ページトップ
  • 平成6年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 建設省|
  • 不当事項

補助金


(193) 積雪寒冷地域道路事業の実施に当たり、施工が設計と相違していたため、スノーシェッドの受台が不安定な状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)道路事業費
部局等の名称 岩手県
補助の根拠 積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法(昭和31年法律第72号)
事業主体 岩手県
補助事業 一般国道397号大岩地区積雪寒冷地域道路
補助事業の概要 冬期間の交通を確保するため、平成4、5両年度に、スノーシェッドの受台を施工するもの
事業費 108,980,180円
上記に対する国庫補助金交付額 65,388,108円
不当と認める事業費 11,626,000円
不当と認める国庫補助金交付額 6,975,600円
 上記の補助事業において、スノーシェッドの谷側受台の基礎杭の施工が設計と相違していたため、受台が不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額6,975,600円が不当と認められる。

1 補助事業の概要

 この補助事業は、岩手県が、一般国道397号大岩地区積雪寒冷地域道路事業の一環として、胆沢郡胆沢町大岩地区において、冬期間の交通を確保するため、平成4、5両年度に、スノーシェッド(注1) の谷側受台4ブロック(延長48m)の築造等を工事費108,980,180円(国庫補助金65,388,108円)で実施したものである。
 このうち、受台1ブロック(延長12m)については、谷側の斜面を水平に切土した後、基礎杭(直径2m、杭長4.7mの深礎杭)(注2) 2本をこの切土面から4.5m根入れし、その上に基礎コンクリート(厚さ10cm)、底版(厚さ1.5m)、縦壁(高さ3.86mから4.50m)と順次コンクリートを打設して施工することとしていた(参考図参照)
 そして、この設計に当たっては、基礎杭を杭頭から20cmを残して切土面から4.5m根入れすれば、杭の前面地盤にかかる水平力(注3) が、積雪時、雪崩時、地震時のいずれにおいても、それぞれの許容水平支持力(注3) を下回ることから、安定計算上安全であるとしていた。

(注1)  スノーシェッド 積雪、雪崩等により道路の通行が不能となるのを防ぐため、屋根を設けて道路を覆う構造物

(注2)  深礎杭 建設機械の搬入が困難な傾斜地において、所定の地盤まで掘削した後、掘削孔に鉄筋を組み立て、コンクリートを打設して築造する鉄筋コンクリート杭

(注3)  水平力・許容水平支持力 「水平力」とは、土圧等の水平方向に働く力をいう。その数値が設計上許される上限を「許容水平支持力」という。

2 検査の結果

 検査したところ、谷側の斜面を水平に切土する際に、誤って余分に切土したため、切土面が設計に比べて0.9mから1.4m低くなっていた。このため、前記2本の基礎杭のうち1本は、切土面から3.1mしか根入れしておらず、残りの1.6mの部分が地上に突出したままその上に基礎コンクリート、底版及び縦壁を施工している状況であった。
 このように、切土面が低くなって基礎杭の根入れが設計に比べて不足すると、杭前面の地盤と杭面の接する面積が減少して許容水平支持力が小さくなり、また、受台背面に作用する土圧が大きくなる(参考図参照)
 このため、上記の基礎杭については、その前面地盤にかかる水平力が、積雪時において56t/本、雪崩時において89t/本、地震時において139t/本となり、それぞれの許容水平支持力40t/本、61t/本、61t/本を大幅に上回っていて、安定計算上安全な範囲を超えている。
 したがって、本件受台(工事費相当額11,626,000円)は、基礎杭の施工が設計と相違していたため、不安定な状態になっており、これに係る国庫補助金相当額6,975,600円が不当と認められる。

(参考図)

(参考図)

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 1

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 2

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 3

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 4

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 5

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 6

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 7

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 8

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 9

補助金 | 平成6年度決算検査報告 | 10