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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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補助金


(253)農業生産基盤整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、補強土壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)小笠原諸島振興開発事業費
部局等の名称 国土交通本省
補助の根拠 小笠原諸島振興開発特別措置法(昭和44年法律第79号)
補助事業者
(事業主体)
東京都
補助事業 農業生産基盤整備
補助事業の概要 農業用水の安定供給を行うための調整水槽を新設するため、平成13年度に、水槽、擁壁等を施工するもの
事業費 130,189,500円
上記に対する国庫補助金交付額 78,113,700円
不当と認める事業費 14,010,000円
不当と認める国庫補助金交付額 8,406,000円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、東京都が、農業生産基盤整備事業の一環として、小笠原村母島字評議平地区において農業用水の安定供給を行うための調整水槽を新設するため、平成13年度に、水槽、流入・流出管及び擁壁の築造等を工事費130,189,500円(国庫補助金78,113,700円)で実施したものである。
 このうち擁壁(高さ1.5m〜6.0m、延長36.9m、法勾配1分)は、ポリエステル糸を格子状に組み合わせ特殊樹脂をコーティングした補強材と盛土材料との間の摩擦抵抗によって壁面の安定を保つジオテキスタイル補強土壁(以下「補強土壁」という。)とすることとしていて、その背面側は地山及び水槽のく(・)体コンクリートに接しており、補強土壁の上部はコンクリート舗装の管理用道路となっている(参考図1参照)
 本件補強土壁の設計に当たっては、「ジオテキスタイルを用いた補強土の設計・施工マニュアル」(財団法人土木研究センター編。以下「マニュアル」という。)を適用するなどして、土質試験結果に基づき安定計算を行った結果、本件補強土壁は安定計算上安全であるとしていた。
 そして、盛土内の排水対策として、高さ2mごとに排水材(幅30cm、長さ1.5m〜5.0m)を4m間隔で敷設すれば十分であるとして、これにより施工していた。

2 検査の結果

 検査したところ、補強土壁上部の管理用道路のコンクリート舗装版とこれに接する水槽のく体コンクリートの間が最大約30cm開いていたり、コンクリート舗装版の目地が最大30cm開いていたり、コンクリート舗装版が沈下していたりなどしていた。このため、管理用道路は車両の通行に支障を来しているだけでなく、補強土壁の盛土内に埋設されている流入管は調整水槽に正常に接続できない状況となっていた(参考図2参照)
 このような状態になっているのは、次のように設計が適切でなかったためと認められる。
 前記のマニュアルによると、補強土壁は、補強材と盛土材料との間の摩擦抵抗によりその安定性を保持するため、外部から流入する水により盛土材料の強度が低下しないようにしなければならないとし、長期にわたって流入水による支障を来すことのないよう次のような排水対策を十分に講じておくものとしている(参考図3参照)
 すなわち、盛土内の排水対策として、地山掘削面及び補強土壁の基底部に排水工などを設けたり、盛土内に適当な間隔で排水層を設けるなどの処置を講じる。また、外周部の排水対策として、盛土の仕上がり面などには、補強土壁体内部に降雨などが浸透しないよう適切な排水工を設けるなどの処置を講じる。
 さらに、本件設計に使用した土質試験結果によると、本件補強土壁の盛土材料として使用する現場発生土は、水分を含むと土の強度定数(土の粘着力やせん断抵抗角)が低下する傾向が示されていた。
 これらのことから、このような土質条件においては、盛土内に雨水等が浸透しないよう十分な排水対策を講じておく必要があるにもかかわらず、本件設計では、前記排水対策のうち盛土内に排水材を敷設して排水層を設ける処置だけしか講じておらず、排水対策が十分でなかった。
 なお、盛土材料として使用した現場発生土に雨水等が浸透し飽和状態となった場合を想定して土質試験を実施したところ、土の強度定数は設計に用いた値に比べて著しく小さい値となり、この強度の低下した定数を基に安定計算を行ったところ、補強土壁はその安定が確保できない結果となっている。
 このような事態が生じていたのは、都において、委託した設計業務の成果品の内容が適切でなかったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件補強土壁(工事費相当額14,010,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額8,406,000円が不当と認められる。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

(参考図3)

(参考図3)

補助金 | 平成14年度決算検査報告 | 1

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