の洪水を安全に流下させることであるとされており、石井地点の基本高水のピーク流量の一部を上記の4ダムで調節し、残りの洪水を河道に配分することとしている。
湯西川ダムとダム下流の鬼怒川における河道の整備の状況についてみると、洪水調節施設については湯西川ダムが完成すると既設ダムを合わせた計4ダムで最終目標である1/100確率規模の洪水時における目標の調節流量の全てを調節することが可能となるのに対し、河道については鬼怒川の治水安全度がおおむね1/10確率規模の洪水を流下できる程度であり、目標に対する整備の進捗度合いに大きな差がある状況となっている。このように、最終目標に対して河道の整備状況が大きく遅れている場合、特に最終目標に対応した規模で建設される大規模な洪水調節施設の直下では、この施設の洪水調節効果が河川の治水安全度に影響を与えると思料される。
国土交通省は、洪水調節効果を考慮して河道及び堤防の整備を実施しているとしているが、河川整備計画が策定されていないことから、20年から30年程度の間に上記のような影響を考慮して河道等の整備をどのように実施することとしているのかについては明確にされていない。
(イ) 洪水調節施設として渡良瀬遊水地及び稲戸井調節池が整備されている。渡良瀬遊水地及び稲戸井調節池の整備の最終目標は、渡良瀬遊水地は渡良瀬川等の洪水を、稲戸井調節池は鬼怒川及び小貝川の洪水をそれぞれ調節して利根川の計画高水流量に影響を与えないこととされているが、将来の最終目標となる計画貯留容量について、前記の基本方針には具体的に示されていない。
渡良瀬遊水地は、渡良瀬川の下流部に位置して、渡良瀬川等の洪水が利根川に合流する前に、渡良瀬川等の水位が一定以上になった場合に越流してくる洪水を一時貯留するものである。稲戸井調節池は、鬼怒川及び小貝川の下流部ではなく利根川に面しており、鬼怒川が利根川に合流する地点よりも下流部で、小貝川が利根川に合流する地点よりも上流部の位置に整備されている。鬼怒川及び小貝川の洪水は一旦利根川に合流するが、稲戸井調節池は利根川の水位が一定以上になった場合に利根川から越流する洪水を一時貯留するものであり、鬼怒川及び小貝川の洪水は利根川の計画高水流量を増加させないものとされている。そして、利根川の計画高水流量の計算上、渡良瀬川等及び小貝川から利根川への合流量は0m3
/sとされている。
上記のように、渡良瀬遊水地及び稲戸井調節池の貯留容量は渡良瀬川等並びに鬼怒川及び小貝川の洪水の量と密接な関係がある。一方、渡良瀬川、鬼怒川及び小貝川の治水安全度はおおむね1/10確率規模の洪水を流下できる程度である。国土交通省は、洪水調節施設の整備と河道及び堤防の整備とを連携して実施しているとしているが、河川整備計画が策定されていないため、20年から30年程度の間に渡良瀬遊水地及び稲戸井調節池の整備と渡良瀬川等及び鬼怒川等の河道等の整備をどのように連携して実施することとしているのかについては明確にされておらず、当面の間に必要な渡良瀬遊水地及び稲戸井調節池の貯留容量は不明である。
また、鬼怒川の洪水が利根川に合流すると鬼怒川と利根川の合流点から稲戸井調節池までの間は一時的に流量が増加することが想定されるが、その間における利根川の堤防の安全性が確保されているかについては、水理現象を説明できる関係資料を保有していないとしており、明確にできない状況となっていた。
なお、渡良瀬遊水地及び稲戸井調節池の過去(昭和47年以降)の洪水貯留実績(貯留可能容量に対する実際に貯留した最大量の割合)をみると、渡良瀬遊水地については最大で約49%であり、現在の貯留容量は過去の最大貯留量の倍の貯留能力を有している状況となっている。稲戸井調節池は、貯留可能となったのが平成21年であり、洪水の貯留実績はまだないが、同様の目的で整備された既設の二つの調節池を合わせた過去の洪水貯留実績は最大で約76%であることから、稲戸井調節池の貯留可能容量を勘案してこれら三つの調節池を合わせた洪水貯留実績を試算すると約63%となる。
このように、渡良瀬遊水地及び稲戸井調節池については、河川整備計画が策定されていないため当面の具体的な貯留容量の目標は明確ではないが、国土交通省は掘削して機能向上を図るとしており、今後も整備が行われる予定となっている。
(ウ) 利根川の堤防については、超過洪水対策として高規格堤防の整備を進めているが、利根川等の通常堤防については、定規断面が確保されていない箇所があったり、浸透に対する安全性が確保されていない箇所があったりするなど整備を必要とする箇所が多く残されている状況となっている(「5高規格堤防
」参照)。
また、利根川の治水安全度は、上流でおおむね1/30から1/40確率規模、下流でおおむね1/10から1/20確率規模の洪水を流下させることができるものであるが、これは堤防が最終完成形であるとの前提での評価であり、堤防の現状を考慮して算定されたものではない。そして、実際には堤防の中には定規断面が確保されていないなどの箇所があることから、実際の治水安全度は評価上の治水安全度より低い可能性がある状況となっている。
国土交通省は、堤防の現況を把握して流下能力が不足する箇所を優先的に整備しているとしているが、河川整備計画が策定されていないため、20年から30年程度の間に全堤防のどの箇所をいつまでに整備しようとしているのかなどの目標を明確にしないまま、堤防の整備が進められている。
したがって、利根川水系における治水事業において、前記のとおり20年から30年程度の間の整備の目標である河川整備計画を早期に策定して、その河川整備計画に基づき洪水調節施設、河道及び堤防の整備を連携して、計画的に行う必要があると認められる。
(3) 事業費の推移及び事業計画の変更等に伴う見直し等の状況
各事業の事業計画の変更等の状況は図表6-6 のとおりである。
事業名 | 事業開始年度 | 経過年数(平成22年度末現在) | 事業計画 | 平成22年度末までの執行済事業費(C) (億円) |
執行率 (C)/(B) (%) |
|||
変更回数 | 当初計画事業費 (A) (億円) |
平成22年度末現在の計画事業費(B) (億円) |
差引 (B)-(A) (億円) |
|||||
当初完成予定年度 (A') |
平成22年度末現在の完成予定年度 (B') |
延長期間 (年) (B')-(A') |
||||||
湯西川ダム建設事業 | 昭和57 | 29 | 2 | 880 | 1,840 | 960 | 1,424 | 77.4 |
昭和73(平成10) | 平成23 | 13 | ||||||
八ッ場ダム建設事業 | 昭和42 | 44 | 3 | 2,110 | 4,600 | 2,490 | 3,558 | 77.4 |
昭和75(平成12) | 平成27 | 15 | ||||||
吾妻川上流総合開発事業 | 平成4 | 19 | 1 | 847 | 847 | 0 | 26 | 3.2 |
不明 | 平成30 | - | ||||||
利根川上流ダム群再編事業 | 平成14 | 9 | 1 | 800 | 未定 | - | 31 | - |
不明 | 未定 | - | ||||||
思川開発事業(南摩ダム) | 昭和44 | 42 | 3 | 2,520 | 1,850 | △670 | 790 | 42.7 |
平成20 | 平成27 | 7 | ||||||
霞ヶ浦導水事業 | 昭和51 | 35 | 3 | 1,600 | 1,900 | 300 | 1,473 | 77.6 |
昭和68(平成5) | 平成22 | 17 | ||||||
渡良瀬遊水池調節池化工事 | 昭和45 | 41 | - | 167 | 700 | 533 | 424 | 60.7 |
不明 | 平成36 | - | ||||||
稲戸井遊水池調節池化工事 | 昭和45 | 41 | - | 53 | 438 | 385 | 365 | 83.4 |
不明 | 平成30 | - | ||||||
高規格堤防整備事業 | 昭和62 | 24 | - | - | - | - | 1,983 | - |
- | - | - |
計画事業費について、22年度末現在と当初とを比較すると、22年度末現在の計画事業費が当初の倍以上の額となっているのは、八ッ場ダム建設事業(22年度末現在の計画事業費は当初計画事業費2110億円の2.1倍、2490億円の増となる4600億円)及び湯西川ダム建設事業(22年度末現在の計画事業費は当初計画事業費880億円の2.0倍、960億円の増となる1840億円)の2事業となっていた。
事業計画の変更については、3回変更している事業が3事業(八ッ場ダム建設、思川開発(南摩ダム)、霞ヶ浦導水各事業)、2回変更している事業が1事業(湯西川ダム建設事業)見受けられた。
そして、事業期間についてみると、22年度末現在で当初の事業期間を10年以上延長し、かつ事業開始から30年以上が経過している事業は、八ッ場ダム建設事業(延長期間15年、経過年数44年)と霞ヶ浦導水事業(延長期間17年、経過年数35年)の2事業となっていた。
各事業の直近の事業再評価の実施状況は図表6-7 のとおりである。
事業名 | 事業再評価実施年度 | 総便益(B) | 総費用(C) | 費用便益比 (B/C) |
便益等算定方法 |
湯西川ダム建設事業 | 平成22 | 億円 6,575 |
億円 1,531 |
4.3 | 各事業単位で算定 |
八ッ場ダム建設事業 | 平成20 | 10,589 | 3,072 | 3.4 | |
吾妻川上流総合開発事業 | 平成20 | 729 | 490 | 1.5 | |
利根川上流ダム群再編事業 | 平成18 | - | - | - | |
思川開発事業(南摩ダム) | 平成19 | 2,079 | 1,614 | 1.3 | |
霞ヶ浦導水事業 | 平成19 | 1,869 | 1,584 | 1.2 | |
渡良瀬遊水池調節池化工事 | 平成19 | 692,145 | 27,359 | 25.3 | 河川改修事業全体で算定 |
稲戸井遊水池調節池化工事 | |||||
高規格堤防整備事業 |
注(1) | 八ッ場ダム建設、吾妻川上流総合開発、利根川上流ダム群再編、思川開発(南摩ダム)、霞ヶ浦導水各事業については平成23年度に事業再評価が実施されている(事業別の検査結果及び別表参照)。 |
注(2) | 平成13年度に実施された利根川上流ダム群再編事業の新規事業採択時評価における費用便益比は4.7(総便益32億円、総費用7億円)となっている。 |
上記のとおり、湯西川ダム建設事業等6事業は事業ごとに総費用と総便益を算定し費用便益比を算出しているのに対し、渡良瀬遊水池調節池化工事、稲戸井遊水池調節池化工事及び高規格堤防整備事業は、事業等ごとに費用便益比を算出しているのではなく、利根川・江戸川直轄河川改修事業全体として総費用及び総便益を算定し費用便益比を算出している。すなわち、総費用は利根川及び江戸川の直轄河川改修事業費全体の額とし、総便益は利根川及び江戸川の上流から下流まで、右岸左岸をブロック分けし、流量規模別に事業を実施した場合と実施しない場合の氾濫解析を実施しそれぞれの被害額を求め、その差分の合計額を便益としている。
しかし、大規模な治水事業は多額の事業費を投下して長期間にわたって実施される事業であり、個別の事業の費用対効果を正確に把握することは事業を継続して実施するかどうかを判断するための重要な指標になる。
このようなことから、大規模な治水事業については、当該事業を実施する河川における河川改修事業全体を対象として費用便益比を算出するだけではなく、事業等ごとに総費用及び総便益を算定し各々の費用便益比を算出して、事業を評価することを検討する必要があると認められる。