(250)広域河川改修事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
会計名及び科目 | 治水特別会計(治水勘定) (項)河川事業費 |
部局等の名称 | 茨城県 |
補助の根拠 | 河川法(昭和39年法律第167号) |
補助事業者 (事業主体) |
茨城県 |
補助事業 | 一級河川涸沼川広域河川改修 |
補助事業の概要 | 橋りょうを架け替えるため、平成13、14両年度に橋台等を施工するもの |
事業費 | 50,715,000円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 25,357,500円 |
不当と認める事業費 | 25,672,000円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 12,836,000円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、茨城県が、広域河川改修事業の一環として、笠間市来栖地区において、一級河川涸沼川に架かる市道笠間来栖線の橋りょうを新橋(橋長51.3m、幅員12.0m)に架け替えるため、平成13、14両年度に、左岸側橋台1基、護岸等の築造を工事費50,715,000円(国庫補助金25,357,500円)で実施したものである。
このうち、橋台は鉄筋コンクリート構造の逆T式橋台で、杭基礎とし、外径600mm、杭長10.0mの鋼管杭18本をコンクリート打設方式により先端処理を行う中掘り杭工法で施工するものである(参考図参照)
。
本件橋台の基礎の設計に当たっては、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づき行っている。これによると、杭1本当たりの軸方向許容押込み支持力(以下「杭1本当たりの許容支持力」という。)については、杭先端の極限支持力度(注1)
に杭先端の面積を乗ずるなどして求めることとなっている。そして、上部構造から各々の杭に伝達される軸方向押込み力は、杭1本当たりの許容支持力以下となるよう設計しなければならないこととされている。
そして、本件橋台の設計の基礎となっている設計計算書によると、杭先端の極限支持力度を9,000kN/m2
として杭1本当たりの許容支持力を算出し、常時(注2)
、地震時とも、杭1本当たりの軸方向押込み力を上回ることから、本件橋台は安定計算上安全であるとして、これにより施工していた。
2 検査の結果
検査したところ、橋台の基礎杭の設計が、次のとおり適切でなかった。
示方書によると、杭先端の極限支持力度については、杭の打込み工法、地盤の種類などにより算定方法が定められている。このうち、本件のような施工方法では、その算定方法が「砂れき層および砂層(N≧30)」(以下「砂れき層等」という。)及び「硬質粘性土層」の2種類の地盤ごとに定められている。
そして、本件設計に使用した地盤調査の結果によると、本件橋台の地盤の種類は、砂れき層等になることから、杭先端の極限支持力度は、示方書で示されている砂れき層等に適用する数値である3,000kN/m2
とすべきところ、誤って9,000kN/m2
としていた。
そこで、本件橋台の基礎杭について改めて安定計算を行うと、杭1本当たりの許容支持力は412.4kN(常時)、618.6kN(地震時)となり、杭1本当たりの軸方向押込み力909.1kN(常時)、1,283.0kN(地震時)をそれぞれ大幅に下回っている。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋りょうは、橋台の基礎杭の設計が適切でなかったため、左岸側橋台等(これらの工事費相当額25,672,000円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額12,836,000円が不当と認められる。
(注1) | 極限支持力度 構造物を支持し得る地盤の最大抵抗力の単位面積当たりの大きさをいう。 |
(注2) | 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。 |