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補助金


(293) 復旧治山事業の実施に当たり、鋼製土留工の設計が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目
国有林野事業特別会計(治山勘定) (項)治山事業費
部局等の名称
林野庁
補助の根拠
森林法(昭和26年法律第249号)
補助事業者
(事業主体)
和歌山県
補助事業
復旧治山
補助事業の概要
荒廃山地を復旧整備し、災害の防止、軽減を図るため、平成16年度に土留工等を施工するもの
事業費
15,697,500円
 
上記に対する国庫補助金交付額
7,848,750円
 
不当と認める事業費
13,125,688円
 
不当と認める国庫補助金交付額
6,562,844円
 

1 補助事業の概要

 この補助事業は、和歌山県が、復旧治山事業の一環として、東牟婁郡本宮町(平成17年5月1日以降は田辺市)野竹字定夕地内において、荒廃山地を復旧整備し、災害の防止、軽減を図るため、16年度に土留工2基及び仮設工を工事費15,697,500円(国庫補助金7,848,750円)で実施したものである。
 このうち土留工2基(延長計42.2m、高さ1.5m〜3.0m)は、山腹斜面に堆積した不安定土砂の滑落を抑止することを目的として、次のように設計し、これにより施工するなどしていた(参考図1参照)
ア 土留工は、基礎部に不同沈下などの地盤の変形が予想されたため、地盤の変形に対応できるよう、鋼製の枠組みの内部に中詰材として石材等を詰める構造の鋼製土留工とする(参考図2参照)
イ 鋼製土留工の中詰材については、現地発生の土砂(粘性・礫質土)を使用する。

2 検査の結果

 本件工事について、設計図書等及び現地の状況を検査したところ、鋼製土留工の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、鋼製土留工の中詰材には通常、玉石や割栗石を使用するが、本件のように土砂を使用する場合には、「鋼製砂防構造物設計便覧」(財団法人砂防・地すべり技術センター鋼製砂防構造物委員会編集)によれば、設計に当たって、吸出し防止材を利用するなどして、中詰材の確実な流出防止対策を講じなければならないとされている。
 しかし、同県では、本件鋼製土留工について、上記のような流出防止対策を講ずることなく設計し、これにより施工していた。
 このため、本件鋼製土留工は、中詰材である土砂が流出することにより内部に空げきが生じ、その目的としている不安定土砂の滑落を抑止する機能が損なわれるおそれがあるものとなっていた。現に18年2月の会計実地検査時において、鋼製土留工2基の前面の数箇所から、雨水等の影響により中詰材が流出している状況であった。
 このような事態が生じていたのは、同県において、鋼製土留工の設計に当たり、中詰材の確実な流出防止対策についての検討が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件鋼製土留工等(工事費相当額13,125,688円)は設計が適切でなかったため、その機能が損なわれるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額6,562,844円が不当と認められる。

(参考図1)

土留工の概念図

土留工の概念図

(参考図2)

鋼製土留工構造図

鋼製土留工構造図

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