会計名及び科目
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道路整備特別会計 (項)道路環境整備事業費
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部局等の名称
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宮城県
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補助の根拠
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土地区画整理法(昭和29年法律第119号)
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補助事業者
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宮城県
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間接補助事業者
(事業主体)
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名取市関下土地区画整理組合
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補助事業
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名取市関下土地区画整理
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補助事業の概要
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都市計画道路を整備するため、平成16、17両年度に、橋台、上部工等を施工するもの
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事業費
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279,586,650円
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上記に対する国庫補助金交付額
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139,793,325円
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不当と認める事業費
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71,039,000円
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不当と認める国庫補助金交付額
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35,519,500円
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この補助事業は、名取市関下土地区画整理組合(以下「組合」という。)が、土地区画整理事業の一環として、名取市増田字関下地内において、建設中の仙台空港アクセス鉄道の軌道の高架下に都市計画道路大手町下増田線を整備するため、平成16、17両年度に、土工、橋りょうの築造等を工事費279,586,650円(国庫補助金139,793,325円)で実施したものである。
このうち、橋りょうは、大手町下増田線が既存の農業用承水路を横断する箇所に、1号橋(上り線部、橋長8.5m、幅員8.7〜9.3m)、2号橋(下り線部、橋長8.5m、幅員18.7〜19.0m)等を築造するものである。
そして、上記の1号橋及び2号橋の橋台の基礎工については、鉄道の橋脚が近接している現場条件等を勘案して「PC−壁体工法」を採用している。この工法は、等辺角形の高強度プレストレストコンクリート杭(縦、横ともに0.6m、長さ15m。以下「PC−壁体」(注1)
という。)を連続して地中に打ち込んで基礎を作り、その上に橋台を施工するものである(参考図参照)
。
本件橋台の設計の基礎となっている設計計算書によると、PC−壁体に作用する曲げモーメント(注2)
、PC−壁体の有効プレストレス(注3)
等を基に、PC−壁体に生ずる曲げ引張応力度(注4)
を計算していた。その結果、1号橋については、右岸側橋台、左岸側橋台のいずれについてもA種のPC−壁体を、また、2号橋については、右岸側橋台にA種のPC−壁体、左岸側橋台にB種のPC−壁体を、それぞれ使用すれば、表1のとおり、常時(注5)
においては曲げ引張応力度が生じず、地震時においては曲げ引張応力度が許容曲げ引張応力度(注4)
を下回っていることから安全であるとして、これにより施工していた。
表1 PC−壁体の応力計算
(単位:N/mm2 )
項目
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箇所
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種類
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常時
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地震時
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曲げ引張応力度
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許容曲げ引張応力度
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曲げ引張応力度
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許容曲げ引張応力度
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1号橋右岸側橋台
同 左岸側橋台
2号橋右岸側橋台
同 左岸側橋台
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A
A
A
B
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0.7
0.7
0.4
0.7
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0
0
0
0
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−0.1
−2.5
−0.4
−2.7
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−3.0
−3.0
−3.0
−3.0
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本件工事について、設計図面、設計計算書等を検査したところ、橋台の基礎工の設計が、次のとおり適切でなかった。
すなわち、A種のPC−壁体を使用することとした1号橋の両橋台及び2号橋右岸側橋台の3基については、設計計算書において、有効プレストレスと地震時の許容曲げ引張応力度の数値に、誤って、これらの数値がA種のPC−壁体より高いB種のPC−壁体の数値を用いていた。
そこで、これらのB種のPC−壁体の数値を実際に施工に用いたA種のPC−壁体の数値に修正して改めて応力計算を行うと、表2のとおり、常時及び地震時において、いずれも曲げ引張応力度が許容曲げ引張応力度を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
表2 PC−壁体の修正応力計算
(単位:N/mm2 )
項目
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箇所
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種類
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常時
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地震時
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||
曲げ引張応力度
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許容曲げ引張応力度
|
曲げ引張応力度
|
許容曲げ引張応力度
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||
1号橋右岸側橋台
同 左岸側橋台
2号橋右岸側橋台
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A
A
A
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−3.3
−3.3
−3.6
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0
0
0
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−4.1
−6.5
−4.4
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−2.0
−2.0
−2.0
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このような事態が生じていたのは、組合において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったこと及び組合に対する宮城県の指導が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋りょうは、設計が適切でなかったため、1号橋の両橋台及び2号橋右岸側橋台並びにこれらに架設された上部工等(これらの工事費相当額71,039,000円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額35,519,500円が不当と認められる。
(注1) | PC−壁体 壁体の引張強度を高めるため、あらかじめ緊張したPC鋼材を配置することにより、コンクリートに圧縮応力を与え、引張応力を打ち消すように設計された断面形状が等辺角形のコンクリート杭。A種、B種及びC種の3種類があり、このうちA種は有効プレストレス及び地震時の許容曲げ引張応力度が最も低いものである。
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(注2) | 曲げモーメント 外力が材に作用し、これを曲げようとする力の大きさをいう。
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(注3) | 有効プレストレス コンクリートにPC鋼材の緊張力で圧縮応力を与えると、時間とともにPC鋼材の引張力の減少やコンクリートの乾燥収縮などにより圧縮応力が減少するため、これらを考慮してあらかじめ与えた圧縮応力のことをいう。
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(注4) | 曲げ引張応力度・許容曲げ引張応力度 「曲げ引張応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち引張側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ引張応力度」という。
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(注5) | 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
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橋りょう一般図