会計名及び科目
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一般会計 (組織)水産庁 (項)漁港施設災害復旧事業費
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部局等の名称
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岡山県
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補助の根拠
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公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)、離島振興法(昭和28年法律第72号)
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補助事業者
(事業主体)
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岡山県
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補助事業
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漁港施設災害復旧
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補助事業の概要
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被災した防波堤を復旧するため、平成16、17両年度にコンクリート製波止板を製作、設置等するもの
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事業費
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5,557,650円
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上記に対する国庫補助金交付額
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4,446,120円
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不当と認める事業費
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3,033,000円
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不当と認める国庫補助金交付額
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2,426,400円
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この補助事業は、岡山県が、漁港施設災害復旧事業の一環として、備前市日生町(平成17年3月21日以前は和気郡日生町)頭島地内において、16年8月の台風により被災した頭島漁港の防波堤を原形に復旧するため、16、17両年度にコンクリート製波止板の製作、設置等を工事費5,557,650円(国庫補助金4,446,120円)で実施したものである。
上記の工事は、防波堤の上部工の下側を通過しようとする波浪を止め、防波堤背後の静穏度を確保するために設置された波止板296枚のうち、破損したコンクリート製波止板(長さ2.4mから3.2m、幅50cm、厚さ12cm)17枚を新たに製作、設置等するものである(参考図参照)
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同県では、本件工事の工事用図面の作成等の業務を設計業者に委託して工事の契約図面を作成していた。
本件工事について、契約図面等を検査したところ、設置されたコンクリート製波止板の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、同県では、コンクリート製波止板にはあらかじめ工場で生産された汎用性のある製品があり、これを使用すれば原形に復旧できると誤認して、波力に対する応力計算を委託業務に含めていなかった。このため、設計業者は、コンクリート製波止板の構造について応力計算を行っていなかった。
また、施工業者は汎用性のある製品がなかったことから、同県の承諾を受け、上記の応力計算がなされないまま設置時等のひび割れ対策のための鉄筋を配置したコンクリート製波止板を製作し、設置していた。
しかし、「漁港・漁場の施設の設計の手引」(水産庁監修)によれば、波止板の設計に当たっては、波浪等による水平力等の外力に対して安定するものでなければならないとされていることから、本件工事で設置したコンクリート製波止板については波力に対する応力計算を行った上でその構造を決定すべきものであった。
そこで、実際に設置されたコンクリート製波止板について応力計算を行うと、次のとおり、応力計算上安全な範囲を超えている。
ア コンクリートに生ずる曲げ圧縮応力度(注1)
が20.40N/mm2
から37.43N/mm2
となり、許容曲げ圧縮応力度(注1)
9N/mm2
を大幅に上回っている。
イ 鉄筋に生ずる引張応力度(注2)
が381.87N/mm2
から700.65N/mm2
となり、許容引張応力度(注2)
176N/mm2
を大幅に上回っている。
このような事態が生じていたのは、同県において、本件コンクリート製波止板についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件コンクリート製波止板17枚(工事費相当額3,033,000円)は設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額2,426,400円が不当と認められる。
(注1) | 曲げ圧縮応力度・許容曲げ圧縮応力度 「曲げ圧縮応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち圧縮側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ圧縮応力度」という。
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(注2) | 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
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防波堤概念図