ページトップ
  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 不当事項

補助金


(238)港湾環境整備事業の実施に当たり、転落防止柵等の防錆・防食処理の設計及び施工が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 港湾整備特別会計(港湾整備勘定) (項)港湾事業費
部局等の名称 関東地方整備局(平成13年1月5日以前は第二港湾建設局)
補助の根拠 港湾法(昭和25年法律第218号)
補助事業者
(事業主体)
神奈川県
補助事業 湘南港港湾環境整備
補助事業の概要 既設の防波護岸の通路をかさ上げして遊歩道を設置するため、平成12年度から15年度までの間に、護岸工、転落防止柵工等を施工するもの
事業費 356,141,100円  
  (うち国庫補助対象額340,470,900円)
上記に対する国庫補助金交付額 170,235,450円  
不当と認める事業費 31,613,000円 (全額国庫補助対象額)
不当と認める国庫補助金交付額 15,806,500円  

1 補助事業の概要

 この補助事業は、神奈川県が、湘南港港湾環境整備事業の一環として、藤沢市江ノ島地先において、既設の防波護岸の通路をかさ上げして遊歩道を設置するため、平成12年度から15年度までの間に、第1工区から第8工区までの区間について、順次、護岸工、転落防止柵工、門扉工、階段工、健康舗装工等を工事費計356,141,100円(うち国庫補助対象額340,470,900円、国庫補助金170,235,450円)で実施したものである。
 上記のうち、〔1〕転落防止柵工は、高さ1.1mの転落防止柵を延長計1,222.2m、〔2〕門扉工は、門扉を計12基、〔3〕階段工は、手すりを延長計186.6m、〔4〕健康舗装工は、手すりを延長計40.0m設置するなどして施工するもので、上記の〔1〕から〔4〕までの転落防止柵、門扉、手すり(以下、これらを「転落防止柵等」という。)については、それぞれ工場で製作、防錆・防食処理等を行った後に現地に搬入し、防波護岸上部の所定の位置に設置するものである。
 そして、転落防止柵等については、当該施設が海岸線に面していて公共性の高い箇所に設置されることから、環境条件や経済性等を考慮して、鋼材の本体に、重金属を含まない有機金属不動態化塗装(注) を施し、その表面にエポキシ樹脂系塗料の中塗り及びアクリルウレタン樹脂系塗料の上塗りを施す3層からなる塗装等(以下「不動態化塗装等」という。)により防錆・防食処理を行うこととして設計し、これにより施工している。

有機金属不動態化塗装 転落防止柵等製作業者が海外メーカーより技術提供を受けた技術で、鉛、亜鉛等の重金属を含まない塗装処理であり、平成10年頃より国内において使用されている。

2 検査の結果

 検査したところ、本件転落防止柵等の防錆・防食処理に係る設計及び施工が次のとおり適切でなかった。

(1)設計について

ア 同県では、本件各工事の全体設計に当たり、委託した設計業務の成果品に不動態化塗装等の塗装膜の厚さ(以下「塗膜厚」という。)等の仕様が明示されていなかったにもかかわらず、そのまま成果品を受領していた。そして、同県では、設計図書等において、転落防止柵等に係る塗膜厚等の仕様について一切示していなかった。また、実際の工事で使用する不動態化塗装等の塗膜厚に関する承諾願等も提出させていなかった。
イ 先行して発注していた区間(第1工区及び第2工区。いずれも13年度完成。)において、工事完成後に転落防止柵等に錆が発生している状況となっていた。しかし、同県では、これらの状況を認識していたにもかかわらず、その後に発注した区間(第3工区〜第8工区)の工事においても、不動態化塗装等の仕様の検討を十分行わないまま工事を発注していた。

(2)施工について

 転落防止柵等の不動態化塗装等の塗膜厚は転落防止柵等の製作業者(以下「製作業者」という。)が独自に決定しており、先行区間である第1工区及び第2工区では100μm、先行区間の錆の発生後発注された区間である第3工区から第8工区までの6工区では140μmとしていた。しかし、工事完成後に製作業者が提出した施工処理完了証明書において、塗膜厚の記載があったのは第1工区のみであり、同県は、不動態化塗装等の塗膜厚の確認をほとんど行っていない状況であった。
 上記(1)、(2)のことから、本件工事の8工区すべてにおいて、工事完成後1、2年程度以内に転落防止柵等の表面に錆が発生していた。そして、同県はその後全工区において再塗装を施していた。しかし、第1工区から第5工区までの5工区では、再塗装が施されていたにもかかわらず、17年2月の会計実地検査時においても、ほぼ全延長にわたり、主に転落防止柵等の海側の表面に錆が発生していたり、塗装がはく離していたりしている状況であった。
 また、転落防止柵の塗膜厚を計測したところ、再塗装されていることもあり、第1工区及び第2工区では67.2μmから439μm、第3工区から第8工区までの6工区では57.9μmから389μmと不均一な状態となっており、計測した6,800箇所のうち2,200箇所(約32%)において、製作業者が独自に決定した上記の塗膜厚を下回っていた。
 このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品の内容が適切でなかったにもかかわらずこれに対する検討が十分でなかったこと、転落防止柵等に対する施工管理が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件転落防止柵等の防錆・防食処理(工事費相当額31,613,000円)に係る設計及び施工が適切でなかったため、急速に錆が発生し、塗装もはく離している状況となっており、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額15,806,500円が不当と認められる。

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 1

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 2

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 3

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 4

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 5

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 6

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 7

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 8

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 9

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 10

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 11

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 12

補助金 | 平成16年度決算検査報告 | 13