震災復興特別交付税の額の算定に当たり、見込額を用いた算定額により交付された震災復興特別交付税について適切に精算が行われていなかったり、補助事業等に係る地方負担額に算定対象とならない経費が含まれていたりするなどしていて、震災復興特別交付税が過大に交付されている事態、及び交付基礎額が要調整額に比べて少額であるなどのため短期間で要調整額を解消することが困難となっている事態が見受けられた。したがって、総務省において、各府省に対して、確認表に記載する補助金の確定額、補助事業等に係る地方負担額等の記載方法及び記載誤りの例について周知徹底したり、都道府県及び市町村が実績額への反映を行ったことや算定対象となる経費であることを確認するための点検項目欄を算定資料の様式に設けるなどしたり、交付基礎額が要調整額に比べて少額であるなどのため解消することが困難となっている要調整額について、当該要調整額を解消するための方策を早期に検討したりする要がある。(過大に交付された震災復興特別交付税約28億5350万円及び短期間で解消することが困難な要調整額約13億9610万円、計約42億4970万円)
② 消防救急デジタル無線施設の整備事業に係る補助対象事業費について(総務省)
各市町村消防の管轄区域内における通常の消防救急業務の通信のために日常的に使用される電波の周波数に係る部分(以下「活動波部分」という。)と大規模災害の際に異なる市町村の消防職員間での通信に使用される電波の周波数に係る部分(以下「共通波部分」という。)で共用する電源設備、車載無線機等(以下「共用施設等」という。)に係る補助対象事業費の算定に関する具体的な取扱いが定められていないことなどから、市町村が負担すべき通常の消防救急業務に使用する活動波部分の経費を除外することなく共用施設等の整備に係る経費の全額を補助対象事業費としている事態が見受けられた。したがって、消防庁において、消防救急デジタル無線施設のうち共用施設等に係る補助対象事業費の算定に関する具体的な
取扱いを定める要がある。(国庫補助金交付額と緊急消防援助隊の活動に資する経費のみを補助対象事業費とした場合の補助金相当額との差額約3億2160万円のうち、東日本大震災関係経費は約3億0940万円)
③ 拠出を必要とする額を邦貨で算定する場合における国際機関等に対する拠出金の拠出について(外務省)
外務省は、拠出を必要とする額を邦貨で算定した上で国際機関等に拠出金を拠出する場合に、邦貨額で算定した拠出を必要とする額を過不足なく拠出するために必要となる事務手続を定めていなかったことなどのため、拠出を必要とする額を超過して拠出していたり、拠出を必要とする額に対して不足していたりしている事態が見受けられた。このため、外務省において、事務手続を定めて、拠出を必要とする額を邦貨で算定した上で国際機関等に対して拠出金を拠出する場合、当該国際機関等との間で拠出金額を邦貨で伝達し、要請を受けることなどにより、拠出を必要とする額を過不足なく拠出することとする処置を講じた。(拠出を必要とする額に対して超過又は不足を生じていた金額約23億5910万円)
④ 緊急雇用創出事業の実施に必要な機器等のリース料の算定について(厚生労働省)
都道府県等が民間企業等に委託して実施した緊急雇用創出事業について、同事業の終了後も自らの負担によるなどして事業を継続することが予定されていたにもかかわらず、法定耐用年数等の合理的な基準よりも短い事業期間等をリース期間と設定して算定したリース料を緊急雇用創出事業の対象経費としている事態が見受けられた。このため、厚生労働省において、委託者と受託者との間で文書等により事業の終了後における当該事業によらない事業の継続について合意があったとみなされる場合は、原則としてリース物件の法定耐用年数をリース期間として設定し、リース期間を通じた均等払いとすることとして、事業期間等に発生した分のリース料のみを事業の対象経費とする処置を講じた。(東日本大震災関係経費を含む過大に算定されていたと認められたリース料に対する緊急雇用創出事業臨時特例交付金相当額約6億4220万円)
⑤ 研究に関する委託事業により取得した物品の管理について(農林水産省)
農林水産省が実施する研究に関する委託事業において、受託者等が取得した物品について、委託事業終了後に、委託契約書等に基づく継続使用の承諾の手続を経ないまま引き続き受託者等に取得物品を使用させていたり、取得物品が無断で処分されたり、紛失したり、遊休したりなどしている事態が見受けられた。したがって、農林水産省において、速やかに継続使用の承諾の手続を行ったり、無断で処分されるなどしている取得物品について残存価額を納付させるなどしたり、遊休している取得物品についてその引渡しを受けて有効活用を図るなどしたりするとともに、委託事業終了の際、継続使用の承諾の手続等を適切に行ったり、受託者等に対して継続使用する取得物品を善良なる管理者の注意をもって管理するなどするよう周知徹底を図ったり、取得物品の管理を適切に行うための実効性のある体制を整備したりするよう処置を講ずる要がある。(このうち、東日本大震災関係経費は約240万円)
配合飼料価格安定対策事業の実施に当たり、後年度に分割納付させることとした異常補填積立金の納付を確約させる措置を執っていなかったり、公益社団法人配合飼料供給安定機構において、補助金勘定と積立金勘定の両勘定間の運用益の残高の開差額が異常補填交付金の財源として活用できない状況となっていたり、貸付けについて明確な根拠がないまま補助金勘定から積立金勘定に貸し付けられていたりするなどの事態が見受けられた。このため、農林水産省は、同機構から一般社団法人全国配合飼料供給安定基金等3法人に対して、今後の積立金の納付を確約させたり、同機構に対して、補助金勘定における運用益を含む資金について活用する要件を定めるなどするとともに、勘定間貸付けの返還に係る手続等を定めさせたりする措置を講じた。(納付を確約させる措置を執っていなかった異常補填積立金額に相当する補助金額171億9000万円(背景金額)、異常補填交付金の財源として活用できない状況となっていた補助金の運用益の額及び根拠なく積立金勘定に貸し付けられていた補助金額の合計約190億4860万円(指摘金額))
農林水産省は、東北地方太平洋沖地震により引き起こされた津波により農地が受けた塩害を除去する除塩事業を補助事業等により実施している。しかし、宮城県において、農地の塩分濃度は、降雨等の影響により低下する可能性があるにもかかわらず、除塩作業の実施前に塩分濃度を再測定して除塩作業の必要性を検討していない事態が見受けられた。このため、農林水産省において、降雨等の影響により塩分濃度の低下が見込まれる場合には、事業主体において除塩作業の実施前に塩分濃度を再測定して除塩作業の必要性を検討することを除塩マニュアルに明記するとともに、地方農政局等に対して通知を発して除塩マニュアルの内容を周知徹底する処置を講じた。(指摘の背景となった除塩作業の実施前に塩分濃度を再測定せずに除塩作業を開始した契約に係る国庫補助金額約9億4120万円)
⑧ 自家発電設備導入促進事業等の効果の把握について(経済産業省)
資源エネルギー庁は、東日本大震災の影響等によって電力需給がひっ迫するなどの地域において、電力需給状況の安定化に資することを目的として、民間団体等が電気事業者への電気の供給等のために、重油、ガス、石炭等を燃料として使用する自家発電設備の新増設・増出力等を行う場合に必要な費用を補助するなどの自家発電設備導入促進事業等を実施している。しかし、事業の実施期間中や終了後の自家発電設備の運転状況が低調となっているなどしており、実施済みの事業の効果を把握した上で検証して、翌年度以降の事業にその検証結果を十分に反映させないまま事業を継続してきた事態が見受けられた。したがって、資源エネルギー庁において、同事業の事業効果について改めて検証を行うとともに、将来同様の緊急措置的な事業を実施する場合に備えて、事業効果を把握して検証する方法についての知見を蓄積して、これを活用する方法を検討する要がある。(東日本大震災を含む指摘の背景となった国庫補助金交付額約100億4830万円)
⑨ コンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍について(経済産業省)
経済産業省が、一般社団法人日本出版インフラセンターを補助事業者として実施したコンテンツ緊急電子化事業により電子化された書籍について、経済産業省等が配信状況を把握していなかったことから、調査を求めたところ、配信状況が確認できた書籍の一部について、配信が可能な状態になっていない事態が見受けられた。したがって、経済産業省において、電子化された書籍の配信状況を把握した上で、出版社等に著作権者の許諾を得るようにさせたり、出版社等において配信するための技術的な修正を完了させたりして、配信が可能な状態になるように一般社団法人日本出版インフラセンターに指示することにより、電子書籍の流通の促進が図られるよう処置を講ずる要がある。(配信が可能な状態になっていなかった書籍に対する国庫補助金交付額約5600万円)
⑩ 地域公共交通確保維持改善事業費補助金によるノンステップバスの導入及びその活用の状況について(国土交通省)
国土交通省では平成32年度までにノンステップバスの普及率を約70%とする目標を定めているが、補助事業者が導入目標等を定めていなかったり、バスターミナルにおいて、高齢者、障害者等の安全かつ円滑な移動が確保されていなかったり、高齢者、障害者等に対する補助事業者の取組が十分でなかったり、交通計画の策定に際して協議会が十分機能していなかったりする事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、補助事業者に対して、普及率の目標を考慮して各年度の導入目標を定めるなどの具体的な取組を行うことの重要性、バスターミナルの移動等円滑化の必要性、高齢者、障害者等のための取組の必要性、また、協議会等に対して、開催方法等をより明確化するなど協議会の在り方について周知する要がある。(事態の背景となる補助事業の国庫補助金相当額約28億7110万円)
⑪ 国庫補助事業等により実施される工事等に直接必要となるものではない保管管理システムのデータ登録に係る費用について(国土交通省)
茨城、千葉両県は、工事契約又は業務契約において得た電子成果品のデータについて、公社等に保管管理システムに登録させていた。しかし、この登録作業については、県職員が当該契約終了後に新たな工事又は業務を実施するに当たり、各種説明資料を作成するなどの際に電子データを再利用等するために行うものであることから、工事等の実施に直接必要となる費用に該当するものではないのに、保管管理費を国庫補助金等の対象経費として交付申請していた事態が見受けられた。このため、国土交通省において、保管管理費については、国庫補助事業等の実施に直接必要な費用でないことから、国庫補助金等の対象にならないことを周知して、国庫補助金等の交付が適切に行われるよう処置を講じた。(国庫補助金等の対象経費として計上していた保管管理費に対する国補助金等相当額約2980万円)
⑫ 防災拠点施設に設置する蓄電池設備の耐震性について(環境省)
各道府県に対して地域環境保全対策費補助金等を交付し、再生可能エネルギー等導入地方公共団体支援基金等を造成して実施させる事業において、防災拠点施設に設置された蓄電池設備の耐震性等について検査したところ、耐震設計に関する検討を行っておらず蓄電池設備をアンカーボルト等により固定していなかったり、蓄電池設備をアンカーボルトにより固定しているものの、耐震設計計算上の検討を全く又は十分に行っておらずアンカーボルトの選定が適切でなかったりしていて、所要の耐震性が確保されていない事態が見受けられた。したがって、環境省において、事業主体に対して、耐震性が確保されていない蓄電池設備について必要な耐震措置を講じさせたり、耐震性を確保するための準拠すべき具体的な指針、耐震設計計算上の留意点等を明示したガイドライン等を整備して、事業主体に対して周知徹底したりなどする要がある。(所要の耐震性が確保されていない蓄電池設備に係る国庫補助金相当額計約4億0290万円)
⑬ 東日本大震災復興特別会計予算により取得した物品の管理について(防衛省)
陸上、海上、航空各自衛隊(以下「各自衛隊」という。)において、物品管理簿に一般会計予算により取得した物品と東日本大震災復興特別会計(以下「復興特会」という。)の予算により取得した物品を区別することなく記録していて、物品管理簿の記録の内容に基づいて復興特会に係る物品増減及び現在額報告書に記載すべき事項を明らかにした書類(以下「復興物品報告書類」という。)の基礎資料を作成することができない状況となっている事態が見受けられた。したがって、防衛省内部部局において、復興物品報告書類の基礎資料は物品管理簿の記録の内容に基づいて作成する必要があることについて、各自衛隊の物品管理官等に周知徹底するなどの処置を講ずる要がある。(物品増減及び現在額報告書に増減が記載されていなかった重要物品約168億2210万円)
⑭ 防衛装備品のライフサイクルコスト管理の実施について(防衛省)
防衛省は、防衛装備品のライフサイクルコスト(以下「LCC」という。)の面からの管理を行っている。しかし、LCCの算定に当たり、契約金額等のデータの収集等が適切でなかったり、部隊整備等に係る人件費を算定していなかったりしている事態及びLCCの検証に当たり、一部の費目について差異分析を行っていなかったり見積量産単価を算定していなかったりしている事態が見受けられた。したがって、防衛省において、LCC管理の目的の達成を図るために、今後のLCCの見積値の算定や見積値の実績値への更新を適切に行うとともに、これに基づく差異分析等の検証を適切に行い、その結果を防衛装備品の取得の意思決定等に適切に活用することができる方策を講ずる要がある。(指摘の背景となった復興特会予算を含む防衛装備品14品目の契約金額等約5兆2013億円)
⑮ 災害時における駐屯地等の機能強化を図るための非常用電源施設の整備及び電力供給対象施設の選定について(防衛省)
災害時における駐屯地等の機能強化を図るための非常用電源施設の整備及び電力供給対象施設の選定に当たり、既存自衛隊施設の耐震安全性に関する施設分類等の情報を十分に把握していない事態が見受けられた。このため、防衛省において、既存自衛隊施設の耐震安全性に関する施設分類等に関する情報を記載する様式を定めるとともに、これを基本計画の承認を受ける際に添付させることとして、既存自衛隊施設ごとの基本的性能基準に基づく重要度等を把握して、電力供給対象施設の選定に活用する処置を講じた。(指摘の背景となった既存自衛隊施設の施設分類等の情報を十分に把握しないまま実施された非常用発電機の整備を含む工事の契約金額相当額約102億5680万円)
⑯ 無人観測船用放射線測定システムの管理・運用について(独立行政法人日本原子力研究開発機構)
独立行政法人日本原子力研究開発機構が、物品を第三者が所有する機械装置等に設置して使用する場合等に、設置の根拠となる契約等を確認することとなっていなかったことなどにより、無人観測船に設置して使用する無人観測船用放射線測定システムが購入の目的である福島沖での放射線モニタリングの技術開発に使用されていないなどの事態が見受けられた。このため、同機構において、無人観測船用放射線測定システムの設置対象となる無人観測船による海底放射能の測定に係る契約を新たに締結するとともに、通達を発するなどして、第三者が所有する機械装置等に設置して使用する物品について、購入時に機械装置等に設置する根拠となる契約等を確認することとするなどの処置を講じた。(購入の目的に沿って使用されておらず適切に管理されていなかった物品の取得価額約3460万円)