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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成27年3月

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について

第3 検査の結果に対する所見

1 検査の結果の概要

会計検査院は、東日本大震災からの復興等に対する事業に関する各事項について、合規性、効率性、有効性等の観点から、①被災及び被災に対する復旧・復興の状況等はどのようになっているか、②被災した地方公共団体における復旧・復興事業の実施状況はどのようになっているか、③復興特別区域制度による復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画に基づく特例等は、有効に活用されているか、④全国向けの復興関連基金事業に係る基金の使途は適切か、使用見込みのない余剰金が滞留するなどしていないか、⑤原子力災害からの復興再生について、各府省庁、福島県等が実施する各種施策は円滑かつ迅速に実施されているか、⑥復興特会予算はどのような経費に配分されているか、その財源はどのように確保されているかなどに着眼して、検査を実施した。

会計検査院は、23年度から25年度までの東日本大震災復興関係経費に係る予算が措置された16府省庁等を対象として引き続き検査を実施するとともに、東日本大震災による甚大な被害を受けた東北3県及び全国向けの復興関連基金事業を実施している17都県を対象として会計実地検査を行った。

検査に当たっては、調書及び関係資料を徴したり担当者等から説明を聴取したりするとともに、公表されている資料等を基に調査分析を行った。

(1) 東日本大震災に伴う被災等の状況

ア 被害等の状況
(ア) 人的被害、建物被害等の状況

死者、行方不明者等の人的被害は、死者15,889人、行方不明者2,601人(26年9月11日警察庁公表)等のほか、震災関連死の死者数が3,089人となっている。また、建物への被害は、全壊127,367戸、半壊273,335戸、一部破損744,539戸等(26年9月11日警察庁公表)となっている(リンク参照)。

(イ) 避難及び住民の減少等の状況

a 避難の状況

避難所は26年3月末までに全て解消されたが、同年9月末現在、親族・知人宅や応急仮設住宅等で生活している避難者は、全国で24万3040人(25年6月末現在約29万8000人(25年報告))に上っていて、全国の避難者数に占める東北3県の避難者数の割合は77.4%とその大半を占めている。また、福島県では、福島第一原発の事故等により、4万6645人が他県等での長期の避難生活を余儀なくされている(リンク参照)。

b 被災地の住民の減少等の状況

特定被災自治体が所在する11道県の人口は、10道県で減少しており、特に福島県の東日本大震災発生後の人口減少が他の道県に比べて著しく、原子力災害による避難の長期化等がまちづくりなどに深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。また、東北3県の年少人口(0歳~14歳)及び生産年齢人口(15歳~64歳)は減少しており、高齢化が進んでいる(リンク参照

(ウ) 被災者への支援の状況

a 応急仮設住宅の状況

応急仮設住宅は、25年4月1日現在、53,537戸が完成している。また、国は、25年4月に地域の実情を踏まえて、応急仮設住宅の供与期間を延長する必要がある場合は、更に延長できることとした(リンク参照)。

b 被災者生活再建支援金の支給状況

26年3月末までの被災者生活再建支援金の支給世帯数及び支給額は、基礎支援金189,869世帯、1514億余円(国庫補助金相当額1211億余円)、加算支援金111,216世帯、1379億余円(同1103億余円)、計延べ301,085世帯、2894億余円(同2315億余円)となっている(リンク参照

(エ) 東北3県の公共土木施設等、文教施設及び福祉施設の被災及び復旧等の状況

東北3県が実施している公共土木施設等の被災及び復旧の状況について、各県から徴した調書を基に、東北3県間で比較可能な海岸、港湾、漁港、河川、道路等の復旧事業に限定して集計すると、道路等は各県とも80%以上の施設が復旧し、河川も復旧が進んでいるが、漁港については各県とも50%以下となっているなど復旧率が低くなっている。東北3県が実施している文教施設及び福祉施設の被災及び復旧の状況について、公共土木施設等と同様に学校等及び医療機関等の復旧事業に限定して集計すると、各県ともおおむね復旧は進捗しているが、被災の状況や地域によって復旧の状況等に差が見受けられる。そして、各県の地区のうち公共土木施設等の復旧事業等や市街地復興土地区画整理事業等が同時に実施されている地区においては、他の事業の進捗に影響を受けているものが見受けられた。また、経済・産業等の復興の状況については、各県とも県全域において事業所数及び従業者数のいずれも減少しているが、地域別にみるとその減少幅に著しい差違が生じている(リンク参照)。

(オ) 東日本大震災における被害額の推計

a 推計の状況

国は、官民全ての建築物等のストックの被害額について推計を行うこととした。そして、内閣府は、各省庁及び被災9県に依頼するとともに、自らも被害額の推計を実施した。被害額には間接被害及び原子力災害による被害は含めず、直接被害により生じた額のみを推計することとし、再調達価格や減価償却後の価格の積み上げのほか、他の手法による推計も許容した。また、推計する時点で把握していない被害分についても何らかの方法により必ず推計を行うこととした。そして、内閣府は、これらを取りまとめて、23年6月に公表している。施設等別の被害額は、建築物等10兆4384億余円、ライフライン施設1兆3458億余円、社会基盤施設2兆1669億余円、農林水産関係施設1兆8778億余円、その他の施設1兆0867億余円で、その合計は約16.9兆円となっている。

主な施設等の被害額の推計方法についてみると、住宅等、民間企業の土地・建築物・機械設備等、公共土木施設等の被害額は再調達価格で算出しているが、電気に係る被害額は再調達価格によるものと減価償却後の価格によるものとが混在したものになっていた(リンク参照)。

b 各府省庁等による被害額の推計に対する検査結果

内閣府の推計は、被害の全容を把握するよう努めたものであったが、被害額に推計の対象とならないものなどを一部含めていたり、被害額に反映していなかったりしていたものが見受けられた(リンク参照

c 内閣府の推計の活用

23年7月に決定された復興基本方針では、復興期間を10年間とし、復興需要の高まる当初の5年間を「集中復興期間」と位置付けるとともに、集中復興期間に実施すると見込まれる施策・事業の事業規模については、国・地方を合わせて、少なくとも19兆円程度が見込まれるとされた。復興庁によれば、当時の東日本大震災復興対策本部は、この19兆円については、阪神・淡路大震災の際の復旧・復興費用(9.2兆円)を参考にして、同震災の被害推計額(9.9兆円)と今回の内閣府の推計額(16.9兆円)との比率(1.7倍)を勘案するなどして救助・復旧に必要となる費用を10.4兆円、復興に要する費用を5.3兆円とそれぞれ算出し、この額にリーマンショック以降の金融危機に際して実施した中小企業に対する資金繰り支援と同程度の2.5兆円及び阪神・淡路大震災の際に講じられた全国の緊急防災・減災事業と同程度の1.3兆円を加えたものであったとしている(リンク参照

イ 国の復旧・復興への取組
(ア) 住宅再建・復興まちづくりの加速化措置

復興庁が25年2月22日に設置した「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」は、26年1月までに、土地等の取得手続の迅速化、技術者・技能者の確保、資材の円滑な確保、入札不調等に関して市場実態を的確に反映した予定価格の設定、被災者が住まいの確保について見通しを持てるようにするための災害公営住宅及び民間住宅の宅地等の整備に関する工程の四半期ごとの開示等の加速化措置を公表している(リンク参照)。

(イ) 東日本大震災の復旧・復興に係る事業規模及び復興財源フレーム

a 19兆円フレーム

国は、23年7月29日に決定した復興基本方針に基づき、集中復興期間に係る事業費と財源の見込みを19兆円程度の規模とする19兆円フレームを示した。事業規模は、集中復興期間に実施すると見込まれる施策・事業として、少なくとも19兆円程度を、財源は、復興特別税及び歳出削減・税外収入等を見込んだ。なお、事業規模には、原則として、原賠法、放射性物質汚染対処特措法等に基づき電力事業者が負担すべき経費は含まれていない(リンク参照)。

b 19兆円フレームの見直し

国は、25年1月29日の復興推進会議決定により19兆円フレームを見直し、集中復興期間に係る事業費と財源の見込みを25兆円程度の規模とする25兆円フレームを示した。事業規模は、23、24両年度の事業費、25年度概算決定での事業費及び26、27両年度に確実に実施が見込まれる施策・事業の規模から、少なくとも23.5兆円程度とした。なお、見直しの時点で災害査定等が終わっていなかった復旧・復興事業、工事を伴う公共事業以外の分野の復興事業等に係る費用は、これらの額の積算に含まれていない。財源は、日本郵政の株式売却による収入見込及び23年度の決算剰余金等を追加的に確保した(リンク参照

c 事業規模及び財源の26年9月末現在の状況

25兆円フレームの事業規模及び財源の26年9月末現在の状況について、事業規模をみると、23年度から26年度までの事業費は計22.6兆円に達していて、25兆円フレームとの差額は2.4兆円程度となっている。財源をみると、26年9月末現在の復興特別税収の全体見込額は9.5兆円程度であり、歳出削減・税外収入等は10.1兆円が既に確保されている。なお、日本郵政の株式売却収入は、今後の財源として、26年9月末現在で4兆円が見込まれている(リンク参照

(ウ) 原子力災害に対する国の復旧・復興への取組

国は、25年12月に福島復興の加速指針を閣議決定し、①「早期帰還支援と新生活支援の両面で福島を支える」、②「福島第一原発の事故収束に向けた取組を強化する」、③「国が前面に立って原子力災害からの福島の再生を加速する」の3項目を示し、福島の復興の加速に向けて各種取組を実施している。

また、国は、同年8月までに新たな避難指示区域(帰還困難区域、居住制限区域及び避難指示解除準備区域)への見直しを完了した。その後、26年4月1日に田村市、同年10月1日に川内村にそれぞれ設定していた避難指示解除準備区域における避難指示を解除するなどし、26年10月1日現在、10市町村に避難指示区域を設定している(リンク参照

(2) 復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

ア 東北3県における復旧・復興事業の実施状況
(ア) 東北3県に対する東日本大震災関係経費に係る国庫補助金等の交付等の状況

a 東日本大震災関係経費に係る国庫補助金等の交付等の状況

東北3県及び管内の127市町村に23年度から25年度までに交付等された国庫補助金等は、復興関連基金事業に充てられた国庫補助金等交付額1兆7881億余円、復興基金事業についての特別交付税交付額1650億円、復興交付金交付可能額1兆9662億余円、補助事業等に係る国庫補助金等交付額2兆5932億余円及び震災復興特別交付税交付額1兆6654億余円、計8兆1780億余円となっている。それぞれの交付額等が全体に占める割合は、補助事業等が31.7%、復興交付金事業が24.0%、復興関連基金事業が21.8%、震災復興特別交付税20.3%等となっている(リンク参照

b 復興関連基金事業の実施状況

東北3県における復興関連基金事業21基金66事業のうち、復興に係る基金事業執行率等を区分して把握することが困難な基金を除いた18基金62事業をみると、国庫補助金等交付額は計1兆7080億余円、25年度末までの取崩額は計8710億余円、基金事業執行率は50.9%となっている。62事業の25年度末における執行状況をみると、基金事業執行率が100%となっている事業がある一方、1.1%となっている事業があるなど、事業により執行の状況に大きな差が見受けられた。

東北3県の基金事業の実施等の状況をみると、同種の復興事業や既存の事業等により代替可能であったことなどにより、基金事業の執行が低調となっているものが、①安心こども基金(保育所等の複合化・多機能化推進事業)(基金事業執行率は岩手県0%、福島県39.5%)及び②緊急雇用創出事業臨時特例基金(住まい対策拡充等支援事業分)で実施される事業のうち、被災生活保護受給者に対する生活再建サポート事業において見受けられた(基金事業執行率は岩手県6.8%、宮城県及び福島県0%)。また、基金事業の執行状況を的確に把握するなどして、経費の配分等を適切に行う必要があったと認められるものが、災害等廃棄物処理基金(災害等廃棄物処理基金事業)において見受けられた(環境省において宮城県の25年度事業に係る交付額の算定の際に控除していなかった額2億1607万余円)。さらに、基金事業が終了したものについて、使用見込みのない国庫補助金等が基金等に保有されていたものが、上記の災害等廃棄物処理基金(災害等廃棄物処理基金事業)において見受けられた(岩手県及び宮城県で26年7月時点において使用見込みのない額計36億5324万余円)(リンク参照

c 復興交付金事業の交付可能額

東北3県及び管内の68市町村において復興庁から計9回にわたり通知を受けた復興交付金交付可能額は計2兆0192億余円となっていて、宮城県及び22市町が交付可能額全体の6割を占めている。また、基幹事業別にみると、災害公営住宅整備事業等、防災集団移転促進事業及び都市再生区画整理事業の3基幹事業に係る交付可能額が全体の6割以上を占めている。

復興交付金の交付可能額は復興庁が算定していることから、復興庁において算定が適正に行われているか検査したところ、復興庁が石巻市に対して行った第7回通知における復興交付金の交付可能額のうち、市街地復興効果促進事業の国費配分額9億2005万余円について、積算を誤っていたため、交付可能額が2348万円過大となっている事態が見受けられた(リンク参照

d 補助事業等の実施状況

23年度から25年度までの東北3県及び127市町村に対する国庫補助金等の交付決定額は、23年度1兆8539億余円、24年度7452億余円、25年度8793億余円、計3兆4786億余円となっており、岩手県計8890億余円、宮城県計1兆8737億余円、福島県計7157億余円となっている。

沿岸部、内陸部及び県事業・その他の区分ごとの交付決定額は、県事業・その他計1兆9855億余円、沿岸部計1兆3563億余円、内陸部計1368億余円となっていて、交付決定額の沿岸部の内陸部に対する比率は、年度ごとに規模の差が拡大している。また、福島県に対する交付決定額が岩手、宮城両県に比べて少なくなっているのは、避難指示区域内で除染等の措置が実施されている段階にあることなどによるものである。このため、福島県の避難指示区域の指定が解除等された後、各種補助事業等が増加することが見込まれる(リンク参照

25年度末までの補助事業等の実施状況は、23年度補正予算により措置された補助事業等については、交付決定を受けた県及び125市町村で完了している。24年度復興特会予算により措置された補助事業等については、交付決定を受けた123市町村のうち88市町村で完了しており、補助事業執行率は91.8%となっている。また、25年度復興特会予算により措置された補助事業等については、交付決定を受けた124市町村のうち57市町村で完了しており、補助事業執行率は54.0%となっている(リンク参照

所管別の補助事業の実施状況については、9府省庁が計138事業を実施しており、所管別の交付決定額は、環境省が1兆0221億余円と最も多額となっており、農林水産省が8788億余円、内閣府が6480億余円、国土交通省が3535億余円、経済産業省が2918億余円等となっている。また、所管別の補助事業執行率をみると、内閣府及び環境省が90%以上となっている一方、農林水産省、経済産業省及び国土交通省が70%前後にとどまっている(リンク参照

(イ) 市街地・居住地復興のための各種制度の活用、事業の実施状況等

a 復興特別区域制度の活用状況

東北3県の復興推進計画をみると、26年9月末までに、東北3県及び管内の101市町村において作成された計96計画が認定を受けており、これらの計画の認定により14の特例の適用を受けることができるようになり、その延べ件数は103件、対象区域は延べ826市町村に達している。また、復興推進計画による特例は、時間の経過に伴って必要とする特例の内容が変化していた。

復興整備計画をみると、26年9月末までに、東北3県管内の32市町村が県と共同して同計画を作成していて、特区法に規定されている14の復興整備事業のうち6事業を記載し、各種の特例を受けることができるようにしている。

復興交付金事業計画をみると、東北3県管内の沿岸部の全37市町村及び内陸部の42市町村、計79市町村が復興交付金事業計画を作成し、復興庁に提出していた。また、復興交付金の交付を受けた東北3県及び管内の市町村における基金の造成及び取崩しの状況をみると、23年度から25年度までの各年度実施分の復興交付金は1兆3235億余円、25年度末までの取崩額は5075億余円(復興交付金基金事業執行率38.3%)となっていた(リンク参照

b 市街地・居住地復興のための事業の実施状況等

復興庁が公表した26年9月末現在の工程表によれば、これまでに住まいの復興に係る4事業を実施している地区は延べ1,004地区あり、整備計画戸数は全体で45,021戸となっている。これを事業別にみると、主に民間住宅用の宅地を整備する漁業集落防災機能強化事業、都市再生区画整理事業及び防災集団移転促進事業の整備計画戸数はそれぞれ504戸(全体の1.1%)、9,958戸(同22.1%)、10,374戸(同23.0%)、計20,836戸(同46.2%)となっている一方、災害公営住宅整備事業等の整備計画戸数は24,185戸(同53.7%)となっている。これらの整備計画戸数を整備が完了する年度別にみると、合計45,021戸のうち集中復興期間の終了年度である27年度末までの整備計画戸数は28,324戸(同62.9%)となっており、残りの16,697戸(同37.0%)は、集中復興期間終了後の28年度以降に完了する見込みなどとなっている(リンク参照)。

c 市街地・居住地復興のための事業に係る復興交付金交付可能額等

市街地・居住地復興のための事業に係る復興交付金交付可能額は、26年9月末現在、東北3県で計1兆2240億余円となっている。これを県別にみると、宮城県が7142億余円(全体の58.3%)と最も多額となっており、次いで岩手県が3669億余円(同29.9%)、福島県が1428億余円(同11.6%)となっている。事業別にみると、整備計画戸数の多い災害公営住宅整備事業等が5411億余円と最も多額となっており、次いで高台等に住宅団地を整備する防災集団移転促進事業が4416億余円となっている(リンク参照)。

d 住まいの復興に係る4事業の進捗状況

住まいの復興に係る4事業について、26年9月末現在の工程表を基に地区別の進捗状況をみると、漁業集落防災機能強化事業は37地区で実施されているが、このうち完了しているのは13地区(37地区の35.1%)であり、3地区(同8.1%)は集中復興期間終了後の28年度以降に完了する見込みとなっている。災害公営住宅整備事業等は584地区で実施されているが、このうち完了しているのは108地区(584地区の18.4%)であり、116地区(同19.8%)は28年度以降に完了する見込みとなっている。都市再生区画整理事業は50地区で実施されているが、このうち完了しているのは1地区(50地区の2.0%)であり、41地区(同82.0%)は28年度以降に完了する見込みとなっている。防災集団移転促進事業は333地区で実施されているが、このうち完了しているのは95地区(333地区の28.5%)であり、37地区(同11.1%)は28年度以降に完了する見込みとなっている(リンク参照)。

e 住まいの復興に係る4事業の整備計画戸数の増減状況

24年12月末現在の工程表及び26年9月末現在の工程表を基に、東北3県の整備計画戸数の増減をみたところ、合計戸数は51,816戸から45,021戸へと6,795戸減少(増減率マイナス13.1%)していた。この状況について、事業を実施する市町村の状況を把握している岩手県、宮城県、復興庁等によれば、(i)市町村が実施する住民に対する意向調査の結果、住民の意向が変化したり、明確になってきたりしたこと、(ii)事業の実施を予定していた一部の地区において避難路等を設けたり、道路を盛土して二重堤としたりして、安全対策を講ずることにより、高台へ移転する必要がなくなったことなどによるとしている(リンク参照)。

f 住宅再建・復興まちづくりの加速化措置の活用状況等

住まいの復興に係る4事業の課題に対して講じられた加速化措置の活用状況をみると、所有者不明の土地が多数あるなどして時間を要している用地の取得については、司法書士、補償コンサルタント等の活用や移転先団地の変更の際の手続の簡素化等の措置が、資材・作業員の不足や単価の上昇等に対しては、標準建設費の二度にわたる引上げ等が活用又は適用されていた。

また、各市町村において必要とする職員の充足状況等をみると、26年10月1日現在、東北3県の50市町村が必要としている職員数計2,666人に対して充足された職員数は計2,368人(88.8%)となっており、充足された職員が従事する業務をみると、一般事務系では92.5%、技術系では84.9%が充足されていた(リンク参照)。

イ 国庫補助金により設置造成等された基金の取崩等の状況

復興関連基金事業112事業に係る国庫補助金等交付額は計3兆6709億余円であり、既存の基金事業等と復興関連基金事業とを区分して経理していない8事業及び26年8月末までに基金団体から国庫補助金等交付額の全額が国庫に返納された2事業の計10事業を除いた計102事業の国庫補助金等交付額は計3兆4013億余円、25年度末までの取崩額は計1兆3785億余円、基金事業執行率は40.5%となっている。

復興関連基金事業112事業に係る国庫補助金等の国への返納実績をみると、26年8月末までに35事業で1652億余円となっている。このうち、復興特会の歳入への計上についてみると、復興特会に帰属することとなっているのに、復興特会の歳入に収納されていなかったものが見受けられた(2事業で計3億9400万余円)(リンク参照)。

東北3県を除く17都県における復興関連基金事業は、9基金18事業であり、このうち、既存の基金事業と復興関連基金事業とを区分して経理していないため、執行状況を把握できない基金事業を除いた7基金16事業をみると、国庫補助金等交付額は計1122億余円、25年度末までの取崩額は計741億余円、基金事業執行率は66.0%、25年度末までの国庫返納額(国庫補助金等相当額)は197億余円、25年度末に保有している国庫補助金等相当額は183億余円となっている。16事業の25年度末における執行状況をみると、基金事業執行率が100%となっている事業がある一方、1.7%となっている事業があるなど、事業により執行の状況に大きな差が見受けられる。

そこで、17都県における復興関連基金事業の実施状況についてみると、事業の対象となる被災者がほとんどいないことなどのため、今後の実施が見込めないものが、緊急雇用創出事業臨時特例基金(住まい対策拡充等支援事業分)で実施される4事業で見受けられた(4事業で計11億2583万余円)。また、基金の使途が被災者に対する事業に限定されていなかったものが、緊急雇用創出事業臨時特例基金(住まい対策拡充等支援事業分)で実施される事業のうち、相談体制整備事業において見受けられた(1事業で26年度に被災者に限定しないまま使用されることが見込まれていた額1億7847万余円)(リンク参照)。

ウ 原子力災害からの復興再生
(ア) 原子力災害関係の事業の実施状況

25年度に実施される原子力災害関係の事業に係る予算現額は計1兆1629億余円で、除染等の事業が84.5%を占め、福島復興事業が11.7%を占めている(リンク参照)。

(イ) 除染等の事業の実施状況

a 汚染土壌等の除染の実施状況

福島県管内の11市町村の除染特別地域における特別地域内計画に基づく除染等の措置の進捗状況をみると、26年9月末現在、楢葉町、大熊町、田村市及び川内村は、帰還困難区域を除き除染等の措置を終了しているが、その他の市町村は、25年度末までとしていた当初の目標から遅れるなどしており、各特別地域内計画の終了時期までに終了するよう事業を実施している。

また、汚染状況重点調査地域に指定された福島県等8県管内の100市町村のうち、除染実施計画を策定している94市町村における除染等の措置の進捗状況をみると、26年9月末現在、福島県管内の36市町村では除染等の措置を完了した市町村はなく、その他の7県管内の58市町村のうち、現在も事業を実施しているのは15市町村となっている(リンク参照)。

b 汚染廃棄物処理事業の実施状況

福島県管内の11市町村における対策地域内廃棄物の処理の進捗状況をみると、25年度末までに処理施設等への搬入を目指すとした当初の処理計画から遅れ、26年9月末現在、帰還の妨げとなる廃棄物の撤去、仮置場への搬入を南相馬市(一部を除く。)、大熊町、楢葉町及び川内村は完了し、田村市は仮置場を設置せず直接既存の処理施設等へ搬入することを予定しており、その他の6町村は改定された処理計画どおり完了するよう事業を実施している。

また、指定廃棄物の数量は、26年9月末現在、岩手県等12都県で約15万tとなっており、処理施設等の確保が進まないことから、その全量が地方公共団体や委託を受けた民間事業者等が所有する焼却施設等において保管されており、国が必要な最終処分場を確保することとした宮城県等5県における処理施設等の確保に係る進捗状況をみると、同月末現在においても候補地を選定している段階である(リンク参照)。

c 中間貯蔵施設事業の実施状況

中間貯蔵工程表では、26年3月末までに用地取得等が完了する予定であったが、同年9月末現在においても基本設計・実施設計、環境影響調査等の段階にあり、大幅に計画から遅延している(リンク参照)。

(ウ) 福島復興事業の実施状況

生活拠点形成事業について、福島県は、復興公営住宅の整備計画における全体戸数4,890戸のうちおおむね3,700戸について27年度までの入居を目指すとしていたが、26年8月に、27年度末までに完成するのは約2,100戸になるとの見通しを公表している。団地等ごとの進捗状況をみると、26年9月末現在、27年度末までの完成予定は1,170戸(入居開始23戸を含む。)となっており、整備計画から遅延している。

福島定住事業は、福島県内の中通り地域を中心に、原子力災害の影響により多くの子育て世帯が避難をしている25市町村で実施されている。また、帰還・再生事業は、除染等の措置や避難指示区域の見直しが遅れたことなどから、多額の繰越し及び不用が生じている(リンク参照)。

エ 復旧・復興事業に係る予算の執行状況

復旧・復興予算における歳出予算額は、23年度1次補正で計4兆0153億余円、23年度2次補正計で1兆8106億余円、23年度3次補正で計9兆0095億余円、23年度合計14兆8354億余円、24年度復興特会予算で計4兆9706億余円、25年度復興特会予算で計5兆3023億余円であり、3か年度の合計は25兆1085億余円となっている。

23年度予算及び24、25両年度の復興特会予算の執行状況は、予算現額計25兆1009億余円に対して、支出済額計20兆1211億余円(執行率80.1%)、繰越額計1兆9604億余円(繰越率7.8%)、不用額計3兆0192億余円(不用率12.0%)となっている。このうち、23年度予算は、予算現額計14兆8243億余円について、支出済額計12兆5622億余円(執行率84.7%)、不用額計2兆2621億余円(不用率15.2%)で全額の執行を終えている(リンク参照)。

(ア) 23年度復旧・復興予算の25年度末までの執行状況

23年度復旧・復興予算では、被災した公共土木施設、公立学校施設、介護関係施設、医療施設、社会教育施設等の災害復旧事業や、放射性物質汚染廃棄物処理事業等に係る経費項目で、累計執行率が50%台にとどまっている。23年度3次補正により実施されている事業のうち復興施策等との関連が明確にある事業の累計不用率は、「5 復興施策」23.6%、「6 原子力災害からの復興」58.3%となっている(リンク参照)。

(イ) 24、25両年度の復興特会予算の25年度末までの執行状況

24年度繰越分計1兆6362億余円の25年度の執行状況は、支出済額計1兆1975億余円、26年度への事故繰越額計1841億余円、不用額計2545億余円となっている。25年度復興特会予算計5兆3023億余円の執行状況は、支出済額計3兆2092億余円、繰越額計1兆7762億余円、不用額計3168億余円となっている。これらのうち復興施策等との関連が明確にある事業の累計執行率は、「5 復興施策」73.6%、「6 原子力災害からの復興」54.4%となっている(リンク参照)。

(ウ) 事業別の執行状況

24年度事故繰越分の事業数及び事故繰越額は、計46件、計1841億余円となっていて、24年度復興特会予算の予算現額計4兆9742億余円に対する事故繰越率は3.7%となっている。事故繰越事由は、事業数では「地元住民等調整」が、事故繰越額では「自然災害」が最も多くなっている(リンク参照)。

25年度繰越分の事業数及び繰越額は、計112件、計1兆7762億余円となっていて、25年度復興特会予算の予算現額5兆3023億余円に対する繰越率は33.4%となっている。繰越事由は、事業数、繰越額ともに「計画に関する諸条件」が最も多くなっている(リンク参照)。

25年度末に不用が生じている事業の事業数及び不用額は、23年度事故繰越分97件、計1203億余円、24年度繰越分107件、計2545億余円、25年度復興特会予算283件、計3168億余円で、合計487件、6917億余円となっている。また、市街地・居住地復興のための事業等の進捗が、他の事業の進捗に影響を及ぼしている状況となっている地区が見受けられた(リンク参照)。

震災復興特別交付税に係る経費の23年度の一般会計及び24、25両年度の復興特会における3か年の執行率は99.0%と極めて高くなっている。一方、当該経費の繰入先の交付税特会における3か年の執行率は71.6%となっているが、年度別では、23年度48.8%、24年度50.2%、25年度38.0%と低くなっている(リンク参照)。

(エ) 実施方法別の執行状況

23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算により実施された復旧・復興事業について、実施方法別に25年度の執行状況をみると、補助事業では、事業主体が特定被災自治体であり、限られた人員で膨大な事業を実施していること、実施している復旧・復興事業の多くが、関係機関との調整や地域住民との協議、調整等に日数を要することなどが、執行率が低くなる要因となっている(リンク参照)。

オ 復旧・復興事業の財源等の状況
(ア) 復旧・復興事業の歳入予算及び歳入実績の状況

各年度の収納済歳入額等の決算額に基づく財源の確保等の状況をみると、23年度は、復興公債金11兆2499億余円、歳出予算の既定経費の減額3兆8643億余円等により収納済歳入額等が計14兆4733億余円となり、復興公債金を除いた財源は計3兆2233億余円となっている。24年度は、収納済歳入額計5兆0222億余円のうち、復興公債金2兆3032億余円及び一般会計より受入1兆9999億余円が大部分を占め、復興公債金を除いた財源は計2兆7189億余円となっている。25年度は、収納済歳入額計6兆7703億余円のうち、一般会計より受入3兆1769億余円、前年度剰余金受入1兆8700億余円及び復興特別法人税1兆2043億余円が大部分を占めていて、復興公債金による歳入は0円となっている。(リンク参照)。

(イ) 復興債の発行及び償還の状況

復興債の発行計画額及び発行実績額をみると、25年度は、25年度当初予算に復興債の発行による収入として1兆9026億円が計上されていたが、復興特別税収等により必要な事業費が賄われたため、新規に復興債は発行されなかった(リンク参照)。

国債整理特会の収支に基づく復興債の償還に係る資金の流れをみると、24年度は、歳入実績が計5兆5477億余円、歳出実績が復興債整理支出の計上額5兆0653億余円で、歳入歳出の差額4824億余円が、剰余金として全額25年度へ繰り越されている。復興借換債の発行による収入は2兆5130億余円で、復興債償還費の半額程度である。25年度は、8650億余円が償還財源として復興特会から国債整理特会に繰り入れられている。復興債償還費4兆5226億余円に対して、復興借換債の発行による収入は2兆4930億余円である(リンク参照)。

23年度から25年度までの復興債の年度末現在額は、23年度末現在額11兆2574億余円、24年度末現在額11兆0437億余円、25年度末現在額9兆0135億余円となっている(リンク参照)。

復興財源確保法に規定されている償還財源のうち、政府保有株式についてみると、国有財産台帳等に記載されている25年度末の価格は、東京地下鉄の株式が2380億余円、JTの株式が2兆1600億余円、エネルギー対策特別会計保有分が6702億余円、日本郵政の株式が8兆5687億余円で、計11兆6371億余円となっている(リンク参照)。

(ウ) 除染等の事業等に係る費用及び東京電力の負担の状況

特措法等4事業について、23年度から25年度までの支出済額等をみると、支出済額計9686億余円(事業実施済額計6716億余円)のうち、除染等の事業に係る分が計7535億余円(同計4796億余円、確定額2030億余円)となっている。

23年度から25年度までに実施された特措法等4事業に係る費用について、26年10月末現在の求償額は計1386億余円であり、このうち除染等の事業に係る分が1250億余円となっている。求償額を年度別にみると、24年度計149億余円、25年度計528億余円、26年度計708億余円と増加している。また、26年10月末現在の東京電力の支払額は計930億余円(支払率67.1%)であり、このうち除染等の事業に係る分が計828億余円(同66.2%)となっている。支払額を求償の年度別にみると、24年度計114億余円(同76.6%)、25年度計309億余円(同58.4%)、26年度計507億余円(同71.6%)となっている(リンク参照)。

2  所見

会計検査院は、24年次及び25年次に引き続き、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を実施した。

国及び地方公共団体は、引き続き全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、東日本大震災発生後3年11か月を経過した今もなお、数多くの住民は応急仮設住宅や避難先での不自由で困難な生活を余儀なくされており、被災地の社会経済の再生や生活の再建には復旧・復興事業の進捗の遅れや地域の人口減少等、数多くの課題があり、これらを解決するには多くの困難がある。

ア 復旧・復興事業の実施については、進捗している事業が多くある一方、事業完了までに時間を要しているものが多く見受けられることから、国は、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指す観点から復興需要が高まる期間として位置付けた27年度末までの集中復興期間において、国庫補助事業等の各種復旧・復興事業が東北3県等の地方公共団体において円滑かつ迅速に実施できるよう、事業の実施状況や復興の進捗に課題となっている事項を把握するとともに、集中復興期間後も被災地の復旧・復興を図るため引き続き支援し、被災者の生活の再建が迅速に行われるよう努めること

イ 東北3県及び管内の市町村では、多数多額の市街地・居住地復興のための事業を実施するなどしていることから、国は、復興特別区域制度がより一層活用されるよう、また、復興交付金等により実施する各種事業が加速化されるよう、引き続き、地方公共団体と十分な意見交換を行いつつ、情報提供、助言その他必要な協力を行い、迅速かつ着実な復興の支援に努めること

ウ 復興関連基金事業において、国は、今後も基金団体と十分連携し、適切かつ有効に事業が実施されるよう努めるとともに、基金の執行や基金規模は適切かなどの検証を行い、基金団体に今後の使用が見込めない余剰金等が生じている場合には、これを国庫に返納することを要請するなど、資金を適切かつ有効に活用するよう努めること

エ 原子力災害からの復興再生について、国は、引き続き除染等の事業の早期の完了を目指すとともに、現在も多くの住民が避難生活を送っている福島県については、住民の意向を踏まえるなどして、長期避難者支援等の事業の円滑かつ迅速な実施に努めること

オ 復旧・復興事業は、今後とも多額の経費が見込まれることから、国は、各種事業が有効かつ効率的に実施されるよう努めるとともに、復興財源が復興特別税等により確保されていることなどから、引き続き国民負担の増大を抑制しつつ、必要な財源の確保に努めること

会計検査院は、東日本大震災からの復興に向けた確実な歩みがなされている一方、事業の遅れなど、課題も見受けられていることから、避難者等に対する支援等の状況、各種復興事業の実施状況、原子力災害からの復興再生の状況等を分析して報告した。会計検査院としては、各府省庁や特定被災自治体が、一体となって復興基本方針や復興計画等に基づき被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策等を継続して実施していることから、引き続き東北3県の被災の状況、集中復興期間における復興事業の実施状況等について検査を実施して、その結果については取りまとめが出来次第報告することとする。