会計名及び科目 | 治水特別会計(治水勘定) (項)砂防事業費 |
部局等の名称 | 大分県 |
補助の根拠 | 砂防法(明治30年法律第29号) |
補助事業者 (事業主体) |
大分県 |
補助事業 | 一尺屋川通常砂防 |
補助事業の概要 | 砂防流路の拡幅に伴い、橋りょうを架け替えるため、平成13年度に橋りょう上部工等の製作、架設等を行うもの |
事業費 | 18,961,950円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 9,480,975円 |
不当と認める事業費 | 18,869,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 9,434,500円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、大分県が、通常砂防事業の一環として、北海部郡佐賀関町大字一尺屋地区において、砂防流路の拡幅に伴い、普通河川一尺屋川に架かる町道上浦浜線の橋りょうを新橋(橋長18.7m、幅員5.2m、斜角60度。参考図参照
。)に架け替えるため、平成13年度に、橋りょう上部工としてプレストレストコンクリート桁(以下「PC桁」という。)7本の製作、架設等を工事費18,961,950円(国庫補助金9,480,975円)で実施したものである。
この橋りょうの設計は、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づき行っている。そして、示方書によると、設計で想定されない地震動が作用したり、周辺地盤の破壊や構造部材の予期しない損傷が生じたりした場合でも上部構造の落下を防止することができるように、落橋防止システムを設けることとされている。この落橋防止システムは、変位制限構造(注1)
、落橋防止構造(注2)
等から構成されていて、橋りょうの形式、地盤条件等に応じ適切に選定することとされている。
そして、本件橋りょうの落橋防止システムは、その設計の基礎となっている設計計算書等によると次のとおりとなっており、耐震設計上安全であるとして、これにより施工していた。
(1) 変位制限構造について
上部構造のPC桁と下部構造の橋台をアンカーバーで連結する構造とする。そして、変位制限構造の設計に用いる地震力(以下「設計地震力」という。)をアンカーバーの耐力が上回るように、両岸の橋台に径28mmのアンカーバーを6本ずつ設置する。
(2) 落橋防止構造について
示方書によると、上部構造の両端が剛性の高い橋台に支持されており、上部構造の長さが25m以下の橋りょうについては橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当し、落橋防止構造の設置を省略することができることとされている。
本件橋りょうは、PC桁の両端が剛性の高い橋台に支持されていること、PC桁の長さが18.64mであることから、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当するので、落橋防止構造を設置しないこととする。
2 検査の結果
検査したところ、落橋防止システムの設計が、次のとおり適切でなかった。
(1) 変位制限構造について
設計地震力の算出過程において、設計水平震度(注3)
の標準値に地域別補正係数を乗じるなどして算出した設計水平震度0.21を誤って0.14としていた。
そこで、設計地震力について、改めて設計水平震度を0.21として計算すると、左岸側橋台側では46.1tf、右岸側橋台側では47.6tfとなり、設置されているアンカーバーの耐力33.3tfを大幅に上回っている。
(2) 落橋防止構造について
示方書によると、上部構造の両端が剛性の高い橋台に支持されており、上部構造の長さが25m以下の橋りょうであっても、次のような場合には大きな変位が生じることがあるため落橋防止構造の設置を省略することができないとされている。
(ア) 斜角の小さい斜橋の判定式に該当する橋りょうである場合
(イ) 地震時に不安定となる地盤がある場合
そして、示方書で規定している判定式によると、本件橋りょうは斜角の小さい斜橋に該当し、また、本件橋りょうを設置する地盤には液状化が生じると判定された土層があり、地震時に不安定となる地盤がある場合に該当することから、落橋防止構造を設置する要があると認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋りょう上部工等(これらの工事費相当額18,869,000円)は、落橋防止システムの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額9,434,500円が不当と認められる。
(参考例)
(参考例)