会計名及び科目
|
一般会計 (組織)農林水産本省
|
||
(項)北海道農業生産基盤整備事業費
|
|||
部局等の名称
|
農林水産本省
|
||
補助の根拠
|
土地改良法(昭和24年法律第195号)
|
||
補助事業者
(事業主体)
|
北海道
|
||
補助事業
|
畑地帯総合農地整備
|
||
補助事業の概要
|
農道を整備するため、平成16年度に橋りょう工、護岸工等を施工するもの
|
||
事業費
|
44,719,500円
|
||
上記に対する国庫補助金交付額
|
23,254,140円
|
||
不当と認める事業費
|
6,655,071円
|
||
不当と認める国庫補助金交付額
|
3,460,636円
|
この補助事業は、北海道が、畑地帯総合農地整備事業の一環として、余市郡赤井川村赤井川地区において農道を整備するため、平成16年度に、橋りょう工、護岸工等を工事費44,719,500円(国庫補助金23,254,140円)で実施したものである。
このうち護岸工(直高2.5m、延長計54m)は、橋りょうの新設に伴い撤去される既存の河川の護岸に代わるものとして、両岸の橋台前面の周辺に環境保全型ブロック(環境に配慮したコンクリート製の工場製品。以下「ブロック」という。)を5段積み上げ、各ブロックの上下左右をボルト等で相互に結合し、ブロックの中に現地発生材等の中詰材を詰めることにより、植生機能等を持たせた護岸を築造するものである(参考図1参照)
。
そして、本件護岸は、この中詰材により所要の重量を確保することとして転倒や滑動等に対する安定計算を行い、安全であるとして、これにより施工していた。
本件工事について、契約図書等により設計内容を、現地調査等により施工状況をそれぞれ検査したところ、護岸工の施工が、次のとおり適切でなかった。
本件工事の発注に当たり、北海道は、ブロックに複数の種類の工場製品があることから、契約図書では参考図を示すにとどめ、実際に使用するブロックについては、請負業者に製品カタログ等を添付した材料使用承諾願を提出させることとしていた。この手続により実際に使用することとしたブロックは、1個当たり高さ0.5m、長さ1.65m、幅0.75mで、前面にスリットが12孔設けられているものなどであった。そして、上記の製品カタログ等によれば、河川の流水等によりブロックの前面のスリットや上側の露出面(以下、これらを併せて「スリット等」という。)から中詰材が流出しないように、ブロック前面等に粒径の大きな石材を充てんする必要があるとされていた。
しかし、本件護岸工の施工において、請負業者は、契約図書に現地発生材を中詰材とすると記載されていたことから、現地のシルト層から採取した粒径が非常に細かい土砂を中詰材として使用し施工していた。
このため、ブロック内部の中詰材が河川の流水等によってスリット等から流出するものとなっており、現に、18年5月の会計実地検査時点において、既に多数のブロックにおいて中詰材の一部がスリット等から流出しており、この中には、24.5%の中詰材が流出しているブロックも見受けられる状況であった。
そこで、本件護岸工について、ブロックの中詰材が流出した場合における転倒及び滑動に係る安定計算を行うと、次のとおりとなる。
ア 転倒に対する安定については、河川の流水によりブロックに浮力を生ずる場合に、より安定を欠くこととなる。この場合には、全体の28.56%以上の中詰材が流出すると、水平荷重及び鉛直荷重の合力の作用位置が、安全な範囲の上限値0.250mを逸脱することとなる(参考図2の〔1〕参照)
。また、河川の流水がなくブロックに浮力を生じない場合には、全体の46.27%以上の中詰材が流出すると、上記荷重の合力の作用位置が安全な範囲の上限値0.125mを逸脱することとなる(参考図2の〔1〕参照)
。
イ 滑動に対する安定については、ブロックに浮力を生じない場合には、全体の60.43%以上の中詰材が流出すると、下から2段目のブロックの安全率が許容値である1.0を下回ることとなる(参考図2の〔2〕参照)
。
このような事態が生じていたのは、請負業者が製品カタログ中の中詰材の粒径に関する記載内容についての理解が十分でないまま施工していたことにもよるが、これに対する北海道の監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件護岸工(工事費相当額6,655,071円)は、施工が適切でなかったため、中詰材の流出の進行に伴って護岸そのものが転倒等するおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額3,460,636円が不当と認められる。
(ブロック概念図)
(参考図2)
(浮力が生じない場合)