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  • 平成9年度|
  • 第2章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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  • 不当事項

補助金


(197) 林道開設事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)林野庁 (項)林道事業費

(項)森林保全整備事業費
部局等の名称 林野庁
補助の根拠 森林法(昭和26年法律第249号)
事業主体 岐阜県
補助事業 民有林林道開設
補助事業の概要 橋りょうを新設するため、平成8、9両年度に、橋台、上部工等を施工するもの
事業費 67,508,200円
上記に対する国庫補助金交付額 33,754,100円
不当と認める事業費 12,000,013円
不当と認める国庫補助金交付額 6,000,006円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、岐阜県が、民有林林道開設事業の一環として、益田郡下呂町御厩野地区の渓流に橋りょう(橋長10.54m、幅員5m)等を新設するため、平成8、9両年度に、逆T式橋台2基の築造、プレストレストコンクリート桁(以下「PC桁」という。)の製作、架設等を工事費67,508,200円(国庫補助金33,754,100円)で実施したものである。
 このうち、橋台とPC桁との接点である支承部については、次のとおり、設計図面を作成し、これにより施工していた(参考図参照)

(ア) 左岸側を温度変化等によるPC桁の伸縮に追従できる可動支承部、右岸側を橋台とPC桁とを一体化する固定支承部とし、両橋台とPC桁との間に支承板を設置する。

(イ) 地震による落橋を防止するなどのため、両側の橋台にアンカー鉄筋の下部を埋め込む。

(ウ) その上部に、左岸側の可動支承部においては小判形断面(内径66.5mm×29mm)のアンカーキャップを、右岸側の固定支承部においては円形断面(内径35.7mm)のアンカーキャップを、それぞれかぶせたうえ、PC桁とPC桁との間の間詰コンクリート部分に埋め込む。

2 検査の結果

 検査したところ、橋台の設計の基礎となっている設計計算書によれば、左岸側を固定支承部(橋台底面幅3.65m)、右岸側を可動支承部(橋台底面幅3.3m)として橋台の安定計算及び応力計算を行った結果、橋台底面の単位面積当たりの鉛直力(注1) が地盤の許容支持力度(注1) を下回っていること、縦壁の主鉄筋に生ずる引張応力度(注2) が許容引張応力度(注2) を下回っていることなどから安全であるとしていた。しかし、設計図面を作成する際、誤ってこれとは逆に左岸側を可動支承部、右岸側を固定支承部とし、前記のとおり施工していた。
 このため、誤って固定支承部とした右岸側橋台については、地震時において、橋台に作用する水平力が、設計計算書において可動支承部として計算していた数値より増加することになり、改めて安定計算等を行うと、次のような結果となる。

(ア) 橋台底面の先端に生ずる単位面積当たりの鉛直力は60.6tf/m2 となって、地盤の許容支持力度45tf/m2 を大幅に上回っている。

(イ) 縦壁の主鉄筋に生ずる引張応力度が2,831kgf/cm2 となって、許容引張応力度2,700kgf/cm2 を上回っている。

 したがって、本件橋りょうは設計が適切でなかったため、右岸側橋台及びこれに架設されたPC桁等(これらの工事費相当額12,000,013円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相額6,000,006円が不当と認められる。

(注1)  鉛直力・地盤の許容支持力度 「鉛直力」とは、上部工及びく体の自重等が地盤に対し鉛直方向に働く力をいい、鉛直力を地盤が支えることのできる設計上許される単位面積当たりの限度を「地盤の許容支持力度」という。

(注2)  引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(参考図)

(参考図)

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