ページトップ
  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金

補助金


(212)−(214)  森林環境保全整備事業等の実施に当たり、実態と異なる内容の交付申請を行っていたため、補助金が過大に交付されているもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)林野庁
(項)林業振興費
部局等
林野庁
補助の根拠
森林法(昭和26年法律第249号)
補助事業者
3県
間接補助事業者
(事業主体)
3森林組合
補助事業
森林環境保全整備、森林居住環境整備
補助事業の概要
森林の有する多面的機能の維持・増進を図り、森林環境の保全に資することなどを目的として、植栽、下刈、間伐等の事業を実施するもの
事業費の合計
5,421,358,941円(平成14年度〜18年度)
上記に対する国庫補助金交付額の合計
1,646,614,690円
不当と認める事業費
290,526,587円
(平成14年度〜18年度)
不当と認める国庫補助金交付額
87,189,079円
(平成14年度〜18年度)

1 補助事業の概要

(1) 制度の概要

 林野庁では、森林の有する多面的機能の維持・増進を図り、森林環境の保全に資するなどのため、森林環境保全整備事業及び森林居住環境整備事業の一環として、一定の要件を満たす植栽、下刈、間伐等の造林関係補助事業を実施した森林所有者、森林組合等の事業主体に対して都道府県が補助する場合等に、その費用の一部として、都道府県に森林環境保全整備事業費補助金及び森林居住環境整備事業費補助金(以下、これらを合わせて「補助金」という。)を交付している。
 森林環境保全整備事業実施要領(平成14年13林整整第885号林野庁長官通知。以下「要領」という。)等によれば、事業主体は、事業の終了後、都道府県に対して補助金の交付申請を行い、都道府県は、交付申請を受けて当該事業のしゅん工検査を行い、これに基づいて補助金の査定を行い、補助金の交付決定及び額の確定を同時に行うこととなっている。このように、事業終了後に交付申請を行うこととしているのは、1件当たりの事業規模が零細でかつ極めて件数が多いことなどによるものである。
 そして、補助事業の実施方法としては、〔1〕森林所有者が事業主体となり、自ら又は他の林業者(林業を営む個人又は会社をいう。以下同じ。)に請け負わせて作業を実施し、補助金の交付申請及び受領を森林組合等に委任して行う方法、〔2〕森林組合が森林所有者から事業を受託して事業主体となり、自ら又は他の林業者に請け負わせて作業を実施し、補助金の交付申請及び受領を自ら行う方法等がある。

(2) 事業規模の要件

 要領等によれば、森林環境保全整備事業の中の流域公益保全林整備事業等のうち、育成単層林整備の保育(植栽型)、人工造林及び特定間伐に係る事業(以下、これらの事業を「面積要件事業」という。)については、森林所有者が事業主体となる場合には、当該森林所有者による事業実施面積の合計が0.5ha以上でないと補助対象とならないこととなっている。一方、森林組合が事業主体となる場合には、森林所有者ごとの事業実施面積が0.5ha未満であっても当該森林組合による事業実施面積の合計が4ha以上であれば補助対象となることとなっている。

(3) 補助金額の算定

 補助金の額は、事業区分ごとに定められた標準単価に事業実施面積を乗じるなどした額を補助対象事業費とし、この補助対象事業費に補助率を乗じて算定することとなっている。そして、森林組合が事業主体である場合には、次のように標準単価を適用するなどし、更に標準単価に諸掛費を加算することとなっている。

ア 標準単価の適用

(ア) 森林組合が自ら作業を実施した場合(以下「受託直営」という。)には、受託直営単価を標準単価として適用する。この単価は、単位面積当たりの労務費、機械損料及び資材費に、資材費の消費税相当額が加算されたものである。

(イ) 森林組合が他の林業者に請け負わせて作業を実施した場合(以下「受託請負」という。)には、受託請負単価を標準単価として適用する。この単価は、単位面積当たりの労務費、機械損料及び資材費に、労務費、機械損料及び資材費の総額の消費税相当額が加算されたものである。

イ 諸掛費の加算

 森林組合が事業主体である場合は、標準単価に、10%から30%までの範囲内で、事業に携わる作業員の社会保険料等の経費相当額である諸掛費を加算することができる(森林所有者が事業主体となる場合には、諸掛費を加算できない。)。


2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、補助金の交付申請の内容が実態に即した適切なものとなっているかなどに着眼し、17道府県及び管内の63事業主体において、補助金の交付申請書、しゅん工検査調書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適切でないと思われる事態があった場合には、更に県に事態の詳細について調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、3県の3森林組合において、実態と異なる内容の補助金交付申請を行っていた。このため、補助対象事業費計290,526,587円が過大になっていて、これに係る国庫補助金計87,189,079円の交付が過大となっており不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、森林組合において補助事業の適正な実施に対する認識が欠けていたり、補助事業の制度の理解が十分でなかったりしていたこと、県において 森林組合に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを県別に示すと次のとおりである。

 
県名
事業主体
年度
補助対象事業費
左に対する国庫補助金
不当と認める補助対象事業費
不当と認める国庫補助金
摘要
 
 
 
 
千円
千円
千円
千円
 
(212)
秋田県
本荘由利森林組合
14〜17
2,231,717
685,594
180,425
54,149
補助の対象外及び補助金の過大交付

 上記の森林組合では、森林所有者から事業を受託し、森林組合自らが事業主体となって事業を実施したとして、7,139件の造林関係補助事業について補助金の交付申請を行い、標準単価に諸掛費を加算して算定した額により補助金の交付を受けていた。
 しかし、このうち4,293件(事業費計887,475,069円、国庫補助金計266,421,733円)については、実際は、森林所有者が自ら又は他の林業者に請け負わせて作業を実施していて、実質的な事業主体は森林所有者であると認められた。
 そして、上記4,293件のうち1,137件(事業費計66,698,190円、国庫補助金計20,008,953円)は、面積要件事業に該当するが、森林所有者が事業主体となる場合の事業規模の要件(事業実施面積の合計が0.5ha以上)を満たしていないため、補助の対象とはならないものであった。
 また、これらを除く3,156件(事業費計820,776,879円、国庫補助金計246,412,780円)については、森林所有者が事業を実施したものであることから、標準単価に諸掛費を加算できないものであった。
 したがって、前記の1,137件に係る事業費計66,698,190円については補助の対象とは認められず、また、標準単価に諸掛費を加算していた3,156件については、適正な事業費を算定すると計707,049,516円となり、上記の事業費計820,776,879円との差額計113,727,363円が過大に算定されており、これらの事業費計180,425,553円に係る国庫補助金計54,149,447円が過大に交付されていた。

(213)
三重県
中勢森林組合
14〜17
816,847
245,053
91,075
27,322
補助の対象外及び補助金の過大交付

 上記の森林組合では、森林所有者から事業を受託し、森林組合自らが事業主体となって事業を実施したとして、2,268件の造林関係補助事業について補助金の交付申請を行い、標準単価に諸掛費を加算して算定した額により補助金の交付を受けていた。
 しかし、このうち1,583件(事業費計537,710,942円、国庫補助金計161,312,557円)については、実際は、森林所有者が自ら又は他の林業者に請け負わせて作業を実施していて、実質的な事業主体は森林所有者であると認められた。
 そして、上記1,583件のうち293件(事業費計28,519,560円、国庫補助金計8,555,731円)は、面積要件事業に該当するが、森林所有者が事業主体となる場合の事業規模の要件(事業実施面積の合計が0.5ha以上)を満たしていないため、補助の対象とはならないものであった。
 また、これらを除く1,290件(事業費計509,191,382円、国庫補助金計152,756,826円)については、森林所有者が事業を実施したものであることから、標準単価に諸掛費を加算できないものであった。
 したがって、前記の293件に係る事業費計28,519,560円については補助の対象とは認められず、また、標準単価に諸掛費を加算していた1,290件については、適正な事業費を算定すると計446,635,008円となり、上記の事業費計509,191,382円との差額計62,556,374円が過大に算定されており、これらの事業費計91,075,934円に係る国庫補助金計27,322,502円が過大に交付されていた。

(214)
山口県
山口県東部森林組合
14〜18
2,372,793
715,967
19,025
5,717
補助金の過大交付

 上記の森林組合では、補助金の交付申請を行った6,504件の造林関係補助事業のうち、4,425件については、受託請負により実施したとして交付申請を行っており、受託直営単価と比べ労務費等に係る消費税相当額が加算され高い単価となっている受託請負単価を標準単価とし、これにより算定した額により補助金の交付を受けていた。
 しかし、このうち1,299件(事業費計630,365,100円、国庫補助金計189,486,770円)については、実際は、作業の全部又は一部を森林組合が自ら実施していた。このため、これら1,299件については、作業の全部又は一部について、受託請負ではなく受託直営により実施したとして交付申請をすべきであり、これに基づき、受託直営単価が標準単価として適用されるべきであった。
 したがって、これら1,299件に係る適正な事業費を算定すると計611,340,000円となり、上記の事業費計630,365,100円との差額計19,025,100円が過大に算定されており、これに係る国庫補助金計5,717,130円が過大に交付されていた。

(212)−(214) の計
 
 
 
5,421,358
1,646,614
290,526
87,189
 

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 1

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 2

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 3

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 4

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 5

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 6

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 7

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 8

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 9

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 10

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 11

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 12

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 13

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 14

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 15

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 16

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 17

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 18

補助金 | 平成18年度決算検査報告 | 19