(一般会計)
昭和40年度歳入歳出決算額は、歳入201億2741万余円、歳出3967億7694万余円で、歳出決算額のうちおもなものは食糧管理ほか5特別会計に対する繰入金1826億2319万余円、地方公共団体等の施行する事業に対する国庫補助金、負担金、交付金および補給金1553億6654万余円、国が直轄でまたは都道府県に委託して施行した土地改良等の事業費234億9477万余円である。上記の国庫補助金は216費目1407億6017万余円に上っており、そのうち公共事業関係は土地改良、災害復旧等の事業に対する121費目978億8516万余円であり、公共事業関係以外は農業構造改善事業等に対する95費目428億7500万余円となっている。
国が直轄で実施した工事は、かんがい排水事業、開墾建設事業および漁港修築事業等202億7641万余円となっており、41年中、これらのうち80億9720万余円を実地に検査したところ、別項記載のとおり、道路工事の施行にあたり敷砂利等の価格を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの
があり、また、国営かんがい排水事業の施行について
、41年7月、農林大臣あて改善の意見を表示した。
公共事業関係の国庫補助金については、41年中、その事業の実施および経理について実地に検査したところ、別項記載のとおり、国庫補助金等の経理当を得ないもの
がある。
公共事業関係を除く国庫補助金については、41年中、その交付および使用の状況について実地に検査するとともに、既往年度に施行した補助事業により取得した施設等のその後の管理状況等の適否を調査したところ、別項記載のとおり、農業構造改善事業等において国庫補助金の経理当を得ないもの
、農業改良資金助成補助金を財源とする都道府県の貸付金の運営当を得ないもの
があるほか、次のとおり留意を要すると認められるものがある。
なお、災害復旧事業については、事業費査定の適否につき検査したところ、別項記載のとおり、査定額を減額させたもの
がある。
(補助事業により取得した施設等の管理について)
昭和37年度以降農業構造改善事業等の補助事業により市町村、各種組合等が取得した乳牛舎、鶏舎等の農業施設およびトラクタ等の農業機械について、552件18億2007万余円につきその利用状況を実地に調査したところ、取得にあたり現地の土地条件、作付体系、ほ場整備の状況、その他関連する事業の進ちょく状況、関係農家の利用体制などについての検討が十分でなく、また、その後も利用運営について適切な対策を講じていないなどのため、乳牛舎、鶏舎等の農業施設およびトラクタ等の農業機械が全く使用されていなかったり、わずかに使用されただけで遊休化していたり、または使用されてはいるが効率的でなかったりしていて、取得後の管理が適切を欠くと認められるものが97件1億4076万余円見受けられた。
ついては、これら施設および機械の効率的な利用を図るよう適切な処置を講ずるとともに、今後の事業採択にあたっては実施後の利用運営の見込について十分配慮の要があると認められる。
(食糧管理特別会計)
本特別会計は、国内米管理、国内麦管理、輸入食糧管理、農産物等安定、砂糖類、輸入飼料、業務および調整の各勘定に区分して経理している。
(1) 国内米管理勘定、国内麦管理勘定および輸入食糧管理勘定(以下「食糧管理勘定」という。)の昭和40年度歳入歳出決算額の合計は歳入1兆3718億6246万余円、歳出1兆3658億7369万余円であり、その損益についてみると、
(ア) 国内米管理勘定においては、国内米の買入717万余トン(トン当り平均108,407円)、売渡665万余トン(トン当り平均95,649円)などによって生じた売買損失669億9360万余円と集荷、運搬、保管および事務人件費等の費用から違約金等の収益を差し引いた額(以下「中間経費」という。)664億5908万余円とにより1334億5268万余円の損失を生じており、
(イ) 国内麦管理勘定においては、国内麦類の買入121万余トン(トン当り平均小麦45,352円、大麦39,217円、はだか麦46,870円)、売渡104万余トン(トン当り平均小麦32,052円、大麦27,284円、はだか麦30,543円)などによって生じた売買損失174億2682万余円と中間経費68億1342万余円とにより242億4025万余円の損失を生じており、
(ウ) 輸入食糧管理勘定においては、外国米の買入107万余トン(トン当り平均58,014円)、売渡94万余トン(トン当り平均84,554円)および外国麦類の買入262万余トン(トン当り平均27,247円)、売渡259万余トン(トン当り平均36,143円)によって生じた売買利益469億9591万余円と中間経費74億9761万余円とにより差引394億9830万余円の利益を生じている。
上記の食糧管理勘定の利益394億9830万余円および損失1576億9293万余円と業務勘定の利益50億8190万余円を調整勘定に移して整理した結果、1131億1273万余円の損失を生じたので、その損失相当額を一般会計から受け入れた調整資金の40年度末現在額1275億7203万余円(うち40年度受入額1205億円)から減額して処理した。
(2) その他の勘定についてみると、
(ア) 農産物等安定勘定においては、でん粉の買入5万余トン(トン当り平均47,763円)、売渡8万余トン(トン当り平均49,659円)によって生じた売買利益5億2041万余円と中間経費5億2730万余円とにより差引689万余円の損失を生じており、これは41年度への繰越損失として処理している。
(イ) 砂糖類勘定においては、てん菜糖等の買入20万余トン(トン当り平均87,064円)、売渡32万余トン(トン当り平均64,791円)によって生じた売買損失52億8969万余円と中間経費11億6303万余円とにより64億5273万余円の損失を生じているが、砂糖の価格安定等に関する法律(昭和40年法律第109号)の施行に伴い国内産砂糖類等を40年10月から糖価安定事業団が取り扱うこととなったので、41年度以降砂糖類勘定を廃止し、繰越損失は農産物等安定勘定に帰属させることとなった。
(ウ) 輸入飼料勘定においては、輸入ふすまおよび飼料用外国麦類等の買入159万余トン(トン当り平均27,322円)、売渡151万余トン(トン当り平均26,248円)などによって生じた売買損失13億7883万余円と中間経費19億9866万余円とにより33億7749万余円の損失を生じており、同勘定は一般会計から34億円を受け入れてこれを補てんしている。
(3) 40年度中に取り扱った食糧等の所要経費は、買入費1兆0275億5016万余円、集荷、運搬、保管等に要する管理費402億4237万余円ならびに食糧証券の償還および利子支払等に充てるための国債整理基金特別会計への繰入3515億6968万余円等総額1兆4449億0219万余円で、この財源には食糧等の売払代9079億9973万余円、一般会計から受入1314億5951万余円および食糧証券収入4060億9000万円等総額1兆4524億0540万余円を充てている。
しかして、41年中、食糧庁および北海道ほか26食糧事務所について実地に検査したところ、次のとおり留意を要すると認められるものがある。
(外国麦類の包装用麻袋の使用について)
食糧庁で、外国麦類の包装を輸入商社等の申請により新麻袋または古麻袋で行なわせてこれを買い入れ外国麦類とともに製粉業者等に売り渡しているが、麻袋の売渡価格は麦製品の消費者価格に影響を与えないよう考慮して買入価格を下回るところで決定されているため、昭和40年度に使用した麻袋は3108万余枚でその財政負担は約14億円の多額に上っている。このうち売買差損の大きいものは新麻袋であって、その使用実績は288万余枚(買入価額5億1693万余円)となっている。
しかして、新麻袋の使用にあたっては、過去6箇年度の古麻袋の平均回収率72.3%から推算した古麻袋の年度供給見込量が年度所要量に対し不足する数量の範囲内で行なうこととしているものであるが、最近においては、麻袋込みで輸入された外国米の売渡数量の増加に伴い、その空麻袋の発生量が増加しているなどのため、供給過剰の傾向にあり、古麻袋の回収率も38年度は84.1%、39年度は88.2%となっている状況であるから、前記回収率(72.3%)に基づく需給推算は実情にそわないものとなっている。
ついては、麻袋の需給推算および使用にあたっては、最近の古麻袋の回収率および外国米から発生する空麻袋の数量等を考慮して供給見込量の算定を適切に行ない、また、古麻袋の需給事情などを適確には握し、経済的な麻袋の使用を図るよう配慮する要があると認められる。
(国内米の運送契約単価の算定について)
政府所有食糧等の運送に伴い支払われる諸掛の契約単価は、契約年度に最も近接した既往1箇年(米穀年度)に実施した運送数量について、陸上、船舶および中継の運送形態別、県間、県内の運送区分別ならびに俵、かますおよび麻袋等の包装別等の実態調査を行ない、集計された区分別の運送数量に契約時の各種認可料金等を適用してトン当り料金を算出することとしており、この料金が包装込みの重量に対し支払われることとなっているので、集計された包装別数量を国内米(60キログラム入り)のトン当り標準個数、俵入り15.3個、かます入り15.8個、麻袋入り16.4個で加重平均してトン当り個数を求め1個当りの単価を算定することとしている。
しかして、昭和40年度中、上記方法により求めた国内米のトン当り個数は、県間運送の場合は発地15.612個、着地15.571個、県内運送の場合は15.760個とし、陸上運送した国内米5714万余個について運送諸掛38億9505万余円を支払っている。
しかしながら、本院で38年度契約分以降における実態調査結果の包装別数量を調査したところ、包装容器の合理化等のため逐年俵入りのものの数量が減少している一方、麻袋入りのものの数量が急速に増加している状況であるから、包装の大部分が俵入りであった当時に決定された現行の方式で俵、かますおよび麻袋を一本化して契約単価を算定することは、包装の変化に即応しないばかりでなく、包装重量の重い俵入りのものの運送数量を多く見積る割高な契約単価になっているものと認められる。
ついては、最近における国内米の包装別数量の変化に伴い現行の契約単価の算定方式を改め、包装別運送数量の実態調査結果を基礎としてトン当り料金を算出のうえ、前記トン当り標準個数で契約単価を算定し、運送した包装別の数量に応じて、その料金を支払うよう検討する要があるものと認められる。
(国有林野事業特別会計)
本特別会計は、国有林野事業および治山の両勘定に区分して経理している。
(1) 昭和40年度の国有林野事業勘定の収益総額は1033億7473万余円、これに対し費用総額は1036億6945万余円、差引き当年度損失2億9472万余円を計上していて、これを前年度に比べると、41億2281万余円の利益の減少となっている。
40年度における事業実施状況をみると、販売事業においては、立木1638万余立方メートル443億2498万余円、素材538万余立方メートル等532億3748万余円合計975億6246万余円の売渡を行ない、一方、製品生産事業は素材554万余立方メートル等の生産を187億3958万余円で、造林事業は8万余ヘクタールの新植および58万余ヘクタールの保育等を156億5611万余円で、林道事業は自動車道1千余キロメートルの新設等を185億7613万余円で、国有林野内の治山事業は崩壊地復旧2千余ヘクタール等の山地治山施設の新設等を57億6532万余円で、それぞれ行なっている。
また、同年度末現在における国有林野面積は856万余ヘクタールであって、そのうち要存置林野は、855万余ヘクタール、不要存置林野は、9千余ヘクタールとなっている。なお、同年度中において民有保安林等8千余ヘクタール7億0244万余円の買入、不要存置林野1千余ヘクタール8億3249万余円の売払および受財産3千余ヘクタール3億7432万余円と渡財産1千余ヘクタール5億8100万余円との交換を行なっている。
しかして、41年中、林野庁、各営林局および稚内ほか87営林署について実地に検査したところ、別項記載のとおり、直轄治山工事の施行が設計と相違しているもの
があり、また、国有林野の交換
について、41年12月、農林大臣あて改善の意見を表示した。
(2) 40年度の治山勘定の歳入歳出決算額は、歳入149億3011万余円、歳出148億6277万余円で、歳入においては一般会計より受入143億7090万円、地方公共団体工事費負担金収入4億9346万余円等、歳出においては直轄治山関係事業費20億0829万余円および地方公共団体施行の治山事業に対する国庫補助金128億5447万余円である。
しかして、41年中、上記国庫補助金のうち13億2853万余円について検査したところ、別項記載のとおり、公共事業に対する国庫補助金等の経理当を得ないもの
がある。
(特定土地改良工事特別会計)
本特別会計は、国営土地改良事業の早期完了を図るため設置されたもので、昭和40年度歳入歳出決算額は歳入320億6637万余円、歳出292億9437万余円、実施した事業は、直轄かんがい排水事業、直轄干拓事業および代行干拓事業計69地区261億0862万余円である。
しかして、41年中、これらのうち30地区152億8951万余円について検査したところ、別項記載のとおり、法面保護工事の施行にあたり山土の採取地の選定が適切を欠いたため不経済となっているもの
、土えん堤工事の施行にあたり盛土転圧費を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの
、導水路工事の施行にあたりスパイラル溶接鋼管の価格等を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの
、代行工事の施行にあたり作業船損料を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの
があり、また、国営干拓建設事業の施行
について、国営かんがい排水事業の施行について
、それぞれ41年7月、農林大臣あて改善の意見を表示した。