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  • 第3章 個別の検査結果|
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補助金


(175)公共下水道事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、汚泥混合槽の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)都市計画事業費
平成13年度国庫債務負担行為
     (組織) 国土交通本省  (事項) 下水道緊急整備
      事業費補助
部局等の名称 熊本県
補助の根拠 下水道法(昭和33年法律第79号)
補助事業者
(事業主体)
熊本県熊本市
補助事業 熊本市公共下水道事業
補助事業の概要 沈殿池から発生する汚泥を混合するため、平成13、14両年度に汚泥混合槽を築造するもの
事業費 57,592,500円
(うち国庫補助対象額54,553,731円)
上記に対する国庫補助金交付額 30,004,552円
不当と認める事業費 31,850,000円(全額国庫補助対象額)
不当と認める国庫補助金交付額 17,517,500円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、熊本県熊本市が、公共下水道事業の一環として、同市秋津町秋田地内の東部浄化センターの敷地内において、沈殿池から発生する汚泥を混合しその濃度を調整するため、平成13、14両年度に、汚泥混合槽の築造を工事費57,592,500円(うち国庫補助対象額54,553,731円、国庫補助金30,004,552円)で実施したものである。
 この汚泥混合槽は、縦、横ともに11.4m、高さ4.8mの鉄筋コンクリート構造で、く体と一体となった中壁により、汚泥を混合する混合槽と汚泥排出のための機械設備等を設置するポンプ室とに仕切られている(参考図1参照)
 そして、汚泥混合槽のく体に配置する主鉄筋については、配筋図によると、中壁を挟んだ2連の中空断面の部分(以下「A断面」という。)及び中壁のない中空断面の部分(以下「B断面」という。)の2つの断面に分けて、表1のとおりに配置することとし、これにより施工していた(参考図2参照)

表1 配筋図による主鉄筋の配置
断面 箇所 配筋図
A断面 下隅角部外側 径16mm 25cm間隔
底版下面側 径16mm 25cm間隔
中壁 径13mm 25cm間隔
B断面 上隅角部外側(左側) 径19mm 25cm間隔
下隅角部外側(左側) 径16mm 25cm間隔

2 検査の結果

 検査したところ、本件汚泥混合槽のく体の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、汚泥混合槽のく体の設計の基礎となっている設計計算書によると、表2のとおりに主鉄筋を配置すれば、常時(注1) 、地震時とも、主鉄筋に生ずる引張応力度(注2) が鉄筋の許容引張応力度(注2) を下回ることなどから、応力計算上安全であるとしていた。

表2 設計計算書による主鉄筋の配置
断面 箇所 設計計算書
A断面 下隅角部外側 径22mm 25cm間隔
底版下面側 径22mm 25cm間隔
中壁 径16mm 25cm間隔
B断面 上隅角部外側径 径29mm 12.5cm間隔
下隅角部外側径 径22mm 25cm間隔

 しかし、配筋図を作成する際、隅角部や底版及び中壁の主鉄筋について、表2のとおりの径及び間隔とすべきところを、誤って、表1のような径及び間隔としていた。
 そこで、隅角部や底版及び中壁の主鉄筋について改めて応力計算を行うと、表3のとおりの結果となり、それぞれ応力計算上安全な範囲を超えており、このうちA断面の底版下面側及び中壁、B断面の上隅角部外側及び下隅角部外側において応力計算上安全な範囲を大幅に超えている。

表3 応力計算上安全な範囲を超えている主鉄筋の配置箇所

箇所 検討箇所 主鉄筋に生ずる引張応力度(N/mm2 ) 鉄筋の許容引張応力度(N/mm2 )
A

下隅角部外側 右側側壁 284.47(地震時) 270.00(地震時)
左側側壁 291.29(地震時) 270.00(地震時)
底版下面側 中央 318.42(常時) 160.00(常時)
中壁 下端 456.26(地震時) 270.00(地震時)
B

上隅角部外側 頂版左側 377.81(常時) 160.00(常時)
360.79(地震時) 270.00(地震時)
左側側壁 354.77(常時) 160.00(常時)
365.60(地震時) 270.00(地震時)
下隅角部外側 左側側壁 211.59(常時) 160.00(常時)
300.01(地震時) 270.00(地震時)

 このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件汚泥混合槽(工事費相当額31,850,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額17,517,500円が不当と認められる。

(注1) 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。
(注2) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

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