会計名及び科目 | 道路整備特別会計 (項)地方道路整備臨時交付金 |
部局等の名称 | 三重県 |
補助の根拠 | 道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号) |
事業主体 | 三重県 |
補助事業 | 伊勢南島線緊急地方道路整備 |
補助事業の概要 | 道路を新設するため、昭和63、平成元両年度に擁壁、盛土等を施工するもの |
事業費 | 93,900,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 51,645,000円 |
不当と認める事業費 | 16,423,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 9,032,650円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、三重県が、県道伊勢南島線の緊急地方道路整備事業の一環として、度会郡南島町道方地区に幅員8mの道路を新設するため、昭和63、平成元両年度に、もたれ式コンクリート擁壁(注1) (以下「擁壁」という。)の築造、盛土等を工事費93,900,000円(国庫補助金51,645,000円)で実施したものである。このうち、擁壁は、谷などの在来の地盤の上に盛土した箇所の盛土法面の安定を図るため、法面の法尻部に築造したものであり、1号擁壁として延長25.5m(高さ2.3mから10m)、2号擁壁として延長28.7m(高さ2.18mから11.02m)を施工していた(参考図参照) 。
上記擁壁の設計の基礎となっている設計計算書についてみると、同県は、擁壁の背面を切土部として、滑動、転倒、基礎地盤の支持力に対する安定計算を行っていた。そして、その結果が次のとおりとなったことから、これらの擁壁は、安定計算上地震時においても安全であるとしていた。
(ア) 滑動に対する安定については、その安全率が、1.31以上となっていて、許容値1.2を上回っている。
(イ) 転倒に対する安定については、水平荷重及び鉛直荷重の合力の作用位置が転倒に対して安全である範囲(底版幅の中央3分の2の幅の範囲)に入っている。
(ウ) 基礎地盤の支持力に対する安定については、地盤反力度(注2) は最大でも35.75t/m2 となっていて、地盤の許容支持力度45t/m2 を下回っている。
2 検査の結果
検査の結果、上記の安定計算では擁壁の背面を切土部としていたが、これは誤りであり、実際に擁壁を設置した箇所は、前記のとおり、在来の地盤の上に土を盛った盛土部であった。そして、擁壁の背面が盛土部である場合は、切土部の場合に比べ、背面の土量のうち土圧計算の対象となる範囲が大きくなり、擁壁に対し土圧が大きく作用することとなる。そこで、擁壁の背面を盛土部として、改めて安定計算を行うと、1号擁壁及び2号擁壁の延長計54.2mの擁壁のうち擁壁の高さが8m以上(高さが8m以上の擁壁については、安定計算に当たって、地震時の検討を行うこととされている。)である延長22.3m(1号擁壁延長7.7m、2号擁壁延長14.6m)の区間の擁壁については、次のとおり、地震時においては、その安定が確保できないものとなっている。
(ア) 滑動に対する安定の安全率は、許容値1.2を大幅に下回る0.50から0.80となっている。
(イ) 水平荷重及び鉛直荷重の合力の作用位置が底版のつま先部より前にある計算となり、転倒に対して安全である範囲から大幅に逸脱している。
(ウ) 基礎地盤の支持力に対する安定については、上記(イ)の計算結果から、擁壁の荷重を底版のつま先部の地盤のみで支持することとなるため、地盤反力度が大きくなり、地盤の許容支持力度を大幅に上回っている。
したがって、本件擁壁のうち延長22.3mの区間の擁壁(工事費相当額16,423,000円)は、設計が適切でなかったため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額9,032,650円が不当と認められる。
(注1) もたれ式コンクリート擁壁 コンクリート擁壁を背面に傾けたものであり、土圧には自重により抵抗するが、単独では自立できない擁壁をいう。
(注2) 地盤反力度 構造物を介して地盤に力を加えたとき、地盤にはそれに抵抗する力が発生するが、この単位面積当たりの力を「地盤反力度」という。この地盤反力度がその地盤の許容支持力度を超えていなければ、構造物は基礎地盤の支持力に対して安定した状態にある。