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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成29年4月|

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について


2 復旧・復興予算に関する検査報告掲記事項

(1) 平成27年度決算検査報告の分

会計検査院が平成28年次に検査を実施した結果、平成27年度決算検査報告に掲記した事項等のうち、東日本大震災関係経費に係る事項は次のとおりである。

ア 復旧・復興事業等に係る経費の算定が適切とは認められないなどのもの

① 学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたもの(文部科学省)

学校施設環境改善交付金の交付額の算定に当たり、配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外せずに交付対象工事費を算定するなどしたり、前年度の事業の交付対象工事費に既に計上していた工事費を当年度の事業の交付対象工事に重複して計上するなどしたり、適正な配分基礎面積を超える面積により配分基礎額を算定したりなどしていたため、交付金が過大に交付されていた。(過大に交付されていた交付額約2億7380万円のうち、東日本大震災関係経費は約8970万円)

② 私立学校施設整備費補助金(私立幼稚園施設整備費)が過大に交付されていたもの(文部科学省)

私立学校施設整備費補助金(私立幼稚園施設整備費)の経理において、幼稚園以外の事業で使用する部屋等の面積の一部を園舎の面積に含めたり、幼稚園以外の事業と共同で使用するなどしている部屋等の面積を適切に案分することなく園舎の面積としたりして補助対象経費を算定していたため、補助金約490万円が過大に交付されていた。

③ 緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの(厚生労働省)

緊急雇用創出事業臨時特例交付金及びふるさと雇用再生特別交付金により造成した基金を活用して実施した委託事業等において、受託者等が、基金事業の対象とならない経費を計上したり、新規雇用者に係る人件費の算出を誤ったりなどしていて基金が補助の目的外に使用されていた。(東日本大震災関係経費を含む約1億4730万円)

④ 東日本大震災農業生産対策交付金事業の交付対象事業費に、交付の対象とならない経費を含めていたもの(農林水産省)

岩手ふるさと農業協同組合は、東日本大震災農業生産対策交付金事業において、農産物処理加工施設を整備したとして交付金の交付を受けていたが、交付の対象とならない作業台、机等の汎用性のある事務用機器等に係る購入費を交付対象事業費に含めていたため、これらに係る交付金相当額約360万円が過大に交付されていた。

⑤ 津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金により造成した基金を用いた事業の実施に当たり、基金補助事業の対象とならない経費を含めていたり、基金補助事業の対象事業費を過大に精算していたりしていたもの(経済産業省)

津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金により造成した基金を用いた事業の実施において、e-フレッシュ株式会社及び株式会社舞台ファームは、交付決定より前に工事請負契約が締結され着工された工場建屋に係る建物取得費を基金補助対象事業費に含めていた。このため、取り崩された基金(約8450万円)の使用が適切でなかった。

⑥ 津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金により造成した基金を用いた事業の実施に当たり、基金補助事業の対象とならない経費を含めていたり、基金補助事業の対象事業費を過大に精算していたりしていたもの(経済産業省)

津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金により造成した基金を用いた事業の実施において、株式会社川崎溶缶は、基金補助事業により実施した建物及び設備の取得等について、虚偽の領収書等を取引業者等に作成させて基金補助対象事業費を水増しするなどしていた。このため、取り崩された基金(約320万円)の使用が適切でなかった。

⑦ 中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金の補助対象事業費を過大に精算していたもの(経済産業省)

丸高商事株式会社は、補助対象事業費の算定に当たり、共用の外構工事等に係る費用負担として受領していて自ら負担しないことになる金額を事業費から差し引いていなかったり、復旧した施設の面積に占める補助の対象となる部分の面積の割合を過大に算出していたりしたため、国庫補助金相当額約8540万円が過大に精算されていた。

⑧ 中小企業組合等共同施設等災害復旧費補助金の補助対象事業費に、補助の対象とならない経費を含めていたもの(経済産業省)

髙橋工業株式会社は、東日本大震災における津波により水没して使用できなくなったとして取り替えたバックホウの数量を2台としていたが、実際に水没して使用できなくなったバックホウは1台であったため、バックホウ2台のうち1台は東日本大震災により滅失した設備を復旧したものではないことから補助の対象とならず、これに係る国庫補助金相当額約200万円が過大に交付されていた。

⑨ 東日本大震災復興特別会計に返納させるべき預り災害復興住宅融資等緊急対策費補助金について使用する見込みのない額を一般会計に誤って返納させていて、会計法令に違反していたもの(国土交通省)

国土交通省は、平成23年度一般会計補正予算(第3号)に復興費用として計上されて、23年度内に交付されるなどした交付金により設置された預り災害復興住宅融資等緊急対策費補助金について、使用する見込みのない額83億8631万円を特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成24年法律第15号)の規定に基づき、東日本大震災復興特別会計に返納させるべきであったところ、誤って一般会計に返納させていた。

⑩ 交付対象事業費の算定が適切でなかったため、交付金が過大に交付されていたもの(国土交通省)

陸前高田市においては、東日本大震災復興交付金事業における市街地復興効果促進事業の交付対象事業費の算定に当たり、算定の対象とならない他の事業主体が実施する事業の事業費を含めて交付対象事業費を算定していたため、東日本大震災復興交付金が約8540万円過大に交付されていた。

⑪ 中間貯蔵施設予定地内におけるスクリーニング施設等の築造工事の実施に当たり、柱脚部の施工が設計と相違していて、工事の目的を達していなかったもの(環境省)

中間貯蔵施設予定地内におけるスクリーニング施設及び洗車施設(工事費約5610万円)の築造工事の実施に当たり、柱脚部におけるリブ材の接合について、溶接を粗雑に行っていて、施工が設計と相違していたため、工事の目的を達していなかった。

⑫ 火薬庫の周囲の土堤の改修を行う工事の実施に当たり、設計が適切でなかったため、土堤の機能が確保されておらず、工事の目的を達していなかったもの(防衛省)

近畿中部防衛局は、煙火火薬庫の周囲の土堤の改修を行う工事の実施に当たり、土堤の法面勾配が盛土工指針に基づく標準法面勾配の適用範囲内に収まっていないのに、盛土等の安定性の照査並びに標準的な排水工及び法面の安定性を図るための法面保護工等の設計を行っていなかったため、土堤(東日本大震災関係経費約1560万円)の機能が確保されていなかった。

イ 復旧・復興事業等の執行等に当たり、会計経理や制度等について是正改善や改善の要があると認められるなどのもの

① 学校施設環境改善交付金等における学校給食施設事業に係る交付額の算定について(文部科学省)

文部科学省は、地方公共団体が学校給食施設を整備する際に、学校施設環境改善交付金等(以下「交付金」という。)を交付している。文部科学省は、給食の提供を受ける児童等の数に応じて基準面積を定めており、これを超える延べ床面積の学校給食施設を建築する場合、基準面積を超える面積(以下「超過面積」という。)分の建築工事費を事業全体の建築工事費から除外する必要がある。しかし、超過面積分の建築工事費を除外することなく施設全体の建築工事費を交付対象建築費とするなどしたため、交付金が過大に算定されている事態が見受けられた。したがって、文部科学省において、事業主体等に対して、改めて実績報告及び額の確定を行わせ、過大となった交付金の返還を求めるとともに、学校給食施設の延べ床面積が基準面積を上回っている場合において、超過面積分の建築工事費を交付対象建築費から除外することなどを明確に示すなどの処置を講ずる要がある。(過大に算定されている交付額約4億3630万円のうち、東日本大震災関係経費は約2740万円)

② 学校施設環境改善交付金等による大規模改造(老朽)事業の実績報告時における改修比率の再検討について(文部科学省)

地方公共団体において大規模改造(老朽)事業に係る学校施設環境改善交付金等の交付額の算定に当たり、実績報告時に改修比率の再検討を行っておらず、その結果、実際の改修比率と差が生じた改修比率に基づいて交付額を算定している事態が見受けられた。このため、文部科学省において、実績報告時に改修比率を再検討し、交付申請時の改修比率から変動する場合にはこれを実績報告書に反映させることとするなどの処置を講じた。(実績報告時に改修比率の再検討が行われていなかった大規模改造(老朽)事業において実際の改修比率と差が生じた改修比率に基づき算定したことにより生じた交付金交付額の開差額約1億6230万円のうち、東日本大震災関係経費は約8570万円)

③ 生活福祉資金貸付事業の実施のために保有されている資金の規模等について(厚生労働省)

低所得世帯等の経済的自立等を目的に都道府県社会福祉協議会が実施している生活福祉資金貸付事業について、同協議会における保有資金の額が貸付事業の運営に必要な額を上回る状況となっているのに、保有資金の額が適正な規模となっているかについての判断基準等がなく、また、保有資金の額が適正な規模ではないと認められる場合に国庫補助金相当額の一部を返還させることができない事態が見受けられた。このため、厚生労働省において、保有資金の額についての判断基準を作成等するとともに、保有資金の額が適正な規模を上回っていると認められる場合に国庫補助金相当額の一部について返還等の措置を講ずることができるように、国庫補助金の交付要綱の改正等を行うなどする要がある。(東日本大震災に係る特例貸付分を含む保有資金のうち、会計検査院の試算の結果、適正な規模を上回っていると認められる額に係る国庫補助金相当額約272億2780万円)

④ 森林における除染等実証事業により実施された除染等に係る費用の関係原子力事業者への求償について(農林水産省)

森林における除染等実証事業により実施された除染等に係る費用について、特措法除染等の実施に要した費用として関係原子力事業者に対して求償を行うべきであったにもかかわらず、求償を行うために必要な契約関係書類を準備して関係原子力事業者である東京電力に送付するなどの求償に係る事務を全く行っていなかった。このため、林野庁は、求償を行うために必要な契約関係書類を準備して東京電力に送付するなどの求償に係る事務を行った。そして、特措法除染等の実施に要した費用の求償に係る具体的な事務手続等を定めることにより必要な体制を整備するとともに、特措法除染等の対象となる国有林を管轄する東北、関東両森林管理局に対して周知徹底を図るなどの処置を講じた。(除染等実証事業の委託契約に係る支払額のうち求償を行っていなかった額約2億4340万円)

⑤ 都市防災総合推進事業における防災情報通信ネットワークの整備について(国土交通省)

防災情報通信ネットワークの整備として整備した防災行政無線の設備について、27市区町において、耐震性が確保されていない建物等に設置されているなどして、地震発生時に有効に機能しないおそれがある事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、27市区町に対して、防災行政無線の設備のうち耐震性が確保されていない建物等に設置されている設備について、地震発生時に有効に機能させるために、耐震診断、設備の移設等の各設備に応じた必要な措置を講ずるための計画を策定させること、また、地方公共団体等に対して、防災情報通信ネットワークを地震発生時に有効に機能させるために、その設備の設置場所に係る耐震性を確保しなければならないことを周知する処置を講ずる要がある。(耐震性が確保されていない建物等に設置された防災行政無線の設備に係る東日本大震災関係経費を含む交付金等相当額2億4040万円(指摘金額)、耐震性が確保されていない建物等に設置されている親局から防災情報を受信する屋外拡声子局等設備に係る東日本大震災関係経費を含む交付金等相当額約11億2550万円(背景金額))

⑥ 炭素繊維シートを用いた橋りょう等の補強等工事の設計について(国土交通省)

国土交通省が直轄事業又は国庫補助事業として実施している炭素繊維シートを用いた橋りょう等の補強等工事について、設計及び施工の指針等において標準とされているシートの種類、シート1m2当たりの炭素繊維の重量及びシートの接着層数を画一的に用いてシートを選定していたなどのため、経済的なシートの種類等の組合せとなっていない事態が見受けられた。このため、国土交通省は、シート接着工の設計に当たり、設計及び施工の指針等を参考とする場合には、これらを画一的に用いることのないよう留意することなどについて周知するなどして、シートの種類等が経済的な組合せとなるよう処置を講じた。(低減できたシートの接着工費の積算額のうち、東日本大震災関係経費に係る国庫補助金等相当額は約10万円)

⑦ 新聞参考掲載業務の発注について(国土交通省)

簡易公募型プロポーザル方式及び簡易公募型競争入札方式により建設コンサルタント業務等を発注しようとする場合の手続開始の公示に当たり、国土交通本省等が、継続する必要性が乏しい日刊業界紙への参考掲載をホームページ等による公示に併せて行うこととしていたことなどにより、地方整備局等が日刊業界紙に参考掲載する業務の発注を継続し、多額の費用を支払っていた。このため、国土交通省において、通達を改正して、ホームページ等による公示のみにより手続開始の公示を行うこととするとともに、地方整備局等に事務連絡を発出して建設コンサルタント等にも周知徹底を図ることとした上で、29年4月以降は新聞参考掲載業務の発注を行わないこととする処置を講じた。(継続する必要性が乏しかった日刊業界紙への参考掲載に係る支払額約7億2370万円(東日本大震災関係経費を含む。))

⑧ 官庁営繕事業において入札不成立となった営繕工事の発注について(国土交通省)

官庁営繕事業において入札不成立となった営繕工事について、追加工事のように既契約工事を完成させるために必要となる工事ではなく、個別の契約の内容に照らして、契約の同一性を失わない範囲での変更とは認められないものであるのに、当該営繕工事を既契約工事の設計変更及び契約変更により事後的に追加していた。このため、国土交通省において、通達を発して、既契約工事の施工に関連性のない工事を既契約工事の設計変更及び契約変更により事後的に追加してはならないことを明確かつ具体的に示すとともに、入札不成立となった営繕工事を会計法令に従い適切に発注するための方策を具体的に示すことにより、営繕工事の発注を適切に行うための処置を講じた。(既契約工事の施工に関連性のない工事を既契約工事の設計変更及び契約変更により事後的に追加していた契約に係る変更額約2億4950万円(東日本大震災関係経費を含む。))

⑨ 道路の復旧を伴う下水道の函渠(かんきょ)埋設工事の設計について(国土交通省)

道路の復旧を伴う下水道の函渠埋設工事の実施に当たり、開削前と同じ舗装厚又は道路管理者が定めた基準に基づいた舗装厚が確保されない設計を行う場合において、路面の機能を損なわないようにするための措置に関して道路管理者と協議を十分に実施することを明確に示していなかったことなどのため、道路の安全かつ円滑な交通が確保されていないなどのおそれがある状況となっていた。(安全かつ円滑な交通が確保されていないなどのおそれがある道路延長に係る工事費相当額のうち、東日本大震災関係経費に係る交付金相当額約240万円)

⑩ 除染事業等における仮置場の整備について(環境省)

環境省において、除染仮置場の設計に当たり、基礎地盤の沈下を考慮せずに集水勾配を決定していて、基礎地盤の沈下量の最大想定値に基づく集水勾配が逆勾配となり浸出水の集水を適切に行えず、浸出水の放射性物質濃度を測定することができなくなるおそれがあるなどの事態、除染仮置場及び廃棄物仮置場の囲い柵の設計に当たり、設計基準がなく、現地の状況を踏まえた設計風速及び安全率を用いて設計を行っていない事態が見受けられた。したがって、環境省において、上載荷重等により生ずるおそれのある基礎地盤の沈下を考慮した設計方法等を策定するとともに、沈下が見受けられた際の対応について検討を行い、その方策を定めるとともに、囲い柵に作用する設計風速、安全率等について検討し、現地の状況を踏まえた設計基準を策定し、策定した設計基準に基づき安定計算を行い必要な措置を講ずる要がある。(基礎底面の集水勾配が逆勾配となるなどのおそれがある除染仮置場の造成に係る工事費相当額並びに安定計算結果に大きな影響が生ずる状況となっていた除染仮置場及び廃棄物仮置場の囲い柵の設置に係る工事費相当額約46億7220万円)

⑪ 防衛装備品等の調達における治工具等取得費及び技術移転費の予定価格の算定について(防衛省)

装備施設本部(平成27年10月1日以降は防衛装備庁)及び陸上自衛隊補給統制本部(以下「補給統制本部」という。)において識別機治工具価額が加工費率の算定の対象に含まれているのに治工具等割掛費を直接材料費として予定価格に計上していたり、補給統制本部において製造見込台数を超える台数分の技術移転割掛費を直接材料費として予定価格に計上していたりしていた事態が見受けられた。このため、装備施設本部及び陸上幕僚監部は通知を発するなどして、防衛装備品等の調達に当たり、加工費率の算定の対象に含まれている治工具等取得費や製造見込台数を超える台数分の技術移転割掛費を計上しないことにより、予定価格の算定を適切なものとするよう処置を講じた。(このうち、東日本大震災関係経費は装備施設本部の契約に係る約280万円)