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補助金


(173)空港整備事業の実施に当たり、施工が設計と相違していたため、進入灯橋りょうの橋脚等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 空港整備特別会計 (項)空港整備事業費
部局等の名称 国土交通省航空局
補助の根拠 空港整備法(昭和31年法律第80号)
補助事業者
(事業主体)
兵庫県神戸市
補助事業 神戸空港整備事業
補助事業の概要 進入灯橋りょう等を新設するため、平成14、15両年度に橋脚、上部工等を施工するもの
事業費 739,567,500円
上記に対する国庫補助金交付額 369,783,750円
不当と認める事業費 98,637,000円
不当と認める国庫補助金交付額 49,318,500円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、兵庫県神戸市が、神戸空港整備事業の一環として同市のポートアイランド沖に造成した空港島に新設する神戸空港の滑走路東側に、進入灯、進入灯台等の建設を工事費計739,567,500円(国庫補助金369,783,750円)で、平成14、15両年度に実施したものである。
 この進入灯及び進入灯台は、同空港に滑走路東側から着陸する航空機に滑走路への進入経路を示すためのものであり、進入灯は滑走路東端から海上に向かって滑走路の延長線上420mの地点までの間の陸上部及び海上部に60m間隔で設置し、また、進入灯台は、同様に滑走路延長線上600m及び900mの地点に設置したものである。
 これらのうち、海上部に設置する進入灯は、進入灯橋りょう(橋長153.1m)を新設し、その上部に灯器を設置したもので、この進入灯橋りょうは、下部工として滑走路側から海上部に向かって順に橋台、1P橋脚、2P橋脚、3P橋脚及び4P橋脚を築造し、その上部に鋼製の桁を架設したものである。また、進入灯台は、滑走路側から海上に向かって順に5P灯台下部工及び6P灯台下部工を築造し、その上部に灯器を設置したものである(参考図1参照)

(参考図1)

(参考図1)

 このうち14年度に築造した3P橋脚、4P橋脚、5P灯台下部工及び6P灯台下部工は、3P橋脚では鋼桁の受台部とこれを支持する鋼管杭(外径900mm)4本、4P橋脚では同様に受台部とこれを支持する鋼管杭(外径700mm)4本、5P灯台下部工及び6P灯台下部工では共に灯器の受台部とこれを支持する鋼管杭(外径600mm)3本からなっている(参考図2参照) 。そして、上記の受台部はいずれも鉄筋コンクリート構造となっている。

(参考図2)

(参考図2)

補助金の図3

 設計図書等によると、上記の3P橋脚、4P橋脚、5P灯台下部工及び6P灯台下部工の受台部の下面側には、それぞれ橋軸方向及び橋軸直角方向に主鉄筋を配置することとしていた。さらに、これらの受台部の下面側には、鋼管杭と受台部を結合させる目的で鋼管杭の上端をコンクリート底面から杭の外径相当分の高さまで埋め込ませることとしていた。このため、主鉄筋の中には鋼管杭に遮られて分断され、連続して1本で配筋できなくなるものがあり、これらについては鋼管杭の外側に溶接された鉄筋受プレート(以下「プレート」という。)の上面に溶接することとし、鋼管杭を介して一体化することとしていた。
 そして、このプレートの施工に当たっては、鋼管杭の外側を囲むように橋軸方向及び橋軸直角方向の四方に溶接することとしていた。また、これらのプレートの溶接に当たっては、橋軸方向と橋軸直角方向に配筋される主鉄筋が別々の高さに配筋されることから、これらの主鉄筋がプレートの上面に接するようにするため、次のように施工することとしていた。
(ア)橋軸方向のプレートは、受台部のコンクリート底面より134mmから139mmの高さに溶接する。
(イ)橋軸直角方向のプレートは、橋軸方向のプレートよりさらに33mmから47mm高い位置に溶接する。
 上記のように施工すれば、鋼管杭に遮られている主鉄筋が鋼管杭を介して一体化されることから、設計計算では、受台部下面側の主鉄筋が途切れずに配置されているものとして計算していた。そして、地震時、暴風時等のうち、受台部下面側の主鉄筋において許容引張応力度(注) に対する引張応力度(注) の割合が最も高くなる暴風時(鋼桁及び受台部に風荷重等が作用した場合)について応力計算を行った結果、主鉄筋に生じる引張応力度は許容引張応力度(暴風時)を下回ることから安全であるとしていた。

2 検査の結果

 検査したところ、受台部の施工が次のとおり適切ではなかった。
 すなわち、橋軸方向のプレートは橋軸直角方向のプレートの高さに、橋軸直角方向のプレートは橋軸方向のプレートの高さに、それぞれ誤って設置していた。しかし、橋軸方向及び橋軸直角方向に配筋する主鉄筋については設計図面で示されている高さにそれぞれ施工していたため、橋軸方向に配筋した主鉄筋がプレートの下側の位置に、橋軸直角方向に配筋した主鉄筋がプレートの上側のかい離した位置になっており、プレートの上面に接していなかった。その結果、これらの主鉄筋はプレートと溶接されておらず、鋼管杭を介して一体化されていない状態になっていた(参考図3参照)

(参考図3)

(参考図3)

 そこで、上記について改めて応力計算を行うと、受台部の下面側主鉄筋に生じる引張応力度は、暴風時において3P橋脚が550.64N/mm 、4P橋脚が335.81N/mm 、5P灯台下部工及び6P灯台下部工が共に334.38N/mm 、また、地震時において5P灯台下部工及び6P灯台下部工が共に347.97N/mm となり、いずれも許容引張応力度(暴風時)270N/mm 、許容引張応力度(地震時)300N/mm を大幅に上回っており、応力計算上安全な範囲を超えている。
 このような事態が生じていたのは、受台部の施工が設計と相違していたのに、これに対する同市の監督、検査が適切でなかったことによると認められる。
 したがって、本件橋脚2基及び灯台下部工2基の受台部は、施工が設計と相違していて、これらの受台部、当該橋脚に架設された橋りょうの鋼桁、灯器等(工事費相当額98,637,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額49,318,500円が不当と認められる。

引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生じる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

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