会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村振興費 |
部局等の名称 | 近畿農政局 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 | 和歌山県 |
間接補助事業者 (事業主体) |
和歌山県東牟婁郡古座川町 |
補助事業 | 新山村振興等農林漁業特別対策 |
補助事業の概要 | 簡易給水施設を整備するため、平成14年度に配水管の布設、電気滅菌室の建設、もたれ式コンクリート擁壁の築造等を行うもの |
事業費 | 17,059,350円 |
上記に対する国庫補助金交付額 | 8,529,675円 |
不当と認める事業費 | 4,035,471円 |
不当と認める国庫補助金交付額 | 2,017,735円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、和歌山県東牟婁郡古座川町が、新山村振興等農林漁業特別対策事業の一環として、同町蔵土地区において、同地区の17戸の民家等に衛生的な水を供給する簡易給水施設を整備するため、平成14年度に配水管の布設、電気滅菌室の建設、もたれ式コンクリート擁壁(注1)
の築造等を工事費17,059,350円(国庫補助金8,529,675円)で実施したものである。
このうち、もたれ式コンクリート擁壁(高さ1.1m〜2.9m、厚さ0.4m、延長7.1m)は、水の塩素滅菌を電気制御するための電気滅菌室(コンクリートブロック造平屋建て、床面積4.62m2
)の建設用地の三方の法面に施工することとしていたものである(参考図参照)
。
そして、同町では、本件擁壁については法面の保護が目的であるとして安定計算を行うことなく設計図面を作成し、施工していた。
2 検査の結果
検査したところ、もたれ式コンクリート擁壁の設計が、次のとおり適切でなかった。
すなわち、電気滅菌室を建設することにより本件擁壁には、その背面からの土圧及び電気滅菌室(総重量13.0t)の荷重が作用することになるのであるから、本件擁壁については、単に法面の保護のためだけではなく、地盤及び法面の安定が確保できる構造でなければならず、安定計算を行う必要があったと認められるのに、同町では、これを行っていなかった。
そこで、本件擁壁の三面それぞれの安全度を確認するため、「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編)に基づき、擁壁に作用する土圧及び荷重を考慮して安定計算を行ったところ、次のとおり本件擁壁は所要の安全度が確保されておらず、ひいては電気滅菌室等の安全性も確保されていないと認められる。
ア 滑動に対する安定については、その安全率が0.75から0.88となり、三面とも許容値である1.5を大幅に下回っている。
イ 転倒に対する安定については、水平荷重及び鉛直荷重の合力の作用位置が擁壁の底版の中央からつま先部寄りに0.18mから0.41mの位置となり、三面とも転倒に対して安全である範囲、すなわち底版の中央からつま先部寄りに0.10mの範囲を大幅に逸脱している。
ウ 基礎地盤の支持力に対する安定については、三面のうち二面では、擁壁の荷重を底版のつま先部の地盤のみで支持することとなるため、地盤反力度(注2)
が地盤の許容支持力度を著しく上回る結果となっている。
このような事態が生じていたのは、同町において、本件擁壁の設計についての理解が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件擁壁は設計が適切でなかったため、擁壁、電気滅菌室等(工事費相当額4,035,471円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額2,017,735円が不当と認められる。
(注1) | もたれ式コンクリート擁壁 コンクリート擁壁を背面に傾けたものであり、土圧には自重により抵抗するが、単独では自立できない擁壁をいう。 |
(注2) | 地盤反力度 構造物を介して地盤に力を加えたとき、地盤に発生する単位面積当たりの抵抗力をいう。この地盤反力度がその地盤の許容支持力度を超えていなければ、構造物は基礎地盤の支持力に対して安定した状態にあるとされている。 |