(289) 農業改良資金助成補助金を財源とする都道府県の貸付金の運営当を得ないもの
(一般会計) (組織)農林本省 (項)農産物生産対策費
農業改良資金は、農業改良資金助成法(昭和31年法律第102号)に基づき、都道府県が国の補助金および自己の一般会計からの繰入金を財源として特別会計を設け、農業経営または農家生活の改善および農業後継者の育成を図るため農業者等に技術導入資金等として無利子で貸し付けられるもので、国はこれに対して昭和31年度以降40年度までに農業改良資金助成補助金として5,629,608,844円(うち40年度分1,838,729,780円)を交付し、都道府県においては、この補助金と自己の一般会計からの繰入金等2,845,176,019円とを合わせ40年度末までに8,474,784,863円の資金を造成し、累計20,261,607,801円(うち39年度分4,298,360,538円、40年度分5,404,854,901円)の貸付を行なっている。このうち貸付の大部分を占める技術導入資金に関し、貸付が事業実施の適期に行なわれていないものがあると認められたので、40年10月、改善の意見を表示したところであるが、41年においては、北海道ほか23都府県が39、40両年度に貸し付けた12,000事項3,852,125,860円のうち355事項316,112,929円について貸付の当否および貸付金の使用状況を調査したところ、借受者が事業を全く実施しないで、または計画事業費より少額で事業を実施して、貸付金の全部または一部を貸付の対象とならない施設の設置に使用したり、債務の償還に充当したり、団体の経費等に使用したり、貯金のまま保有したりしていて、資金の使用当を得ず、ひいて国庫補助金が目的に反して使用されたと認められるものが北海道ほか21都府県で136事項66,790,615円(国庫補助金相当額4408万余円)あり、これを不当の態様別に示すと次表のとおりである。
類別
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都道府県名 |
貸付金 | 左のうち調査したもの | 不当貸付金 | |||||||
事業を全く実施していないもの | 計画事業費より少額で実施しているもの | 計 | ||||||||
事項数 | 金額 | 事項数 | 金額 | 事項数 | 金額 | 事項数 | 金額 | 事項数 | 金額 | |
北海道 |
670 |
円 366,098,000 |
17 |
円 23,527,000 |
2 |
円 2,935,000 |
円 |
2 |
円 2,935,000 |
|
岩手県 | 660 | 263,408,800 | 8 | 16,490,700 | 1 | 2,800,000 | 2 | 349,295 | 3 | 3,149,295 |
秋田〃 | 416 | 90,656,769 | 7 | 6,080,000 | 6 | 5,540,000 | 6 | 5,540,000 | ||
茨城〃 | 590 | 183,220,400 | 7 | 3,467,900 | 2 | 1,029,000 | 1 | 210,500 | 3 | 1,239,500 |
埼玉〃 | 305 | 124,656,452 | 3 | 1,594,000 | 1 | 294,000 | 1 | 571,180 | 2 | 865,180 |
千葉〃 | 451 | 213,665,600 | 22 | 13,238,925 | 13 | 739,064 | 13 | 739,064 | ||
東京都 | 158 | 18,169,700 | 15 | 3,103,000 | 1 | 242,120 | 1 | 242,120 | ||
富山県 | 389 | 85,347,300 | 50 | 28,606,000 | 3 | 711,000 | 31 | 9,689,315 | 34 | 10,400,315 |
石川〃 | 266 | 81,808,150 | 7 | 14,244,802 | 2 | 600,000 | 2 | 554,756 | 4 | 1,154,756 |
福井〃 | 94 | 45,308,000 | 12 | 12,235,000 | 5 | 5,169,000 | 5 | 5,169,000 | ||
長野〃 | 895 | 213,406,300 | 10 | 5,396,900 | 2 | 726,800 | 2 | 726,800 | ||
三重県 | 522 | 107,536,300 | 11 | 12,786,800 | 3 | 754,816 | 3 | 754,816 | ||
大阪府 | 293 | 195,085,000 | 34 | 24,650,599 | 5 | 1,980,900 | 4 | 5,933,044 | 9 | 7,913,944 |
岡山県 | 444 | 196,470,000 | 20 | 27,852,500 | 1 | 420,000 | 4 | 942,519 | 5 | 1,362,519 |
広島〃 | 902 | 249,598,000 | 15 | 26,474,233 | 5 | 1,536,428 | 5 | 1,536,428 | ||
山口〃 | 681 | 122,563,000 | 14 | 7,735,000 | 3 | 1,188,586 | 3 | 1,188,586 | ||
徳島〃 | 420 | 171,291,850 | 38 | 33,321,000 | 1 | 400,000 | 7 | 2,850,009 | 8 | 3,250,009 |
香川〃 | 657 | 171,422,960 | 8 | 7,929,000 | 1 | 133,294 | 1 | 133,294 | ||
愛媛〃 | 558 | 152,028,000 | 12 | 8,635,000 | 4 | 1,911,000 | 7 | 4,005,179 | 11 | 5,916,179 |
佐賀〃 | 366 | 119,712,900 | 8 | 5,660,600 | 1 | 416,208 | 1 | 416,208 | ||
熊本〃 | 716 | 138,163,579 | 6 | 1,311,270 | 3 | 432,070 | 3 | 432,070 | ||
鹿児島〃 | 910 | 279,976,600 | 24 | 22,904,300 | 8 | 11,044,000 | 4 | 681,532 | 12 | 11,725,532 |
合計 | 11,363 | 3,589,593,660 | 348 | 307,244,529 | 46 | 35,992,770 | 90 | 30,797,845 | 136 | 66,790,615 |
このように資金の使用当を得ない事例が多数に上っているのは、都道府県において、借受者に対し本制度の趣旨を十分徹底させていないこと、借受者の事業実施の状況をは握する努力が欠けていたことによるものと認められる。
しかして、これら不当な事例のうちおもなものをあげると次のとおりである。
(1) 秋田県で、39年度に、平鹿郡平鹿町三島農事研究会が38ヘクタールの秋落水田等改良に要する資材を858,800円で購入するものに対し600,000円を貸し付けているが、実際は借受者は事業を実施しないで貸付金を貯金のまま保有していた。
(2) 大阪府で、39年度に、南河内郡河南町中出荷組合が281アールの大型ビニール栽培に要する資材を5,433,135円で購入するものに対し3,794,000円を貸し付けているが、実際は借受者は資材の一部を939,462円で購入しただけで貸付金の残額を組合員に配分していた。
(3) 徳島県で、40年度に、麻植郡川島町促成なす研究会が園芸作物かん水技術改善用資材を585,000円で購入するものに対し400,000円を貸し付けているが、実際は借受者は事業を実施しないで貸付金を川島町農業協同組合の出資金に充当していた。