会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)沖縄開発事業費 |
部局等の名称 | 沖縄総合事務局 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 | 沖縄県 |
間接補助事業者 (事業主体) |
沖縄県島尻郡具志頭村 |
補助事業 | 畜産環境総合整備 |
補助事業の概要 | 酪農有機肥料センターを建設するため、平成13、14両年度に建設予定地を造成し、擁壁等を築造するもの |
事業費 | 72,723,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 43,633,800円 |
不当と認める事業費 | 31,049,585円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 18,629,751円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、沖縄県島尻郡具志頭村が、畜産環境総合整備事業の一環として、同村具志頭地区に具志頭村酪農有機肥料センター(以下「センター」という。)を建設するため、平成13、14両年度にセンター建設予定地の造成及びL型擁壁、ブロック積擁壁等の築造を工事費72,723,000円(国庫補助金43,633,800円)で実施したものである。
このうちL型擁壁(以下「擁壁」という。)は、センター建設予定地の造成に際し、隣接する村道との境界に沿って建設予定地に築造するもので、同村では、総延長124.8mを14ブロックに分けて施工していた。そして、本件擁壁の設計は、設計計算書によると次のとおりとなっており、安定計算及び応力計算上安全であるとされていた。
(ア) 擁壁の設計計算上の高さについては、〔1〕5.0m(2ブロック、延長20m。以下「5.0m擁壁」という。)、〔2〕4.5m(5ブロック、延長45m。以下「4.5m擁壁」という。)、〔3〕4.0m(4ブロック、延長35m。以下「4.0m擁壁」という。)及び〔4〕3.5m(3ブロック、延長24.8m。以下「3.5m擁壁」という。)の4区分とし、各区分ごとに安定計算及び応力計算を行う。そして、擁壁の縦壁と底版の主鉄筋については、5.0m擁壁及び4.5m擁壁では10cm間隔、4.0m擁壁では12.5cm間隔、3.5m擁壁では20cm間隔で、それぞれ径16mmの鉄筋を配置する。
(イ) 擁壁の前面及び背面の埋戻し土により生ずる土圧の計算に当たっては、宅地の造成等に関連して施工される擁壁工事において擁壁の断面を決定するための参考資料として使用されている「構造図集 擁壁」(社団法人日本建築士会連合会)から、土の単位体積重量等の定数を引用する。なお、埋戻し土により擁壁前面に生ずる土圧については、擁壁背面に生ずる土圧に対する抵抗力として考慮する(参考図参照)
。
2 検査の結果
検査したところ、擁壁の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、設計計算書上5.0m擁壁及び4.5m擁壁とされているブロックの高さが、設計図面では、それぞれ5.3m〜5.2m及び5.0m〜4.6mとなっているなど、前記の設計計算書で想定した本件擁壁の寸法等と、設計図面に記載されていた寸法等が異なっていた。そして、本件擁壁はこの設計図面に基づいて施工されていたため、実際に施工された擁壁の高さが設計計算書で想定した擁壁の高さを上回るなどしていた。
また、本件擁壁は、前記のとおり、センター建設予定地の造成に際し、隣接する村道との境界に沿って築造されるもので、道路の崩壊防止を目的としている。したがって、埋戻し土により生ずる土圧の計算に当たり、前記の「構造図集 擁壁」から土の単位体積重量等の定数を引用するのは適切でなく、道路の機能を維持するために設ける擁壁等の道路構造物の設計等の標準を示した「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編)によるのが適切と認められた。なお、この「道路土工 擁壁工指針」によると、埋戻し土により擁壁前面に生ずる土圧については、擁壁の転倒及び地盤支持力の検討並びに応力計算上、擁壁背面に生ずる土圧に対する抵抗力として考慮することとはされていない。
そこで、本件擁壁について、改めて安定計算及び応力計算を行うと、それぞれ次のとおりとなる。
(ア) 安定計算
〔1〕 転倒に対する安定については、14ブロック中8ブロックで、水平荷重及び鉛直荷重の合力の作用位置が転倒に対する安定が確保される範囲を逸脱しており、最も逸脱していた4.5m擁壁では、安定が確保される作用位置の範囲は底版の中央からつま先部寄りに41.7cmであるのに、その作用位置が最大で68.2cmの位置となっていた。
〔2〕 基礎地盤の支持力に対する安定については、14ブロック中11ブロックで、地盤反力度(注1)
が地盤の許容支持力度を上回っており、最も地盤の許容支持力度を上回っていた4.5m擁壁では、地盤の許容支持力度は78.4kN/m2
であるのに、その地盤反力度が最大で176.2kN/m2
となっていた。
(イ) 応力計算
〔1〕 縦壁の主鉄筋に生ずる引張応力度(注2)
については、14ブロック中12ブロックで、引張応力度が許容引張応力度(注2)
を上回っており、最も許容引張応力度を上回っていた3.5m擁壁では、許容引張応力度は180N/mm2
であるのに、その引張応力度が最大で286N/mm2
となっていた。
〔2〕 底版の主鉄筋に生ずる引張応力度については、14ブロック中13ブロックで、引張応力度が許容引張応力度を上回っており、最も許容引張応力度を上回っていた3.5m擁壁では、許容引張応力度は180N/mm2
であるのに、その引張応力度が最大で325N/mm2
となっていた。
このような事態が生じていたのは、同村において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件擁壁は設計が適切でなかったため、14ブロック中13ブロック(延長120m、工事費相当額31,049,585円)について所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額18,629,751円が不当と認められる。
(注1) | 地盤反力度 構造物を介して地盤に力を加えたとき、地盤に発生する単位面積当たりの抵抗力をいう。この地盤反力度がその地盤の許容支持力度を超えていなければ、構造物は基礎地盤の支持力に対して安定した状態にあるとされている。 |
(注2) | 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。 |