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補助金


(231)予防治山事業及び復旧治山事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、護岸等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 国有林野事業特別会計(治山勘定) (項)治山事業費
部局等の名称 林野庁
補助の根拠 森林法(昭和26年法律第249号)
補助事業者
(事業主体)
石川県
補助事業 (1) 予防治山
(2) 復旧治山
補助事業の概要 渓岸の侵食及び山腹の崩壊を防止するなどのため、平成12、13両年度に護岸工、床固工等を施工するもの
事業費 (1) 39,375,000円 (平成12、13両年度)
(2) 22,050,000円 (平成13年度)
計 61,425,000円  
上記に対する国庫補助金交付額 (1) 19,687,500円  
(2) 11,025,000円  
計 30,712,500円  
不当と認める事業費 (1) 14,958,827円 (平成12、13両年度)
(2) 10,754,504円 (平成13年度)
計 25,713,331円  
不当と認める国庫補助金交付額 (1)  7,479,413円 (平成12、13両年度)
(2)  5,377,252円 (平成13年度)
計 12,856,665円  

1 補助事業の概要

 これらの補助事業は、石川県が、(1)予防治山事業及び(2)復旧治山事業の一環として、鹿島郡鹿島町高畠地内の地獄谷川の支流において、渓岸の侵食及び山腹の崩壊を防止するなどのため、平成12、13両年度に護岸工、床固工等を工事費計61,425,000円(国庫補助金30,712,500円)で実施したものである(参考図1参照)
 このうち、護岸工は、重力式コンクリート構造の護岸を、(1)の工事(以下「12・13年度工事」という。)では15箇所、延長計181.7m、また、(2)の工事(以下「13年度工事」という。)では6箇所、延長計82.5m、それぞれ施工するなどのものである。
 そして、同県では、護岸工について次のとおり設計し、これにより施工することとしていた。
(ア) 護岸の設計条件として、高さを2.5m、背後地の盛土の傾斜角を10度、基礎地盤及び背面土を礫(れき)質土、基礎地盤の許容支持力度を300kN/m とする。
(イ) 設計に際しては、設計の能率化を図るため、各種の外力に応じた主要数値が数表化されている「治山ダム・土留工断面表」(財団法人林業土木コンサルタンツ作成。以下「断面表」という。)を用いることとし、本件の場合、高さ、盛土の傾斜角及び基礎地盤の設計条件が断面表の適用範囲内にあることから、断面表に記載された高さ2.5m、天端幅0.3m、底版幅0.8mのタイプの断面を護岸の形状として適用する(参考図2参照) 。そして、断面表を適用して設計する場合には、安定計算は特に行わない。
(ウ) 床固工の放水路から落下する水の飛まつが護岸上部の渓岸を侵食することを防止するため、床固工の直下流の延長4.0m又は4.5mの区間について、12・13年度工事及び13年度工事における15箇所で、護岸を0.5mから1.0mかさ上げする。また、12・13年度工事の施工区域の最上流部には既設の治山ダムがあるため、同様の目的により、治山ダム直下流の延長6.0mの区間について、2箇所で、護岸を0.5mから2.0mかさ上げする(参考図3参照)
(エ) 護岸上部の背後地には、法面の崩落防止などのため、現場の状況に応じて、木柵(地上部の高さ0.6m)を設置するなどしたうえ盛土する(参考図3参照)

2 検査の結果

 検査したところ、護岸工の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、護岸をかさ上げすることとした区間では、護岸の最大高さが3.5m又は4.5mとなっており、また、背後地の盛土部の形状についても木柵を設置するなどしたうえ盛土することとしたことから、設計条件において想定したものとは大きく異なることとなっていた。このため、護岸の背面に作用する土圧は、本件護岸に適用した断面表のタイプで想定されている土圧を大幅に上回ることになっており、このような場合には、本件護岸の設計条件は断面表の適用範囲外となることから、別途に安定計算を行う必要があるのに、同県では、これを行っていなかった。
 そこで、本件護岸の安全度を確認するため、床固工の直下流15箇所及び治山ダムの直下流2箇所計17箇所について、安定計算を行うと次のとおりとなる。
(ア) 転倒に対する安定については、その安全率が床固工の直下流15箇所では1.04から1.19、治山ダムの直下流2箇所では0.74又は0.75となっていて、許容値である1.5を大幅に下回っている。
(イ) 滑動に対する安定については、その安全率が床固工の直下流15箇所では0.97から1.14、治山ダムの直下流2箇所では0.79となっていて、許容値である1.5を大幅に下回っている。
(ウ) 基礎地盤の支持力に対する安定については、床固工の直下流15箇所のうち12箇所では、地盤反力度(注) が377.0kN/m から最大で972.6kN/m となっていて、基礎地盤の許容支持力度である300kN/m を大幅に上回っている。また、治山ダムの直下流2箇所では、護岸等の荷重を底版のつま先部の地盤のみで支持することとなるため、地盤反力度が限りなく大きくなっている。
 このような事態が生じていたのは、護岸の設計条件が、断面表を適用することとした際の設計条件と大きく異なることとなったのに、同県において、別途安定計算を行わなかったことによると認められる。
 したがって、本件護岸は設計が適切でなかったため、本件護岸及びこれに係る盛土等(12・13年度工事の工事費相当額14,958,827円、13年度工事の工事費相当額10,754,504円、計25,713,331円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これらに係る国庫補助金相当額12・13年度工事については7,479,413円及び13年度工事については5,377,252円、計12,856,665円が不当と認められる。

地盤反力度 構造物を介して地盤に力を加えたとき、地盤にはそれに抵抗する力が発生するが、この単位面積当たりの力をいう。この地盤反力度がその地盤の許容支持力度を超えていなければ、構造物は基礎地盤の支持力に対して安定した状態にあるとされている。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

(参考図3)

(参考図3)

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