会計名及び科目
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一般会計
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(組織)農林水産本省
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(項)海岸事業費
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部局等
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北陸農政局
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補助の根拠
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海岸法(昭和31年法律第101号)
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補助事業者
(事業主体)
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福井県
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補助事業
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海岸保全施設整備
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補助事業の概要
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波浪により侵食されるなどした既設の護岸を改修するため、平成17、18両年度に基礎工、護岸工等を施工するもの
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事業費
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42,559,456円
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上記に対する国庫補助金交付額
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21,279,728円
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不当と認める事業費
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5,161,064円
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不当と認める国庫補助金交付額
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2,580,532円
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この補助事業は、福井県が、海岸保全施設整備事業の一環として、大飯郡高浜町宮尾第2地区において、波浪により侵食されるなどした既設の護岸を改修するため、平成17、18両年度に、基礎工、護岸工等を工事費計42,559,456円(国庫補助金計21,279,728円)で実施したものである。
上記の工事は、既設の護岸(天端高は東京湾平均海面+3.5m)の海側に新たな護岸(以下「新設護岸」という。)を築造するため、基礎部として基礎捨石を敷き均し、その上に延長計159.4mの護岸本体(17年度工事対象延長66.1m、18年度工事対象延長93.3m)を築造するものである。そして、新設護岸の前面には、波力を受ける基礎捨石を保護するなどのため、基礎捨石の上に被覆材として大型の石(以下「被覆石」という。)を設置することとしている(参考図参照)
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同県では、新設護岸の設計に当たり、その天端高を既設護岸と同じとすることとし、この天端高を越えることのない波について調査したところ、3年間の再現期間に対する確率波であれば、波が新設護岸の天端高を越えることはないことが判明した。そして、被覆石の設計に当たり、この確率波を設計波(波高1.6m)として用いて被覆石の所要質量を算定したところ、算定値が0.47t/個となり、0.5t/個の質量のものを使用すれば、設計計算上安全であるとして、これにより施工していた。
本院は、福井県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、被覆石の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、「海岸保全施設の技術上の基準を定める省令」(平成16年農林水産省・国土交通省令第1号)では、海岸保全施設の設計を行うための設計波については、海岸管理者が定めるものとされており、同県では、30年間の再現期間に対する確率波(以下「30年確率波」という。)を設計波として用いることとなっている。
そこで、30年確率波を設計波(波高2.0m)として用いて被覆石の所要質量を改めて算定したところ、新設護岸の一部区間(延長20.1m)については、被覆石の所要質量が0.67t/個から0.92t/個となり、施工された被覆石の質量は上記の区間において設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。このため、被覆石が散乱した場合には、基礎捨石、新設護岸本体等に影響が及ぶおそれがあると認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、被覆石の所要質量の算定に用いる設計波に対する認識が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件新設護岸は被覆石の設計が適切でなかったため、前記の延長20.1mに係る区間(工事費相当額計5,161,064円)について所要の安全度が確保されていない状態となっており、これに係る国庫補助金相当額計2,580,532円が不当と認められる。
(参考図) 新設護岸及び既設護岸の断面の概念図