会計名及び科目 | 道路整備特別会計 (項)道路事業費 |
部局等の名称 | 神奈川県 |
補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号) |
補助事業者 (事業主体) |
神奈川県伊勢原市 |
補助事業 | 市道89号線道路整備 |
補助事業の概要 | 駅前広場を整備するため、平成15年度に道路用地を取得するもの |
事業費 | 201,825,360円 | (うち国庫補助対象額201,823,680円) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 100,911,840円 | |
不当と認める事業費 | 3,822,450円 | (うち国庫補助対象額3,822,418円) |
不当と認める国庫補助金交付額 | 1,911,209円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、神奈川県伊勢原市が、市道89号線道路整備事業の一環として、駅前広場を整備するため、平成15年度に、土地(宅地)764.49m2
を用地費201,825,360円(国庫補助金100,911,840円)で取得したものである。
同市では、公共事業の施行に伴う損失の補償について、「公共用地の取得に伴う損失補償基準」(昭和37年用地対策連絡会決定)等(以下「補償基準等」という。)により行うこととしている。
補償基準等によれば、公共事業の実施により土地を取得するに当たっては、正常な取引価格をもって補償することとされており、この正常な取引価格は、近傍地等の取引価格を基準として、これらの土地及び取得する土地の位置、形状、地積その他一般の取引における価格形成上の諸要素(以下「個別的要因」という。)を総合的に比較考量して算定するものとされている。
同市では、土地の取得に当たっては、取得の対象となる土地ごとに不動産鑑定業者から鑑定評価を求め、この鑑定評価に基づいて土地の価格を算定することにしている。
そして、同市では、本件土地の隣地の取得に当たっては、鑑定評価に基づいて1m2
当たりの土地単価を264,000円として用地費を算定していたが、本件土地については、地方税法(昭和25年法律第226号)に基づく固定資産評価に係る土地単価が隣地とほぼ同額であるとして、鑑定評価を求めずに、隣地の1m2
当たりの土地単価と同じ単価で用地費を算定していた。
2 検査の結果
検査したところ、用地費の算定が次のとおり適切でなかった。
すなわち、同市では、前記のとおり、本件土地及び隣地の取得に当たり用地費を同一の土地単価に基づき算定していたが、この同一単価の根拠とした固定資産評価に係る両土地の土地単価をみると、本件土地単価は隣地を4.0%下回っていた。
また、個別的要因を比較するに当たって適用することとされている「土地価格比準表」(昭和50年国土地第4号国土庁地価調査課長通達)等によれば、土地の形状については、隣地がやや不整形な長方形地であるのに対し、本件土地は間口から奥に向かって扇形に広がり、有効宅地部分がやや入り組んだ形状の不整形地であることから、隣地に対して減価する必要がある。さらに、本件土地が所在する混在住宅地域(注)
の標準的な宅地面積が100m2
から200m2
とされ、隣地が260.75m2
であるのに対し、本件土地は764.49m2
と隣地の3倍程度の面積となっていて、標準的な規模の宅地として利用する場合に使用できない土地が生ずることなどから、減価する必要がある。
上記のように、両土地には差異があるのに、同市が本件土地の取得に当たって、個別的要因を比較考量せずに、隣地の1m2
当たりの土地単価をそのまま本件土地の単価として採用し、これにより用地費を算定したのは適切ではないと認められた。
そして、17年4月の本件土地に係る用地費の会計実地検査の後、本院の指摘を受けて同市が不動産鑑定業者に依頼した鑑定評価によれば、本件土地の取得時における1m2
当たりの土地単価は259,000円で、隣地の価格を下回るものとなっていた。
このような事態が生じていたのは、同市において用地費の算定に当たって、近傍の取引事例との個別的要因の比較考量が十分に行われていなかったことなどによると認められる。
したがって、前記の鑑定評価額に基づき本件用地費を算定すると198,002,910円となり、本件用地費はこれに比べて3,822,450円過大となっており、これに係る国庫補助金相当額1,911,209円が不当と認められる。