会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業施設災害復旧事業費 |
部局等の名称 | 中国四国農政局 |
補助の根拠 | 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号) |
補助事業者 (事業主体) |
高知県 |
補助事業 | (1) | 今川内地区海岸保全施設等災害復旧 |
(2) | 坂内地区海岸保全施設等災害復旧 |
事業費 | (1) | 64,226,400円 |
(2) | 43,104,600円 | |
計 | 107,331,000円 | |
上記に対する国庫補助金交付額 | (1) | 42,839,008円 |
(2) | 28,750,768円 | |
計 | 71,589,776円 | |
不当と認める事業費 | (1) | 21,054,059円 |
(2) | 3,757,529円 | |
計 | 24,811,588円 | |
不当と認める国庫補助金交付額 | (1) | 14,043,057円 |
(2) | 2,506,271円 | |
計 | 16,549,328円 |
1 補助事業の概要
この補助事業は、高知県が、平成10年9月の豪雨により海側に傾いた護岸を復旧する海岸保全施設等災害復旧事業の一環として、須崎市今川内地区及び坂内地区において、既設のコンクリート被覆式護岸((1)今川内地区の護岸は高さ 6.5m、延長163.0m、(2)坂内地区の護岸は高さ8.0mから9.0m、延長29.4m。)を補強するものである。これらの補強工事は、タイロッド(注1)
工、控え工、根固めコンクリート工等を、(1)今川内地区では工事費64,226,400円(国庫補助金42,839,008円)で、(2)坂内地区では工事費43,104,600円(国庫補助金28,750,768円)で、それぞれ11年度に実施している。
このうち、タイロッド工及び控え工は、上記の被災で変位を生じた護岸上部(基礎コンクリート部を除く。)を安定させるため、護岸背面に控え版を築造し、護岸と控え版をタイロッドで緊結するものである。そして、その設計は設計計算書等によれば次のとおりとなっており、これにより施工することとしていた(参考図1参照)
。
(ア) 被災した護岸上部について安定計算したところ、背面側の土圧等による滑動力に対する護岸上部の自重等による抵抗力が十分でないことから、タイロッドの抵抗力により滑動力を軽減し、これにより所要の安全率を確保する。そして、(2)工事においては、この安定計算を行う際、抵抗力として護岸前面側の土圧を考慮する。
(イ)控え版は、タイロッドの引張力等に対抗するため高さ 0.8m、幅0.8m、厚さ 0.4mのコンクリート構造とし、これにタイロッドを通すための穴(以下「通し穴」という。)の径を60mmとする。
(ウ)タイロッド(径28mmの鋼材)は両端を護岸及び控え版にそれぞれ通し、その先を定着プレートに通してナットで固定する。
2 検査の結果
検査したところ、タイロッド工等の設計が次のとおり適切でなかった。
(ア)控え版の通し穴の大きさについては、同県において検討を行うことなく決定していた。
(イ)定着プレートについては、設計において強度の検討を行っておらず、また、工事の発注に際してもその規格を定めていなかった。
(ウ)施工に当たり、請負業者は控え版側の定着プレートとして90mm×90mmの正方形の鋼材(厚さ6mm)を使用することとする材料使用承諾願を提出していたが、同県においてその適否の検討を行うことなく、これを承諾していた。
この結果、定着プレート(90mm×90mm)は通し穴の径((1)工事は 60mm、(2)工事は内側で60mm、プレート定着部で90mm)に対して十分な大きさとなっておらず、また、通し穴の径がタイロッドの径(28mm)に比べて大きいため、タイロッドの上部に大きな空隙が生じていた(参考図2参照)
。
また、(2)工事の安定計算において抵抗力として考慮している護岸前面側の土圧については、護岸前面側の土砂が波浪により洗掘されるおそれがあることから、この土圧を考慮するのは適切でなかった。
そこで、タイロッドの引張力により定着プレートに生じる曲げ応力度(注2)
を改めて計算すると、(1)工事で 6,830kgf/cm2
、(2)工事で18,516kgf/cm2
となり、鋼材の許容曲げ応力度(注2)
1,400kgf/cm2
をそれぞれ大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
このような事態が生じていたのは、同県において、タイロッド工についての設計が適切でなかったこと、請負業者から提出された材料使用承諾願を承諾する際の審査が適切でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件タイロッド工等((1)工事の工事費相当額21,054,059円、(2)工事の工事費相当額3,757,529円、計24,811,588円)は設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これらに係る国庫補助金相当額14,043,057円((1)工事)及び2,506,271円((2)工事)、計16,549,328円が不当と認められる。
(注1) | タイロッド 護岸と控え版とを緊結し、護岸背面側の土圧等による護岸の滑動及び転倒を防止するための連結鋼棒 |
(注2) | 曲げ応力度・許容曲げ応力度 「曲げ応力度」とは、材が曲げられたとき、曲がった内側に生じる圧縮力又は外側に生じる引張力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容曲げ応力度」という。 |