会計名及び科目
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道路整備特別会計 (項)地方道路整備臨時交付金
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部局等の名称
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長野県
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補助の根拠
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道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号)
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補助事業者
(事業主体)
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長野県伊那市(平成18年3月30日以前は上伊那郡長谷村)
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補助事業
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市道上中尾線地方道路交付金
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補助事業の概要
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橋りょうを架け替えるため、平成17年度に橋脚、橋台を築造するもの
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事業費
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43,249,500円
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上記に対する国庫補助金交付額
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23,787,225円
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不当と認める事業費
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28,132,000円
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不当と認める国庫補助金交付額
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15,472,600円
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この補助事業は、長野県伊那市(平成18年3月30日以前は上伊那郡長谷村)が、市道上中尾線地方道路交付金事業の一環として、伊那市長谷中尾地内において、三峰川に架かる橋りょう(橋長94.0m、幅員10.2m)を架け替えるため、17年度に、橋台1基及び橋脚1基の築造等を工事費43,249,500円(国庫補助金23,787,225円)で実施したものである。
このうち、橋脚(高さ10.9m)については、鉄筋コンクリート構造の直接基礎とし、底版の大きさが橋軸方向8.0m、橋軸直角方向12.0m、高さ2.0mとなっている。そして、配筋図によれば、底版下面の橋軸方向に配置される主鉄筋については、径19mmの鉄筋を25cm間隔に配置することとして設計し、これにより施工していた。
本件工事について、設計図面、設計計算書等を検査したところ、橋脚の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、本件橋脚の設計の基礎となっている設計計算書では、橋脚の設計計算を「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編)に基づき行うこととされており、これによると、〔1〕配置される鉄筋に生ずる引張応力度(注1)
が許容引張応力度(注1)
を上回らないこと、〔2〕配置される鉄筋量が最小鉄筋量(注2)
を下回らないことなどの条件を満たすように設計することとなっている。
しかし、前記の設計計算書では、橋脚の底版下面の主鉄筋である25cm間隔に配置する径19mmの鉄筋に生ずる引張応力度は、常時(注3)
244.9N/mm2
、地震時577.7N/mm2
となっていて、許容引張応力度常時160N/mm2
、地震時300N/mm2
を大幅に上回っていた。また、配置する鉄筋量は13,752mm2
となっていて、地震時に必要な最小鉄筋量24,209.8mm2
を大幅に下回っていた。
このように、設計計算書では、前記〔1〕及び〔2〕の設計条件を満足していないことが明確になっているのに、これにより、配筋図を作成し施工したため、本件橋脚は設計計算上安全な範囲を大幅に超えている。
このような事態が生じていたのは、委託した設計業務の成果品が明らかに設計条件を満足しないものであったのに、これに対する同市の検査が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋脚(工事費相当額28,132,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額15,472,600円が不当と認められる。
(注1) | 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
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(注2) | 最小鉄筋量 コンクリート断面に比較して軸方向引張鉄筋量が極端に少ない部材は、設計で想定していない大きな曲げ荷重を受けると、コンクリートのひび割れとともに耐力を減じ急激に破壊するおそれがある。このような急激な破壊を防ぐために必要とされる最小の鉄筋量を「最小鉄筋量」という。
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(注3) | 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
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