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  • 平成2年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 建設省|
  • 不当事項

補助金


(216)(217) 道路改良事業の実施に当たり、設計が適切でなかったためボックスカルバートが不安定な状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)道路事業費
部局等の名称 山口県
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備緊急措置法(昭和33年法律第34号)
事業主体 山口県
補助事業 山口市県道防府佐山線道路改良
補助事業の概要 道路を新設するため、平成元、2両年度に、第2工区(1)及び第3工区(2)においてボックスカルバート、土工等を施工するもの
事業費 (1) 41,272,100円
(2) 34,358,740円
75,630,840円
上記に対する国庫補助金交付額 (1) 21,667,852円
(2) 18,038,338円
39,706,190円
不当と認める事業費 (1) 23,951,000円
(2) 11,788,000円
35,739,000円
不当と認める国庫補助金交付額 (1) 12,574,275円
(2) 6,188,700円
18,762,975円

 上記の補助事業において、ボックスカルバートの設計が適切でなかったため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額18,762,975円が不当と認められる。

1 補助事業の概要

 この補助事業は、山口県が、県道防府佐山線道路改良事業の一環として、山口市大字佐山地区にバイパス道路を新設するため、平成元、2両年度に、第2工区及び第3工区においてボックスカルバート(以下「カルバート」という。)、土工等を、それぞれ工事費41,272,100円(国庫補助金21,667,852円)及び工事費34,358,740円(国庫補助金18,038,338円)で実施したものである。

 このうち、カルバートは、本件道路の新設に伴い遮断される農道及び水路の機能を復旧するために両工区において築造されたもので、同県では、それぞれ次のような設計により施工していた(参考図参照)

(1) 第2工区

 本件カルバート(内空断面の幅4.0m・高さ3.5m、延長29.9m)の頂版の下面側に配置する主鉄筋については、設計計算書によれば、最大となる中央部の曲げモーメントが11.10t・mであるとして、径13mmの鉄筋を12.5cm間隔で配置すれば応力計算上安全であるとしていた。また、配筋図では、同主鉄筋について径13mmの鉄筋を設計計算書とは異なった15cm間隔で配置することとして、これにより施工していた。

(2) 第3工区

 本件カルバート(内空断面の幅3.5m・高さ3.6m、延長23.0m)の頂版の下面側、底版の上面側及び両側壁の外面側に配置する主鉄筋については、設計計算書によれば、道路中央部の盛土高である2.6mをカルバートの上部の盛土高として計算し、径13mmの鉄筋を12.5cm間隔で配置すれば応力計算上安全であるとしていた。また、配筋図では、同主鉄筋について径13mmの鉄筋を設計計算書とは異なった15cm間隔で配置することとして、これにより施工していた。

2 検査の結果

 検査の結果、それぞれ次のように誤っていて、主鉄筋に生ずる引張応力度(注1) (常時)(注2) が許容引張応力度(注1) を上回っている。

(1) 第2工区

 設計計算書で、主鉄筋の必要量を算出するために用いる曲げモーメントは実際には最大となる頂版中央部で21.79t・mとなるのに、誤って頂版中央部以外の位置における曲げモーメントの値を採り、11.10t・m としていた。さらに、配筋図を作成する際に、同主鉄筋の間隔を誤って15cmとしていた。

 この結果、本件カルバートの頂版の下面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)は3,748kg/cm2 となり、許容引張応力度1,600kg/cm2 を大幅に上回っている。

(2) 第3工区

 設計計算書で、主鉄筋の必要量を算出するために用いるカルバートの上部の盛土高は最大の盛土高により計算することとなっており、この場合最大の盛土高は2.8mであるのに、誤って道路中央部の盛土高2.6mを用いて計算していた。さらに、配筋図を作成する際に、同主鉄筋の間隔を誤って15cmとしていた。

 この結果、本件カルバートの頂版の下面側、底版の上面側及び両側壁の外面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)は1,809kg/cm2 、1,763kg/cm2 及び2,163kg/cm2 となり、許容引張応力度1,600kg/cm2 を上回っている。

 したがって、上記(1)及び(2)のとおり、第2工区及び第3工区で施工された本件カルバート(工事費相当額 第2工区23,951,000円、第3工区11,788,000円、計35,739,000円)は、いずれも設計が適切でなかったため不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額12,574,275円(第2工区)及び6,188,700円(第3工区)、計18,762,975円が不当と認められる。

(注1)  引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(注2)  常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(参考図)

(参考図)

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