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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 不当事項

補助金


(243)街路事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)地方道路整備臨時交付金
部局等の名称 兵庫県
補助の根拠 道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号)(平成15年3月31日以前は「道路整備緊急措置法」(昭和33年法律第34号))
補助事業者
(事業主体)
兵庫県
補助事業 都市計画道路山手幹線緊急地方道路整備
補助事業の概要 橋りょうを新設するため、平成14年度から16年度までに、橋台、上部工等を施工するもの
事業費 198,158,100円 (うち国庫補助対象額180,609,381円)
上記に対する国庫補助金交付額 99,335,159円  
不当と認める事業費 81,353,000円 (うち国庫補助対象額81,071,000円)
不当と認める国庫補助金交付額 44,589,050円  

1 補助事業の概要

 この補助事業は、兵庫県が、都市計画道路山手幹線(起点尼崎市戸ノ内町、終点神戸市長田区)の街路事業の一環として、尼崎市高田町地内において、橋りょう(橋長21.8m、幅員19.0mのうち1期施工分10.9m)を新設するなどのため、平成14、15両年度に、鋼管杭基礎による橋台2基の築造及びプレストレストコンクリート桁(以下「PC桁」という。)の製作等(以下、これらを「下部工工事」という。)を、16年度に、PC桁の架設等(以下「上部工工事」という。)を工事費計198,158,100円(うち国庫補助対象額180,609,381円、これに対する国庫補助金99,335,159円)で実施したものである。
 このうち、上部工工事においては、橋台とPC桁の接点である支承部について、次のとおり設計図面を作成し、これにより施工していた。
〔1〕 終点側の橋台(以下「A1橋台」という。)の支承部は橋台とPC桁とを一体化する固定支承、起点側の橋台(以下「A2橋台」という。)の支承部は温度変化等によるPC桁の伸縮に追従できる可動支承とし、両橋台とPC桁との間にゴム製の支承板を設置する。
〔2〕 地震による落橋を防止するなどのため、両橋台にアンカーバー(径46mm)の下部を埋め込む(片側13箇所、計26箇所)。
〔3〕 その上部に、固定支承となるA1橋台側においては円形断面(内径60mm)のアンカーキャップを、可動支承となるA2橋台側においては小判形断面(内径133mm×63mm)のアンカーキャップを、それぞれかぶせた上、PC桁とPC桁との間に間詰コンクリートを打設する。

2 検査の結果

 検査したところ、橋りょうの設計が、次のとおり適切ではなかった。
 すなわち、橋りょうの施工箇所には、水道事業者の導水管が埋設されているが、同県では、同事業者の保有している資料等に基づき、その位置は橋台の施工には支障がないと推測し、当初、A1橋台側を固定支承、A2橋台側を可動支承とすることとして橋台及び支承部の設計を行っていた。しかし、下部工工事の施工に当たり、同県が現地でボーリング調査等を行ったところ、導水管がA1橋台底版の施工予定位置に埋設されていることが判明したことから、A1橋台の底版を縮小したり根入れ深さを浅くしたりするなど設計を変更する必要が生じた。このため、同県では、当初の設計とは逆に、A1橋台側を地震時において橋台に作用する水平力がより小さい可動支承、A2橋台側を固定支承とすることとして設計計算を行い、これに基づき下部工工事の両橋台を次のとおり設計し、これにより施工していた。
〔1〕 A1橋台については、基礎杭(外径800mm、杭長15.5m)は9本とし、縦壁の主鉄筋は径16mmの鉄筋を25cm間隔に配置し、底版上面側の主鉄筋は径22mmの鉄筋を25cm間隔に配置する。
〔2〕 A2橋台については、基礎杭(外径800mm、杭長13.5m)は13本とし、縦壁及び底版上面側の主鉄筋は、いずれも径32mmの鉄筋を25cm間隔に配置する。
 しかし、上部工工事の支承部については、下部工工事の設計変更に伴って必要となる変更を行うことなく当初の設計と同じ図面のまま、前記のとおりA1橋台側を固定支承、A2橋台側を可動支承とし、これにより施工していた(参考図参照)
 このため、固定支承となったA1橋台側においては、地震時において、橋台に作用する水平力が、設計変更後の設計計算書において可動支承として計算していた数値より増加することになることから、改めてA1橋台について安定計算及び応力計算を行うと、次のような結果となり、いずれも設計計算上安全な範囲を大幅に超えている。
〔1〕 基礎杭1本当たりの軸方向引抜き力(注1) が799kNとなり、許容引抜き力(注1)520kNを大幅に上回っている。
〔2〕 基礎杭頭部の変位量が18mmとなり、許容変位量15mmを大幅に上回っている。
〔3〕 縦壁の主鉄筋に生ずる引張応力度(注2) が401N/mm 、底版上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度が477N/mm となり、いずれも許容引張応力度(注2) 300N/mm を大幅に上回っている。
〔4〕 底版のコンクリートに生ずるせん断応力度(注3) が0.37N/mm となり、許容せん断応力度(注3) 0.26N/mm を大幅に上回っている。
 このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件橋りょうは、設計が適切でなかったため、A1橋台及びこれに架設されたPC桁等(これらの工事費相当額81,353,000円、うち国庫補助対象額81,071,000円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額44,589,050円が不当と認められる。

(注1) 軸方向引抜き力・許容引抜き力 「軸方向引抜き力」とは、構造物に地震力などの横方向荷重が作用する場合に、杭を引き抜こうとする力が作用するが、このときの杭1本当たりに作用する力をいう。その数値が設計上許される上限を「許容引抜き力」という。
(注2) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注3) せん断応力度・許容せん断応力度 「せん断応力度」とは、外力が材に作用し、これを切断しようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容せん断応力度」という。

(参考図)

上部工工事で施工した支承部の概念図

上部工工事で施工した支承部の概念図

補助金の図3

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