会計名及び科目 | 食糧管理特別会計(国内米管理勘定) (項)国内米管理費 |
部局等の名称 | 農林水産本省、食糧庁 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 (事業主体) |
全国農業協同組合連合会 |
補助事業 | (1) | とも補償 |
(2) | 稲作経営安定対策 | |
補助事業の概要 | (1) | とも補償に加入した農業者の拠出と国の助成により造成した資金から、米の計画的生産を実施した農業者に対してとも補償金を交付するもの |
(2) | 稲作経営安定対策に加入した農業者の拠出と国の助成により造成した資金から、自主流通米の価格が下落した場合に農業者に対して補てん金等を交付するもの | |
事業費 | (1) | とも補償金交付額 |
1,101,775円(平成12年度) | ||
(2) | 稲作経営安定対策に係る造成資金額 | |
2,806,270円(平成13年度末) | ||
上記に対する国庫補助金交付額 | (1) | 1,101,775円 |
(2) | 2,104,699円 | |
計 | 3,206,474円 | |
不当と認める国庫補助金交付額 | (1) | 1,101,775円 |
(2) | 2,104,699円 | |
計 | 3,206,474円 |
1 補助事業の概要
農林水産省及び食糧庁では、水田農業経営確立対策実施要綱(平成12年12農産第1932号農林水産事務次官依命通知)等に基づき、とも補償及び稲作経営安定対策を実施する全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)に対し、次のとおり、とも補償事業費及び稲作経営安定資金助成金を交付している。
(1) とも補償について
とも補償は、需要に応じた米の計画的生産の円滑かつ確実な実施等に資することを目的として、農業者に、生産調整の実施面積に応じて、とも補償金を交付するものである。
このとも補償金の交付事務等は、全農から都道府県経済農業協同組合連合会(都道府県を事業区域とする全農の都道府県本部等を含む。以下「経済連」という。)に、また経済連から農業協同組合(以下「農協」という。)に委託されている。
農林水産省では、全農に対し、とも補償に加入した農業者の拠出と併せてとも補償金の交付に必要となる資金の造成に充てるため、とも補償事業費を交付している。
とも補償金の交付の対象となる農業者は、当該年度における計画的生産実施者(注1)
であることなどの要件を満たす者となっており、その確認は、農協において、市町村から米の計画的生産の実施に関するデータの提供を受けるなどして行うこととなっている。そして、とも補償金を受領した農業者について、その後に交付対象者の要件に満たないことが判明した場合には、当該農業者は、とも補償金の全部を速やかに返納することとなっており、全農は、返納額を国に返還することとしている。
(2) 稲作経営安定対策について
稲作経営安定対策は、生産調整の着実な実施を確保しつつ、自主流通米の価格下落が稲作経営に及ぼす影響を緩和することを目的として、当年産の自主流通米の平均価格が補てん基準価格(注2)
を下回った場合に、その差額分の一定割合を補てん金として農業者に交付するものである。
この補てん金は、稲作経営安定対策に加入した個々の農業者ごとに造成された資金から交付されることとされており、食糧庁では、同対策に加入する契約をした農業者の拠出と併せて資金を造成(以下、この造成された資金の額を「造成資金額」という。)するため、稲作経営安定資金助成金を全農に交付している。
また、補てん金の交付後に資金に剰余が生じた場合には個々の農業者ごとに翌年度に繰り越される仕組みとなっており、平成12年度からは、補てん後の資金残高により額が定まる特別支払が補てん金の交付と併せて行われている。
これらの補てん金及び特別支払(以下「補てん金等」という。)の対象となる者は、生産調整の着実な実施等の観点から、当該年度におけるとも補償金の交付対象者であることなどの要件を満たす者となっている。そして、全農は、稲作経営安定対策に加入した農業者がとも補償金の交付対象者とならなかったなどの場合は、加入契約を解除し、その際、造成資金額に剰余がある場合には、当該造成資金額のうち、農業者拠出に相当する額を当該農業者に返還するとともに、国庫補助金相当額を国に返還することとしている。
なお、この補てん金等の交付事務等についても、とも補償と同様、全農から経済連に、また経済連から農協に委託されている。
2 検査の結果
12年産米に関し、全農が栃木県経済連(13年4月1日以降は全農栃木県本部)に、同経済連が矢板市等を事業区域とする塩野谷農協に委託して行ったとも補償金及び稲作経営安定対策に係る補てん金等の交付について検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
(1) とも補償金について
塩野谷農協では、矢板市内のとも補償に加入している農業者が計画的生産実施者であるか確認するため、同市に問い合わせをした。これに対し、同市では、市内のすべての対策推進上の地区(注3)
において生産調整対象水田面積に係る生産調整が実施されていたことから、各地区のとも補償に加入している農業者についてもすべて計画的生産実施者であると同農協に連絡した。
しかし、実際は同市内の農業者のうち18人は計画的生産実施者に該当しない農業者であり、同農協ではこれら18人の農業者が交付対象者に該当しないにもかかわらず、生産調整をとも補償金の交付対象とはならない方法により実施していた1人を除く17人に対し、とも補償金1,101,775円(国庫補助金同額)を交付していた。
(2) 稲作経営安定対策に係る補てん金等について
上記の18人に対しては、13年度末までに2,806,270円(国庫補助金相当額2,104,699円)の資金が造成され、稲作経営安定対策に係る補てん金等計2,259,247円が交付されていた。
しかし、前記のとおり、稲作経営安定対策に係る補てん金等の交付を受けるためには、とも補償金の交付対象者であることが要件とされていることから、上記の補てん金等は交付してはならず、加入契約を解除して、造成された資金に係る国庫補助金相当額を国に返還する要があった。
このような事態が生じていたのは、とも補償及び稲作経営安定対策に係る事務を行う塩野谷農協において交付要件の確認が十分でなかったこと、同農協に対する全農の栃木県経済連を通じた指導が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件(1)のとも補償金に係る国庫補助金1,101,775円及び(2)の稲作経営安定対策の造成資金額2,806,270円に係る国庫補助金相当額2,104,699円、計3,206,474円が不当と認められる。
(注1) | 計画的生産実施者 あらかじめ通知のあった生産調整対象水田面積のすべてについて生産調整を実施した農業者。その確認については市町村が行う。なお、生産調整対象水田面積は、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律施行令」(平成7年政令第98号)第2条により、米穀の生産目標を基礎として農林水産大臣が都道府県ごとに面積を定め、生産条件や農業者の意向を参酌して、知事が市町村ごとに、市町村長が農業者ごとに定める。 |
(注2) | 補てん基準価格 産地品種銘柄等ごとの過去3箇年産の自主流通米平均価格等 |
(注3) | 対策推進上の地区 水田農業経営確立対策で策定することとされている水田農業振興計画において、水田農業経営確立対策を推進する趣旨で設定された地区 |