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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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補助金


(206)−(209) 畜産振興総合対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、たい肥化処理施設の発酵槽等が補助の目的を達していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業生産振興費
部局等の名称 東北、関東両農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者 山形県ほか2県
間接補助事業者 山形県南陽市ほか3市町
間接補助事業者
(事業主体)
山形県酪農業協同組合ほか2組合、1有限会社
補助事業 畜産振興総合対策
補助事業の概要 家畜排せつ物の適正な管理と有効利用の促進を図るため、平成12、13両年度にたい肥化処理施設等の整備をするもの
事業費の合計 269,501,350円
上記に対する国庫補助金交付額の合計 128,864,506円
不当と認める事業費 91,899,161円
不当と認める国庫補助金交付額 44,189,390円

1 補助事業の概要

 これらの補助事業は、山形県酪農業協同組合ほか2組合、1有限会社が、畜産振興総合対策事業の一環として、家畜排せつ物の適正な管理と有効利用の促進を図り、もって家畜排せつ物からの汚水による水質汚染など畜産環境問題の改善に資するため、平成12、13両年度に、たい肥化処理施設等を事業費269,501,350円(国庫補助金128,864,506円)で整備したものである。
 そして、畜産業を営む者は、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(平成11年法律第112号)に基づき農林水産省が定める「たい肥舎その他の家畜排せつ物の処理又は保管の用に供する施設の構造設備及び家畜排せつ物の管理の方法に関し畜産業を営む者が遵守すべき基準」(以下「管理基準」という。)に従い家畜排せつ物を管理しなければならないとされている。管理基準によると、家畜排せつ物の処理又は保管の用に供する施設は、家畜排せつ物からの汚水が飛散したり、流出したりすることがないように床をコンクリートのような不浸透性材料で築造し、適当な覆いと側壁を設けることとされている。

2 検査の結果

 検査したところ、前記の補助事業で整備した施設のうち発酵槽等(事業費相当額91,899,161円)は、家畜排せつ物からの汚水が地下に浸透する状態になっていたり、所要の安全度が確保されていない状態になっていたりしていた。
 したがって、発酵槽等は、畜産環境問題の改善に資するという補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額44,189,390円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、委託した設計業務の成果品が管理基準に沿わないものとなっていたのに、これに対する検査が十分でなかったこと、事業主体に対する県等の指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを態様別に示すと次のとおりである。

ア 汚水が地下に浸透する状態になっているもの
県名 事業主体
(所在地)
事業費 左に対する国庫補助金 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金
    千円 千円 千円 千円
(206) 山形県 山形県酪農業協同組合
(南陽市)
122,542 58,353 22,107 10,527
(207)  同 有限会社ビッグフィールド
(米沢市)
96,127 45,775 23,271 11,081
小計   218,669 104,128 45,378 21,608
 この両補助事業は、平成13年度に、いずれもたい肥化処理施設を整備したものである。
 本件たい肥化処理施設は、投入棟(床面積208.8m 、199.6m )、発酵棟(同1,705.2m 、1,761.4m )及び搬出棟(同381.0m 、176.5m )で構成されている。
 このうち発酵槽の床については、地面に埋戻し土や砂を敷き均すだけの設計とし、これにより施工したため、家畜排せつ物からの汚水が地下に浸透する状態になっていた。
 したがって、本件両補助事業により設置された発酵槽(事業費相当額計45,378,656円)は、補助の目的を達していない。
(208) 埼玉県 農事組合法人アドバンス有機肥料利用組合
(羽生市)
33,631 16,815 29,320 14,660
 この補助事業は、平成12年度に、家畜排せつ物処理利用施設としてたい肥舎1棟(床面積1,157m )を整備したものである。
 本件たい肥舎は、基礎部分、床及び擁壁は鉄筋コンクリート造、上屋は鉄骨造となっている。
 このうち基礎部分については、地盤の種類を関東ローム層と想定し、基礎部分の形式を、柱下基礎については独立基礎、擁壁下基礎については連続基礎とそれぞれ設計し、これにより施工していた。
 しかし、床については柱を中心に、また、擁壁については柱と柱の中間にそれぞれ多数のき裂(最大幅2.5mm)が生じていた。そこで、たい肥舎の近傍でボーリング調査及び標準貫入試験(注1) を実施したところ、この地盤はN値が1から4(平均は2.3)、期待できる長期許容地耐力度(注2) が2tf/m 程度となっていて、想定した関東ローム層(長期許容地耐力度3tf/m )に比べて著しく軟弱な種類の地盤であった。すなわち、軟弱な地盤に対し基礎部分の設計接地圧が1.9tf/m から3.0tf/m と区々であったことから、不同沈下が発生して床や擁壁に多数のき裂が生じ、家畜排せつ物からの汚水が地下に浸透する状態になっていた。
 したがって、本件補助事業により設置されたたい肥舎(事業費相当額29,320,505円)は、補助の目的を達していない。
(注1) 標準貫入試験 ボーリング孔を利用し、サンプラーを取り付けたロッドの上からハンマーを落下させ、サンプラーを30cm貫入させるのに要する打撃回数を測定して土層の硬軟を調べる試験。そして、この打撃回数を「N値」という。
(注2) 長期許容地耐力度 地盤に対し鉛直方向に長期に働く力を地盤が支えることができ、かつ有害な地盤の沈下を生じさせない設計上許される上限値
 
  アの計   252,301 120,944 74,699 36,269
 
イ 施設の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
 
(209) 福島県 笠石堆肥生産利用組合
(岩瀬郡鏡石町)
17,200 7,920 17,200 7,920
 この補助事業は、平成12年度に、家畜排せつ物処理利用施設としてたい肥舎4棟(1棟当たりの床面積160m )、発酵舎1棟(同392m )を整備したものである。
 本件たい肥舎及び発酵舎は、床及び擁壁はコンクリート造で、上屋は床及び擁壁に建て込んだ鋼管(外径48.6mm)の柱に同材の梁を組み、その上に屋根を架ける構造となっていた。そして、これらの施設は簡易な構造の建築物であるとして所要の安全度を確認する構造計算は行われていなかった。
 しかし、これらの施設が破損した場合、家畜排せつ物からの汚水が流出するなどのおそれがあることから、構造計算を行う要があると認められた。そこで、これを行ったところ、これらの施設は次のとおり構造計算上安全な範囲を超えていた。
(ア) たい肥舎の擁壁は、暴風時、地震時及びホイールローダーによるたい肥の切返し作業時において所要の安全度が確保されていない。
(イ) たい肥舎の上屋は、積雪時、暴風時及び地震時において所要の安全度が確保されていない。
(ウ) 発酵舎の上屋は、暴風時及び地震時において所要の安全度が確保されていない。
 したがって、本件補助事業により設置されたたい肥舎及び発酵舎(事業費相当額17,200,000円)は、補助の目的を達していない。
ア、イの計   269,501 128,864 91,899 44,189

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